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ルネサス新社長、呉文精氏が就任(ロイター/アフロ)
ルネサス、自ら抱えた経営危機リスク…「高値掴み」巨額買収で一気に巨額減損の懸念も
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16688.html
2016.09.20 文=編集部 Business Journal
半導体大手のルネサス エレクトロニクス(東証1部上場)が先ごろ、米国の同業であるインターシル社(米カリフォルニア州)を32億1900万ドル(約3250億円)で買収すると発表した。新聞報道等では「攻めの経営に転じた」「シナジー(相乗効果)が期待できる」などとおおむね前向きな評価をしている。一方、一部市場関係者の間では「とんでもない高い買い物をした」と手厳しい声が上がっている。
ルネサスは売上高の約半分が車載用で、エンジンなどに使われるマイコンが中心。インターシルは電圧制御用の「アナログ半導体」と呼ばれる産業用が中心だ。これがルネサスとの事業間におけるシナジー効果への期待につながっている。
買収金額の3250億円についてルネサスでは、6月末時点で約4000億円ある手元資金を充当し、新規の借り入れや増資は検討していないとしている。呉文精社長は会見で「買収効果は数年先に170億円以上」と表明している。ルネサスが日・欧、インターシルが米・中に強みがあり、現存の商品をお互いの顧客に販売すればすぐに相乗効果があると自信をみせた。
■のしかかる「のれん代」
これに対し、業界に詳しい調査機関のアナリストは「高値づかみの買収」と手厳しい見方を示す。同調査機関の試算によれば、今回の買収でのれん代が約2000億円に上ることが、その根拠となっている。
「のれん」とは、物質的な価値はないものの、ブランドや品質などの無形の資産。買収時には企業の本来価値に上乗せして評価する。買収後に償却していくが、思うように業績が伸びない場合などには、減損リスクも出てくる。日本基準の20年で償却した場合、この間は年間100億円の償却費が発生し、利益の押し下げ要因となる。
インターシルの2015年12月期の当期純利益は700万ドル(約7億円)。14年12月期にはそれより多くの利益を上げているが、負担はかなり大きい。売上高でも15年は520億円と、ルネサスの6932億円(前期実績)の10分の1以下だ。将来的な減損リスクが垣間見える。
タイトロープをうまく渡らない限り、財務が傷む公算が大きい。手元の現金は1000億円に満たず、経営の先行きに暗雲が漂う可能性もある。
■革新機構の思惑
ルネサスは産業革新機構が約7割の株式を保有する国主導の再建企業だ。日立製作所、三菱電機の半導体統合企業がNECエレクトロニクスと統合して発足し、その後に革新機構などから巨額の出資を仰いだ経緯がある。親方日の丸体質が抜けず、業績が低迷したままのジャパンディスプレイ。大企業の中小型パネルの統合企業であるこの企業もまた、革新機構傘下だ。
ルネサスをめぐっては、モーター大手の日本電産がかねてより買収に意欲を見せている。ルネサスの呉社長は今年6月に同社社長に就任したが、13年に日本電産に入社し、13年には同社の永守重信会長兼社長に次ぐナンバー2(副社長)に昇格している。しかし、15年には期待された成果を挙げられずに退職した。
今回、革新機構が呉社長体制にしたのは、日本電産による買収を牽制したとの見方もある。ただ、機関投資家からは「再建の神様ともいわれる日本電産の傘下に入って収益力を高めたほうが、株主価値が上がる」との指摘がある。呉社長としても経営を軌道に乗せて見返したいとの思いもありそうだ。
今回のM&A(企業の買収・合併)劇はいかにもばくちに見える。株式市場ではルネサスによるインターシルの買収観測が出て以降、株価は一時を除いて反応薄。年初来の安値も視界に入る水準で、投資家は警戒感を持って見守っている。
(文=編集部)
※画像:ルネサス新社長、呉文精氏が就任(ロイター/アフロ)
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