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【第148回】 2016年9月26日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
日本から残業をなくし生産性を上げる3つの方法
政府は8月に行われた内閣改造で初めて「働き方改革担当大臣」を設け、9月16日には8人の関係閣僚と15人の有識者をメンバーとする「働き方改革実現会議」を設置して議論を本格化させる構えをみせた。今回は働き方の改革について考えてみたい。
「骨折り損のくたびれ儲け」を続けてはいけない
わが国では長時間労働の弊害が指摘されて久しいものがあるが、まず具体的にいくつかの数値を見てみよう。何事であれ、人口が一貫して増え続け、世界一の産油国でもある広大な大国アメリカと比較してもあまり意味はないと考えるので、人口や国土がある程度似通ったドイツやフランスと比べてみると、次表の通りとなる。どちらがいいかは一目瞭然だ。
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これでは誰が見ても、わが国は「骨折り損のくたびれ儲け」ではないか。この状態を続けたら社会が疲弊するだけだと考える。働き方の改革とは、即ち、少子高齢化や成熟経済の先進国であるドイツやフランスのように短い労働時間で生産性を上げ、相対的に高い成長を目指すことなのだ。
ある著名なブロガーが次のようなことを話していた。
「皆さん、お父さんやお母さんに尋ねてみてください。『どうして、お父さんやお母さんの時代は高度成長したの?』『それはね、お父さんやお母さんが一所懸命働いたからだよ』きっとそういう答えが返ってくるでしょう。ちがいます。皆さんがお父さんやお母さんと同様に働いたとしても絶対にわが国が高度成長することはありません。お父さんやお母さんの時代は、高度成長する外的条件が整っていただけなのです」
その通りだと思う。では、その外的条件とは一体何だったのか。
冷戦、キャッチアップモデル、人口の増加という3つの条件
それは、冷戦、キャッチアップモデル、人口の増加という3条件に収束させることができる。
1.冷戦
世界地図を拡げ、ロシアや中国を下方に置いてみると、彼らが太平洋に出ようとした時、日本列島がいかに邪魔になるかが一目で分かる。日本は不沈空母として地政学上絶好の位置にあり、だからアメリカは日本を大切にしたのである。戦後の日本は繊維、鉄鋼、自動車、半導体とアメリカというお父さんの脛を次々にかじりつくして経済成長を遂げた。それでもなんとかアメリカが許容してくれたのは、冷戦があったからだ。冷戦はとうの昔に終わってしまった。
2.キャッチアップモデル
敗戦後の日本の復興を考えていた吉田茂は、GEやGMが牽引しているアメリカ経済に目をつけた。電力、鉄鋼の復活から始めて最終的には電気・電子産業や自動車産業を興せば日本の復活はなると考えたのである。地方から労働力を都市に移す、すなわち農業に従事していた若者を都市に集めてトヨタや松下(現パナソニック)に勤めさせればいい(生産性の低い農業から生産性の高い製造業へ労働力をシフト。その象徴が集団就職であった)。
このモデルは製造業を核にしている。製造業(≒工場)の理想は、産業革命以降、常に24時間操業である。従って、若くて元気でひたすら素直な労働力を青田買いし(勉強している学生は、このモデルで本当にいいのかなどと余計なことを考えるのでむしろ邪魔になる)、長時間働かせることが適していたのである。加えて、工場には筋力の優れた男性の方が向いていた。
こうして朝早く出社し、夜遅く帰って「メシ、風呂、寝る」の生活を送る働き方がロール・モデルとして誕生・定着したのである。そうなると女性は家にいて「メシ、風呂、寝る」のケアをした方が全体としては効率性が高くなる。そこで性分業が行われ、配偶者控除や3号被保険者など専業主婦に有利ないくつものインセンティブが設計されて現在に至っているのである。ただし、現在の日本は「アメリカに追いつき追い越せ」というキャッチアップモデルから、「課題先進国」に転じて久しい。
3.人口の増加
人口ボーナスが高度成長に大きく資することは説明の要がない。かつての人間の歴史において、人口の増加は、繁栄、安定、安全と同義語だったのである。現在の日本は人口オーナス(人口の減少)に直面している。わが国の人口ボーナス時代のガラパゴス的な労働慣行である定年制の廃止(→同一労働・同一賃金への移行)については、前回述べたのでここでは繰り返さない。
以上見てきたように戦後わが国の高度成長を牽引した3条件は、ことごとくベクトルが逆方向に向いてしまっている。この外的条件の変化を考慮することなく、昔と同じように「メシ、風呂、寝る」の働き方(長時間労働)を続けていれば「骨折り損のくたびれ儲け」に陥るのは理の当然ではないか。
「メシ、風呂、寝る」から「人・本・旅」へ
人口オーナス社会では、人口の減少分を補って労働生産性が向上しなければ、成長はあり得ない。わが国の労働生産性はOECD34ヵ国中21位であって(G7の中では20年最下位を続けている)、1人当たり7万2994ドル(2014)であった。なお、ドイツは9万2904ドル、フランスは9万9680ドルである。
次に就業1時間当たりの労働生産性を見ると日本は41.3ドルでやはり21位、これに対してドイツは63.4ドル、フランスは65.1ドルであった。日本の労働生産性はドイツやフランスの6〜7割程度しかないのが実情である。
ではどうすれば労働生産性を向上させることができるのだろうか。僕は「『メシ、風呂、寝る』から『人・本・旅』へ」と言い続けているが、これからのわが国経済を担うのは製造業ではなくサービス産業である。サービス産業の競争力は長時間労働によって得られるものではなく、斬新な発想やアイデアこそが生命線である。
そのためには、残業をなくして早く退社し、たくさんの人に会い、たくさん本を読み、たくさんの場所に出かけて経験を積み(旅)、脳に刺激を与え続けなければならない。加えて、サービス産業の需要(消費者)は女性が主である(レストランやデパートを想起すれば直ちに了解されよう)。そうであれば供給サイドにも女性をもっともっと登用する必要がある。
男性が「メシ、風呂、寝る」の生活を続けていれば、家事や育児、介護は主として女性の肩にかかってくるから、女性が仕事で輝けるはずがない。「メシ、風呂、寝る」の働き方の改革こそが、女性が輝く社会の前提条件となるのだ。言い方を変えれば、働き方の改革なくして女性が輝く社会の実現など単なる絵空事にすぎないのだ。
なお、働き方の改革が少子化対策にも有効であることは様々な研究データが明らかにしているが、ここでは触れないことにする。もちろん、専業主婦を奨励するようなインセンティブについては、将来的には全廃する方向で検討すべきであることもまた言を俟たない。
残業をなくす方法はあるか
残業をなくして生産性を向上させるためには、政府が原則残業を禁止とする法制を整備することが一番実効性が高いと考えるが、民間でもできることはたくさんあると思料する。
第1は、長時間労働を評価する根拠なき精神論を一掃することである。出版社に2人の編集者がいる。1人は朝早く出社し夜遅くまでまじめに働いているが、出す本は全く売れない。もう1人は朝も遅く、日中はしょっちゅう喫茶店に行っており、夜は毎晩飲み屋でたむろしているが、年にベストセラーを何冊も出す。どちらを評価すべきか。説明の要はないだろう(工場なら、前者が評価されるのもまた同時に了解されるだろう)。
今でも長時間労働を評価する人は多いが、その中の誰一人として長時間労働が労働生産性を向上させた、もしくはその労働者の市場価値を高めたという実証的なデータを僕に示してくれた人はいなかった。労働者を評価するのは時間ではなく成果(パフォーマンス)であるというごく当たり前の慣行を、一刻も早く打ち立てなければならない。頭脳を使う仕事では集中力が肝となるが、普通、人間の集中力は2時間前後しか続かない。休憩をはさんでも、1日に2時間×4コマ、せいぜい5コマが限界であるという人もいる。長時間労働は、大脳生理学的にも支持されないのだ。
第2は、採用基準の改革である。黙って長時間働く工場をモデルとした労働者を採用するベストの方法の1つが、わが国の青田買い(一括採用)であることに間違いはない(青田買い→終身雇用→年功序列→定年制という労働慣行は、3条件の下での高度成長を前提としたワンセットのガラパゴス的な仕組みであるが、このコラムで以前にも触れたのでここでは繰り返さない)。
これに対してグローバルな採用基準は、大卒であればまず成績である。なぜか。自分の選んだ大学、学部で優れた成績(パフォーマンス)を残した人は、自分が選んだ職場でも優れたパフォーマンスをあげる蓋然性が高いと見なされるからである。例えば、経済団体のトップが「優7割、TOEFL100点でなければ採用面接に応じない」と一言述べれば、学生は必死に勉強するようになり、社会人になっても唯々諾々と働くのではなく、様々なアイデアや主張を企業にぶつけるようになるだろう。多様性ある人材を育てる方法はまず勉強に打ち込むことであり、好きなことに打ち込むことである。
第3は、「無減代(むげんだい)」の実践である。上司から命じられた仕事を言われた通りに黙々とこなすのではなく、一人一人が「この仕事は本当に必要だろうか?無くても困らないのではないか」「この仕事はもっと減らすことはできないか?これまでの10枚のレポートを3枚にできないか?」「この仕事は他の何かで代用(使い回し)できないか?1ヵ月前に作成したグラフを日付だけ変えて提出しても経営判断が歪む恐れはないのではないか?」などとよく考えて、無減代を実践するところから働き方の改革は始まるのである。
実は仕事のかなりの部分は、上司の思いつきによる場合が多いのである。僕が30代の頃、10人ぐらいいた部下に次々と仕事を指示していた。忘れるといけないので机上に置いた大きなダイアリーを2等分して、左には予定、右には仕事(A君に金曜締切でBの仕事を頼んだ場合は2日前の水曜日にA→Bとメモしておく。そうすると、水曜の朝簡単に督促できる)を書き込んでおいた。
ある日、外出から帰ると、A君が僕のダイアリーを消しゴムで消していた。「何しとるんや」「あまりにたくさん仕事を指示されて鬱陶しいのでいくつか消してるんですよ」「お前、仕事をなめとるのか」「そんなに怒らないでくださいよ。僕もアホじゃないので大事なことはちゃんとやってますよ。今までも時々消していましたが、出口さん気がつかなかったし、実際困ったこともなかったでしょう」。
実際A君の言う通りで、仕事に困ったことはなかった。残業が大嫌いなA君に僕は、上司の指示のかなりの部分は、仕事の本筋には関係のない単なる思い付きに過ぎないということを教えられたのである。
上司の錯覚の1つは、時間も部下も無限大なので、根を詰めればいい成果が出てくると思いがちなところにある。この世の中のたいていのものは時間を含めて有限なので、根拠なき精神論の代表の1つである「時間も部下も無限大(に使える)」に対しては「無減代」で対抗しなければならない(なお、「無減代」は、講演に伺った際に日東電工の柳楽会長に教えていただいた言葉である)。
セーフティネットは適用拡大
毎日のように喫茶店に出かける編集者は成果で仕事をしているのであって、時間で仕事をしているわけではない。これからの時代の多様な働き方を保障するセーフティネットは、厚生年金(健康保険)の適用拡大を基軸として制度設計を行うべきである。
国民年金は本来、自営業者のための年金であって、被用者はすべて厚生年金で保護される。これが、わが国の皆年金制度本来の理念であった。そこで、労働時間に関係なくすべての被用者は厚生年金を適用するものとし、パートやアルバイトなどをすべて国民年金から厚生年金に移せば、正規、非正規という区別も自ずと雲散霧消するであろう。また、下流老人という言葉も消えるのではないか。
これはパートやアルバイトで過ごしてきて国民年金しかもらえない高齢者を想定しているからである。中小・零細企業主で、パートやアルバイトにも社会保険料を負担したら生業が成り立たないと悲鳴を上げるであろう向きには、ドイツのシュレーダー元首相の言葉について考えてもらうべきではないか。
「人を雇うということは、その人の人生に責任を持つということだ。社会保険料を払えない企業はそもそも人を雇ってはいけないのだ」
適用拡大は、ゾンビ企業の退場にも力を貸して経済の足腰を強くするのである。もちろん、主婦の中にもパートやアルバイトで働いている人は多いので、適用拡大は3号被保険者の収束にも役立つのである。
以上のように考えれば、働き方の改革の根本は、「『メシ・風呂、寝る』から『人・旅・本』へ」であって、残業の原則禁止の徹底(≒長時間労働の是正)と、適用拡大の2本柱(あるいは、これに定年制の廃止を加えた3本柱)を中心に制度設計を行うことが望ましいと思われるがどうか。
(文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である)
http://diamond.jp/articles/-/102821
世界はほぼ「最大限に不確実」、英離脱選択後−オークツリーCEO
Bei Hu
2016年9月28日 14:02 JST
米大統領選も不確実性を高めている
オークツリーには投資に向けた豊富な手元資金がある
ディストレスト債投資で世界最大手オークツリー・キャピタル・グループのジェイ・ウィントロブ最高経営責任者(CEO)は、英国が6月の国民投票で欧州連合(EU)選択したことで、世界はほぼ「最大限に不確実」な状態にあると述べた。
ウィントロブ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「実のところ離脱に向けた実際の交渉がどのように進展するか分からない」と指摘。インタビューは香港での「ブルームバーグ・マーケッツ・モスト・インフルエンシャル・サミット」の開催前に行われた。
「これから何が起きるか分かるまで、オークツリーを含む多くの企業が恐らく域内の事業への出資および増員に向けた投資の決定を先送りしているのではないか」と語った。
また、米国の大統領選挙も不確実性を高めていると分析。「次の米大統領が誰になるかという不確かさに加え、少なくとも候補の1人については、大統領に当選したらどうなるのか、ずっと大きな不確実性がある」と述べた。
ウィントロブ氏は、機会があれば中国などの地域に投資できる多くの「手元資金」がオークツリーにはあると説明。同社のまだ投資に回っていない投資家の資金は6月末時点で過去最高の228億ドル(約2兆2900億円)に上っている。
原題:Brexit Spurs ‘Maximum Uncertainty,’ Oaktree’s Wintrob Says (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-28/OE74JO6JIJUQ01
ヘッジファンド業界はかつてない困難な時代に直面−ロバートソン氏
Katia Porzecanski
2016年9月28日 12:03 JST
2%の管理料と運用益の20%を報酬とする体系は「聖域」でない
ヘッジファンドはバブル破裂の際にポートフォリオの盾となり得る
タイガー・マネジメントのジュリアン・ロバートソン会長兼最高経営責任者(CEO)は27日、ヘッジファンド業界が数十年にわたる自身の投資歴で最も困難な時代に直面していると述べた。業界の先駆者であるロバートソン氏は、高額の運用報酬を徴収する時代は終わる可能性も示した。
ロバートソン氏(84)はブルームバーグ・サーベイランスのインタビューで、「このようなタイプのビジネスは最近うまくいっていない。厳しいビジネスだ」と述べ、「ヘッジファンド運用者であることはかつてないほど難しくなっている」と指摘した。
ジュリアン・ロバートソン氏 Photographer: Peter Foley/Bloomberg *** Local Caption *** Julian Robertson
同氏は1980年にタイガーを創設し、世界最大級のヘッジファンドに飛躍させた。ヘッジファンドのポートフォリオは低迷期でもアウトパフォームする設計となっているが、超低金利と株式市場のバリュエーション上昇でヘッジファンド運用者のリターンが縮小していると同氏は語った。ヘッジファンド業界は2008年以降毎年、S&P500種株価指数を下回るパフォーマンスに低迷しており、今年のリターンは8月末時点でプラス3.5%。
2000年に顧客に資金を返還して以降、自己資金を運用するロバートソン氏は、預かり資産の2%の管理料と運用益の20%を報酬として徴収するヘッジファンド業界の手数料モデルについて「聖域」だとは思わないと述べ、「報酬体系にはっきりとした流れが生じている」と語った。
その上で同氏は、米金融当局による歴史的な低金利政策を背景に株式市場で生成されているバブルが破裂するのに備えるため、投資家はポートフォリオの一部としてヘッジファンドに資産を保持すべきだと指摘。バブルが破裂すれば不動産も打撃を受けると予想した。
同氏はイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長について、「米国民が打撃を受ける状況を見たくないために深刻なバブルを生み出しており、いずれ深刻な苦痛を伴うと思う」とコメント。「このバブルがはじければ、空売りやヘッジファンド投資をしていない限り、株式市場でもうけを出せないだろう」と付け加えた。
原題:Hedge Funds Face Most Difficult Era Julian Robertson’s Ever Seen(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-28/OE6ZQ76S972I01
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