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激増する空き家、「税金で撤去」問題が深刻化…あらかじめ固定資産税に上乗せも検討要
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16689.html
2016.09.20 文=米山秀隆/富士通総研主席研究員 Business Journal
■空家法とその効果
近年の空き家急増に伴い、自治体は、問題空き家の撤去、使える空き家の再利用の両面で対策を講じてきた。このうち撤去については、問題空き家に対し、指導・勧告・命令・代執行を行うことのできる空き家管理条例の制定が進んだ。
条例制定が進んだことを受け、2014年11月には、同様の内容を含む空家対策特措法(以下、空家法)が成立した(15年5月26日全面施行)。空家法では、(1)倒壊等保安上危険、(2)衛生上有害、(3)著しく景観を損なうなどの状態になっているものを「特定空家」と認定し、指導・助言、勧告、命令、代執行の措置を行えるものとした。また、空家法では、従来、代執行ができなかった所有者がわからない場合も代執行できるようになった(略式代執行)。
同時に15年度税制改正では、勧告の対象となったものについては固定資産税の住宅用地特例を解除することとした。住宅を建てた場合の税軽減の仕組みは、住宅が足りない時代には住宅取得を促進する効果を持ったが、住宅が余っている現在では、危険な状態の住宅でも撤去せず残しておくインセンティブを与えていた。
このように空家法と税制改正によって、特定空家の所有者に対してプレッシャーが強まった。これが空き家所有者の行動に与える影響としては、特定空家にならないように維持管理を行う、賃貸化するなど物件を活用する、維持管理コストと将来的な税負担増を考えて売却するなどの選択を行うことが考えられる。
ただ、特定空家の所有者の税負担を高めたとしても、所有者にその支払い能力がなく、撤去費も出せない場合には、そのまま放置される物件も出てくると考えられる。この場合、最終的には代執行に至るが、費用を請求しても払ってもらえず、費用回収のため敷地の売却を迫られる。しかし、売れたとしても抵当権が付いていた場合、自治体に回ってくる分があるかはわからない。代執行に積極的に踏み切る弊害としては、最終的にこうした措置が取られることがわかっているとしたら、自ら動かず、自治体による措置が取られるに任せる所有者が出てくることである。
■さまざまなかたちの公費投入の仕組み
空家法と税制改正の効果により、特定空家の自主的な撤去は、従来よりは進んだ。現に自治体が直面している問題は、それでも対応してくれない場合、すべて代執行を覚悟するのか、あるいはそうなる前の段階で、撤去費補助などを通じ自主的対応をさらに促しておいたほうが得策なのかという問題である。
実際、これまで自治体は、各種のインセンティブを通じて撤去を促してきた。もっとも多く撤去費を補助している自治体は広島県呉市で、2015年度までに455件の補助を実施した(1件当たり上限は30万円)。呉市は斜面が多く撤去が進みにくいため、補助の仕組みを設けた。補助額は多くなかったため、当初は効果が出るかどうかわからなかった。
しかし結果として、これまで処分に悩んできた所有者が、空き家の撤去に踏み切るきっかけとなった。呉市では、地元の呉信用金庫などが500万円までの解体支援ローンの商品を提供しており、官民の資金支援で撤去が進んだ。仮に455件が代執行となれば、自治体の対応能力を超える。
このほか、土地建物を市に寄付する条件で、空き家の公費による撤去を進めた自治体もある(長崎市など)。また、空き家の建っていた土地を一定期間公共利用することを条件に撤去費を補助し、公共利用の期間の固定資産税を免除する仕組みを設けた自治体もある(福井県越前町など)。
こうしたさまざまなかたちの公費投入の仕組みは、自治体がそれぞれの事情によって講じたものである。ただし、公費投入にはモラルハザードの問題がある。最初から支援を受けられるとわかっていたら、誰も自己負担で撤去しなくなる。自治体としては、あくまでも自主的撤去を原則とし、公費投入に踏み切る場合は、地域にとって有効な手法を選ぶかたちで支援しようとしている。
■相続放棄のケース
16年3月31日時点で、空家法に基づく措置の実績は、指導・助言が168自治体2,895件、勧告が25自治体57件、命令が3自治体4件、代執行が1自治体1件となっている(国土交通省調べ)。所有者がわかっているケースの代執行は1件にとどまっているが、所有者がわからない場合の略式代執行は8自治体8件にのぼっている。自治体は、すでに事態が切迫していた所有者不明物件について、略式代執行で撤去を急いだことを示している。所有者がわからないケースは、費用は回収できず、公費投入となる。
一方、相続放棄されたケースでは、次の管理者が出てくるまでの間、相続人の管理責任は残る。しかし、管理者が出てくるのは、たとえば自治体が相続財産管理人を選任し、処分するようなケースである。費用がかかるため、こうした措置を取ることは限られる。相続放棄された物件が、特定空家に認定された場合は、相続人に対しては指導・助言、勧告まではできるが、それ以上の措置はできない。そこで、撤去の必要が生じた場合は略式代執行になるが、この場合も公費投入になる。相続放棄は、今後ますます増えていくと予想される。
すべての特定空家を公費で撤去することは不可能であるため、この問題は最終的には、人口減少下で今後も居住地として存続させるエリアについて、居住環境を維持するために、所有者による自主的対応が期待できない特定空家を、どれだけ公費を投入して撤去していくかという問題に発展していく可能性が高い。それにしても税負担は増すばかりである。
■撤去費用の事前徴収も
空き家の撤去費用は、本来は所有者が負担すべきである。しかし現状では、撤去費の補助や、費用回収を見込みにくい代執行でも実施せざるを得ないというかたちで、公費投入がなされている。これは所有者が負担すべきものを、納税者全員で負担していることになり公平性を欠く。
今後については、必ず所有者が負担することになるよう、たとえば毎年の固定資産税に、撤去費に充てる分を少しずつ上乗せして徴収していく仕組みも考えられよう。固定資産税が徴収されている限り、最終的に相続放棄されたり所有者がわからなくなったりしたとしても、撤去費用の心配はなくなる。自ら撤去する場合は、積み立てた撤去費が還付される仕組みにすればよい。今後の検討が望まれる。
(文=米山秀隆/富士通総研主席研究員)
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