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コラム:
2016年のドル円を動かした人物トップ10
植野大作三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 26日] - 2016年のドル円相場は「申酉(さるとり)騒ぐ」の格言通り、大きく荒れた。序盤から終盤にかけて激しく変わるドル円相場の局面変化を、全て完璧に読み切れた関係者は恐らく皆無だろう。
毎年この時期には世間で「今年の10大ニュース」の発表が相次ぐ。2017年のドル円相場を展望するに際し、「温故知新」はポイント整理に役立つ。以下、「2016年のドル円相場に影響を与えた人物トップ10」を筆者の主観で選んでみたい。
●第1位=トランプ次期米大統領
米大統領選挙期間中は、過激な言動で市場を不安に陥れたが、11月の本選で勝った直後に立派な勝利演説を行い、米金利上昇・株高・ドル高の「トランプ相場」を加速させた。11月9日の安値101.20円から12月15日の高値118.66円まで約5週間でドルは17.46円も急騰した。
米国でトランプ政権が発足するのは2017年1月20日であり、選挙中の公約だった大型減税・公共投資の具体像が明らかでない段階での「トランプラリー」は期待先行の感が否めない。だが、「年収1ドルで働く」と宣言した「ビジネスマン大統領」の強い旗振りの下、米国経済の足腰が強化されるとの期待も強く、4年間の任期中の政策運営が注目されている。
●第2位=キャメロン前英国首相
「首相の火遊び」と揶揄(やゆ)された国民投票を6月23日に実施、「欧州連合(EU)離脱」という驚愕の民意を引き出した。翌24日の東京市場でドル円相場は早朝に記録した106.84円の高値から約5時間半で7.32%も暴落して一時99.02円と今年最安値を記録した。1日のドル円の下落率としては、1998年秋の「LTCMショック」で計測された9.36%に次ぐ大記録だ。
英国民投票の結果を受けてポンド安が加速する中、市場のリスク探知機の針が振り切れたことで、ポンドドル市場経由のドル高圧力よりも、ポンド円市場経由の円高圧力が強くドル円市場に伝染した。
●第3位=肖鋼・中国証券監督管理委員会前委員長と周小川・中国人民銀行総裁
肖鋼・前委員長は、年明け早々の中国株暴落に対して逆効果になった「株売買の停止」「サーキットブレーカーの導入」「大株主の売却制限」などの対策を次々実施して市場を混乱させた後、2月下旬に辞任した。
ほぼ同時に加速した元安が、中国からの資本逃避懸念を増幅したため、当時は人民銀がドル元レートの基準値を元安方向に設定するたびに市場のリスク許容度が萎縮、「リスク回避の円高圧力」が強まった。
2016年前半に加速した強烈な株安・円高局面では、いわゆる「チャイナリスク」への懸念が猛威を振るい、その後の英国民投票でドル円が2年7カ月ぶりの99円台に突入する素地が作られた。
●第5位=イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長
2016年最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)までの間は利上げを我慢したが、12月に満を持して1年ぶりの利上げに踏み切った。
0.25%の利上げは、市場の予想通りだったが、同時に提出された政策金利見通し(ドットチャート)で2017年中の利上げ回数が「2回」から「3回」に上方修正されていたほか、これまで下方修正の連続だった「長期の政策金利」見通しが引き上げられたことが「トランプラリー」を助長した。
FOMC後の会見でイエレン議長は「財政刺激は完全雇用の達成には必要でない」などと発言しており、2017年春頃に始まる米予算協議をにらみながらの金融政策の操舵が注目されている。
●第6位=黒田東彦日銀総裁
1月に導入したマイナス金利の評判が悪く、円安効果はわずか3日で切れた。その後、7月の会合で次回までに「総括的な検証」を行うと宣言、十人十色の詮索トークを刺激した。
9月に導入された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に追加緩和策は含まれておらず、当初は「金融緩和の限界論」を助長したが、金融政策の主役を「金利」に戻したことの効果が後に現れ、米大統領選後に加速した米長期金利の急騰局面での「円の弱さ」を際立たせた。
なお、市場では賛否両論が渦巻いているが、7月に導入した年6兆円の上場投資信託(ETF)の爆買い政策は、その後の日本株を下支え、市場のリスク許容度改善効果を通じて円安に寄与したと指摘する声もある。
●第7位=ムハンマド・サウジアラビア副皇太子とプーチン・ロシア大統領
2016年前半の円高局面では、「原油価格の下落」も市場のリスク許容度を萎縮させた。2月に原油が26ドル台で底打ちする頃までは、ムハンマド副皇太子がイランを含まぬ減産に難色を示し、原油価格は軟調地合いが続いた。
だが、原油が30ドルを割り込むとサウジとロシアの痩せ我慢が限界に達して水面下の協議が活発化、10月にプーチン・ロシア大統領が「石油輸出国機構(OPEC)に協力する用意がある」と述べたことで価格の安定感が増した。
その後、11月のOPEC総会で8年ぶりの減産合意が成立、12月には15年ぶりにロシアなどの非加盟国も含んだ合意が成立、原油底割れ懸念の後退がドル円やクロス円を巻き込んだ円の全面安に寄与した。
●第9位=安倍晋三首相
7月の参院選で勝利した直後に経済対策を指示、官邸で「ヘリコプター・ベン」ことバーナンキ前FRB議長と会ったことで、一部海外勢にヘリコプターマネー政策の準備を想起させた。
参院選前の100.0円から21日の107.49円まで、わずか9営業日で7.49円もの円安が加速したが、その後は政治的配慮による経済対策額の水増しが判明、半月後の8月中旬には一時99.54円と、逆に7.95円もの円高が進んで市場関係者の夏バテが増幅した。
他方、外交面では歴史的な活躍が目立ち、米大統領選で勝利したトランプ氏の自宅を10日後に訪問したほか、5月に広島を訪れたオバマ米大統領への返礼も兼ねて12月に真珠湾を訪問する。一連の対米外交が成果をあげ、今後の日米両国関係の安定に寄与することが期待されている。
●第10位=コミー米連邦捜査局(FBI)長官
米大統領選の11日前にクリントン民主党候補の国務長官時代のメール問題に関する捜査再開を突然発表、同氏の楽勝ムードを一気に消したが、投開票の2日前になって今度は「訴追を求めず」との判断を示して選挙戦を混乱させた。
コミー長官の行動が選挙結果にどれほど影響したかは不明だが、敗戦から5日後にクリントン氏は同長官の書簡が「選挙戦に大きな打撃を与えた」との見方を示している。米大統領選挙後の強烈な「トランプラリー」を見るにつけ、「もしもコミー長官の判断迷走がなかったら、今頃どうなっていたのだろうか」との感慨を禁じ得ない。「トランプ相場」の影の立役者として、末尾に挙げておきたい。
以上、筆者が選んだ「2016年のドル円相場に影響を与えた人物トップ10」だ。諸々異論はあるだろうが、恐らく1位については衆目が一致しているのではなかろうか。
冒頭で触れた通り、2017年は「さるとり騒ぐ」2年間の後半戦に突入する。最大の注目テーマはやはり「トランプノミクス」の成否になりそうだが、2016年1年を振り返っても、為替相場はどこに地雷が埋まっているか分からない。
2017年3月までに行うとメイ英首相が宣言している対EU離脱通告後の条件協議の行方、トランプ米新政権発足後の米中関係と中国発の世界景気悪化懸念の当否、主要産油国による減産合意の遵守状況などにも引き続き細心の注意が必要だろう。
相場を騒然とさせる「とり年」の霊力が、円高・円安どちらに宿るのか、予断を許さぬ1年になりそうだ。
*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/122100074/
この復活株価は歪んでいないか
記者の眼
2016年12月27日(火)
田村 賢司
「申酉(さるとり)騒ぐ」の相場格言通り派手な動きとなった2016年・申年の株式市場。1月4日、日経平均・1万8451円で始まった市場は6月24日には1万4952円まで下落したが、11月8日の米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選すると、トレンドは上昇に傾き、12月22日には1万9428円に戻した。2万円も目の前で、トランプ相場が始まった当初、「2017年半ばにも2万円」(大手証券会社のストラテジスト)としていた予想を遙かに早く達成しそうな雰囲気になってきた。
だが、この株価上昇は本当に慶賀すべきものなのか。背景を眺めてみると、そこに懸念も浮かぶ。
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
トランプ相場ではなく、債券バブルの崩壊
足元に限ってみれば、株価上昇のきっかけがトランプ当選であることは言うまでもない。トランプ氏が選挙中に掲げた@10年間で1兆ドル(約117兆円)規模のインフラ投資、A法人税の最高税率を35%から15%に引き下げ、所得税も同39.6%から33%に減税する――といった大規模な財政政策が景気を押し上げると期待されたためだ。
米経済は今、唯一の世界景気の機関車であり、その加熱は世界の株高を演出する。米景気上昇期待はドル高にもつながり、日本には円安ももたらして日経平均をさらに押し上げたという格好だ。
しかし、さらに底流へ目を凝らしてみると、別の動きが浮かぶ。「長く続いた債券バブルの崩壊」(日本株ヘッジファンド、ベイビュー・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、佐久間康郎・執行役員)である。2008年秋のリーマンショックで景気が急落すると、日米欧中は財政出動や利下げなどの金融緩和に打って出た。日本の本格的金融緩和は遅れたが、2013年春の黒田バズーカを号砲に、これまでにない量的質的緩和に踏み込んだ。
金利低下は債券価格の上昇であり、投資マネーはそのトレンドを目指して蕩々と流れ込んだ。ところが、その金利低下もここ2、3年、徐々に限界に近づいてきた。株価の変動幅が小さい銘柄に投資する最小分散型投資などが、市場の流行となったのはその1つの現れである。「金利低下が進みすぎ、儲けられなくなった債券投資資金の一部が、債券代替(債券に似た安定性のある)投資を目指して『最小分散型』に向かった」(佐久間氏)のである。
金融緩和→債券市場へ一段と資金流入→金利低下進行→債券代替投資という流れだ。トランプ当選以後の株価上昇は、世界で既に限界まで来ていた金利低下に耐えられなくなった債券マネーが、いよいよ本格的的に株式市場に流れ込み始めたというわけだ。
俯瞰して捉えれば、中央銀行の緩和政策の咎めとも言えそうだが、日本についてみれば、日銀の金融緩和がもたらす株価の歪みはさらに広がっているように思える。
ETFのTOPIX型買い入れ増が新たな歪みもたらす
例えば、日銀が質的緩和の一環で実施しているETF(上場投資信託)の買い入れ。2013年4月の量的質的緩和開始から1兆円(年間)の購入を始めた。これを2014年10月に3兆円に増やし、さらに2016年7月から6兆円に積み増した。
日経平均やTOPIX、JPX400という株価指数に連動するETFを購入するわけだが、結果として個別銘柄の株式を買うことになり、その株価を押し上げる効果を生んだ。
これを2016年9月末までは、日経平均連動型ETFを全体の約5割、TOPIX型を約4割といった比率で買っていたため、日経平均の組み入れ銘柄で、構成比率の高い企業ほど株価が上がりやすくなるという歪みが生じた。
このため10月からは、時価総額比で東京証券取引所1部銘柄を買い入れるTOPIX型を全体の約7割に増やし、日経平均型は約3割弱に落とした。買い入れ額が増えている上に、それが全銘柄に行き渡るようになったわけだ。
これが再び歪みをもたらすこととなった。特に普段、売買の少ない中小型株に、その影響が出た。下のランキングは、ETFの買い入れルールを変更する直前の2016年9月20日から1カ月間の株価上昇率を見たものだ。
株価上昇の原因に日銀の買いがあるのか…
ETF買い入れ方式変更以降の株価上昇率上位銘柄
順位 銘柄名 株価騰落率
1 ホクシン 73.4
2 ゲンキー 68.2
3 三栄建築設計 68.1
4 ソフトバンク・テクノロジー 61.1
5 古野電気 51.8
6 さが美 51.3
7 TDCソフトウェアエンジニアリ 50.6
8 本多通信工業 47.4
9 アデランス 45.8
10 ユアテック 43.8
11 蛇の目ミシン工業 40.1
12 巴川製紙所 40.0
13 東京機械製作所 37.5
14 日本鋳鉄管 36.6
15 薬王堂 33.7
注:9/20終値から10/28終値までの騰落率をみた。対象は時価総額500億円以下、東証1部上場企業
出所:ニッセイ基礎研究所の資料を基に本誌作成
新ルールに移行した9月末か10月初めに株価が急騰しているものが多い。例えば、1位のホクシンも10月初めから株価が急騰している。
9月下旬から一気に上昇したホクシンの株価推移
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/122600381/02.png
ただし、株価上昇に理由があればいい。しかし、業績も停滞し、当面復活の見通しもないままの企業でも株価が上昇しているとなると、首をかしげざるを得ない。例えば、9月20日から1カ月間で株価が約29%上昇したティアック。同社は2016年3月期まで4期連続の最終赤字。今期は205億円の売上高に対してわずか5000万円の最終黒字を見込んでいるが、中核の音響機器事業の復活感はなく、コスト削減でようやく浮上した格好だ。
最後は投資家にも影響していく
業績回復を伴わない株価上昇は、企業のガバナンスに影響を及ぼす。「経営に対する評価である株価が、改善もないままに上昇することになる」(ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジストの井手真吾氏)からだ。
当然これは投資家にも影響する。例えば、9月20日からの1カ月間で株価が9.7%上昇したミツミ電機。同社も2016年3月期までの5年の内、3期が最終赤字で、今2017年3月期も95億円の同赤字見込みとなっている。それでいて株価は2016年10月以降も上昇を続け、12月下旬には年初来高値を記録した。
業績不振の中、株価は上がるミツミ電機の株価推移
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/122600381/03.png
同社はミネベアと2017年1月末、株式交換で経営統合することで合意しているが、思わぬ株価上昇はそこに影響する。当然ながら、買収側のミネベア株主は交換比率で不利になる。
日銀の黒田東彦総裁は、12月の金融政策決定会合後の記者会見で「ETFの買い入れ額を減らすつもりはない」と言明した。株式市場の株価をどう評価すればいいのか。さらに難しくなっていく。
このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/122600381/?ST=print
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