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所有者不明の土地激増、深刻な社会問題に…私的所有禁止や強制的利用権設定で成功例も
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17065.html
2016.11.02 文=米山秀隆/富士通総研主席研究員 Business Journal
■所有者不明の土地が増加
所有者がわからない土地が全国で増えている。登記簿などの台帳でも所有者が判明しない、あるいは判明してもただちに連絡がつかないような土地である。国土交通省が2015年度に行った調査によれば、ほとんどの都道府県が過去5年以内に、「所有者の把握の難しい土地が存在したことがある」と回答した。
人口減少が進むなか、相続時に登記されない物件が増えていることによる。引継ぎ手が遠方に住み、資産価値が低いなどの理由でそのまま放置し、相続を重ねていった場合、所有者にたどり着くことが難しくなる。また近年は、相続放棄も増えている。
こうした場合、土地に残された建物を除却したり、次の利用に供したりするためには、不在者財産管理人制度や相続財産管理人制度などを活用する必要がある。しかし、こうした措置を取るには手間とコストがかかるため、容易には行えない。日本の場合、土地所有概念は「絶対的所有権」で、土地の利用、処分のいずれについても所有者個人の自由とされる。所有権の強さが、所有者が管理の意思を失った場合や所有者がわからなくなった場合でも、容易に手を出せない状況を生み、問題解決を困難にしている。
■なぜ日本で所有権が強いのか
そもそも日本において土地の私的所有権が認められたのは、明治の地租改正時(1873年)である。明治政府は、私的所有権を認めた上、土地に対して課税することで財政基盤の確立を狙った。それ以前の農村における土地制度としては、所有は村落に属し、15歳以上の男子に配分され、一定年齢(50歳)になると村落に返還するなどの仕組みが各地で見られた。
地租改正で認められた土地所有権は、民法(1896年制定)で明文化された。民法に明記された土地所有権の概念は、絶対的所有権の考え方であったが、これには歴史的な経緯がある。
民法の制定に当たっては、ドイツ民法第一草案がモデルとされた。これはローマ法学者によってつくられたもので、結局はドイツにおいて日の目をみなかったものである。「ローマ法型」の土地所有権は絶対的、排他的であり、その絶対性は土地の自由な利用、処分に結びつく。これに対して、「ゲルマン法型」の土地所有権は、都市の秩序を守るために、所有権の絶対性が限定される「相対的所有権」の概念である。相対的所有権は、その性格から社会的所有権とも呼ばれる。
欧州では、18世紀から19世紀末にかけて絶対的所有権の考え方がとられていたが、19世紀末から20世紀にかけて相対的所有権の考え方に改められた。絶対的所有権では所有が最優先されるのに対して、相対的所有権では利用が最優先される。相対的所有権の下では、土地所有は公共の福祉に役立つものでなければならず、土地所有者がそのように使用する義務を負うとされる。
■久高島における土地総有制
日本のなかで、地租改正以前の仕組みがいまだ続いている地域がある。沖縄県南城市に属する久高島である(人口約270人)。久高島では土地は、村落(字)のものという「総有制」をとっている。それを明文化したものが、久高島土地憲章(1988年)である。土地は、国有地などの一部を除き、字の総有に属し、利用権の享受資格は、先祖代々字民として認められた者および配偶者にある。字外出身の者は3年間定住し、土地管理委員会と字会の承認を得られれば利用できる。利用がなくなった場合は、字に返還しなければならない。
地目によってより具体的に定められている。屋敷地(宅地)は、土地使用貸借契約から2年以内に着工しなければ、返還しなければならない。子孫不明、家族祭祀の途絶えた場合は、土地管理委員会が回収する。農地は、5年以上放棄したものは返還しなければならない。事業用地は、利用が済み次第、原状に復して返還しなければならない。
久高島では、私的所有を認めなかったことが適切な管理につながり、耕作放棄や所有者不明の土地発生を防ぐ効果を生んでいる。
■現代における総有的管理 所有と利用の分離
強い私的所有権が認められた現代の仕組みを、久高島のような仕組みに戻すことはもちろんできない。しかし、人口減少下で今後、放置、放棄されたり最終的に所有者不明になったりする土地がますます増加する可能性を考えれば、総有的な管理の仕組みを導入する必要性は高い。
具体的には、放置、放棄される土地を第三者が共同管理する仕組みを導入することが考えられる。所有権には手を付けず、利用の共同化を進めるものである。すなわち、放置、放棄された土地、あるいは将来的にそうなる可能性が高い土地の利用権を集約して、次の利用につなげていく。
一例としては、高松市高松丸亀町商店街における再開発が挙げられる(2006年竣工)。細分化された所有権に対し、定期借地権を用いながら利用権をまちづくり会社に集約し、再開発を進めた。地権者自身では再開発を進めることは困難で、いずれ商店街は衰退し、放置、放棄された可能性もあるが、それをまちづくり会社による利用の共同化で克服したと考えることができる。久高島における土地管理委員会と字会が、まちづくり会社に当たる。
また、農地では、所有権を残したまま遊休地を貸す農地バンク(農地中間管理機構)の仕組みで、利用が進められようとしている。さらに、遊休地に対して、一定の手続きの上で、都道府県知事が強制的に利用権を設定できる仕組みも設けられている。
一方、所有と利用を分離するものではないが、良好な居住環境を創出するため、使われなくなった土地の権利関係を積極的に調整している例もある。NPO法人つるおかランド・バンク(山形県鶴岡市)は、危険な空き家の除却を進め、跡地と隣地を組み合わせて区画整理を行い、狭隘道路の拡幅を実現する活動を行っている。所有者はNPOに低価格で売却し、隣地所有者は低価格で譲渡してもらう代わり、道路拡幅のため土地の一部を寄付する。こうしたスキームで、放っておけば活用可能性がなかった空き地の活用につなげている。
現代における総有的管理ともいえる所有と利用の分離や、所有権の円滑な移転は、それを推進する強力な主体を必要とする。放置、放棄され最終的に所有者不明になるような土地を出さず、より望ましい利用を実現するためには、それを進めるための主体が不可欠であり、所有権が強い日本でも取り組み次第では効果を発揮できることを示している。今後は、こうした取り組みをよりいっそう推進していくことが求められる。
(文=米山秀隆/富士通総研主席研究員)
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