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地方に眠るお宝を次々掘り当てた1人の金融マン japanの意味を知っていますか? 日本ではありません(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/759.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 12 月 16 日 09:48:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

              第36回「さっぽろホワイトイルミネーション」の会場前を歩く女性(2016年11月24日撮影)〔AFPBB News〕


地方に眠るお宝を次々掘り当てた1人の金融マン japanの意味を知っていますか? 日本ではありません
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48652
2016.12.16 船津 康史 JBpress


■「何もない」ことが地方の財産

 「灯台下暗し」という言葉があります。地方はまさに今、その状態です。地元にキラーコンテンツがあるのに、地元の人はそれがどれだけの価値があるのか気づかないことが多いようです。

 私は仕事柄、よく地方に行きます。そこで出会う地元の人たちは口を揃えて「ここには何にもないんですよ」と話します。でも、私は、「そうですね」とは言いません。

 「何にもないってことも、最高の財産の1つです!」と答えます。

 つい先日も北海道の十勝の広大な小麦畑で「ここは畑以外、何もねえ」と嘆く若者たちに1つの答えを見出した人を知っています。

 「ここにステージを作ってキッチンカーを入れたら、東京では絶対にないS級レストランができそうだなあ」――。

 彼らは、どこまでも見渡せる広大な小麦畑の真ん中にキッチンカーを入れて、1つだけテーブルを用意し、北海道の最高の食材で作った極上の料理を振る舞う、一晩一客のレストランを始めたのです。

 それから、どうなったと思いますか?

 なんと日本全国から予約の連絡が入り始めました。今では、そのレストランで食事をするためだけに、遠い場所から十勝の小麦畑を訪れるようになっています。

 1000エーカーの小麦畑の借景のもと一流食材で食事ができるそのレストランは、都会の一流レストランに勝るとも劣らない価値がある。私が、「何にもないってことも最高の財産の1つだ」というのはそういうことなのです。

 地方創生の名の下で、今、地方は様々な活性化策に取り組んでいます。しかしそこで出てくる策のほとんどが、東京や大阪などの都会で流行しているものの焼き直し的なアイデアばかりです。

 情報化が行き過ぎた結果でしょうか、一極集中の傾向はより強くなっているようです。

 各地の事業者の人たちも何かというと「東京で勝負してみたい」と言うのですが、そういう声を耳にするたび、「都会のようにごった煮≠フ中に入るのはもったいないことだ」と、ついたしなめてしまうのです。

 「正直に言って、田舎の人がいきなり都会で勝負しても埋もれてしまう可能性が高いと思うのです。それよりも、勝手知ったる地元で、きらりと輝くビジネスモデルを考えた方が、はるかに勝率は高まりますよ」

 毎回のようにそんなふうに言います。

 私は、地方だからこそ、いくらでも勝負のしようがあると思っています。なぜなら地方には都会にはない「宝」がたくさんあるからです。

■年収数千万円のエリート金融マンから全国の伝統工芸を訪ねるバックパッカーに

 私は今、フューチャーベンチャーキャピタルという企業で、主に地域ファンドの事業運営をしています。

 地域ファンドとは簡単に言うと、全国各地が特性を生かした地域経済の活性化を果たす目的で、地元の金融機関をはじめ様々な事業体や一般の方々から投資を募り、その集まった資金を有望な事業や起業を志す事業家に投資し、各事業が発展するサポートをする仕組みのことです。

 私たちは、投資先の事業が成長することでリターンを得るわけです。ただ、誤解を恐れずに言えば、私自身は「ファンドで儲ければいい」という発想にはあまり興味がありません。それよりも、地方経済を良くしたいという思いでこの仕事をしています。

 もちろんそこはビジネスですから、リターンの見込みがないものにお金をつぎ込むことはできません。

 しかし有望な事業でありながら、実績や担保がないことで金融機関から融資を受けられない人や、これから起業を志しつつもその資金に困っている人たちが地方各地にはたくさんいます。

 そういう有望な事業プランを持つ若者たちの起業のきっかけを作り、また新しい事業を始めたい地元企業にチャンスを提供する仕組みをファンドを通じて作りたいと思っています。

 本来、それは地域の金融機関の役割だったのですが、金融界全体が担保主義に走った結果、事業性評価という目利き能力を失い、リスクを取って新たな事業を支援し、育成することができなくなっています。

 地方経済にリスクマネーを供給する役割はファンドに託されている。その自覚をもって、この仕事をしているのです。

 なぜ、私がそれほどまでに地方経済活性化の事業に力を入れているのかと言うと、私自身が日本各地で培われている伝統工芸や、特産物を生み出す農業技術の素晴らしさと価値の高さを実感しているからです。

 日本の地方には長い歴史の中で育まれたモノづくりの技術、文化があります。その価値を見直し、生かすことで、本当の地方創生を実現することができる、ひいては日本全体の活力を取り戻せると信じているからなんです。

 私が日本の伝統工芸に着目するようになったのは、私が外資系投資銀行に勤務していた頃に遡ります。今から20年ほど前の話になりますが、私は大学を卒業して就職したメガバンクに10年勤務した後に、その外資系投資銀行に転職しました。

 都内の大規模商業施設やオフィスビル建設などの事業を担当し、その仕事の一環で、日本の上場企業のトップを海外にお連れして、欧米の投資家をご紹介するという機会が頻繁にありました。

 一緒に1週間から10日間にわたって海外に滞在し、毎日4、5社の機関投資家に向けて、日本の上場企業のIR活動のお手伝いをしていました。

 日本を代表するような企業のトップの訪問ですから、もちろん手土産もそれなりのものを用意していくわけですが、お土産に日本の伝統工芸品を贈ると、ことのほか相手に喜んでもらえるのです。

 私が見た限りでは、日本の伝統工芸品は、漆器でも陶器でも織物でも、ほとんどのものが喜ばれていました。その光景をそばで見たことで、日本のモノづくりが想像以上に海外でリスペクトされていることを知ったのです。私はそのことにかえって驚きました。

 しかも欧米の人たちはみなさん、こちらが驚くほどに日本の伝統工芸やアートに対する造詣が深く、知識も豊富です。浮世絵や漆を語らせたら、並みの日本人よりも詳しい人がざらにいるのです。

 片や日本人はどうでしょうか。伝統工芸品なんて古臭い、過去のものと、見向きもしなくなっているのが現状ですよね。

 エルメスだルイ・ヴィトンだと、舶来のブランドばかりをありがたがっています。このギャップは何なのかと、考えざるを得なかったのです。

 欧米には今もホンモノを見てその価値を評価できる人が健在です。しかし日本では、ものの価値を測る真贋というものが失われてしまったのではないかと思うようになりました。

 そもそも欧米の、特にフランスのブランドの中には、日本の文化や工芸の意匠に魅了されて立ち上がったものがたくさんあります。

 ルイ・ヴィトンのあの特殊なロゴのモノグラムは、日本の手裏剣や刀の鍔から来ていることはよく知られていることです。海外でこれだけ評価されている日本の伝統や文化の価値に気づかず、海外ブランドばかりに目を向ける日本の状況に疑問を感じるようになったのです。

 そのような経験を積み重ねるうちに、私は一度、日本の伝統工芸の価値をもっと知りたいと思うようになりました。そしてとうとう外資系投資銀行を飛び出し、バックパック一つで全国の伝統工芸士を巡る旅に出かけたのでした。

■「Japan」は「日本」。では「japan」は?

 といっても、闇雲に飛び出したわけではありません。もともと起業を志していました。何か自分の事業テーマが見つかったら独立したいと以前から思ってはいたのです。

 外資系金融に勤務していた時代には、そこそこ事業成績も残していたので、それなりの貯金もありました。日本の伝統工芸の価値をもっと知り、それを世界に広めたいという事業プランを頭に描いて会社を辞めることにしたのです。

 とはいえ、日本の伝統工芸など何も知りません。まずは日本の伝統工芸士を訪ねて、「どんなものがあるのか」「どんな人がやっているのか」を知ることから始めようと、たった1人で日本全国を周る旅を始めたのです。

 何の知識もなかった私は、行き先を決めるのもネットで「〇〇地方」+「伝統工芸」のキーワードで会社や工房を探し、そこにいきなり電話しては「お話をうかがえませんか?」とアポイントメントを取るという、我ながら無謀なやり方でした。

 でも、ほとんど断られることもなく、会ってもらえたのです。今思えば笑い話ですが、最初は外資系金融マンの名残で、スーツにアタッシュケースという出で立ちで訪ねていたのですが、見事にひかれましたね。

 ある日、「あんたねえ、そんな格好じゃ、まあそこに腰かけろや、とも言えないだろう?」と職人さんに言われたのをきっかけに、短パンにTシャツと、汚れてもいい格好で行くようになったのですが・・・。

 そうして会いに行くと、夜にはたいてい地元の職人さんや関係者の方々とお酒をご一緒します。多くの地域の方々と交流をさせていただきました。気づけば、日本全国を巡り、全国にたくさんの仲間ができていました。

 ちょっと話題が変わりますが、ここでみなさんに質問です。英語で「JAPAN」と言えば、日本国を意味しますよね。では「japan」と小文字になるとどんな意味になるかご存知ですか?

 これ、「漆」あるいは「漆器」という意味なんです。辞書を引いてみてください。

 また「麗(うるわし)の国、日本」という表現がされますが、この「うるわし」とは「漆(うるし)」から来ているとの説もあります。

 それが本当だとすると、日本は「漆の国」だということになります。漆は日本の代名詞、ということで、私はまず「漆」の里を中心に全国を周りました。

 漆塗りは、北は青森県の弘前から南は沖縄までありながら、それぞれの地方によって製法が違います。各地域の気候風土、用途が違うからです。

 漆ひとつとってみても各地にまったく別の技術が存在しているのです。他のジャンルの工芸を含めれば、日本には数限りなく、モノづくりの技術が育まれていることを実感しました。

 やがて漆器に限らず、全国の焼き物、織物、染物と、様々な伝統工芸の里を訪ねてみました。そうして全国の工芸の産地を巡ってみて感じたのは、やっぱり日本のモノづくりは素晴らしい、ということでした。

 日本では戦後、すっかり工業化が進み、やがて日本企業の中から多くの世界的な企業が生まれましたが、そのモノづくりの原点は、何百年もの歴史の中で培われてきた伝統工芸の技術、つまりは地方にあるのだと確信したのです。

 ところがそうした貴重な伝統工芸士たちの生活は恵まれたものではありません。全国の伝統工芸士の平均年収は一般サラリーマンよりもはるかに低い(収入のほとんどがごく限られた売り上げと助成金で賄われているのが実態です)。

 それもそのはず、まず伝統工芸品が売れていない。後継者もいない。そして一番悲しいのは、工芸士自身が自分の子供に継がせたくても継がせられなくなっていることでした。

 「自分の代で終わっていいんだ」と潔く語り、自分の子供にも「おまえはサラリーマンになれ」と、言っている状況を知りました。

 「このままでは、子供や孫たちに日本人のアイデンティティに関わる大切な財産が、技術という面で日本から失われてしまう。世界の人が日本の文化に触れようと思っても、博物館でしか見られないものになってしまうのではないか」という危機感が、私の胸の中でふつふつと湧き上がってきたのです。

 私たちの世代はGDP(国内総生産)世界第2位の経済大国で豊かさを享受しつつ育ってきました。しかしいまやGDPでは中国に抜かれました。さらに人口動態から見ても今後、日本の国力が衰退する方向に動くのは必至です。

 いずれインドや東南アジアの新興国にも抜かれることになるでしょう。そうなると、日本が長い歴史の中で培ってきた財産を失った将来の日本人は、どうなってしまうのか。何も生み出せない民族になってしまうのではないか。そんな不安を抱えてしまったのです。

 そうならないためにもこの国の貴重な伝統技術を残して、次の世代に渡してあげるのは、社会で中堅どころとして働いている自分たち世代の責任なのではないかと思うにいたったのです。

 商売になるか、ならないかは分かりませんでした。でも、そこに携わることで何かできるのではないか。日本の伝統工芸の価値を日本人に知ってもらい、世界に発信していくことで何かが生まれるのではないか。

 そのような思いに突き動かされるように起業を決意したのです。1年半を費やした、私の全国伝統工芸士巡りの旅も、そこでいったんピリオドを打つことになりました。

(つづく)  

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