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日銀の金融政策変更で「リフレ派敗北」という報道は本当か
http://diamond.jp/articles/-/105157
2016年10月20日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■日銀の「総括的な検証」を受けて
強調される「リフレ派の敗北」という報道
日経新聞の記事には、ゴジラに扮した筆者らが、財務省と日銀の権威を踏みつぶす風刺漫画が描かれている(※実際に掲載されている風刺漫画とは異なります)
日銀による金融政策の「総括的な検証」を受けて、「リフレ派の敗北」を強調する報道が見受けられる。リフレ派という“異端の理論”について実験してみたが、「失敗して路線変更を余儀なくされた」という記述が共通して見られるが、本当だろうか。
その一つとして10月12日の日本経済新聞「「財務省を信じない」首相 「異端」影響力には陰りも」を取り上げよう。
この記事には、「シン・ゴジラ」をパロディ化した風刺漫画が掲載されており、なかなか笑わせる。ゴジラに扮した安倍首相がリフレ派の経済学者を想像させる4匹の小さなゴジラを引き連れて、日銀や財務省を破壊しているように描かれている。ちなみに、4匹の小さなゴジラのうち、1匹は筆者のようである。なお、風刺漫画は上の引用先でみてほしい。
大のゴジラファンの筆者としては、ゴジラに扮した筆者らが、財務省と日銀の権威を踏みつぶすのは、事実でもあり、この漫画は気に入っている。しかし、この記事は財務省・日銀の権威こそが重要であるというわけだ。
〈「景気が回復しかけると、いつも日銀が妨げるのをみてきた。財務省も日銀も信じられないからアベノミクスに至った」と首相は周囲に語る。〉
という箇所は正しい。しかし、その他の記述は取材したのかどうかも怪しいものばかりである。
これは、18日のニッポン放送「ザボイス そこまでいうか」での筆者と浜田宏一エール大名誉教授野との対談でも話題になった。
実は、ラジオ番組では、今回の日銀の金融政策変更の話がメインだった。ところが、冒頭、浜田先生はその話の前にと言い、自分の発言について間違った報道が多すぎると苦言を呈した。
■クビをかしげたくなる記述がある日経記事
記者は本当に取材をしたのだろうか
一つは、「米国FOMC前に日銀は金融緩和すべきでない」と浜田先生が発言したが、そうした発言はまったくなかったと言った。
次に、安倍首相に「今はロシアと経済で手を結ぶチャンス」と発言したと報道されたが、それもまったくないと、かなり怒っていた。
これが、冒頭の日経新聞である。それによれば、
〈 同月13日には内閣官房参与で米エール大名誉教授の浜田宏一氏が首相に熱弁を振るった。「今がロシアと経済で手を結ぶ最大のチャンスです」〉
と書かれている。
浜田先生は、首相に会って説明する時間はごくわずかしかないので、そうした余計な話はするはずがないと言っていた。日経新聞は、どうして当事者に話を聞かないのだろうか。ちょっと確認すればすぐわかる話だ。
実は、筆者も日経新聞の記事にでてくるが、筆者の関係したことでも、ちょっとクビをかしげたくなる記述がある。次の箇所だ。
〈 アベノミクスが始まって約4年。財務省と日銀も少しずつ首相官邸との間合いをつかみ始めた。「呼吸がわかってきた」。政府が28.1兆円の大型経済対策を詰めた今年7月。規模は財政投融資で大きく膨らませて見せ、赤字国債は新たに出さない――。財務省の演出を首相も採用した。〉
この記事を書いた記者は本当に取材をしたのだろうか。本コラムの読者であれば、2月25日付けの本コラム(「マイナス金利は心配無用 国民も政府もメリットのほうが大きい」)で、財投債活用のインフラ整備を提言しているが、おそらく日本で最初に財投債活用を書いたもののはずだ。
景気対策は当初外為特会の含み益を活用しようと思っていた。ところが、財務省は円高放置という暴挙にでて、含み益活用ができなくなった。その上、大型補正すれば国債発行が増額して、2020年度PB(プライマリー収支)黒字化目標が達成できなくなると脅してきた。これには官邸も参り、筆者のところに何かアイディアがないかと問い合わせてきた。
筆者は、大蔵官僚時代に、財投改革を担当し、財投債の制度設計をした本人である。当時、郵便貯金から大蔵省への預託をやめ、財投に必要な資金調達をするという意味で、財投債発行に切り替えたのだ。財投債発行額は、それ以前には郵便貯金からの預託金額である。預託金は財政赤字にカウントしないのだから、財投債もカウントしないという経緯があった。もちろん、バランスシートでみれば、負債の財投債と資産の投融資が見合っているから、ネットでの債務増でない。これは、筆者が本コラムでいつも使っている、ネット国債でみるべしというロジックとも完全に整合性がとれている。
こうした話は、財務官僚だったら知らないはずない。しかし、官邸には財投債をいわずに、2020年のPB黒字化で脅してきたようだ。これは、官邸以外の所でも財投債を完全否定するような情報が筆者のところに入ってきており、財務省の仕掛けであることが容易に推測できた。
本来であれば、財務官僚としては、財投債という手段もあると進言すべきところ、それを隠していたわけだ。財務官僚が財投債を言っていれば、筆者が言う必要はなかったはずだ。
■官邸から信用されない財務省
財務省のいいなりで書く日経の記者
こんなことをしているから、財務省は官邸から信用されないわけで、これが真実である。
日経新聞の記者は、こうした取材もせずに、財務省のいいなりで、あたかも財務省が演出したかのように書いている。まったく赤っ恥記事である。
また、次の箇所も怪しい。岩田規久男日銀副総裁や原田泰審議委員について、
〈「成果が出ない以上、失敗を認めざるを得ないのだろう」。〉
と誰の意見かわからないが引用文の形で書いている。
筆者は、これまでの金融政策は評価している。なにより就業者数は増加し、失業率が低下するなど雇用環境がよくなった。これはマクロ経済政策としてクリアすべき必須条件だ。
こういうと、冒頭の批判者は人口、生産年齢人口が減っているからだと答える。しかし、人口減少は2005年から、生産年齢人口減少は95年からだから、アベノミクスの金融緩和による結果と無関係だ。「リフレ派の敗北」とかいう記事を書く人は統計数字をまったく読めない人たちだ。
ただし、筆者は今回の日銀決定には不満がある。今回、金融緩和か引き締めかという政策でみれば、現状と同じで何もしていないからだ。
筆者の計算では失業率は現在3.1%からさらに2.7%程度まで下がる。これは、5月19日付けの本コラム『日銀の「失業率の下限」に対する見方は正しいか』で詳しく論じたので、それを参照していただきたい。しかも、インフレ率はゼロ近辺で、目標2%まで達していない。このとき、失業率を下げインフレ率を高める金融緩和だ。
今回日銀はそれをやらなかったので、筆者の評価は、やるべき時にやらなかったという意味で、日銀はサボったとなる。日銀は、野球でいえば7対0の場面で、追加点2点でコールドゲームのチャンスなのに絶好球を打ち損じたというところだ。
それでも、これまで結果が出ていないとは、日経新聞は何を見ているのだろうか。
日本のマスコミのみならず、経済学界でも正しく理解されていないこととして、「金融政策が雇用政策」という世界の常識があげられる。
金融政策というと、条件反射的に物価安定となって、雇用が頭から抜けてしまう。経済学をきちんと勉強したなら、物価と雇用(失業率)はフィリップス曲線を通じて、裏腹の関係であることは知っているべきだ。日本のマスコミは、金融政策が雇用確保を目的としていることをまったく理解していないのは嘆かわしいことだ。
■筆者らリフレ派は「異端」なのか
それは日本のマスコミ・学会だけだ
最後に、日経新聞が代表であるが、しばしば筆者らは異端と言われる。しかし、それは日本のマスコミ・学会の中での話だ。世界中の中銀はリフレ的な考え方で運営されている。浜田先生には、前述の番組で、私の1998年から2001年までのプリンストン大学での在学期間について、バーナンキやクルーグマンらと日常的にディスカッションをしていたのだから、異端のはずがないと断言してもらった。
ちなみに浜田先生は、ラジオ番組収録後、プリンストン大に行き、日本人のノーベル経済学賞候補である清滝信宏教授、2011年にノーベル経済学賞を受賞したシムズ教授と日本経済について議論する予定であるとのことだ。
いずれにしても、リフレ批判者は、基本的な経済学を理解できていない。このため、金融政策は無効であり、他の政策を行うべきという。しかし、これまで雇用増加に寄与し、さらに雇用の増加が見込まれるのに、もう金融政策をやるなと言うのは、デフレに逆戻りせよと同じである。彼らとその背後にいた財務省と日銀は、失われた20年間の教訓がまったくなく、デフレの犯人だったといっても過言ではない。
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