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三菱重工業の大型客船納入までの経緯
<三菱重工>大型客船事業から撤退 高付加価値船に注力
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161018-00000101-mai-bus_all
毎日新聞 10月18日(火)21時22分配信
三菱重工業は18日、大型客船事業から事実上撤退すると発表した。海外企業から受注した大型客船の建造が想定通り進まず、多額の損失を出したためで、今後は荷物も積める貨客船や中小型客船に集中する。また、今治造船(愛媛県今治市)などとの提携強化を通じ、液化天然ガス(LNG)運搬船などに注力していく方針を示した。
三菱重工の宮永俊一社長が同日、東京都内で記者会見し、「大型客船全体を請け負うのはコスト的にも成り立たない。当面無理」と述べた。
三菱重工は2011年、欧米系クルーズ会社から、世界最大の戦艦だった「大和」「武蔵」の2倍近い12万トン級客船2隻を受注。しかし、設計や建造に手間取り、納入が遅れた結果、16年3月期までに計2300億円超の特別損失を計上した。
この経緯について三菱重工は、一から設計する新型船だったにもかかわらず、「楽観的、拙速な判断で受注した」(幹部)と断定。西洋風内装工事のノウハウが不足していた上、客室の無線Wi−Fi装備など発注側の要求に対応できず、「再発注や調達先変更などの悪循環を誘発した」と総括した。大型客船の関連産業は欧米に集積しており、日本での建造は不利として、今後は貨客船や中小型客船に専念するとした。
同じ三菱系の日本郵船が運用する豪華客船「飛鳥2」(5万トン)の後継船については「思い入れがある」(宮永社長)として受注に含みを持たせた。
また、今治造船、大島造船所(長崎県西海市)、名村造船所(大阪市)と進めている提携協議を16年度中にまとめ、3社が受注した船の設計を三菱重工が担うといった連携を図る改革方針も表明。将来的には造船事業の分社化や3社との資本提携も視野に入れるという。【宮島寛】
◇中韓と競争激化
造船業を巡っては、川崎重工業も9月、業績が悪化している造船事業を抜本的に見直すと発表した。中国、韓国勢との競争激化や世界的な市況低迷により、国内勢は生き残りをかけた再編の波に突入しつつある。
1990年代まで造船量で世界首位だった日本は、急速に台頭する中韓勢に追い抜かれ、15年の新造船建造シェアは19%。中国の37%、韓国の34%に大きく水をあけられた。円高や人件費増でコスト競争力が下がったのが一因で、日本は三菱重工業など総合重工メーカーを中心にLNG運搬船など高付加価値船への注力で生き残りを図ってきた。
しかし、川崎重工はブラジル向け資源開発船取引の焦げ付き、三菱重工も大型客船の建造遅延で巨額損失を計上した。高付加価値化路線の「生みの苦しみ」(村山滋・日本造船工業会会長)に直面している状況だ。
さらに今年に入ると新興国景気の低迷などで世界の造船市況が悪化。日本船舶輸出組合によると、受注量に当たる1〜9月の輸出船契約実績は前年同期の約2割にまで落ち込んだ。ウォン高に見舞われた韓国では現代重工業と大宇造船海洋、サムスン重工業の大手3社が大幅リストラを模索しており、中国でも大手の統合案が浮上している。
三菱重工は18日に今治造船などとの資本提携を模索する考えも示したが、合理化競争で後れを取ると中韓との差がさらに開くことにもなりかねない。【宮島寛】
◇キーワード・三菱重工業
三菱商事、三菱東京UFJ銀行と並ぶ三菱グループの中核企業。1884年に長崎造船所としてスタートし、現在では原子力や火力、水処理などのエネルギー・環境分野、自衛隊機、ロケットなどの防衛・宇宙分野、民間航空機や商船などの交通・輸送分野など多様な事業を手がける。国産初のジェット旅客機として開発が進む「MRJ」も三菱重工が2008年に事業化を決め、開発主体の三菱航空機を設立。16年3月期の連結売上高は4兆468億円。
祖業の造船部門は戦時中に戦艦「武蔵」を建造したことで知られる。今は客船やフェリー、液化天然ガス(LNG)の運搬船などを手がける。昨年10月には長崎造船所の一部事業を分社化するなど構造改革を進めている。
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