http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/384.html
Tweet |
年金にはほとんど知られていない、驚くべき事実がある(写真: チータン / PIXTA)
年金の支給開始年齢は「70歳以上」で十分だ まずは高齢者が働ける環境作りを
http://toyokeizai.net/articles/-/142666
2016年11月06日 ビル・エモット :英『エコノミスト』元編集長 東洋経済
先進諸国が国民の利益に最もかなう措置を講じるならば、公的年金の支給開始年齢を70歳以上に引き上げるべきだ。実際には、大半の先進国の支給開始時期がこの年齢を下回っている。
現在、年金の支給開始時期は少しずつ後ろ倒しされているが、70歳以上とするにはまだ数十年間はかかりそうだ。結局、欧米諸国はいびつな財政や政治的な不和に悩まされ続けることになるだろう。
本来、少子高齢化には気候変動と同等の対応が求められる。解決を先延ばしにすればするほど、そのツケが高まるため、将来の世代のために問題を放置してはならないのだ。
フランスでは1970年、男性労働者の平均的な退職年齢が67歳と、当時の男性の平均寿命とほぼ同年齢だった。だが現在、同国での平均退職年齢は60歳弱に下がっている。公的な定年は65歳だが、実際にはもっと早くから公的年金を受け取るようになっているのだ。一方で男性の平均寿命は83歳近くにまで上昇している。
■世界初の年金は70歳からだった
フランスは現在、年間でGDP(国内総生産)の14%に相当する額を公的年金に費やしている。同比率はイタリアでは16%近くにも達する。これはOECD(経済協力開発機構)加盟国で最高だ。日本やドイツ、ギリシャやポーランドなど、同比率が10%を超すOECD加盟国は13カ国に及ぶ。
1889年に世界初の公的年金制度を創設したドイツ帝国(当時)宰相のビスマルクは、支給開始年齢を70歳と定めた。当時の人々は、同制度の恩恵を受ける人数や期間が将来的にも限られると想定していたはずだ。
しかし現在のイタリア人は61〜62歳で退職し、年金を数十年間にわたって受け取る。このままいけば、就業期間と受給期間とがほぼ同程度になる可能性すらある。
今後、先進国の65歳以上の人口比率は5分の1に達し、最終的には3分の1にまで上昇するとみられている。このまま現行制度が続けば、年金支給額は公的支出の中でさらに突出していくだろう。奇跡的な景気回復でも起こらないかぎり、政府債務の削減はますます困難になる。
先進諸国は定年を段階的に引き上げているが、労働組合や年金生活者団体が激しく抵抗している。ドイツ政府は2014年、労組の圧力に屈して一部の手工業者の年金支給開始年齢を実質的に引き下げた。同国はユーロ諸国に逆のことを指導しているにもかかわらずだ。
年金制度をめぐっては“神話”がある。年金支給を遅らせるため高齢者に労働参加を認めれば、失業率が高まるというものだ。しかしこの理屈は、世の中の仕事量が限定的という「労働塊の誤謬」に基づいており、間違った考え方だ。
現実的には労働者や消費者、納税者の数が増えれば、経済は活性化し、雇用も増える。定年の引き上げは雇用も創出するのである。
筆者は8月にスイスで開かれた世界人口統計高齢化問題のフォーラムで取りまとめ役を務めた。会合では、われわれは人口動態予測に関する豊富な知識を有するが、問題解決に向けた足並みは十分にそろっていないとの結論に達した。
■企業は就業期間の抜本的見直しを
年金制度改革が道半ばにある責任は政府にもあるが、特に企業側の責任が大きい。現行では企業の給与体系は高齢層に手厚く、合理化する際にはまず高齢者から解雇しようとする傾向が強い。高齢者が長く働ける環境整備を企業が怠っているのだ。
2008年の経済危機から回復がもたついている根底には、こうした不都合な現実に先進諸国が目を背けてきた事情がある。公的支出を今後も定年退職者に大量かつ長期的に振り向けるような国家には、破産リスクが生じて当然である。今、先進諸国の政府や企業、個人にとって喫緊の課題は、企業における就業期間のあり方を抜本的に見直すことだ。
(週刊東洋経済11月5日号)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民115掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。