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ネガティブ報道でも電通の株価が下がらないのはなぜか? 投資家はこんなところを見ている
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50607
2016.12.29 大熊 将八 現代ビジネス
■株価は上場傾向
12月23日に行われた「ブラック企業大賞2016」には、大方の予想通り、広告代理店最大手の電通が選ばれた。
昨年(2015)、当時の新入社員が自殺したことが過労による労災と認められ、11月7日には労基法違反の疑いで、本社や支社で厚労省の強制捜査が行われるなどの話題が続いたことが、受賞の理由だろう。12月28日には代表取締役社長の石井直氏が引責辞任を表明した。
同社にとっては不名誉なことだろうが、過重労働を防ぐための「働き方改革」を推し進めるとアピールした以上、世間の厳しい目に晒されながら、「働きやすい会社」へと変わっていくよりほかないだろう。
一方これだけ話題になったにもかかわらず、株価の推移を見てみると、強制捜査があった日には下落したものの、すぐに反発し、ここ3ヵ月間でみると上昇傾向にある。
株式市場は、電通の不祥事は同社の企業価値に影響を及ぼす要因ではない、と判断しているようだ。長年の実績があるからこそ、ということは分かるのだが、投資家たちは、なにが同社の経営のカギを握るものだとみているのだろうか?
その要因を、改めて決算書の数字を追うことで明らかにしていきたい。
■営業利益率が低い理由
昨年度期の売上高は国際会計基準で4.5兆円にも達し、国内二番手の博報堂にほぼ3倍の差をつけている電通だが、意外なことに営業利益率は全上場企業の平均とされる4~5%にも満たない、たったの2%ほどしかない。
「大手広告代理店はものすごく稼いでそう」というイメージとは裏腹に、売上原価が非常に高いため、利益が出しづらいのだ。原価のほとんどは、広告主側に支払う媒体費が占めている。
広告代理店は基本的に、広告を出したい企業(広告主)からお金をもらい、広告を掲載してくれるテレビや新聞・雑誌などの媒体にお金を払い、その差額(マージン)を受け取るというビジネスモデルだ。そのため売上は大きくなりやすいが、メディアへの支払いがある分、利益率は一定以下に抑えられてしまうというわけだ。
この構造から逃れる方法の1つは、自社でメディアを持つことだ。それは、今年「AbemaTV」への巨額投資で話題をさらったサイバーエージェントの数字を見ればわかりやすい。
サイバーエージェントは、売上高の5割・利益の3割をインターネット広告事業が占める、ネット広告代理店の最大手だ。その営業利益率は2015年度で12.8%であり、時価総額でほぼ等しいDeNAやmixi、コロプラなど他のITベンチャーには劣るが、電通や博報堂といった「広告代理店」の括りでは異例の高利益率となっている。
ネット広告でサイバーに次ぐオプトやセプテーニの営業利益率は5%程度であり、総合代理店三番手のADKも、営業利益率は2%ほどしかない。
サイバーエージェントが例外的に高利益率を誇る理由は、自社のメディアを育てているからだ。
インスタグラムに次いで日本で18番目に見られているWebサイトであり、月間で数億人が訪れるAmebaブログという強力なメディアを保有しているため、同メディア上に広告掲載を行っても、他社にお金を払う必要はない。ゆえに、広告業者自体が強いメディアを持ったり、強いメディアを持っている会社が広告業をメインとしているケースでは利益率が高くなる。
たとえばヤフージャパンの営業利益率は30%を超えている。スマホ向けメッセージングアプリ最大手のLINEも、世界で2.2億人が毎月使う自社の巨大メディア上で展開する広告事業が絶好調で、今年度の第3四半期までで140億円を稼ぎ、同社の売上の40%を支えている。AbemaTVも、サイバーにとって強力な自社メディアとなりうるからこそ、藤田晋社長は投資を惜しまないのである。
翻って電通は、有力なウェブメディアを持っていない。 ただの代理店業のみをウェブでやっていては利益率を高めることは難しい。
反面、ウェブの世界では「薄利多売」で多数のクライアントを相手にするため、運用に携わる社員の労働時間は長くなる。電通にとってネット広告関連の事業は、儲からないが手間暇はかかる、「問題児」なのだ。
■カギは海外戦略にアリ
そんな電通の生き残り戦略は、同社の「中期経営計画」を読み解けば明確である。
ここ2年間だけでも、1年で50社以上も海外子会社を増やすペースで買収を進めている。これを可能にしているのが、3000億円以上という莫大な現預金だ。
IT(デジタル)化についても、主に海外の会社を買収することでデジタル領域の売上比率を高めているので、電通の将来を左右するのは、やはり海外企業の買収の成否なのだ。
今年だけでもチリやインド、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツなど世界中の地域で広告会社やマーケティングの会社の買収を進めている。
とりわけ、8月にはアメリカの独立系データマーケティング会社では最大級の規模を誇るマークル社を、イージス以来最大となる1000億円以上の値段で取得することを発表した。
本稿の冒頭に挙げたように、国内での不祥事の数々にもかかわらず株価が下落傾向とならないのは、肝である海外事業が「今の所はうまくいっている」と投資家が見ているためである。
ただし、肝心の海外事業にも懸念はある。資金には余裕ががあるから会社を買うこと自体は難しくないが、その後のマネジメントができるかは別の話だ。
■「のれん」が心配
買収を繰り返すことによって電通の「のれん」は膨らみ続け、2015年度には6000億円を超えるまでにいたった。これはソフトバンクやJTなどに次ぎ、日本第5位の規模である。
記事の前半部分で見たように同社の利益率は低く、4兆円を超す売上に対して1000億円程度しか営業利益を稼げていない。そのため買収した海外子会社をうまく成長させられずにのれんの減損損失を計上してしまうと、あっという間に赤字転落しかねない。
また、2015年には早くも50%を超えた、総利益に占める海外事業の割合は、2016年12月期の第3四半期を迎えても、目標である55%には届いていない。
その間、アメリカのマーケティング会社Merkleを1000億円規模で買収したのを筆頭に、全世界で数十社の買収を進めたにもかかわらず、円高による為替差損の影響もあって、ここ1年は海外での利益を増やせていないのだ。2016年12月期の通期では55%に達しているかどうか、注目である。
もう1つ、同社の有価証券報告書を調べると、面白い事実に行き当たる。それは、人件費についてだ。
電通は連結で約4万4000人の社員を抱え、そのうち7200人が本社(すべて国内)の社員だ。この7200人については年間平均給与が有価証券報告書上に明記されており、2015年12月期では1272万円という国内最高レベルの水準であることがわかる。
一方、連結財務諸表上には、全体の人件費(従業員給付費用)が載っている。ここから本体の人件費7200×1228万円を引いた値を子会社の人数で割って平均給与を算出すると、約790万円にしかならない。子会社の従業員の8割弱は海外の社員だ。社の命運を握る海外の人員に、それに相応しい報酬を与えていないのであれば、先行きは明るくない、のかもしれない。
電通は国内だけでなく、海外の子会社の労働環境の向上にも取り組んでいかねばならないだろう。
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