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米ニューヨークで開催された感謝祭のパレード(2016年11月24日撮影)〔AFPBB News〕
すでにバブル化したトランプ景気、いつ暴落? ドッド・フランク法廃棄に沸く金融業界だがリーマンの二の舞も
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48508
2016.11.30 堀田 佳男 JBpress
予想外のことなのか――。
ドナルド・トランプ次期大統領(以下トランプ)が誕生してから、金融市場は好況に沸いている。円相場は対ドルで113円まで円安が進み、米株式市場もダウ平均、ナスダック総合指数ともに過去最高値をつけた。
トランプが勝てばトランプショックが世界を覆い、不況に陥ると予想していた専門家の見立ては見事に外れた。ほとんどの人はトランプ勝利も予想できず、2度にわたって読みが外れたことになる。
そういう筆者も「ヒラリー勝利」を今春から予想し、外した1人である。
個人的なことになるが、スカパーのテレビ番組で9月、「ヒラリーが負けたら坊主になる」と宣言した。投開票日に同じ番組に出演する機会があり、筆者は本番中に有言実行。スタジオに来ていた床屋さんに坊主にしてもらった。
■トランプ当選後に株価急騰
それはともかく、金融市場の活況はどうみたらいいのか。来年の米経済はどうなるのか。
トランプの当選直後から、市場の活況は機関投資家による見切り発車的な売買によるものと言わざるを得ない。まだ政権発足前であり、実体経済が伴っていない。1月20日の就任後に反転する可能性がある。
ただトランプ政権になってからの米経済は「意外に悪くないかもしれない」との期待がある。
真っ先に指摘したいのが、ドッド・フランク法の廃棄である。ドッド・フランク法というのは米国がリーマンショック後、金融業界の暴走を食い止めるため、規制を強化するためにできた法律だ。
オバマ政権の遺産だけに、トランプは同法を廃棄すると宣言している。
金融関係者にとっては、もちろん規制が緩和される方が好ましい。手足を伸び伸びと自由に動かせる方が新たな金融商品が生まれやすくなり、市場の値動きも活発になる。連邦議会の上下両院ともに共和党が多数党になったことから、同法の廃棄は現実味を帯びている。
ただ実際のドッド・フランク法が成立した2010年7月以来、2300ページに及ぶ長大な法律はすでに「歯が抜けた状態」になっている。
オバマ大統領にしてみると、規制を強めて大手金融機関に好き勝手にさせないとの意図があったはずだが、金融業界の実態はいまやリーマンショック前と同じような形相を呈してさえいる。
ニューヨークの米大手金融機関のファンド運用マネジャーが現状を説明してくれた。
「ドッド・フランク法は、金融業界に大量のレンガが投げつけられたような衝撃がありました。山ほどの規制が降り注いできたからです。しかしそれで金融機関は衰退しましたか?」
「5年以上が経ち、リーマンショック以前よりも肥大化し、強大になりました。もう潰せない状態です」
■ドッド・フランク法廃止に沸き立つ金融業界
というのも、ドッド・フランク法は理念的には規制で業界を縛りつける内容だが、法律の細部が複雑なため施行から数年経っても規制が及ばなかった部分があった。その間に金融業界は政治力を使って巧みに規制をかわしてきたというのだ。
そうした中で、トランプはドッド・フランク法を廃棄しようというのだ。目指すものは金融規制緩和と減税であり、1980年代に経済成長を遂げたロナルド・レーガン政権時代を踏襲するものだ。
当選後、トランプのウエブサイトには選挙中と同じ規制緩和の文言が踊っていた。
「ドッド・フランク法を新しい政策に置き換えて、経済成長を促し、雇用を拡大していく」
過去1年半のトランプの遊説内容と同じで、新しい政策の詳細には言及がないが、同法を廃棄するとのニュースに米金融界が期待しないわけがない。前述のファンド運用マネジャーが述べる。
「ドッド・フランク法の規制遵守には少なからずコストがかかった。だがそれがなくなれば必然的に金融機関の収益は上がるし、仕事はしやすくなる」
トランプの同法廃棄の公約は、短期的に金融機関だけでなく市場を活気づかせる結果になっている。
ブッシュ政権時代、規制を緩めて金融機関の思うままにビジネスをさせたことでリーマンショックを引き起こし、社会格差を拡大させた教訓は決して忘れるべきではないだろう。
経済面でのさらなる注目点はやはり環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)である。
安倍晋三首相が日本時間11月18日、ニューヨークでトランプと会談してTPPの重要性を説いたはずだが、米国側のTPP離脱はトランプの本気度を示すものであり、ドッド・フランク法廃棄と同じでぶれが見られない。
■すでに屍となったTPP
トランプが笑顔で安倍氏の話に耳を傾けたとしても、自身の離脱決意は揺らがない。トランプの中で、TPPはすでに死んでいる。
12カ国で交わす条約より二国間貿易交渉の方が交渉しやすいはずである。それがトランプ流だ。トランプは自叙伝『トランプ自伝:アメリカを変える男』で書いている。
「一番望ましいのは優位に立って取引(交渉)することだ。もっと良いのは、相手が必要とするものを持つこと。そして1番良いのは、相手がこれなしでは困るというものを持つことだ。この優位性をリバレッジと呼ぶ」
安倍氏との会談で、トランプはいかに日本と優位に交渉を進めるかを算段して臨んだはずだ。ただ安倍氏の方からわざわざニューヨークにやって来て、「会いたい」と言った時点で、トランプに交渉の主導権は握られたと思って間違いない。
トランプは安倍氏からTPPの話を聞きはしたが、廃棄を取りやめるつもりなど最初からないのだ。
今後米国がTPPに参加するとしたら、日本に法外な要求をつきつけてくる時だ。「それが呑めなければTPPはやはり廃棄だ」という論理で交渉してくるだろう。安倍氏にトランプを上回る交渉力があるだろうか。
ただトランプは最初から保護主義政策を信奉する人物ではなかった。昨年から何度も米国で取材する中で、筆者はトランプが「私は基本的には自由貿易主義者だ」との言葉を聞いている。かつては自由貿易を信じていたのだ。
周囲のアドバイザーの忠告に耳を傾けて、保護主義へ傾いていったと思われる。選挙目的だけでなく、いまは米国にとって保護主義が得策との結論に達したのだ。
トランプに影響を与えた物の筆頭がウィルバー・ロス氏だ。親日派としても知られ、ニューヨークの「ジャパン・ソサエティー」という団体の会長も務めている。現在78歳だが、トランプ政権の商務長官として名前が挙がっている。
彼も以前は自由貿易論者だった。いつしか北米自由貿易協定(NAFTA)に反対し、TPPを含めた自由貿易に反対するようになる。
日本の新聞の記事にロス氏は自由貿易主義者という記述があった。誤りである。
■保護主義で世界貿易は減少へ
首都ワシントンにあるシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のギャリー・ハウバウアー上席研究員によれば、「ロス氏とトランプ氏は貿易政策では同じ考え方を共有している。ただロス氏の方がより強い保護貿易主義者だ」ということだ。
さらに貿易交渉の米側代表となる通商代表(USTR)には、ダニエル・ディミッコ氏の起用が有力視されている。ノースカロライナ州シャーロット市に本社を置く世界最大の電炉製鉄メーカーであるニューコア社の会長だ。
トランプには選挙中から貿易政策の相談役としてそばについていた。現在は政権移行チームの一員である。
ディミッコ氏ももともと自由貿易論者だったが、対中国には厳格な規制をかけ、米企業の利益が最優先されるべきとの立場に変わっている。
トランプの周囲にはいま、メキシコ国境の壁だけでなく、保護主義という壁を巡らせる顧問やアドバイザーがついている。
保護主義が続けば、中長期的には貿易総量が減り、インフレ率が上がり、経済活動が鈍化するという流れになる宿命にも思える。
金融市場がトランプ景気で活況を見せるのはいまだけなのかもしれない。
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