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中国経済:景気指標の総点検(2016年冬季号)〜景気は持ち直し成長率に換算すれば6.9%を回復(ZUU online)
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/208.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 12 月 26 日 22:12:36: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

             中国経済:景気指標の総点検(2016年冬季号)〜景気は持ち直し成長率に換算すれば6.9%を回復(写真=Thinkstock/GettyImages)
 

中国経済:景気指標の総点検(2016年冬季号)〜景気は持ち直し成長率に換算すれば6.9%を回復
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161226-00000025-zuuonline-bus_all
ZUU online 12/26(月) 19:50配信


■最近の金融マーケット

ここ数ヵ月の金融市場を概観すると、中国人民銀行が基準金利の調整を見送り金融緩和環境を維持する中で、株価は戻り高値を試す展開、人民元は米ドルに対し下値余地を試す展開、住宅価格は最高値を更新する展開となっている。

まず、基準金利に焦点を当てると、中国人民銀行は昨年10月に貸出・預金の基準金利を引き下げて以降、今年は利上げも利下げも実施していない。今年初めには景気が下振れしたため市場では利下げ期待が高まったが、消費者物価が上昇率を高め、住宅価格が上昇の勢いを増す中で、基準金利は現在に到るまで横ばいである。

次に、株式市場に焦点を当てると、昨年前半に急騰した上海総合は6月12日をピークに急落、今年初めにも景気が下振れしたため再び急落した。その後、中国政府がインフラ投資を加速させたことで景気失速懸念は後退、1月28日をボトムに一進一退ながらも戻り高値を試す展開となっている。

他方、為替市場に目を転じると、昨年8月には人民元の米ドルに対する基準値が3日間で約4.5%下落(市場実勢の下落は約3%)、その後も下値余地を試す展開が続いている。

その背景には米利上げに伴う米ドルへの資金還流があり、中国から見れば資金流出がある。米国で景気指標が改善し利上げの可能性が高まれば米ドル全面高となって人民元も下落、米国で景気指標が悪化し米ドル高修正の局面を迎えれば人民元も小反発するという動きが繰り返された。

一方、住宅市場では今年7月に2014年4月に付けた前回高値を上回りその後も最高値更新が続いている。高騰の目立っていた深?市や上海市などではバブル懸念が高まり、中国政府はその退治に乗り出した。

■景気10指標の点検

◆供給面の3指標

【工業生産】

景気指標の中でGDPへの影響が最も大きいのが工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)である。ここもとの経済のサービス化で影響度が落ちたとはいえ、依然その有効性は高い。10-11月期の工業生産は前年同期比6.0%増(推定(*1))と、7-9月期の同6.0%増(推定)と同水準である。12月の動きは未反映ながらも、既に公表された工業生産を見る限り、10-12月期の成長率は前四半期と同程度となる可能性が高いことを示唆している。

【製造業PMI】

製造業の動向を示す代表指標が製造業PMI(購買担当者景気指数、中国国家統計局)である。これは製造業3000社の購買担当者へのアンケート調査を元に計算されるもので、通常は50%が拡張・収縮の分岐点とされる。ここもとは10月51.2%、11月51.7%と急回復、7-9月期の平均(50.2%)を大きく上回っており、製造業は10-12月期の成長率を押し上げる要因となりそうだ。但し、将来3ヵ月の予想を示す予想指数は55.5%と低下、今後にやや不安を残した。

【非製造業PMI】

一方、非製造業の動向を示す代表指標が非製造業PMI(商務活動指数、中国国家統計局)である。中国では製造業からサービス業への構造転換が進行中なため重要性が増している。製造業PMIと同様に50%が拡張・収縮の分岐点とされる。ここもとは10月54.0%、11月54.7%と上昇、7-9月期の平均(53.7%)を上回り、非製造業は10-12月期の成長率を押し上げる要因となりそうだ。また、同予想指数も60%台と高水準にある。

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(*1)中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、ニッセイ基礎研究所で中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
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◆需要面の3指標

【小売売上高】

個人消費の動きを示す代表指標が小売売上高である。1-11月期の小売売上高は前年同期比10.4%増と昨年通期の同10.7%増をやや下回っている。内訳を見ると、殆どの業種で昨年通期の伸びを下回ったが、自動車は伸びを高めた。

足元の10月は前年同月比10.0%増、11月は同10.8%増と、7-9月期の前年同期比10.5%増(推定)とほぼ同水準である。但し、インフレ率が上昇したため価格要因を除いた実質では10-11月期は前年同期比9.0%増(推定)と7-9月期の同9.9%増(推定)を下回り、個人消費は10-12月期の成長率を押し下げる要因となりそうだ。

【固定資産投資】

投資の動きを示す代表指標が固定資産投資(除く農家の投資)である。1-11月期の固定資産投資は前年同期比8.3%増と昨年通期の同10.0%増を大きく下回っている。内訳を見ると、製造業の伸びは引き続き鈍化したものの、インフラ関連や不動産業が伸びを高めた。足元の10-11月期は前年同期比8.7%増(推定)と7-9月期の同6.6%増(推定)を上回っており、投資は10-12月期の成長率を押し上げる要因となりそうだ。

【輸出】

世界の工場といわれる中国では輸出需要が生産動向を大きく左右する。1-11月期の輸出額(ドルベース)は前年同期比7.5%減と昨年通期の同2.9%減に続いて2年連続の前年割れとなっている。内訳を見ると、米国向けが同6.6%減、欧州EU向けも同4.4%減となるなど軒並み減少している。足元の10-11月期は前年同期比3.6%減と7-9月期の同6.7%減よりマイナス幅を縮めた。

しかし、輸入額も同2.8%増と7-9月期の同4.6%減からプラスに転じており、ネットした貿易黒字は減少傾向にある。純輸出は10-12月期の成長率を押し下げる要因となりそうだ。但し、輸出の先行指標には底打ちの兆しでてきている。

◆その他の重要な4指標

【電力消費量】

その他の指標では電力消費量が注目される。今年1-11月期は前年同期比5.0%増と昨年通期の同1.0%増から伸びが回復してきた。第2次産業は、昨年はゼロ%前後で一進一退だったが、今年に入り緩やかながら回復傾向が続いている。第3次産業も高い伸びを維持している。

【貨物輸送量】

貨物輸送量も重要な指標である。今年1-11月期は前年同期比4.8%増と昨年通期の同4.4%増を若干上回る伸びを示している。内訳を見ると、鉄道貨物は同1.8%減とマイナス幅を大幅に縮めたものの、貨物輸送量の4分の3を占める道路貨物が同5.7%増と昨年通期の伸びを0.7ポイント下回っており、水路貨物と航空貨物も昨年通期の伸びを下回る伸びに留まっている。

【工業生産者出荷価格】

景気の体温と言われる物価も重要な景気指標である。今年11月の工業生産者出荷価格は前年同月比3.3%上昇と約4年半に及ぶ下落に歯止めが掛かった。原油などの上昇を受けて生産財が急上昇したほか消費財も上昇に転じており、今後は消費者物価にも上昇圧力が及びそうだ。

【通貨供給量(M2)】

金融面から景気を見る代表指標としては通貨供給量(M2)が挙げられる。ここもとの動きを見ると、11月は前年同月比11.4%増と「13%前後」とされた2016年の政府見通しを大きく下回っている。しかし、融資サイドから見ると、投資に結び付くことの多い中長期融資は11月も同18.0%増と高い伸びを維持しており、景気への悪影響は限定的と思われる。

■総合指標の点検

◆李克強指数は急回復

まず、第2章で概観した景気指標のうち、電力消費量(工業)、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つを用いた「李克強指数(*2)」を確認して見る。鉄道貨物輸送量がマイナス幅を大幅に縮めたのを受けて、昨年秋を底に急回復してきた。貨物輸送手段の構造変化を勘案して、鉄道から道路に入れ替えた李克強指数(修正後)を見ても、今年2月を底に緩やかな回復傾向を示している。

◆成長率に換算すれば6.9%を回復

次に、第2章で概観した景気指標を用いて実質成長率を推計して見る。これは工業生産、製造業PMI、非製造業PMIの3つを説明変数としてニッセイ基礎研究所で開発した回帰モデルを用いて推計したものである。その結果は、今年2月の前年同月比6.2%増を底に、10月には同6.7%増、11月には同6.9%増と、ここもとの経済成長率は緩やかな回復傾向を示している。

◆景気評価点は「やや加速」に到達

最後に、第2章で概観した景気10指標を、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○=1点”、下向きであれば“×=0点”として集計した「景気評価点(*3)」を確認して見る。5点が上向き下向きの分岐点となる。ここもとの推移を見ると、今年初めに輸出が落ち込むと、3月には中国政府主導でインフラ投資を加速させて失速を回避、その後6月に民間投資が落ち込むと7月には「民間投資関連政策の更なる推進に関する通知」を発表して失速を回避した。そして、11月には「やや加速」の領域に到達することとなった。

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(*2)李克強指数は、李克強首相が遼寧省党委員会書記だった2007年、景気実態を表す統計として、電力消費量(工業)、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つを重視したことに由来する。加重割合は様々あるが、ここでは3指標を均等に加重している。
(*3)景気評価点に関しては「景気の動向を簡単に把握できないか?」年金ストラテジー (Vol.219) September 2014を参照 http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=41854?site=nli
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三尾幸吉郎(みお こうきちろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員
 

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