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釧路空港
北海道の危機…鉄道の半分が維持困難、12の空港ひしめき赤字深刻、道民流出続く
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17406.html
2016.12.08 文=編集部 Business Journal
人口減、道内格差が広がる北海道は、起死回生の一手として「空港民営化」の実現に向けて取り組んでいる。東京五輪が開催される2020年までに、道内にある13空港(定期便が就航しているのは12空港)のうち7空港の一括民営化を目指すというものだ。玄関口である新千歳空港を中核に国内外、道内の路線のネットワークを強化して訪日外国人(インバウンド)を取り込み、経済の活性化を図る狙いがある。
事態が大きく動いたのは3月中旬だった。高橋はるみ道知事が首相官邸を訪れ、菅義偉官房長官と会談。その場で新千歳、函館、釧路、稚内の4空港の一括民営化の方向で一致した。8月になると、高橋知事がこの4空港に道や市が管理する旭川、帯広、女満別を加えた7空港を一括民営化する「北海道における空港運営戦略素案の推進」を発表した。
「20年までに、インバウンドを15年の倍に当たる4000万人に増やす目標を掲げている国の観光戦略にとって、北海道は重要な観光拠点です。道内の空港一括民営化は、北海道の要望でもあるが、国としても積極的に進めたいテーマ。両者の思惑が一致し、一気に政治主導で進むことになったのです」(北海道を取材するジャーナリスト)
業績が絶好調の新千歳空港をハブ空港として道内の路線網を拡充させることで、海外からの観光客を道北や道東に送り込み、新たな市場を開拓して経済を活性化させようというもの。道産物の輸出拡大や空港の収益体質を強化するという一石二鳥の狙いもある。
■進む道内格差
空港民営化の構想が出てきた背景には、北海道が抱えるさまざまな事情がある。その最たるものが、道内における地域格差だ。それは人口減に顕著に表れている。
15年国勢調査によると、道内人口は約538万人でピークだった1995年の569万人から31万人も減少した。札幌一極集中が進む一方で、道内179市町村の95%超に当たる171市町村で人口が減少した。若者の道外流出も止まらない。
国立社会保障・人口問題研究所のデータを基に北海道経済連合会がまとめた資料では、人口がもっとも多い札幌を含む道央圏でさえ、10年の340万人が40年には275万人に減ると推計している。高齢化の進行も深刻で、道央圏の高齢化率は15年の23.3%から40.3%へとアップするとみられている。
経済面をみてみると、北海道の道内総生産(14年度)は名目18兆4227億円(全国489兆6234億円)で2年連続のプラス。01年度の約20兆円から漸減傾向にあったが、13年度から持ち直した。経済成長率(実質)は全国を下回る年が多かったが、13年度は2.3%と全国の2.0%を上回った。14年度はマイナス0.3%(全国はマイナス1%)だった。1人当たり道民所得は258万3000円で、全国の286万8000円に比べ28万5000円低い。
道の月例経済報告の直近9月の景気動向をみると、個人消費、新車登録台数、住宅建設は持ち直し、観光も改善している。一方、輸出入は共に前年割れし、公共工事(10月)は減少。生産活動(鉱工業生産指数)は一進一退で、倒産件数(10月)は横ばいだ。
ポイントは雇用動向だ。月間の有効求人数は9万1257人。80カ月連続で前年を上回った。ところが、完全失業者数(7〜9月)は11万人で、前年同期と比べ2万人も増加している。完全失業率は3.9%と全国平均の3.1%と比べて高い。この十数年をみても、全国平均と並んだ年が2回あるだけで、残りはすべて上回っているのだ。かつての長期低迷状況に比べると改善が見受けられるものの、雇用を中心に懸念材料が残る。
また、総生産を地域別にみると、札幌圏を含む石狩振興局が全体の44%を占め、旭川を含む上川(8.6%)、室蘭、苫小牧を含む胆振(8.6%)と続く。人口と同様に、経済も札幌圏が中心の構造なのである。
こうしたなか、北海道旅客鉄道(JR北海道)は11月18日、「JR単独では維持困難な路線」10路線13区間を発表した。全営業区間の半分に当たる1237キロが対象。7路線9区間については、鉄道施設の一部を地元自治体が所有する「上下分離方式」などを軸に地元と協議する。残りは廃線としてバス転換を提案するという。上下分離方式の協議は、難航が予想されることから予断を許さない情勢だ。
鉄道の廃線や現状変更によって、道内における地域格差がますます進みかねない状況となっている。
■問題はどこが主体となるか
疲弊する道内の地域経済活性化には、もはや空港民営化という荒療治しか手がないのだろう。実は、肝心の道内各空港の利用状況、実 績にも大きなばらつきがある。各空港の実情を整理してみよう。
・各空港の乗降客数(数字は国土交通省空港の利用概況集計表=2015年数値)
【国管理】
新千歳:2046万人
函館:177万人
釧路:69万人
稚内:18万人
【市管理】
旭川:115万人
帯広:61万人
【道管理】
女満別:76万人
中標津:20万人
紋別:7万2000人
奥尻:1万1000人
利尻:3万8000人
【共用】
札幌(丘珠):18万人
北海道にこんなにたくさん空港があることを初めて知った人が多いのではないだろうか。これらのなかで、国際線も含め新千歳空港が断トツである。
滑走路使用料など航空関連のキャッシュフローでみると、黒字になっているのは新千歳だけで144億円。残りはいずれも赤字である。ただ、空港ビルはすべて黒字だ(北海道経済連合会の資料より)。
こうしてみると、20年までを目指す7空港の一括民営化は、新千歳をハブにした構想以外あり得ない。乗降客数、キャッシュフロー共に他空港との差が大きすぎるので、当面はその他6空港の赤字を新千歳がカバーしていくという構図になるだろう。最悪の場合、切り捨てられる空港が出てくるかもしれない。問題は、どういった事業主体が中核となって運営を行っていくかである。
「内外の路線拡充を図る一方で、収益力が劣る弱小空港のパワーアップが必要になるでしょう。新千歳の空港ビルを運営している第三セクターのトップは『国内外の企業と連合を組みたい』と意欲を示していますが、すんなりといくかどうかは不透明です。7月に民営化した仙台空港の運営会社に出資した大手私鉄グループや商社など、国内外の10社程度が関心を示しているとも報じられています。資金力だけでなく、複数空港を一括経営するマネジメント力が欠かせません。構想がうまくいくかどうかは、ひとえに事業主体の選定にかかっています」(前出ジャーナリスト)
さらにいえば、空港経営だけの問題ではない。せっかくインバウンドや国内各地からの観光客を取り込むことに成功しても、これまでのような空港からバスで周遊するといった観光モデルだけでは通用しないだろう。体験型、長期滞在型、医療関連ツアー、留学・研修ツアーなど、北海道の魅力をフルに活用したモデルの構築や受け入れ体制の整備も不可欠だ。
道内にはカジノ誘致に熱心な地域や、26年冬季五輪招致の動きもあるが、もっと斬新な発想をしなければ、いくら空港を民営化しても「道民が豊かになる」という楽観的なシナリオは描けない。
(文=編集部)
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