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11月4日、個人消費が盛り上がりを欠く中、販売最前線での「新旧交代」が鮮明になってきた。写真はドンキホーテ。都内で2014年5月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
小売業界「弱肉強食」 スーパー、百貨店跡に居抜きでドンキ、ニトリ進出
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/11/post-6197.php
2016年11月5日(土)21時21分 ニューズウィーク
個人消費が盛り上がりを欠く中、販売最前線での「新旧交代」が鮮明になってきた。不振にあえぐ総合スーパー(GMS)や百貨店などが大量の閉店や売り場縮小を進める一方、それを「千載一隅のチャンス」として閉鎖店舗を引き継いで新規出店したり、売り場面積を拡大させる企業も目立つ。こうした企業は多様な場所に出店できる柔軟な店舗スタイルを持ち、移り変わりの早い消費者ニーズに対応できることが強みとなっている。
<広がる利用者の需要に対応>
10月に上野マルイに続き12月には新宿「タカシマヤタイムズスクエア」、17年春には東武百貨店池袋店──。これまで郊外の路面店での出店が中心だったニトリホールディングス <9843.T>が、都市部への出店を加速している。
上野マルイの8階フロア全体に広がるニトリの売り場。丸井グループ <8252.T>は若者向けファッションが売りというイメージが強いが、現在の利用者は20―60歳まで幅広く、30歳代以上が80%を占めているという。
「テナントを決める際には利用者の要望を聞く」(担当者)のが丸井の基本方針で、利用者ニーズは「ファッション偏重ではなく、(様々に)広がっている」という。それに合致したテナントとして、ニトリの進出が決まった。 ニトリの都心進出は、2015年4月のプランタン銀座への出店が皮切りとなった。 似鳥昭雄会長兼CEO(最高経営責任者)は「売れなくても良い、おしゃれな店を作ろうと思った」とその理由を明かす。実際には想定以上の集客があり「百貨店などいろいろな物件から出店の声が掛かった」という。
<出店コストは半分以下も>
今中間期、J.フロント リテイリング <3086.T>や三越伊勢丹ホールディングス <3099.T>など大手百貨店各社は軒並み通期業績見通しの下方修正に踏み切った。訪日外国人(インバウンド)の需要が想定以上に弱まったうえ、百貨店の主要顧客だった中間層の需要の低迷が続いているためだ。
Jフロントの山本良一社長は「百貨店は売上収益と経費の両面で抜本的な構造改革が急務」と危機感を持つ。非効率部分の面積圧縮、不動産賃貸への転換も選択肢としながら「集客力、収益力を伴った魅力ある売り場づくりを進める」と宣言。非効率部分の代表例として、百貨店のメーン事業だった婦人服の売り場を挙げ、他業態への賃貸も含めて効率化を進める意向を示している。
「居抜き物件の再生の相談が引きも切らずやってきて、それに追われて大わらわな状況」と語るのは、ドンキホーテホールディングス <7532.T>の大原孝治社長。GMSなどの大量閉店が続く現状を「千載一遇のチャンス」と言い切る。 家電量販店もGMSも店舗網縮小の傾向にあり、拡大基調にある業態が限られている。特に新規出店需要の少ない郊外では、ドンキへの出店要請が多いという。同社の16年6月期の新規出店は40店舗と過去最多だったが、このうち34店舗が既存店舗をそのまま活用する「居抜き物件」。17年6月期についても「80%程度は居抜きになる」との見通しを示す。
小売店舗は一定周期で改装投資が必要となるが不振店舗ではそれがままならず、店舗の老朽化がさらなる客離れを引き起こすなど、悪循環に陥ってしまう。一方、出店場所を探す企業にとっては、「居抜き」は出店コストの抑制につながる。両者にとってメリットが大きい。
ドンキによると「物件規模やロケーションで異なるが、居抜きの場合、新規出店に比べて出店コストは半分かそれ以下で済む。さらには、新築に比べて賃料も20―30%安いことが多い」(高橋光夫専務・CFO)という。また、同社には「標準店舗」という概念がないため、店舗規模の大小問わず対応できる点も強みになっている。
<新旧業態の交代、一気に進む可能性も>
1日に大手百貨店が公表した10月売上高速報によると、中国の大型連休「国慶節」があったにもかかわらず4社そろって前年割れとなった。百貨店は、郊外店だけでなく、昨年まで収益を支えていた都心店舗も苦境に立たされている。
百貨店の売上高はピーク時から35%減と縮小しているにもかかわらず、売り場面積は15%程度しか減っていない。足元の逆風について、百貨店協会関係者は「リーマンショック級の低迷もあり得る」と話しており、継続が困難になる店舗がさらに増えることも予想される。ユニーやイトーヨーカ堂が閉店計画を打ち出しているGMS業界も、店舗閉鎖の打ち止め感は出ておらず、残る店舗の回復シナリオは描き切れていない。
消費低迷の直撃で衰弱しつつある伝統的な業態が縮小し、身の軽い新興勢力がとってかわる流通業界は、まさに「弱肉強食」の状況にある。小売り業界関係者のなかには、足元の動きを「業界の潮目の変わり目」と話す向きもあり、一気に新旧業態の交代が進む可能性も指摘されている。
(清水律子 編集:北松克朗)
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