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貯金という底なし沼にハマった「富女子」OLの金銭感覚 オンナの収支報告書
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50476
2016.12.21 鈴木 涼美 文筆業 現代ビジネス
鈴木涼美さんが「オンナのオカネの使い方・稼ぎ方」をテーマに、ディープな人脈を取材する好評連載、本日待望の配信です! 今回は郵便貯金の預入限度額を超える貯金をしている「富女子」に密着します。彼女にとって「貯金」とは一体?
(バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/suzumisuzuki)
■満足を与えず不満足を与える
女がオカネを使うとき、当然そこには何かしらの不足が存在している。そこは男とさして変わらない。食べ物が不足してお腹減ったらパンを買うし、寒くなったらコート買って、美しくなければ化粧品ごっそり買って、楽しくなければカラオケ代払って、やることがなければ携帯ゲームに課金する。
これを体験的に深く理解している売り手は強い。洋服など顕著で、不足を補うために買ったスカートが、合う靴・合うトップス・合うベルトなど新しい不足を都合よく生み出しているわけだ。
以前、30歳過ぎのやり手のホストに冗談半分で高額を使わせるコツを聞いたところ、「満足を与えるんじゃなくて不満足を与えること」という名言を吐かれたことがあるが、これも本質的には似たようなことだろう。もっと優しくされたい、もっと好きになってほしい、もっと一緒にいたい、もっといい女だと思って欲しいと現状の不足を感じなければ、何百万なんていう札束が飛び交うことはないはずである。
仕事を稼ぐための手段と考えれば、今現在の不足を補う、もしくは近い将来の確実に迫ってくる不足に備えるために仕事をすることになる。
しかし、言うまでもなく今の女にとって仕事は稼ぐ手段としてのほかにも、意義や自己確立、社会貢献ややりがいといった側面があるので、不足のない女も仕事をしてオカネを稼いでいることになる。もう少し正確に近い言い方をすれば、不足を見つけていない/認識していない女もオカネを持つことになる。
そんな「不足の不足」は街を歩けば大抵はすぐ払拭される。何足持っていても今シーズンの靴、は持っていないかもしれないし、新しい基礎化粧品のラインに比べれば今使っているファンデーションではカバー力不足かもしれない。
なさそうに見える不足をあっという間に充足する術に、この世界は優れている。だから私は、満たされなさを埋めるようにホスクラに通ったり、整形に勤しんだり、ブランド品を買い漁ったりする女たちについてはなんとなく理解できるし、私もそのうちの1人であるように思う。
■自分の歳×万円貯める
そんな私にかなり仲の良かった友人で、レイさんという人がいる。彼女には、そうやって消費によって不足を埋める私たちにとってはエイリアン的なところがある。
私は大学院時代にバイト先の銀座のラウンジで彼女と知り合った。生真面目でで優しい彼女は当時の私の3歳年上で、実家ぐらしのOLだった。昼間はとある中規模の不動産会社に勤めており、週に3回程度、銀座まで自転車できてアルバイトをしている。
実家ぐらしだったら、不動産屋の仕事だけで生活には困らないような気もしたが、女というのがいくらでもオカネを浪費できる生き物である、というのはすでに私も実感していたので、特に不思議はなかった。小規模の店だったためにキャストの女の子たちはみんなプライベートでも遊ぶくらいには仲良がよく、私は特にレイさんとよく話した。
わりと有名な女子大を卒業した後、実家ぐらしでOL、週に3回は銀座でアルバイト。この肩書が想起させるものに比べて彼女はとても質素な人だった。
移動は会社へのバイト先へも常に自転車で、銀座の店では皆ここぞとばかりに普段着ないような派手目なワンピーズやドレスをオカネをかけて新調している中、レイさんは長いこと店に置いてあった新人用の貸し衣装を利用していた。
店が始まる前に何人かで申し合わせて買い物をしに行ったとしても彼女が服やアクセサリーを買うところは見たことがない。一度休みの日曜日に2人で六本木ヒルズに映画を観に行ったことがあるが、その時も夕食は外で食べず、映画を見てお茶を飲んでぶらぶらして別れた。
高収入の人というのもいれば低収入の人もおり、高収入高支出の人や低収入低支出の人はとてもわかりやすい。当然そのどちらでもなく、ただ単にケチであるとか、借金返済中であるとか、逆にアイフルまみれでも気にしない低収入高支出という人などもいる。レイさんのオカネの使い方について私は「何かオカネ貯めてるんですか?」と聞いたことがある。
「特に何ってことはないけど、貯金はしてる。基本的に、20歳過ぎてからは毎月自分の歳×(かける)万円貯めれたらいいかなって」と答えた彼女の貯金額はすでに郵便貯金の預入限度額を超えていた。彼女は極端な貯金魔ガールだった。
■高校卒業までに貯金が200万円
私は月島のマンションにある彼女の自宅に一度遊びに行ったことがある。予想通り、企業勤めの父親と専業主婦で以前は時々進研ゼミの採点の仕事をしてたという母親のもとでものすごくお金持ちでもないが特に不自由なく暮らしていた彼女は一人っ子で、家族の持ち家のマンションは3LDKのさり気ないものであった。
彼女の部屋はそれなりに化粧品や洋服が揃った、想像よりはずっと華やかなものであったが、彼女の貯金癖は小さいころからなのか、プリングルスの箱やほかの似たような筒状の入れ物を貯金箱代わりにしたものが4つほど机にあり、聞けば幼稚園や小学校の頃のお小遣いをためていたという。
彼女の家で、子どもは歳の数×千円のお年玉を毎年のお正月、18歳まで与えられていたという。5歳で5千円、10歳で1万円、といった具合に。彼女の歳の数貯金はその親のアイデアから着想を得たらしい。その他親族からもらったお小遣いやお年玉も基本的には貯金箱や母親に預けてためていたため、彼女は中学生に上る前に、個人的に50万円ほどの貯金を持っていた。
子どもの祝い金などを定期預金に入れて大学の学費や結婚資金として保管している家は少なくないので、それは別に驚かなかった。彼女の月々のお小遣いも、中学生で5千円、高校生で1万円という都内では平均的なものである。
高校時代から、彼女の平均以上の貯金癖は目立ちだす。月々のお小遣い1万円は普通の生活をしている分には不自由のないものである。
それに上乗せする形で彼女はアルバイトを始め、最初はアイスクリーム屋さん、高2に上がるとその他でも渋谷に本社を置くアンケート会社でのバイト、結婚式場、パチンコ屋などで働き、バイト収入は「1万円札はすべて貯金する」ことにした。月のお給料が5万6千円だった場合、5万円を貯金して6千円はお小遣いと合わせて遊びや買い物に使う。
その他に、時々短期で「割のいい」バイトとして、ギャルだった友人の仲介によって「あやしげなオジサン」との飲み会などにも参加し、1万円や3万円をもらった。それらも合わせると、受験期間にバイトを休んでいたにも関わらず、高校を卒業する時には幼少時の貯金とは別に自分の通帳にちょうど200万円貯金出来た。都市銀行につくったその口座は今でも200万円のまま保管している。
女子大に進学した後も、両親は学費の他に月に3万円をレイさんにくれていたという。自宅から大学に通っていた彼女は、銀座のキャバクラでアルバイトをしながら郵便貯金の口座をつくり、「月に歳の数万円」の貯金を始める。
キャバクラのバイトの給料は週に多くて5回、テスト期間など少ない時では2回に減らしていた。それで月に20〜30万円は稼いでいたため、貯金は無理なく続けられた。多めにチップをもらった月や、夏休み期間中、月契約でオカネをくれていたお客さんがいた時などは、歳の数だけ貯金しても随分高額な余剰が出た。そういったオカネは10万円単位で普段の貯金とは別の通帳に貯めていった。
■貯金できないストレス
月に3万円のお小遣いと、月に10万円程度はある貯金からもれたオカネで十分に遊びや買い物代を賄うことができたのはしかし、女子大生の頃までだった。
大学を卒業して不動産会社に就職してみると、月の手取りは諸々引かれて22万円程度。彼女の歳は23歳になろうとしていた。すでに800万円ほどの貯金をしていた彼女だが、それまでのルーティーンを壊されるのは強いストレスに感じた。
結局、学生時代にほぼ4年間勤めたキャバクラとはまた別の、兼業でも気兼ねなく働けるラウンジを探し、週に3回は副業としてアルバイトをするようになった。入社1年目の頃は昼の仕事に慣れないせいもあって銀座に出るときは毎回栄養ドリンクの類がかかせなかったが、わりとすぐ慣れた。
「趣味貯金とかいうとすごいやなやつみたいじゃない? そもそも昔からケチん坊だけど、べつに節約が好きとかじゃないよ」。
彼女とは、私が就職で店を辞めてからも、かなり頻繁に連絡をとっていたが、彼女が製薬会社のMRの彼と結婚し、引っ越してしまってからは年に一度連絡をとるかとらないか程度になってしまった。
結婚して転勤の多い旦那のために以前勤めていた会社は退職したが、いつも何かしらの仕事をしているようだった。最後に連絡をとった時、旦那の稼ぎで基本的には暮らし、何かのために彼女の稼ぎ分は貯金するかたちで夫婦生活はうまくいっていると言っていた。
■貯金という名の「おカネの使い方」
貯金の額は社会や個人の不安を表しているような物言いは陳腐なほどよく言われる。確かにこれだけ政治や経済情勢への不安が蓄積した社会では、消費や投資よりも貯蓄に人の関心が向かいがちなのはわかりやすい話だ。
しかしでは、私や他の当時のラウンジの同僚は不足があるからオカネを使い、レイさんは不安があるからオカネを貯めていたのだろうか。オカネを使わない女だったのだろうか。
そういった説明はなんとなく腑に落ちない。「趣味貯金」なんてやや冗談めいて言う彼女に不安に対する備えという概念がないわけはないだろうが、それ以上に彼女の貯金は私たちの消費とほとんど同じような雰囲気を纏っていたからだ。
プリングルスの貯金箱に始まり、「歳の数万円」とか「万券だけ貯金」「10万束集め」などその時々のブームに則りながら、彼女は貯金という名の「オカネの使い方」をしていた。
彼女はそのためには生活費を切り詰めるというよりも、無駄金を省くだけでは飽きたらずキャバクラバイトもダブルワークもやってのけた。そして誰かが10万円で化粧品をごっそり買うような感覚で10万円の預金額という満足を買っているように見える。
不足が女にオカネを使わせるのだとしたら、貯金額を買うといった行動は彼女のどういった不足を満たしていたのか。それはいくらでも解釈可能だが、ひとつ言えるのは愛や美容と同様、あるいはそれ以上に終わることのない不足であることは間違いない。
(バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/suzumisuzuki)
「十分満たされているのに、全然満たされていない」引き裂かれた欲望を抱え、「キラキラ」を探して生きる現代の女子たちを、鮮やかに描く。
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