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6割が「サービス残業」、緊急調査で浮き彫りに
働き方革命2.0
電通女性社員の過労自殺が示す日本の病巣
2016年10月20日(木)
広岡 延隆
電通の女性新入社員(当時24歳)が昨年12月25日、過労により自ら死を選んだ。女性社員は月105時間の残業をしていたと認められた。電通と労働組合が結んだ「36協定」で定めた残業時間を上回る長時間労働だ。三田労働基準監督署は女性新入社員がうつ病を発症していたと判断し、労災を認定している。
東京労働局などは10月14日から電通の本社、支社、子会社に立ち入り調査を実施している。一社に対して、この規模の一斉調査は異例だ。塩崎恭久厚生労働相は「実態を徹底的に究明したい」と述べる。
電通では1991年にも24歳の男性社員が過労により自殺した。遺族と電通の間で争われ、2000年に最高裁が会社側の責任を認定。企業の安全配慮義務違反を理由とした損害賠償を認めた最初の判例として、その後の司法判断に大きな影響を及ぼしている。
電通本社へ立ち入り調査に入る労働基準監督官(写真=読売新聞/アフロ)
過労死という悲劇は、日本企業の中で何度も繰り返され、「KAROSHI」と英語でもそのまま通じるほどだ。厚生労働省が10月7日に初めて発表した「過労死等防止対策白書」は、その実情を詳しくまとめている。
過労死の最大の原因は長時間労働という悪弊だ。労働基準法では、労働時間の上限を週40時間までと定めている。ただし、労使で結ぶ「36協定」で別途上限を定められるため、規制が十分に機能していないとの指摘は多い。
電通の女性社員のケースでは、この36協定による上限すら守られず、労働時間は過少申告されていた。実際は働いているのに、出勤簿では働いていないことになっている「サービス残業」は日本企業においてはよくある現象といわれる。だが、その性質上、実態は公的調査からはなかなか明らかにならなかった。
日経ビジネスでは10月14〜17日、「働き方に関するアンケート」(日経BPコンサルティングを通じインターネット調査)を実施。1343人のビジネスパーソンが回答や意見をよせた。まず目についたのは、長時間労働の弊害を嘆くコメントの数々だ。
「残業(できない)しない人は何かの折に順に首を切られるか飛ばされる感じになる。会社が満足するほど残業している人は病気になるか、家庭が崩壊している」
「残業代分のアウトプットが出せていないのにカネを貰う気かという論法が横行」
「10日間で50時間残業を強いられ業務中に倒れた」
「深夜にミーティング設定があり、結局始まったのが翌日」
「長時間労働により、医者への通院ができなくなり、病気が悪化し、亡くなった方がいる(女性で30代でした)」
「うつ病の休職、突然死が毎年いる」
6割が「サービス残業」
調査では6割以上の人が出勤簿につけていない、時間外労働時間があると回答。「サービス残業」が横行していることが浮き彫りになった。中には月間120時間以上を出勤簿につけていないケースまであった。残業をしているのに残業代を支払わない「サービス残業」は違法行為だし、労働時間をきちんと管理しなければ企業として安全配慮義務を怠っていることにもなる。
6割以上が「サービス残業」
●出勤簿につけていない月間時間外労働時間
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/101700076/101900003/14-03.png
労働者側が「空気」を読んで、残業を申請しないケースもあるだろう。だが、残業を出勤簿につけようとしたが、明確に拒否された人も25.7%いる。
会社はどのような理由で拒否したのか。その問いに対する答えには、目を疑うような上司のセリフが溢れていた。
「残業をつけるならば、評価を下げる」「価値が出せたと思う分だけつけて」「残業とかじゃなくて自主勉強時間だよね」「会社が残業代を払える状況にない」――。
どれ1つとっても正当性が感じられない。コンプライアンス上の問題を抱えている企業が少なくない、危うい現状が浮き彫りになる。
日本に巣食う長時間労働問題。だが残業時間の削減は、実は経営から見てもっとも手をつけやすい分野だ。抵抗勢力が「ほとんど」いないからだ。
長時間労働が横行していることで知られるIT業界に、お手本となる企業がある。SCSKだ。残業時間を大幅に減らしながら、2015年度まで6期連続で増収増益を達成した。
2009年に住友商事からSCSKトップに転じ、働き方改革を主導したのは中井戸信英氏(現在は相談役)。社員の労働状況の過酷さに驚いて、残業時間削減を決意した。「残業代を減らした分は、すべて社員に戻す」と宣言し、実際に賞与などの形で部門ごとに達成度合いに応じて還元した。(参考記事:残業しない人に残業代を払う会社)
さきほど「ほとんど」と書いたのは、時として社員が抵抗勢力になる場合があるからだ。長時間労働が常態化した企業では、残業代が事実上の生活給になっているためだ。その現実を踏まえた中井戸氏の施策は社員の心を捉え、全社が一丸となって残業時間削減に向かう流れを生んだ。立ち会議やムダな資料作りや会議をなくすといったアイデアが現場から次々に生まれてきたという。
一方、残業削減をトップダウンで目標に掲げれば、かえってサービス残業として「地下に潜る」リスクがある。そこでSCSKは全社員を対象に「サービス残業アンケート」を実施。サービス残業を強いられていないか、暗黙のうちに付け控えを奨励するような雰囲気になっていないかなどを問い、問題がありそうな部署には社員から部門長まで人事からヒアリングをかけた。同時に入退室記録も照合し、サービス残業が判明したら必ず遡及して残業代を支給した。
目指すべき方向は1つ
さて、こうした施策によるメリットとデメリットを天秤にかけるとどうなるのだろうか。
売上高や利益の目標を妥協しているわけではない。会社が負担する人件費は、これまでも残業代が発生していたのだから理屈の上では横ばいだ。首尾よく残業が減れば光熱費なども削減できる。社員の健康増進にも寄与するし、活気ある働き方をしてくれる可能性が高い。短時間で効率よく働ける職場環境を作れば、育児や介護を抱えた社員の退職も抑制できる。
デメリットとしては、サービス残業の実態が明るみに出ることによって、一時的に人件費が増える可能性があることか。だが、そもそもコンプライアンス問題を抱えている状況を放置するよりはマシなのではないか。何より、社員も経営者も鬱々とした気持ちで働く企業に、未来があるとは思えない。
もっとも現実は複雑だ。すべてが上記のような理屈で割り切れるものではないだろう。だが、働き方の問題に関して、どの企業も目指すべき大きな方向性は同じはず。あなたの会社はどちらの道を選択するだろうか。
最後に、アンケートに寄せられたコメントを1つ紹介したい。
「長時間残業をしていた頃、子供の運動会を見に行ったが、疲れていて校庭の隅でずっと寝ていた。ああいう生活には戻りたくないし、誰にもあんな風にはなってもらいたくない」
このコラムについて
働き方革命2.0
政府が働き方改革の実現に向けて動き出した。
長時間労働の是正、非正規雇用者の待遇見直し…。テーマは山積している。
しかし悪しき雇用慣行を見直すだけでは日本経済は復活しない。強い会社も生まれない。
足元の議論をよそに、先行して働き方改革を実践する企業は知っている。
賃金制度、労働時間、契約形態を抜本的に見直し、社員の生産性を上げれば、企業の競争力は高まり、経済も好循環に入ることを。
働き方革命は新たなフェーズに入った。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/101700076/101900003
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