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「居心地よい円安」の分水嶺
日銀による2016年12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は1年半ぶりに大企業製造業の景況感が改善し、注目された。トランプ次期米大統領の積極財政策への期待感がドル高・円安の流れをつくり、株高も進んだ。企業は半信半疑ながらも反転への手応えを感じはじめている。
8月下旬に1ドル=100円近辺だった円相場は先週、一時118円台まで下げた。「2月ごろの水準なので、別に驚くような水準とは思わない」という黒田東彦日銀総裁の発言が円安を一押しした。一時120円台をつけた2月初めはマイナス金利の導入決定の直後。苦労を重ねた黒田氏には単なる原点復帰に映るのだろう。
16年度前半の円高による収益悪化の懸念で企業心理は弱気に傾いた。最近の円安で円換算の海外収益が膨らみ、特にグローバル市場に展開する企業の経営者にとっては追い風になる。「トランプ相場」の持続力は不確かだが、いまの水準で年度末を迎えた場合、業績に相当な円安効果が乗るはずだ。
だが、急な円安が消費者の心理を改善させるかどうかは別の話だ。ガソリン店頭価格が約1年ぶりの水準に上昇し、大手航空会社は国際線で燃油代の付加運賃の復活を決めた。高額品や食料などの輸入価格にも今後、影響が及ぶ。
物価低迷からの脱出に円安は支えとなるが、賃上げや所得の増加が伴わなければ家計には実質的な負担増となる。以前の円安局面で14年末に1ドル=120円に近づいた頃から「家計が円安に強く反発しはじめた」とBNPパリバ証券の河野龍太郎氏は指摘する。
企業業績や株式市場にとっての「良い円安」と、家計の感覚で居心地の良い円安の間には、意外な開きが生じた可能性が高い。
「日本経済にとって、実は110円前後が適正な水準かもしれない」。大手銀行首脳はそんな見方をする。円安傾向が企業心理の改善や税収の増加をもたらしたのがアベノミクス初期の日本浮上の原動力だった。「トランプ円安」が好循環の再来を招くのかどうか。ここは冷静に見た方がいい。
(編集委員 菅野幹雄)
[日経新聞12月26日朝刊P.12]
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