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仏でルペン大統領誕生ならEU離脱から世界経済大混乱も
http://diamond.jp/articles/-/110231
2016年12月6日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■予想外だらけの世界政治 英EU離脱やトランプ氏当選
2016年は、世界政治の中で予想外のことが起こった年だ。英国のEU離脱=ブレグジットの決定、そして、まさかのトランプ米次期大統領の当選と考えていなかったことが発生した。特に、ほとんどの専門家が予想しなかったトランプ氏の当選は大きな影響を与え、世界のマネーフローや株式、金利、為替等の金融市場に大きな波紋を投げかけている。
ブレグジットの動向も無視できない。欧州の中でも長い民主主義の歴史を持つ英国が、欧州全体の安定と繁栄を目指すEUからの離脱を決めたことは、単一市場にアクセスするメリット以上に、移民排斥を求める有権者がいかに多いかを確認する重要な機会になった。離脱交渉の内容次第では、英国に続けとEU離脱を求める国が出始める可能性もある。
今後、大陸欧州では重要な政治イベントが続く。12月は先日行われたイタリアの国民投票とオーストリア大統領選のほか、2017年3月にはオランダで総選挙が実施され、4〜5月にはフランスの大統領選挙、そして9月にはドイツで総選挙が予定されている。
その中でも、当面、世界の投資家や政治・経済の専門家の注目を集めるのがフランス大統領選挙だ。足元では、中道・右派陣営のフィヨン元首相が、一部で有力視されていたジュペ元首相に圧勝したことに関心が集まっている。その一方で、極右政党である国民戦線のマリーヌ・ル・ペン党首への人気も根強く、最終的に、両候補の一騎打ちになるとの予想は多いようだ。
ルペン氏は強硬な反EU主義の考えの持ち主だ。もし、極右政党の党首が大統領に当選すれば、ドイツと並ぶ欧州の大国フランスのEU離脱=フレグジットが現実味を帯びてくる。それは今まで以上にEU崩壊の懸念を高め、世界経済にも計り知れないマイナスの影響が及ぶことが想定される。
■ポピュリズムが台頭する欧州の政治
世界各国の政治状況を見渡すと、多くの主要国で“ポピュリズム政治”が台頭している。それは、政治家が民衆の不満を解決するために、目先の満足感を高めるような主張を繰り広げ、人気を獲得しようとすることだ。米国の大統領選挙で反グローバリズム、米国第一を主張するトランプ氏が当選したのは、その顕著な例だ。
欧州でもポピュリズム政治が広がっている。今年6月の国民投票での英国のEU離脱決定は、単一市場へのアクセスという中長期的な利益以上に、移民排斥という足許の不満解消が優先された例だ。そして、イタリア、オーストリア、フランス、オランダ、ドイツ、フィンランド等、多くのEU加盟国で、自国の決定権を取り戻し、移民や難民を排除して自国民の利益を優先する右派の台頭が顕著だ。
12月以降、各国で重要な政治イベントが続く。イタリアの国民投票では憲法改正の是非が問われ、反対が賛成を大きく上回った。否決されたレンツィ首相は辞任を表明している。すでに、欧州懐疑主義政党の“五つ星運動”が地方選で勝利してきた中、イタリアの政治は不安定に推移し、銀行の不良債権処理や財政再建への懸念が高まりやすい状況が続くだろう。
また、オーストリアの大統領選挙では、極右政党である自由党候補のホーファー氏が当選するか否かに注目が集まっていた。もし当選すれば、EUで初めて、極右政党から国の指導者が誕生することになった。結局、ホーファー氏は当選しなかった。だが、自国の状況に応じて経済政策を進めることができなかったユーロ圏加盟国を中心に、自国優先の世論が強まりやすい状況は変わっていないだろう。オランダでも極右政党・自由党のウィルダース党首への支持率が上昇し、来年3月の総選挙で第1党に躍り出る可能性がある。メルケル政権下で景気回復を歩んだドイツでさえ、移民排斥を主張する右派政党“ドイツのための選択肢(AfD)”が地方選挙で勝利した。
つまるところ、EU全体の連帯感は着実に弱まっているのだ。
■注目されるフランスの政治事情
伝統的に、フランスは移民を受け入れることで経済基盤を整備してきた。第2次世界大戦後の1945年から1973年にかけては“黄金の30年”といわれる高成長が続いた。成長が続く中での労働者不足を補うため、フランス政府は移民の受け入れを進めた。その後、1973年のオイルショックによる不況時を受けて外国人労働者の帰国が奨励された時期を挟み、1981年に発足したミッテラン政権は外国人労働者を社会に統合することを重視した。こうして、フランス社会における移民の存在感は高まってきた。現在、全人口の10%が移民であり、人口の7%程度がイスラム教徒であるといわれている。
一転してリーマンショック後の経済環境の悪化を受けて、移民への反感が強まってきた。雇用が悪化する中、移民の多くが属する低所得層への社会福祉が手薄になったからだ。特に若年層(15〜24歳)の失業率は25%程度と高く、社会全体で閉塞感が広がっている。加えて過去1年半程度の間に大規模なテロ事件が3度発生するなど治安も悪化している。社会情勢が不安定化する中、社会党のオランド政権は事態を改善するために効果的な措置を進めることができていない。為政者への批判や不満を掬い取るようにして右派の政党が「自国優先、エリート政治との決別」など耳触りの良いポピュリズムを主張し、支持を拡大してきたことは無理もないだろう。
問題は、目先の不満解消を重視するポピュリズムが、中長期的な観点で、経済や社会の安定に必要な政策を打ち出せるとは限らないことだ。そして、既存の政治家への不信感が強いあまり、中長期的な観点での議論の重要性を有権者に理解してもらうことも容易ではない。その結果、フランス国内での欧州懐疑主義への傾倒が進みやすい。EU離脱が現実味を帯びてくると、EU全体の体制維持や世界経済の運営にも支障が出るだろう。
■悲観シナリオはまさかのルペン大統領の誕生
その意味において、フランス大統領選挙は世界の経済、金融市場に大きな影響を与えるイベントと考えるべきだ。2017年4月23日に実施される大統領選挙で過半数を獲得する候補が出ないと、上位2候補による決選投票が行われる。足許、中道・右派陣営のフィヨン元首相と極右政党である国民戦線のルペン党首の一騎打ちになるとの見方は多い。
そこで楽観的なシナリオを考えると、社会党、もしくは中道・右派陣営の候補者が当選するケースが考えられる。フィヨン元首相はロシアやシリアとの関係強化を重視しているようだ。そして、同氏は移民の受け入れにも否定的だ。
一方で、同氏は構造改革を重視し、特に、労働市場の改革を通して市場原理を活かすことを目指している。それは、中長期的なフランス経済の安定に重要だ。その展開を受け、ドイツの総選挙なども穏便な結果になると、いったんは世界の政治・経済情勢は安定に向かうだろう。米国の財政支出の支えもあり、来年半ば頃まで、先進国を中心に相応の景気回復が進む可能性もある。
悲観的なシナリオは、まさかのルペン大統領の誕生だ。それはフランスのEU離脱の可能性を高め、その他の欧州各国にも、反EU、自国優先の政治がドミノ倒しのように浸透するカタリスト=触媒になるだろう。一挙に、世界の政治情勢は不安定化するはずだ。加えて、トランプ政権下の米国が保護主義的な通商政策を加速させると、各国に保護主義が広がり国際的な貿易や投資が減り、世界経済は縮小均衡に向かわざるを得ない。その場合、先進国、新興国ともに経済は低迷し、生産能力が大幅に過剰になる恐れがある。
このシナリオを突き詰めて考えると、1920年代以降に進んだ“ブロック経済圏”のような現象が再発する可能性がある。状況がさらに悪化すると、1930年代の世界恐慌のような現象に直面し、世界の金融市場が大きく動揺するかもしれない。その意味で、今後の世界経済を占う最も重要なファクターは政治だ。
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