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タカシマヤタイムズスクエア(「Wikipedia」より/Gorgo)
ただのショッピングモール化する有名百貨店…ユニクロ、100円ショップまで進出で「終わりの始まり」
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17403.html
2016.12.08 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal
訪日外国人観光客の増加が止まらない。今年10月末、観光庁は2016年の訪日外国人観光客数が年間で初めて2000万人を突破したことを発表した。このまま推移すれば、通年で2400万人に達する見通しだ。
内需が停滞する中、日本政府は景気刺激策として急増する外国人観光客を起爆剤に定め、日本の観光立国化を推進してきた。規制緩和も手伝い、昨年には中国人観光客による“爆買い”が「ユーキャン新語・流行語大賞」に選ばれるほどの社会現象を巻き起こした。
爆買いを見込んだ百貨店や飲食店などは、外国人観光客専用のフロアや店舗を整備するなど、爆買いのさらなる取り込みを図った。しかし、中国人観光客の爆買いは一気に沈静化。その結果、過剰な設備投資は重荷になっている。
救世主だった爆買い中国人が去った後、百貨店は窮地に立たされている。老舗百貨店の多くは都心部に店舗を構えているため、多くの客を呼び寄せられなければ生き残っていくことはできない。百貨店は、どこも生き残りに必死だ。
背に腹は代えられない百貨店は、これまでの経営方針とはまったく異なる戦略をとり始めている。それが、郊外に店舗を持つカテゴリーキラー(特定の商品カテゴリーを豊富に取り揃え、低価格で販売する業態の小売店)を続々と入居させるというものだ。
広大な郊外型店舗で格安家具・インテリア雑貨などを販売するニトリは、15年4月に東京・銀座のプランタン銀座に進出して話題を振りまいた。その後、今年10月には上野のマルイにも出店を果たしている。
ニトリの都心百貨店への進出はとどまるところを知らない。12月1日には新宿タカシマヤタイムズスクエア店がオープンし、17年春には池袋の東武百貨店にも出店する。
■ショッピングモール化する都心の百貨店
百貨店が招き入れる“異端者”は、ニトリだけではない。ファストファッションの代名詞的存在のユニクロ、デフレ時代の申し子ともいえる100円ショップなど、老舗百貨店のカラーとは異なる業態が、近年になって続々と進出している。
百貨店が自身のブランド価値を落としてしまいかねないショップを次々と出店させるようになった背景には、何があるのだろうか。流通アナリストの渡辺広明氏は、こう分析する。
「ニトリやユニクロといった低価格を売りにしたショップが高級路線の百貨店に出店するようになった最大の理由は、なんといっても百貨店のマーチャンダイジング(MD)力が低下し、さらにそれを放置してきたからです。百貨店が小売業の主役だった1980年代までは、商品をどう陳列してどう宣伝するか、消費者にどう訴求していくか、といった戦略を百貨店側が綿密に練っていました。
そうしたMDによって、消費者は百貨店での買い物に刺激を受け、百貨店で買い物することに喜びを見いだしていたのです。しかし、出店テナントのリスクのない委託販売に依存したことなどにより、自社売場のMD力が落ちたことで百貨店の魅力は失われ、その後も効果的な方策を打つことを怠りました。
そして、売り上げを回復させようとするあまり、百貨店は世間で人気がある店を入居させるようになったのです。その結果、百貨店はもはや“都心にあるショッピングモール”という存在になりつつあります」(渡辺氏)
都心の百貨店の場合、その立地ゆえに売り場面積はどうしても小さくなる。当然、郊外の広いショッピングモールに品揃えでは勝つことはできない。しかし、ニトリやユニクロなど郊外のショッピングモールと代わり映えしないフロア構成でありながら、品揃えは悪いとなれば、今後も百貨店の売り上げが低下するのは明らかだ。
一方、ニトリやユニクロといった異端者が賃料の高い百貨店に出店するメリットはあるのだろうか?
「特に20代女性に顕著ですが、東京や大阪などの大都市では自動車を保有しないライフスタイルも浸透しています。そうした若者にとって、ニトリのような郊外店を中心に展開してきたショップは、まだなじみが薄い。ニトリは、そうした層を取り込むために都心の百貨店に出店しているのです。
いわば、都心の店舗はショールーム。近年、買い物はネット通販による売り上げが拡大していますが、それでも消費者は『実際に見て、触れる』という行為を大切にします。消費者が直接触れられる機会をつくる、それが都心の百貨店に進出する狙いでしょう」(同)
■今後の百貨店は旗艦店以外つぶれる?
そうなると、ニトリやユニクロのような異端者が百貨店に出店する現象は、今後も続くのだろうか?
「そもそも、百貨店の売り上げは91年がピークで、バブル崩壊とともに縮小が始まっていました。高齢化に伴い生産年齢人口も減少しており、今後はますます消費が減少していきます。そのため、百貨店の生き残りはさらにシビアになるでしょう。
ニトリやユニクロを出店させて巻き返しを狙っても、それは一時的なものでしかありません。根本的に、百貨店が魅力ある店づくりを徹底しない限り、売り上げが回復することはないでしょう。しかし、長年MD力の低下を放置してきた百貨店にそれを期待するのは、もはや難しいのが現実です」(同)
そうした厳しい現状を踏まえて、渡辺氏は「今後の百貨店は、旗艦店のみが生き残るだろう」と予想する。しかし、そうした旗艦店もサバイバルの末に淘汰されてしまう可能性も否定できない。今や、百貨店は日本国内だけが競争相手ではない。格安航空会社(LCC)の普及もあり、海外で買い物をすることも特別ではなくなりつつある。
ちょっとした日用品などはコンビニエンスストアで済ませ、特別なものは海外で買う。そんなライフスタイルに変わっていくこともあり得るのだ。仮に、より気軽に海外でのショッピングが楽しめるようになると、何も東京や大阪に店舗を構える必要はなくなる。アジアであれば香港や台湾、シンガポールが百貨店のライバルになっていくだろう。
実は、爆買いで日本経済を活気づけた中国人は、決していなくなったわけではない。訪日せずにネットで日本製品を購入するようになったのだ。そうした消費行動は「越境EC」と呼ばれるが、要するに、国の枠を超えたネット通販が百貨店を潤わせた爆買い中国人を奪ったというだけなのである。
日本人から見向きもされなくなり、爆買い中国人もつなぎとめられなかった百貨店に、生き残るすべはあるのだろうか。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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