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マイナス金利で日本は「空き家だらけ」になる 日本は構造改革できず再びバブルがはじける(東洋経済)
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/185.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 01 日 09:58:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

             マイナス金利でアパートなどの住宅建築はバブル状態だ(写真:HAKU / PIXTA)


マイナス金利で日本は「空き家だらけ」になる 日本は構造改革できず再びバブルがはじける
http://toyokeizai.net/articles/-/142717
2016年11月01日 中原 圭介 :経営コンサルタント、経済アナリスト 東洋経済


「もっとも予測が当たる経済アナリスト」と言われ、欧州債務危機や2014年の消費増税先送り、さらには原油価格の急落を予見するなど、数々の予測的中でその実績を示してきた中原圭介氏。今回、新刊『中原圭介の経済はこう動く〔2017年版〕』(東洋経済新報社)の刊行に際して、経済を予測するポイントや今後の国内外の経済動向、マーケットの見方や注意点などについて、金融アナリストとして活躍中の三井智映子氏が3回にわたってインタビュー。第3回(最終回)は、日本経済について展望する。

■アベノミクスは、最初から理論自体破たんしていた

三井:日本で2013年以降、新しい経済政策が始まってほぼ4年が経とうとしていますが、中原さんはアベノミクスの未来について、始まった段階からかなり正確に予測をされていましたね。

中原:金融緩和に頼る円安によって、実質賃金が下がり消費が冷え込むことは、普通に因果関係を考えれば、誰にでもわかることだと思います。ところが、なぜか政権のブレーンとなっている学者にはそのことがわからないから、いまだに不思議で仕方がないのですよ。実は、民主党政権時代にも日本銀行に緩和圧力をかける動きがあったので、自民党政権が誕生する前にはそういった趣旨の本は書きましたが、あまり売れ行きがよくありませんでした(笑)。

三井:なぜアベノミクスのような「誤った政策」が行われてしまったのでしょうか?私のまわりにも生活が苦しくなったという人たちが増えています。

中原:日本で浅はかな経済実験が行われてしまったのは、ポール・クルーグマンの「インフレ期待」という理論が「原因」と「結果」を完全に取り違えているにもかかわらず、彼を支持する学者たちが為政者にその理論を見事に信じ込ませてしまったからでしょう。

経済の本質からすれば、「物価が上がることによって、景気が良くなったり生活が豊かになったりする」のではありません。「経済が成長する結果として、物価が上がる」というものでなければならないのです。もちろん、「経済が成長する結果として、物価が下がる」というケースもあるので、アベノミクスの理論自体が、始める前から破綻していたわけです。

三井:先日、中原さんが野田一夫先生(日本総研名誉会長)と対談している記事を拝見いたしました。野田先生ってすごい方なんですね。「天下の孫正義さん」が師と仰いでいるなんて、私は全然知らなかったです。

話が少し脱線しましたが、自然科学の世界から見ると、経済学の世界では合理的でない学説や理論が多いと……そんなことをお二人でお話しされていましたよね。

中原:三井さんの「下調べ力」には頭が下がります(笑)。経済学の世界では、「鶏が先か、卵が先か」の議論が結論の出ないまま成り立ってしまうことが多いのですが、実際の経済は決してそのようには動いていかないものです。経済にとって本当に重要なのは、「どちらが先になるのか」ということなのです。すなわち、実質賃金の上昇よりもインフレが先に来ては、決していけないということです。

科学の世界では、決して「原因」と「結果」がひっくり返ることはありません。経済学の世界で「物価が上がれば、経済が良くなる」などと主張している学者たちは、私から見ると、科学の世界で「引力が働いているから、りんごが落下する」というべき現象を、「りんごが落下するから、引力が働いている」といっているのと同じようなものなのです。

■「理論的主柱」クルーグマン教授も自説の誤りを認めた

三井:政府はアベノミクスの成果として、有効求人倍率が高いこと、税収が増えたこと、倒産件数の減少などを強調していますが、中原さんの本を読んでいるとすべてデタラメなことがわかりますね。

中原:そのとおり、全部デタラメな主張です。これらについては近年の拙書でも数回取り上げたことがありますが、2015年の正確な統計データが出てきているので、検証の意味も含めて、もう1度だけ今回の拙書で説明しています。私たちはこれらの数字がどのような背景によってつくられているのか、しっかりと認識する必要があるでしょう。

三井:最近のクルーグマン(米プリンストン大学教授)は、アベノミクスに対する情報発信をしなくなったようですが……。

中原:私はアベノミクスが始まって以来、その理論的支柱であるクルーグマンの理論が間違っているといろいろなところで指摘してきましたが、そのクルーグマンはすでに自説の誤りを認めるようになっています。2015年の秋頃には「日銀の金融政策は失敗するかもしれない」と発言を修正したのに加え、2016年に入ってからは「金融政策ではほとんど効果が認められない」と自説を否定するような発言にまで踏み込んでいます。詰まるところ、日本における経済実験は失敗したのだと判断しているのです。

三井:結局は、中原さんの提案していた地道な経済政策のほうが正しかったということですね。

中原:正しいかどうかは別にして、私が一貫して主張してきたのは、「日本は地道に成長戦略を進めていきながら、米国の景気回復と世界的なエネルギー価格の下落を待つべきである」というものでした。「辛抱しながら3年〜5年くらい成長戦略を進めていくうちに、米国の景気回復と世界的なエネルギー価格の下落によって、日本人の実質賃金は上がり、人々の暮らし向きも少しは良くなるだろう」と予測していたからです。

今の日本に求められているのは、かつてドイツのシュレーダー首相が行ったような構造改革、すなわち成長戦略です。2000年代前半のドイツは社会保障が手厚いゆえに失業率が10%台に達し、「欧州の病人」と呼ばれていました。そのドイツが1強と呼ばれるほどの経済強国になれたのは、シュレーダー首相が2002年〜2005年にかけて国民の反対を押し切って構造改革を断行し、ドイツの生産性を引き上げることができたからなのです。そして今や、メルケル首相はその功績の恩恵を最大限に享受しているというわけです。

■なぜドイツのような構造改革が進まないのか?

三井:ドイツのようなお手本があるのに、なぜ日本では構造改革が進まないのですか?

中原:それは、少なくとも小泉首相以降の歴代首相には成長戦略をやる気がなかったからです。成長戦略の成果が目に見えて現れるには、早くて5年、普通は10年の年月を要するといわれています。政治にとって優先されるのは、成果が出るのが後になる政策ではなくて、目先の選挙で投票してもらえる政策を実行することなのです。だから、歴代の首相は成長戦略において総花的な政策を掲げて賛成しているようなそぶりを見せてきましたが、結局のところ真剣に取り組もうとはしなかったわけなのです。

三井:中原さんはこれまでずっと実質的な所得の推移がいちばん大事だとおっしゃってきましたが、今後は実質賃金が上昇すると見ているそうですね。

中原:2016年に入ってドル円相場が円高基調に転換することによって、輸入物価も下げに転じるようになってきています。すなわち、国民の生活水準を決定づける実質賃金が押し上げられる環境が徐々に高まっているといえるのです。実際のところ、円高基調が進行するにつれて、実質賃金が上昇に転じ始めています。2016年8月までの統計では、実質賃金は7カ月連続の上昇をしていて、アベノミクスが始まって以来、初めての良い環境になってきているのです。

しかしそこで注意すべきは、政府が「アベノミクスの成果で、実質賃金が上がり始めた」と支離滅裂な見解を言い始めることです。アベノミクスが敵としている円高こそが、円安によって失われた家計の可処分所得を取り返しているのであり、消費を少しは押し上げる呼び水になるということを、そろそろ政府や日銀も認識する必要があるのではないでしょうか。

三井:日銀の金融政策はやはり限界に達しているのでしょうか?

中原:黒田総裁は心のうちでは「もうダメだ」と思っているはずです。日銀は大幅な金融政策の見直しによって、国債の購入を3%程度減らす予定とはいえ、それでも今のペースで量的緩和の継続をするのは、せいぜいあと2年が限界だろうと思われます。

そのうえ、マイナス金利の副作用がじわじわと日本経済をむしばみ始めています。銀行の収益が利ザヤの縮小により悪化するのは当然として、運用が困難な状況に陥ることで年金制度が危機に陥ろうとしています。ただでさえ国民には年金不安があるというのに、運用の不振により年金不安はいっそう高まり、それは日本人の貯蓄性向をより高める結果になっているのです。おまけに、マイナス金利に伴う超低金利の進行は、投資マネーを必要以上に株式や不動産などに向かわせ、それらの需給関係をゆがめることにもつながっています。不健全な需要が資産価格をつり上げた後、供給過多が明らかになるにしたがい、最終的には価格の長期低迷が避けられなくなるからです。

■マイナス金利は「愚かな金融政策」

三井:黒田総裁がマイナス金利の主な効果として貸家の増加を挙げているのを聞いて、私も「それは違う」と思ったのですが、やっぱりその感覚は間違っていませんよね?

中原:間違っていません。所有する土地に貸家を建てて相続税の評価額を下げるという節税法はよく知られていますが、2015年1月に相続税の増税がなされたことに加え、日銀のマイナス金利政策で借金を容易にできるようになったため、貸家の建設に拍車がかかっています。すでに全国で820万戸の空き家があり、その半数以上は貸家となっているのです。人口減少社会が到来した日本では、ただでさえ今後も空き家が増えていくというのに、今のようなペースで貸家の供給が進むことになれば、さらに空き家が増えて家賃が大幅に下がることになるでしょう。将来の需要と供給のバランスを考えると、アパート・マンションの建設ペースは明らかにバブルの状況にあるといえるわけです。

三井:つまり、黒田総裁は「副作用」を「効果」と偽っているのですね。

中原:そのとおりです。マイナス金利は経済全体で見れば明らかに副作用のほうが多く、愚かな金融政策というほかありません。現代の経済システムは、金利が必ずプラスになるという前提で構築されているはずです。その証左として、マイナス金利はまったく想定されていなかったためか、まだ8カ月が過ぎたばかりだというのに、すでに銀行や年金、市場などに多大な損失を与え始めているのです。これからは数々の副作用が相互に作用し合って、経済全体をいっそう危ない方向へと導いてしまうのではないか、非常に心配しているところです。

三井:黒田総裁は玉砕も覚悟のうえということですか?

中原:いいえ。黒田総裁は玉砕前に任期満了となります。どこかで量的緩和とマイナス金利を止めなければならないわけですが、それは黒田総裁が辞めた後に、新しい総裁が決断することになるのではないでしょうか。

三井:最後に、マーケットのお話を少しお伺いしたいと思います。中原さんは「2016年版予測」では、FRB(米連邦準備理事会)の利上げをきっかけに円高トレンドに転換するだろうと述べられていましたが、まさしくそのとおりになりましたね。

中原:円相場を予測するうえで重要なのは、さまざまな要因を俯瞰したうえで総合的に判断することだと考えていました。日米の金利差拡大という要因にフォーカスし円安が続くと予想するのは、あまりに視野が狭く偏った判断であり、相場を動かす海外投資家の行動パターンや歴史的な見地を軽視していると思ったのです(連載コラム「円安終焉へのカウントダウンが始まった」(http://toyokeizai.net/articles/-/96061 2015年12月14日)、「やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる」(http://toyokeizai.net/articles/-/98453 同12月30日)を参照)。

それに加えて、私自身が若い頃に欧米の金融マンとともに為替市場で切磋琢磨していた経験から、海外の投資家や投機筋がどういう思考パターンを持っているのか、おおよそわかるという強みもあるのかもしれません。いずれにしても、2016年は2012年と同じように、円相場のトレンド転換が非常に読みやすかったと思います。

■海外の投機筋は「次のチャンス」を待っている

三井:1ドル100円〜105円がターゲットになるだろうと述べられていましたが、そのレンジもドンピシャでしたね。

中原:100円〜105円というレンジは、あくまで海外投資家がターゲット・プライスにする目安を述べたわけですが、運よく当たったというところでしょうか。2016年に入って円高の傾向が鮮明になるに従い、海外の投機筋の多くは円相場のターゲット・プライスを100円〜105円に設定するようになっていました。実際にこのレンジで利益確定をした海外の投機筋が多いということは、シカゴのマーカンタイル取引所(CME)の先物の推移を見ても、明らかです。

三井:次の展開はどうなるでしょうか?

中原:今のところ、海外の投機筋は100円より先の円買いを進めようとする気配を見せていませんが、じっくりとチャンスを待っているのは間違いないでしょう。株価の予測も含め、今後の展開や心構えについては、拙書をご覧いただければ、ご納得いただけると思います。
 

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コメント
 
1. 2016年11月01日 13:38:26 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3090]

相変らずデマばかりだが

>私が一貫して主張してきたのは、「日本は地道に成長戦略を進めていきながら、米国の景気回復と世界的なエネルギー価格の下落を待つべきである」というものでした。「辛抱しながら3年〜5年くらい成長戦略を進めていくうちに、米国の景気回復と世界的なエネルギー価格の下落によって、日本人の実質賃金は上がり、人々の暮らし向きも少しは良くなるだろう」

国民や企業に、その辛抱ができないから、雇用が空洞化して、ブラック企業が蔓延し

政権がくるくる変わったのだが、

その程度のことも理解できないらしい

>アベノミクスは、最初から理論自体破たん
>「理論的主柱」クルーグマン教授も自説の誤りを認めた
>2016年に入ってからは「金融政策ではほとんど効果が認められない」と自説を否定

まだ、こんなデマも書いているのか

クルーグマンが言っているのは、海外要因の大幅な悪化でデフレ圧力が強まり過ぎ

通常の金融政策と財政政策が完全に不足しているということ

つまり、緩和や構造改革だけでなく、財政拡張のアベノミクスも足りないということだ

http://ch.nicovideo.jp/niconicoffee/blomaga/ar997582
(クルーグマン教授) 4点を申し上げたく存じます。

第1は、「我々はいま、経済的な弱さの蔓延した世界 the world of pervasive economic weakness の中にいる」ということです。多くの面で、我々はみな日本になってしまったのです we are all Japan now 。これが、日本も含め、みんなにとって政策を難しいものにしています。

第2は、「主要経済大国 major economies どうしの結びつきが強まっている」ということです。従来の経済学上の議論が提起してきた以上にということです。私がそう主張しますのは、主として資本移動 capital flows という面からであります。これについてお話しするのは非常に大事なことです。

第3は、今ここで特に懸案となっていることかとも思いますが、「非常に大胆かつ非伝統的な金融政策 monetary policy を通じてさえ、目標を達成することが難しく思われるようになった」ということです。黒田さん Kuroda-san もここにおられるのですから、我々がこれについて話さねばならないのは明らかであります。

第4がなにかと申しますと、「金融政策は財政政策 fiscal policies の助けを必要とし、できればその他の諸政策の助けも必要とする。しかし、間違いなく財政面で必要とするのであり、反対方向へと動いている財政政策と格闘する必要はまったくない」ということです。この点は、ただ日本だけの問題ということではなくて、いまや、きわめて全世界的な問題なのであります。

では、これら4点について敷衍させていただき、そして、そこから何が言えるのかということを、二つ三つ、お話しさせていただきたいと思います。

日本以外の主要経済大国が「日本化 Japanification 」しているとも称される、この〔経済の〕弱さというのは、――このような単語が使われているのは不幸なことではありますが、いまはとりあえず有用なものとしまして――きわめて重大であります。

ユーロ圏はいま大いに、1998年、1999年ごろの日本のように見えているのであります。経済の基礎条件 fundamentals 〔経済指標〕が似ているのです。労働年齢の人口は縮小しつつあります。投資のけん引役となる技術革新 Technological drivers of investment は、強力であるようには思われません。ただひたすら、弱さがずっと続いているように思われるのです。

欧州中央銀行は、非常に賢明な人物によって運営され、非常な効力を持っているのではありますけれども、インフレ目標を達成することができずにいます。

欧州経済が改善されたようにみえる時期がくることもあるのですが、その状況というのはまさに…。成長というのが…。ますます「長期的停滞 the secular stagnation 」という概念そのものに見えるようになってきているのです。マネーがジャブジャブ〔金融緩和的〕なのに弱さが続いているのですから persistent weakness despite very easy money 。

アメリカ合衆国はマシに思われますし、ずっとうまくやってきました。とはいっても、それもいろいろな比較の中に置いて見なくてはなりません。雇用の増加は良好でしたが、生産量の伸びは大したものではありません。

我々〔米国〕へも弱さが入り込みつつあるのだという、いろいろな兆候があるのです。インフレは依然として目標値以下ですし、賃金も大して伸びはしてません。ということは、我々〔米国〕も絶好調とはとても言えないのです。その原因はこのすぐあとに説明いたします。よその国の問題によって我々の足が引っ張られるであろうと考えられる、一つの理由があるのです。

そして、さまざまな新興市場は、大いに問題を抱えています。とりわけ最大の新興市場がそうなのです。つまりあなた方のお隣の国です。中国は暴発寸前であると言われ…。ここ何年ものあいだ、調整が大きな問題となるであろうこと、非常に高い投資…の経済を支え続けることはできないであろうということが、周知のことでありました。彼らは、いまだこれに対処する方策を見いだしてはいません。中国の政策はそうとうに危なっかしいもの erratic に思われます。いま起きつつあることと併せて考えると、それはよい兆候ではないのです。

主要経済大国どうしの相互依存 interdependence は、私の意見では、極めて大きなものです。通常は、私やその他〔の経済学者〕の見解というのは、「相互依存性は限定的なものである。なぜなら、こんにちでさえ、国際的な取引の流量というのはそれほど大きくないからだ」というものです。今日でさえ、主要経済大国のそれぞれは、GDPのほんの数%を他国へと輸出しているにすぎないのです。ですが、投資家たちの認識 perception が「弱さがこれからも続きそうだ」という方へ傾くならば、そこからの影響はずっと大きなものとなるのです。

もしも、ユーロ圏の諸問題が、いまだけのものではなく、非常に長期間にわたるものになりそうだと考えられるようになったならば、ユーロ圏の金利はきわめて低くなります。長期債さえもです。いま現在、ドイツの十年国債の利率は約0.2%です。

これが何を意味するのかというと、どの国であれ、その経済が比較的に〔他国よりは〕強いとみなされたならば、その国は大量の資本の流入の受け手となりがちなのであり、それによって通貨は押し上げられるということです。そして通貨高は、その国の競争力を弱くして、〔経済の弱さという〕問題を分かち合うことになってしまうのです。

ドルが猛烈に上昇したのはご存知のことと思います。さほど好ましからざる経済状況にある国でさえ、自国が他国からの資本の流入の受け手となっていることや、財政拡大〔景気拡大〕の努力 efforts to expand や、…掘り崩されていることを目の当たりにしているかもしれないのです。

ですから、我々の知るとおり、黒田氏があらゆる手を尽くされているにもかかわらず、日本円が上昇したことは――それは日本の視点からは非常に不幸な現象なのですけれども――、他の主要経済大国の弱さによって引き起こされたことなのです。

中国には特別な問題があります。大きな困難を抱えているのです。中国は〔世界経済の〕強さの源泉の一つであるとみなされてきた一方で、つい最近までは、通貨を安く抑える操作をしているということで我々の非難――正しい非難だったと思いますが――の的となってきました。ところが今や、中国は巨額の資本流出に直面しており、通貨を〔安くするためではなく逆に〕支えるために介入しています。2015年の資本逃避は約1兆ドルにも上ったと我々は推測しています。

中国は莫大な準備金を保有してはいますが、莫大と無限大は違います。どういう意味かというと、人民元の下落ということが現実味のある見通しとなり、そうなれば我々みんなの生活に困難が降り掛かってくるということです。このように、相互依存性のすべてがここにあるのです。

金融政策というのが、ほとんどの国で、「不本意ながら唯一の可能な手段 the only game in town 」となってしまっています。財政政策は政治のせいで麻痺してしまっているから、というのが彼らの口癖です。

ここ日本では、さほどそういうことはないのですが、それでもやはり、「3本の矢〔金融政策、財政政策、成長戦略〕」のうち圧倒的に最大のものは、これまでのところは金融政策でした。黒田氏はこの重責の大部分を遂行なさいました。

我々が目の当たりにしつつあるのは、金融政策の限界です。非伝統的な手法を試みるとき、効果はだんだんと小さくなり困難なものとなるように思われる、という議論もできるのです。

マイナス金利についてですが、これが可能であると判明したのは注目すべきことです。私はまさしく、これは正しい動きであったと考えますが、しかし、これをさらに推し進めてゆくことは非常に難しいのです。マイナス金利の影響は限定的なものであることが明らかになりつつあるからです。

他の国にも目を向けてみましょう。ヨーロッパにも非常に有能で本質的なバンカー〔マリオ・ドラギ〕がいるのですが、にもかからずECB〔欧州中央銀行〕は牽引力を失いつつあるように思われます。ここ日本でも、私よりもみなさんがご存知の通り、インフレ期待は後退しつつあるように思われます。賃金上昇も、あるべき数値より低いのです。

我々は、世界的な弱さへの対処の試みとなるべき、最大のテコ principal lever たる政策が、我々が希望していたほどの効力を持っていなかったことを目の当たりにしつつあるのです。それどころか、ひょっとしたら、このところ発揮しているように見えた効果さえも実は持っていないのかもしれないということを目の当たりにしているのです。

では財政政策についてです。

過去7年間に我々が目にしたことのすべてが、財政政策は有効であり続けたことを示しています。それも、こうした状況のなかではとりわけ有効なのです。これを採用するのは非常に難しいことです。数年間は不良債権を抱えることになり、政治的な対立があり、ヨーロッパは国ごとに分断されており、アメリカは政党間の分断があり…。それでも、財政政策は有効であり、目下の世界的な状況こそはまさに、諸国の経済が本当に、本当に財政の支援を必要としているときなのです。

財政による支援よりも、長期的な予算問題を優先すべし、という考えは、今となっては極めて見当違いなものであったように私には思われます。私が申し上げておりますのは、言うまでもなく、消費税のことであります。

これら全てのことがらから、2つのことを言うことができます。

〔その一つ目は、〕私が構造改革 structural reform について何も申し上げなかったことにお気づきかと存じます。私が構造改革に反対であるからというわけではありません。そうではないのですが、需要を押し上げる boosting demand という最重要課題 critical issue からはだいぶ的を外れたものと考えられるからなのです。

ある種の構造改革は民間投資に拍車をかけることもあるかもしれません。それはよいのですが、多くの場合はそこに重点があるわけではないのです。

また他の種類のいろいろな改革、つまりアベノミクスですが、将来の労働力を拡大することは、経済が直面している人口動態的な逆風を相殺する助けにはなります。

ですから、そうしたことの全ては良いことなのですが、私がたいへんに心配しているのは、構造改革の話は、ときに、第一に差し迫った問題に対処しないための口実になることがあるということです。第一に差し迫った問題とは、十分な需要、デフレや低インフレとの戦い、不十分なインフレとの戦いといった、金融政策にかかわるものなのです。

しかし、私が申し上げましたように、それ〔金融政策〕には限界があるのですから、財政政策の面で、この差し迫った必要に、いままでよりももっと焦点を当てる必要があるのです。

そして最後の一点となりますが、これは非常に大事な点です。なにかと申しますと、この状況下では「リスクが非対称である the risks are asymmetric 」ということを理解するのがきわめて重要である、と論じさせていただきたいのです。

私が悲観的すぎるだけであって、いろんなことがうまくいって、需要はもっと強くなり、自然に回復する、ということだってありえなくはありません。〔しかしその反対に、〕私が描写したよりもさらに事態が悪化するということだってありえなくはないのです。中国が爆発的な崩壊をするとか、ただ単純に需要が私のかなり陰気な予測よりもさらに弱くなる、とかいったふうにです。

この2つの状況〔良い方か悪い方か〕では、運命 consequenses はまったく異なるものとなってしまいます。もし世界経済が成長を始めてインフレ率が上昇したならば、我々は何をすべきかわかっています。黒田氏も、イエレン氏も、ドラギ氏も、それに対処する手段を持っていることでしょう。なんら問題はありません。〔しかしその反対に、〕もし世界がもっと弱いことが明らかになったならば、我々は深刻なトラブルに陥っていることになります。というのも、そのとき我々は有効な手段を持っていないからです。

これが何を意味するかというと、もし間違うならば、財政拡大的〔景気拡大的〕すぎた more expansionary という方へ間違うことが非常に大事だということです。

私の古くからの同僚であるラリー・サマーズがよくしていた議論があるのですが、それを私も述べさせていただきたいのです。〔つまり、〕何が起きるだろうかと予測することだけが大事なのではなくて、どう予測するにせよ、予測が間違っていたら何が起きてしまうのか、ということが大事なのです。かりに事態が悪い方へ転んだ場合にも、それに対処する余地があるということが、非常に、非常に重要なことなのです。

ですから、いまは財政拡大をすべきときなのです this is the time for expantion 。できるかぎり協調的 coordinated であるべきです。G7が近づいていることは存じ上げています。理想は、みんなが協調的な財政拡大政策 fiscal expansion について合意することですが、実際にはそれは日本とカナダということになるかもしれません。それ以外の誰かに今の時点で実行の用意があるかどうか、私にはわかりません。ですが、〔採択する声明の〕文言 the language をその方向へ押し進めるよう試みることはできるはずです。

日本こそまさに集中しつづける必要があります。アベノミクスの最初からの諸目標が今でも最重要 primal なのです。デフレのサイクルから脱出することが「最重要目標 Goal Number 1」なのです。他の全てはそれを待たねばなりません。


2. 2016年11月01日 21:40:43 : DfFkvsQAus : w1R7IVxtvso[4]
簡潔にまとめないと誰も読まないですよ

3. 2016年11月02日 21:11:29 : ZLNQZFSqzI : emARCcmDZU4[67]
家建てる マッチポンプさ ゾンビ保護

4. 2016年11月05日 20:08:58 : WNSPGcaZcg : 4gqNq3LmaYQ[32]
2さん 同感、要点まとめて書いて

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