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コラム:
米9月利上げの線は消えたのか
井上哲也野村総合研究所 金融ITイノベーション研究部長
[東京 15日] - 8月下旬のジャクソンホール会議でのイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の講演以降、FRB幹部による「硬軟両面」からの発言が相次いでいる。9月20―21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に対する関心は、否応なく高まっている。
利上げが適切と考える場合の根拠は、主として、米国の金融経済をめぐる循環的要因に見出すことができる。
つまり、改善のモメンタムは低下気味とはいえ、労働市場は完全雇用に近い状況にある。また、インフレ率についても、FRBが注目する個人消費支出(PCE)コア物価指数(食品・エネルギー除く)は1%台半ばにあり、以前の輸入物価による下押し圧力が解消するに連れて2%目標に向けた上昇が展望されている。よって、物価の安定と雇用の最大化というFRBの「デュアルマンデート」は概ね満たされているという解釈だ。
確かに、背後にある経済活動も、「robust(力強い)」ではないにしても「steady(堅調)」である。雇用、所得や住宅価格の回復に支えられて個人消費がけん引力を発揮し、設備投資もエネルギー関係のマイナス寄与が徐々に解消することが期待されている。
今年前半のFOMC議事要旨の中で再三示唆された海外情勢の懸念に関しても、国際金融市場における新興国経済や欧州金融システム、英国の欧州連合(EU)離脱などに関する過度な不安は後退している。
また、このところ欧州中銀(ECB)や日銀の「量的緩和」の拡大や延長の余地に関する限界が意識されている結果、米国と日欧との金融政策の方向の相違というストーリーは明確化しにくくなっている。
つまり、FRBはドル相場に明示的な関心を示している(12日のブレイナードFRB理事の講演では、2014年以降の約20%のドル高が200ベーシスポイントもの利上げに相当する効果を持ったとの推計が示された)が、9月に利上げをしてもドル相場がさらに大きく上昇するリスクは低下していると捉えることもできる。
<利上げ慎重論の根拠>
これに対し、米国の金融経済が抱える構造要因に着目すると、利上げに慎重な意見を導くことができる。例えば、米国の潜在成長率は、労働力の増加率が約1%、労働生産性の成長率が約0.5%であることを踏まえると、技術革新などの効果を考慮しても2%前後とする見方が強い。
実際、FOMCメンバーによる前回6月時点の「長期成長率」も2%である。潜在成長率が低い下では総需要が増えればインフレ圧力が生じやすい面もあるが、自然利子率も低下している(昨年注目を集めたFRBのローバッハ−ウィリアムズ推計ではゼロ近傍だった)だけに、政策金利が比較的低位な段階から強い引き締め効果が生じることになる。
また、今年のジャクソンホール会議のテーマだった金融政策の持続性の観点でも、FRBは依然として政策金利の名目ゼロ制約を強く意識しているとみられる。この点に関しては、イエレン議長が、政策金利がゼロでも「量的緩和」や「フォワードガイダンス」で乗り切れるとの講演を行ったため、逆の解釈もみられるが、講演のベースになったFRBエコノミスト(ライフシュナイダー氏ら)による論文でも、経済の回復過程でショックに見舞われた場合の対応に限界があることを認めている。
さらに、イエレン議長を含めてFRB中枢はマイナス金利政策に懐疑的であることにも注意すべきだろう。だとすれば、今年前半のFOMC議事要旨にも示されていたとおり、米国経済の回復が後戻りしないように、利上げは極めて慎重に行う必要がある。
<米大統領選との関係>
このように「硬軟両面」の議論に各々合理性があることを認めた上で、筆者は9月FOMCでの利上げは見送られる可能性が高いと考える。第1の理由は、あえて利上げをしなくても、すでに同様の効果が生じている可能性である。
12日にブレイナード理事が指摘したように、ドルの実効レートは2014年以降に大きく上昇した後も高止まっているだけでなく、足元では、日欧の市場にも影響される形で米国の長期金利に調整の兆しがある。これらは、米国の金融環境をすでにタイト化しており、利上げと同じ効果をもたらしていると理解できる。
しかも、フィッシャ―副議長に代表されるように、極めて低位な長期金利に支えられたクレジット市場や株式市場の動きを抑制することも利上げの理由とする考え方に照らしても、長期金利が自律的に調整され、金融環境がややタイトな方向に動くとすれば、利上げを急ぐ合理性を後退させることになる。
第2の理由は、大統領選挙との関係である。筆者は、大統領選挙が近いとか、両候補の支持率が拮抗しているといった理由だけで、アプリオリ(自明的)にFRBが政策判断を下せなくなるとは思わない。ただ、本稿で見てきたように、9月のFOMCを取り巻く金融経済状況は、利上げの適否を判断する上で微妙なバランスを示している。
逆に言えば、利上げの結果として金融市場や経済活動に予想以上の影響が生じるリスクが残るだけでなく、結果論として利上げを批判するための材料は容易に見出し得る。これまでのイエレン議長の慎重な姿勢を念頭に置けば、あるいはFRBにとって現時点の躓(つまず)きが将来の利上げプロセスに及ぼし得る影響を考えれば、「無理をして」利上げを実施したイメージを与えることは避けたいのではないだろうか。
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融ITイノベーション研究部長。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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http://jp.reuters.com/article/column-tetsuya-inoue-idJPKCN11L059
米小売売上高、8月は予想超える落ち込み 内需減速を示唆
[ワシントン 15日 ロイター] - 米商務省が発表した8月の小売売上高は前月比0.3%減と、市場予想の0.1%減を超える落ち込みとなった。自動車など多岐にわたる分野が低調で、内需減速の兆候を示唆し、米連邦準備理事会(FRB)が来週利上げを見送るとの見方がさらに高まる可能性がある。
前年比では1.9%増だった。
7月分は横ばいから0.1%増に上方修正された。
自動車、ガソリン、建設資材、食品サービスを除くコア小売売上高は0.1%減。市場予想は0.3%増だった。前月分は0.1%減に下方修正された。
内訳では自動車が0.9%減となったほか、ガソリンスタンドが0.8%減。オンライン小売は0.3%減、スポーツ用品・趣味は1.4%減だった。家具、建材なども減少した。
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一方、衣料品は0.7%増、電子機器・家電は0.1%増、外食は0.9%増だった。
http://jp.reuters.com/article/aug-us-retail-sale-idJPKCN11L1PH
スイス中銀、金利据え置き フランは大幅に過大評価と主張
[チューリヒ 15日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行)は15日、主要政策金利を据え置いた。
中銀預金金利はマイナス0.75%に、3カ月物LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の誘導目標はマイナス1.25─マイナス0.25%に維持した。
中銀は声明で「スイスフランは依然として大幅に過大評価されている」と指摘。
またマイナス金利を維持し、為替介入を辞さない構えを示していることについて「フランへの投資の魅力を削ぎ、フラン相場の上昇圧力を抑制することが目的だ」と説明した。
マイナス金利をめぐっては、保険会社や年金基金の投資環境が大きく悪化しているなどとして批判が出ているが、欧州における経済の不透明性は「著しい」として、超緩和政策を堅持する方針を示した。
スイス中銀は、とりわけ欧州中央銀行(ECB)の追加緩和の行方などによるフラン相場への影響を見極めたい意向で、現時点では様子見姿勢を保っているとアナリストは指摘する。
中銀はスイスの2016年の成長率がプラス1.5%になるとの予測を示した。これは6月時点の予測である1─1.5%の上限。
今年のインフレ率見通しをマイナス0.4%で据え置く一方、2017年は0.2%、2018年は0.6%にそれぞれ引き下げた。
中銀は英国の欧州連合(EU)離脱決定で、世界経済の見通しを評価することがより困難になったと指摘。英国とユーロ圏の成長率見通しを引き下げたことを明らかにし、「様々な構造問題があり、世界経済のリスクは下向き」との見方を示した。
J・サフラ・サラシン銀行の通貨ストラテジスト、ウルシナ・クブリ氏は「スイスの景気が想定より力強く持ち直していると中銀は認識しているが、英国のEU離脱決定後、欧州経済の見通しに対する楽観はやや後退した」と指摘。スイスでの拡張的な金融政策が正当化されると述べた。
*内容を追加します。
http://jp.reuters.com/article/swiss-nationalbank-idJPKCN11L0PJ?sp=true
アングル:
イメージ一新の金融リポート、国民資産形成に力点 低金利継続で
[東京 15日 ロイター] - 金融庁が15日に公表した「金融リポート」では、国民の安定的な資産形成に関する記述に最も紙幅を割き、従来の「モニタリングリポート」からイメージを一新した。現下の超低金利を背景に、従来通りの預貯金主体の運用では金融資産が思うように増えないため、長期・積み立て・分散投資という3つのキーワードで、国民の資産運用への関心を高めたいという金融庁の狙いがにじみ出ている。
金融庁は、これまで金融機関への検査を踏まえた分析や問題意識などを「金融モニタリングリポート」にまとめ、年1回、公表してきた。
しかし、2015年9月に公表した「金融行政方針」で、金融機関の検査・監督方針に加え、企画部門や国際部門など金融庁の全部局の指針を網羅。モニタリングリポートも「金融リポート」に衣替えし、金融庁の取り組み全体をカバーする構成になった。
同リポートの「変身ぶり」を最も示しているのが、国民の資産形成について具体的な手法に踏み込んだ部分だ。
そこでは、国内・先進国・新興国について、株式と債券の合計6種類に分かれたマトリックスに6分の1ずつ投資資金を分散し、20年間にわたって定額を投資すれば79.9%のリターンが得られるのに対し、同期間に定期預金だけで積み立てても1.32%しか得られないと、グラフ付きで指摘した。
この記述が出てくる章は27ページに及び、リポート全体の約2割を占めた。分散投資を1ページのコラムで扱った昨年のモニタリングリポートとは対照的だ。
金融庁幹部は、15日の記者向け説明会で「リポートを金融機関以外の人にも読んでもらいたい」と述べた。
一般国民が読むことを想定し、表現をわかりやすくし、資産形成を扱った部分ではページ欄外の注釈がほとんど入っていない。
リポート内容の変化の背景には、超低金利環境の継続への警戒感がある。金融庁のある幹部は「超低金利の長期化で金融機関の収益は厳しく、預金を敬遠する状況だ」と指摘。「最低の水準に預金金利が低下するなかで、金融資産を預貯金に寝かしておいても資産は少しも増えない」と危機感を募らせる。
金融庁は国民の安定的な資産形成を目指し、少額投資非課税制度(NISA)の利用状況を分析。積み立てNISAの創設を打ちだした。同庁のウェブサイトにはNISA特設サイトを設けられ、国民の投資教育の一翼を担う。
金融庁の幹部は「長期・分散・積み立て投資を国民運動にしたい」と述べている。
(和田崇彦 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/fsa-financial-report-idJPKCN11L1QE
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