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老後にもらえる年金のことをもっと考えたほうがいい。年金の改正法案が通りつつあるが、若い世代の人たちの年金は、現役時代の何割くらいもらえるのだろうか(写真: KAORU / PIXTA)
若い世代が「マジでもらえる年金」はいくらか 「現役時の手取り」と比べてどれだけ落ちる?
http://toyokeizai.net/articles/-/147738
2016年12月02日 山崎 元 :経済評論家 東洋経済
気の早い向きは「トランプ相場」などと呼んでいるが、トランプ氏の米国大統領選挙当選以来、為替レートが円安に振れ、日米の株価が上昇した。投資家の中には、「一息ついたな」という気分の方が少なくないのではないか。
一方、筆者を含めてだが、マーケットを評する人々は、(1)ヒラリー当選を予想、(2)トランプが当選すると(保護主義の懸念などで)経済が混乱し円高になると予想、という二つの意見に賭けていた人が多く、唇が寒い思いをしている人が少なくないはずだ。
筆者は、たまたま前回の本連載がトランプ当選の直後だったので、「株式は『買い場』ではないか」という趣旨の原稿を書いて、荒れた唇にリップクリームを塗ることができたような気分でいるが、事前の予想方向が(1)と(2)であった事実は変わらない。
読者におかれては、「俺は、前から、トランプ当選と、株高・ドル高を予想していた」という立派な論客様がいらっしゃった場合には、大いに褒めてあげて欲しいが、今回、最も心に留めるべき教訓は、「いつものことだけど、専門家って、アテにならないな!」ということであるべきだ。
■「いいミ・レイ」!?「年金の日」の苦しい語呂合わせ
さて、11月30日(水曜日)が「年金の日」であったことをご存知だった読者はどれだけいるだろうか。
筆者は知らなかった。
厚労省は、「1130」を「いいみらい」と読む語呂合わせで、この日を年金の日と決めたようだ。「ミ・レイ」を「ミ・レー」、「ミ・レェー」、…、「ミ・ライ」と読んでいったのかも知れないが、「エビフリャァー」は当然「海老フライ」のことだ、と感じるような言語的寛容性がないと共感できない「脱力系以下」の語呂合わせではないか。
個人的には、桐谷美玲さんの記念日にでもするといいのではないかと思う訳なのだが、トランプ相場で精神的余裕ができたところで、年金の未来を考えておくことは悪くあるまい。
ちょうど今、国会では、年金の改正法案が通りつつある。
改正法案は、物価が下落しなくても、賃金が下落した場合に年金支給を減額する内容を含み、野党・民進党などは「年金カット法案」と呼んで批判しているようだが、もともと年金の原資は賃金なので、支給額と賃金との連動には違和感がない。
加えて、当面支給額をカットしない場合、現役世代の負担がより重くなる理屈で、このバランスを評価すること抜きに、支給額のカットだけに注目して批判しようとするのは、議論として不正確な政治的人気取りであって残念だ。加えて、有効な人気取りになるかどうかさえも怪しい。現役世代、特に若い世代で、公的年金に関する意味が分かる人は、民進党をますます嫌いになるだろう。
■「本当の年金手取り額」は現役世代の何パーセント?
さて、個人が老後を見据えた将来のプランニングを考える場合、年金は重要な意味を持つが、今回の改正法案以上に、今国会で内容的に意味があったのは、「所得代替率」に関する、長妻昭氏と塩崎恭久氏の新旧厚労大臣のやりとり(10月21日の衆議院厚生労働委員会)だった。
所得代替率とは、65歳における年金額が現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)の何%になるかを示すものだ(所得代替率についての厚労省の参考HPはこちら)。
長妻氏が、「所得代替率の計算にあって、分母(現役世代の所得)が税金・社会保険料を差し引いた手取り所得なのに、分子となる年金支給額が、これらを差し引いていない名目額なのはおかしくないか、と指摘したのに対して、塩崎氏は、確かにそうなっている旨を答えたのであった(編集部注:詳しくは再掲の衆議院厚生労働委員会での塩崎大臣の答弁を参照。塩崎大臣は長妻氏の提起に意味があることを認めながら、所得代替率の定義の仕方やこれまでの連続性などを勘案して、次期財政検証に向けて引き続き議論すべき課題とした)
2013年度の所得代替率は62.6%とされていたが、これを個人にとっての実質値である分子も分母も「手取り所得ベース」で計算すると、53.9%になるという。約14%のダウンであり、倍率は0.86倍だ。
推測するに、厚労省的には、これまでそういう数字で議論してきたので、今間違えたわけではない(=今の俺たちは悪くない)という理屈が立てばいいのだろう。
しかし、この役に立たない所得代替率で、「将来も(物事が想定通りに行くとだけど…)、所得代替率は50%を維持します。だから、年金は安心です」という説明を、「公的年金は、もちろん手取りで、現役世代の可処分所得の半分が確保できる(らしい…)」と漠然と考えて来たにちがいない多くの国民は、老後の資金計画を考え直す必要が出て来た。
さて、将来の公的年金がどの程度あてにできるかを検討する上での基礎資料は、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し・—平成26年財政検証結果-」(厚生労働省、平成26年6月3日)だ。
この財政検証では、将来の経済前提を「ケースA」から「ケースH」まで8ケース検討しており、「ケースA」〜「ケースE」までは「所得代替率は50%以上を維持できる」とされてきた。
ところが、先の2013年度の「インチキ」所得代替率を、手取りベースの計算で、つまり生活者にとっての「正味の話」として計算し直す“掛け目”を50%に当てはめると、これは(倍率が0.86だから)43%になってしまう。「安心!」とはとても言えない数字である。
それでは、厚労省の「平成26年財政検証」で最悪のケースであると同時に、それなりのリアリティがあり、国民としてはこの程度は想定すべきである「ケースH」ではどうなるかというと、「仮に、機械的に給付水準の調整を続けると、国民年金は2055年度に積立金がなくなり完全な賦課方式に移行。その後、保険料と国庫負担で賄うことのできる給付水準は、所得代替率35%〜37%程度」とされている。
■毎年「マジでもらえる年金額」はいくらなのか
「現役世代の35%〜37%では苦しいなあ」と思うかも知れないが、このさらに0.86倍くらいを想定しなければならないので、「現役世代の可処分所得の30.1%〜31.8%」が新たな想定値となる。
読者には、たとえば拙稿「毎年マジで貯めないとヤバイ金額はいくらか」を参考に、概算ではあっても「老後のために必要な貯蓄額」を計算してみてもらいたい。この際の年金額の想定として、厚生年金ベースの勤労者で公的年金の受け取りが20年以上先に想定される方には、せいぜい今後の可処分所得の3割程度で計算を行って欲しい。
個人の場合、企業年金(母体企業が補填する)や公的年金(政府が何とかしてくれる)のように必要な資金が足りなくなった場合に誰かが何とかしてくれることを期待できない。従って、計画には余裕を持たせるべきだし、試算を間違える可能性がある場合はなるべく保守的な方向に間違えるように心得ておかねばならない。
このようなことを言うと、個々人が貯蓄を増やして景気が悪くなるかも知れないが、全体の景気のために個人が自らのライフプランニングを過大なリスクに晒すべきだ、とは言えない訳で、いわゆる「合成の誤謬」を時には逆の方向から見てみることが大切だ。もちろん、デフレを脱却するための財政・金融政策(最近優先順位が変わったかも知れない)と、優しくて同時に効率的な分配政策を実現する必要があることは言うまでもない。
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