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帝人ビルディング(「Wikipedia」より/J o)
自動車、製造の常識が根底から変更…「炭素繊維」納品めぐる死闘の幕開け
http://biz-journal.jp/2016/10/post_16949.html
2016.10.20 文=編集部 Business Journal
帝人が三菱ケミカルホールディングス(HD)に逆転勝利した。帝人は、米自動車部品大手コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(以下、CSP)社を840億円で買収すると発表。帝人による企業買収では過去最大となる。今年12月にCSP社の全株式をファンドなどから買い取り、完全子会社にする。
CSP社をめぐっては、三菱レイヨンが提携に向けて協議中だった。三菱ケミカルHDは今年3月、傘下の三菱レイヨンが年内にCSP社と合弁会社を設立し、炭素繊維を使った自動車向けの複合部材の製造・販売を始めると発表していた。
その後、CSP社の株式の6割を持つ米投資ファンドの意向で、会社自体を売却することに方針転換、間隙を縫って手を挙げた帝人が奪う格好になった。帝人に油揚げをさらわれた三菱ケミカルHDは、「別の形で北米の自動車事業を検討する」とコメントしている。
CSP社は1969年設立で、米ミシガン州に本社を持つ。米国や欧州、メキシコ、中国などで、ガラス繊維の複合材料を使った車の前方部分のフードやフェンダーなど外観部品の製造・販売を手掛ける。
シート・モールディング・コンパウンドという技術を使った複合材料では、世界シェアの50%以上を占める。納入先は、米クライスラー、フォード、ゼネラルモーターズ(GM)、北米トヨタなど。自動車メーカーと直接取引する「ティア1(ワン)」と呼ばれる一次部品会社で、従業員は3200名、2015年12月期の売上高は646億円(1ドル102円で換算)だ。
帝人は炭素繊維強化プラスチック事業との相乗効果を狙っている。世界各国で環境規制が強化されるなか、自動車の車体軽量化の流れが鮮明になるとみてCSP社の買収に踏み切った。完成車メーカーと直接取引できる「ティア1」になることで、自動車部門の売り上げを伸ばすことができる。
■炭素繊維の市場は2020年に2倍に拡大
炭素繊維の世界市場は拡大している。東レの推計だと、15年に世界で6万トンの需要だったのが、20年には10〜12万トンまで増加するとみられている。
炭素繊維の長所は軽くて強いこと。重さは鉄の4分の1だが強度は10倍。用途は航空機、風力発電のブレード(羽根)、天然ガスの圧縮タンクのほか、テニスラケットやゴルフクラブのシャフトといったスポーツ用品まで幅広い。
今後、軽量化の“切り札”として、自動車向けの用途が本格化する。20年にかけて電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の市場に投入され、炭素繊維複合材料の採用車種が高級車を中心に増えることが期待されている。
炭素繊維は東レ、帝人グループの東邦テナックス、三菱レイヨンの日系3社が世界需要の7割を握る。その首位を走るのが東レだ。
■東レ、米ボーイング社に炭素繊維1.3兆円分を供給
合成繊維最大手、東レの業績を牽引しているのは、祖業の繊維と長い年月を経て花開いた炭素繊維の二大事業である。16年3月期の連結決算の売上高は前年同期比5%増の2兆1044億円、営業利益は25%増の1545億円だった。
このうち炭素繊維の売上高は18%増の1862億円、営業利益は38%増の361億円。炭素繊維の売り上げは全社の1割にも満たないが、営業利益は全社の23%を稼いでいる。東レの屋台骨を支える収益の柱に育ってきた。
その売り上げの主力は航空機と圧縮天然ガスタンク向けだ。特に航空機向けは米航空機大手のボーイングの「787」だけでなく、新型機「777X」向けに炭素繊維を供給する包括的な長期供給契約を結んでいる。15年から今後10年以上にわたり、ボーイング社向けに1兆3000億円分を供給することになる。
15年11月、米サウスカロライナ州で取得した工場用地に、500億円を投じて高性能炭素繊維の生産設備を新設。年産2000トンの新工場では、19年からボーイング社向けに供給を開始すると発表した。
■三菱レイヨンは伊ランボルギーニ社と炭素繊維複合材の共同開発
一方、東邦テナックス、三菱レイヨンは、炭素繊維の業績を公表していない。『会社四季報 業界地図2016年版』(東洋経済新報社)によると、三菱レイヨンの炭素繊維の売上高は約600億円、東邦テナックスは約218億円とされている。
三菱レイヨンが力を入れているのは、自動車分野である。独BMW社の電気自動車iシリーズや、日産自動車のスポーツカー「GT−R」に三菱レイヨン製の炭素繊維が採用された。
三菱レイヨンは今年9月16日、イタリアの高級自動車メーカー、ランボルギーニ社と炭素繊維複合材の共同開発を始めると発表した。自動車の部材として使う炭素繊維複合材の加工時間を短縮したり、工程を自動化する技術を今後1年かけて確立。ランボルギーニ社が将来販売する新型車での採用を目指す。
三菱レイヨンはさまざまな自動車メーカーと協業を進め、21年3月期をめどに炭素繊維や複合材の売上高を16年3月期より7割多い1000億円に増やす計画だという。
■帝人はM&A攻勢で巻き返し
帝人は東レや三菱レイヨンに比べて炭素繊維事業で後れを取っていた。帝人は昨年、EV(電気自動車)レーシングカー用に東邦テナックス製の炭素繊維を提供した。
EVレーシングカーは電気自動車関連企業で組織する電気自動車普及協会と、競技用自動車企画・製造のタジマモーターコーポレーションの共同プロジェクトである。車両を軽量化し、米国で昨年6月に開催されたレースに参戦した。
炭素繊維の主戦場になるのは、航空機の次は自動車――。完成車や部品メーカーとの結びつきを強め、自動車分野で炭素繊維の採用を増やすことを狙う。
前述のように、帝人は米自動車部品メーカーを840億円で買収する。帝人の鈴木純社長は、記者会見で「今後も買収は必要があれば、ためらわずにやる」と語っている。
帝人は飛行機用炭素繊維で圧倒的に首位の東レと、自動車用炭素繊維で先行する三菱レイヨンに追いつき追い越すため、M&Aに活路を求める。
今後10年の炭素繊維の帰趨(きすう)は、自動車市場の動向で決まる。
(文=編集部)
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