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習近平中国国家主席(新華社/アフロ)
中国からの海外企業撤退が本格始動…中国企業、「メイド・イン・チャイナ」確立に失敗
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17055.html
2016.11.01 文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授 Business Journal
足許の金融市場では、中国経済の先行きに対する懸念と楽観が交錯している。10月13日、中国の税関総署は9月の貿易統計を発表した。それによると、輸出額はドルベースで前年同月比10%減、輸入額は同1.9%減だった。輸出入ともにエコノミストらの予想を下回り、中国経済の減速懸念が高まった。
輸出減少の要因を見ると、主要な輸出品目である衣服類、パソコン、集積回路(IC)がいずれも前年同月に比べ10%以上減少した。そして、欧州などからダンピング批判を受けてきた鋼材は20%超も落ち込んだ。
翌14日には、9月の消費者物価指数と工業生産者出荷価格指数が発表され、両指標ともに予想を上回った。特に、工業生産者出荷価格指数は55カ月ぶりのプラスだった。これを受けて、中国の需要が回復し、企業の生産調整も進んでいるとの見方が高まった。
ただ、まだら模様の中国経済を考える際、経済が何によって支えられているかを確認しておく必要がある。端的にいえば、規制緩和による住宅価格の高騰、減税やインフラ開発などの財政出動が景気を支えている。特に住宅市場はバブルというべき様相を呈しており、この状況がいつまでも続くとはいいづらい。引き続き中国の経済が不安定に推移する可能性は高く、世界経済の先行き不透明感を高めるリスク要因と考えられる。
■これまで輸出と投資が支えてきた中国経済
これまでの中国経済の成長パスを振り返ると、2008年まで輸出が経済成長をけん引してきた。中国が安価な労働力を競争力に“世界の工場”としての地位を固め、電機や機械、繊維、鉄鋼製品などの輸出が成長を支えた。
08年のリーマンショックによる金融危機の発生を受けて、世界の経済活動は大きく落ち込んだ。同年11月、中国は4兆元(当時の円換算額で60兆円程度)の景気刺激策を打ち出し、インフラ開発などの投資を軸に景気を支えてきた。その結果、中国の需要期待を受けて原油や鉄鉱石などの価格は大きく上昇し、世界的に“資源バブル”が発生したと考えられている。
問題は、景気刺激策が過剰だったことだ。インフラ投資などが進むうちは、素材などの需要が伸び、経済も上向く。10年第1四半期には、中国の実質GDP成長率は12%台を回復した。しかし、景気刺激策の効果が一巡すると需要は伸び悩み、11年後半には実質GDP成長率が10%を下回った。徐々に中国の需要は低迷し、14年半ば以降、原油価格が急落するなど資源バブルは崩壊に向かったと考えられる。
バブルが崩壊すると、過剰な設備(生産能力)、ヒト、債務のリストラというバブルの後始末が欠かせない。本来であれば、中国政府は国営、民営にかかわらずゾンビ企業のリストラ、規制緩和を通した産業育成などの構造改革を進め、需給バランスの調整を進めるべきだ。そうした取り組みは失業増加などの痛みを伴う。痛みを和らげるためには、財政政策や金融政策の使い方が重要だ。
表向き、中国政府は改革を重視している。しかし実態は、国有企業の経営統合による過剰な生産能力の輸出だ。他方、収益が悪化した企業のデフォルトも相次いでいる。中国は収益の悪化した企業を強制的にデフォルトさせ、経営破たんに追い込むことで供給の安定を狙っているのかもしれない。
その考えには危険な部分がある。16年3月末時点で、中国の民間債務(家計と企業の合計)はGDPに対して210%近くに達した。成長が鈍化しているにもかかわらず、債務の膨張は続いており、不良債権の増加が懸念される。今後もデフォルトが続くと、金融機関の経営や投資家心理が悪化し、信用収縮や資本流出が進む恐れがある。
■規制緩和と減税で景気低迷を糊塗する中国
このように考えると、中国の潜在成長率の上昇は期待しづらい。そのなかで、先行きへの懸念が高まったり、失業が増えて、社会情勢が不安定化する恐れもある。それを糊塗するために、中国政府は規制緩和や減税を通して景気の下支えを図っている。
15年3月末、中国政府は個人向け住宅ローンの規制緩和を発表した。これは、住宅在庫(余剰)の解消を図り、需要を喚起する取り組みだ。規制緩和は想定以上に住宅価格を上昇させ、多くのエコノミストが中国の住宅市場ではバブルが膨らんでいると指摘している。
住宅価格の上昇は、他の市場にも影響を与えた。15年末から16年5月上旬にかけて大連に上場する鉱石先物の価格は57%程度上昇した。これには、不動産開発などへの期待から鉄鋼製品の需給が改善するとの思惑が影響したのだろう。15年4月、中国政府がインフラ投資の推進を表明したことの影響もあるだろう。その結果、一部の鉄鋼メーカーは減産ではなく、増産に転じている。これでは需給調整は容易ではない。
また、15年10月、中国は小型車減税も導入した。自動車減税も在庫圧縮を目的とした対策だ。減税の結果、自動車の販売台数は持ち直し、16年9月の販売台数は前年同期比で26.1%増加、16年通年の販売台数は前年から7%程度伸びると考えられている。
中国政府は16年末を減税の期限としているが、延長されるかどうか方針はまだ示されていない。もし延長されれば、17年の販売台数も7%程度増えると考えられている。
こうした対策のなかでも、住宅価格の動向には注意が必要だ。中国では、2軒目以降の住宅購入の頭金比率の引き上げなど、投機抑制のための規制が強化されている。それでも投機熱は収まっていない。相場が熱狂に浸っているうちは、先行きへの懸念は抑えられるかもしれない。しかし、さらなる規制強化が実施されれば、住宅市場が急速に悪化する恐れがある。
その場合、バブル崩壊後の日本が直面したように、担保価値が下落し、不良債権が増加するという展開が想定される。そうなると、中国経済の先行き懸念は高まり、世界経済にもマイナスの影響が及ぶだろう。
■今後の中国経済の展望
過剰な生産能力が残るなか、中国の下振れリスクは意識されやすい。当面は、減税やインフラ開発が経済を支え、6%程度の経済成長率が維持される可能性はある。
問題は中長期的に中国経済の構造改革が進み、消費中心の成長基盤が整備できるかだ。そのためには、中国の製造業の競争力が引き上げられ、主要先進国と互角に対抗できるだけの産業基盤を整備する必要がある。
需要を刺激するためには、人々がほしいと思うモノを創造する力が欠かせない。それをつけるには、生産性の落ちた設備などを淘汰し、新規産業、新興企業に資本や労働力を移し、活動を支えることが重要だ。
では、中国は自力で創造的破壊(イノベーション)を進められるか。これまで中国は先進国の技術やノウハウを模倣してきた。独フォルクスワーゲンの自動車工場の誘致、海外企業の買収はその例だ。それでも「Made in China」の新しい技術や製品コンセプトを世界に示す力は十分に備わっていないようだ。
そして、9月の輸出に関する政府の見解では、先進国は技術力を要する工程を中国から自国に戻していることが示された。また、日米の市場で中国製品のシェアが低下し、東南アジアの製品のシェアが伸びているとも記されている。
これを額面どおりに受け止めると、先進国の企業は、付加価値を生み出す基礎研究や技術開発は国内を拠点に強化している。そして、中国で行ってきた完成品の組み立て工程を他のアジア新興国に移管しつつあるということになる。その背景には、経済成長や高齢化の進展に伴い中国の人件費が上昇していることがある。
実際、徐々に中国から距離をとる国は増えている。メルケル首相自らトップセールスを進めてきたドイツは、鋼材のダンピングや海洋進出を問題視し始めた。この動きが続くと、中国への直接投資は減少しイノベーションは進みづらくなり、製造業の発展、中間層の消費拡大は容易ではない。その結果、中国の経済は投資(投機)と財政出動頼みの状況が続き、景気は低迷気味に推移する可能性が高いとみる。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)
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