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緩和バブルの修正開始 日本株にもグローバルマネーの売り 黒田日銀、戦略転換か 中銀の「独立性」低インフレの元凶か
http://www.asyura2.com/16/hasan113/msg/177.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 9 月 12 日 22:03:24: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

焦点:
緩和バブルの修正開始 日本株にもグローバルマネーの売り

[東京 12日 ロイター] - 世界的な金融緩和バブルが、修正されようとしている。米国の利上げ観測に加え、日欧の金融緩和政策の転換点も意識されるなか、長期金利が上昇。リスク資産は大幅安となり、日本株にもグローバルマネーの売りが押し寄せている。

世界的な景気は弱く、金融緩和環境は維持される見通しだが、過度な織り込みはいったん見直しを余儀なくされそうだ。

<日米欧で相次ぐ金利上昇材料>

足元の世界同時の金利上昇は、9月の米利上げ観測だけでは説明がつかない。まず、政策金利の上昇観測に反応しやすい米短期金利の方が、米長期金利よりも上昇幅が小さい。それだけではなく、金融市場が織り込む9月利上げ確率(CMEフェドウォッチ)も9日時点で24%と、わずか3%ポイントの上昇にとどまっている。

では、世界的に金利が上昇したのはなぜか。1つは欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁発言だ。ドラギ総裁は8日のECB理事会の会見で、理事会では資産買い取りプログラムの延長について討議しなかったと発言。市場の緩和期待に水を差した。ドイツに財政措置を促したことも、当面の緩和期待を後退させる要因となった。

9日の欧米市場における金利上昇は、ハト派の米ボストン地区連銀総裁が、利上げを待ち過ぎることのリスクが大きくなりつつあると発言したことがきっかけとされる。だが、世界的な金利上昇は同発言の前から始まっている。「発言はあくまで世界的な金利上昇の補強材料にすぎない」(国内銀行アナリスト)との見方がもっぱらだ。

もう1つの金利上昇要因は、日銀による金利スティープ化観測だ。ロイターは9日、日銀が9月20─21日に議論する総括検証を踏まえ、イールドカーブのフラット化の修正策を検討すると報じた。これを受けて円債市場で長期金利が上昇。「スティープ化の流れが世界的に広がった」と、りそな銀行・総合資金部チーフストラテジストの高梨彰氏は指摘する。

<市場は緩和の限界を意識>

米連邦準備理事会(FRB)はいち早く昨年末に利上げに動いたが、量的緩和(QE)時代に膨らんだバランスシートは、そのまま維持されている。日欧はその間も金融緩和を強化してきた。多くの国で国債金利がマイナス圏に沈む様相は「金融緩和バブル」と呼ばれることも多い。

しかし、中央銀行が国債を大量に買うことで、マネーを市場に放出する金融緩和手段は、限界が意識されるようになってきた。ECBは金利が低下したドイツ国債をほぼ買うことができなくなったほか、日本でも国債購入の大幅な積み増しは難しくなっているとの見方が市場では多い。金利スティープ化の議論が浮上するのは、金融機関におけるマイナス金利の副作用が大きいからに他ならない。

日本や欧州の金融緩和フレームが、限界を迎えたのか議論の余地はある。だが、少なくとも市場では「これまでの金融緩和バブルが修正され、金利低下を背景に株価が上昇してきた金融相場がいったん調整を迎えることになりそうだ」(JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏)との見方が広がり始めている。

米利上げ期待によるドル高/円安が進めば、日本株下支えが期待できる。だが、9日の米ダウ.DJIは400ドルに迫る大幅安。リスクオフムードが強まる中で、円安の勢いも102円台で減衰してしまった。12日の日経平均.N225は一時364円安。「グローバルマネーの売りが日本にも押し寄せている。日銀のETF買いで止められるものではない」(外資系投信)という。

<景気不安強いなかでの金利上昇>

これまで金融緩和後の金利上昇局面では、景気が回復し、物価も上昇した。企業業績も拡大するという、金融相場から業績相場への移行が想定されたため、金利上昇の悪影響を抑えることができた。しかし、今回は金融緩和の限界が取りざたされるなかでの金利上昇だ。金利上昇のショックを吸収できる余地は乏しい。

FRB高官のタカ派発言に神経質に市場が反応したのも、日欧発の金利上昇局面が強まっていたというだけでなく、8月のISM米景気指数が製造業、非製造業ともに市場予想を下回るなど米景気への不安が台頭していたためだ。「ハト派発言を予想していただけに驚きだった」(邦銀ストラテジスト)という。

「金融緩和が長引いたことで、不動産市場などのゆがみが強まることへの警戒があるのだろう。9月米利上げが実施されるかどうかはともかく、最近のFRB高官の発言からは金利正常化への強い意思を感じる」と三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏は話す。

景気改善による金利上昇ではないだけに、金融緩和環境は維持せざるを得ない。マネーはまた、債券市場に帰ってくる可能性は大きい。20─21日の日米中銀会合で金融政策の不透明感が払拭されれば、金利上昇はいったん打ち止めになるかもしれない。金利が上昇すれば、投資家のイールドハンティングの動きも強まるとみられている。

しかし、長引く超金融緩和でバブルは大きくなっている。崩壊に至らないにせよ、その修正は市場に多大な影響を及ぼしかねない。

12日の東京株式市場で銀行株.IBNKS.Tは2%下落した。日経平均の1.73%を超える下落率だ。円債市場では金利のスティープ化が進んだが、それを素直に好感する動きではなかったことは、投資家の警戒心を示していると言えそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/cross-mkt-eye-idJPKCN11I0VH?sp=true


 

コラム:
黒田日銀サプライズ戦略「転換」の布石か

佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 12日] - 先週、黒田東彦日銀総裁(5日)と中曽宏日銀副総裁(8日)はそれぞれ講演を行ったが、その内容はともに「金融緩和政策の総括的な検証」に関するものだった。

これは、日銀が市場との対話の方法を変えようとしていることを示唆しているのかもしれない。つまり、政策変更について市場が一定程度正しく織り込んでいくことを目指し始めている可能性がある。

周知のとおり、今年1月のマイナス金利導入以降、日銀の金融政策におけるサプライズ戦略に対し、疑問の声が高まっている。サプライズ戦略は市場にポジティブな影響を与えているときには歓迎されるものの、一部参加者にデメリットを与えるような政策を実行する場合には、市場が不安定化し、ネガティブな反応が増殖してしまうと考えられるためだ。

では、黒田日銀は、今後の金融政策について、どのように市場が織り込んでいくことを目指しているのだろうか。以下、筆者の個人的な推察を示したい。

<正副総裁講演の共通点>

実は黒田総裁と中曽副総裁の講演には、共通する部分が多い。両者とも総括検証の内容として、以下の2つのポイントを指摘している。1)2%のインフレ率が達成できない理由、2)マイナス金利政策の効果と影響だ。

まず、最初のポイントについては、両者とも「何が2%のインフレ率達成を阻害したのかを検証し、できるだけ早期に2%の物価安定の目標を実現するために何をすべきかを議論する」と指摘している。

したがって、具体策の詳細はともかく、金融緩和後退方向に動くことは考えられず、インフレ率を引き上げる方向に政策の方向性を維持することは確実だろう。金融政策の目指すところは変わらない、という強いメッセージだ。となれば、21日の総括検証の公表後に急速な円高となるような事態は考えにくいだろう。

一方、マイナス金利については、黒田総裁・中曽副総裁の講演には2つの共通点が見られる。

1つめは、長期国債買い入れとマイナス金利政策の組み合わせは、日本国債のイールドカーブに対して、非常に強力なインパクトを与えることが分かったと指摘している点だ。2つめは、両者ともマイナス金利のネガティブな影響に関して比較的丁寧に説明している点だ。

黒田総裁の講演原稿を見ると、マイナス金利のポジティブな面よりも、ネガティブな面の説明に1.5倍以上の行数を割いている。中曽副総裁の講演原稿でも、ネガティブとポジティブの両面についてほぼ同じ行数を使って説明している。加えて、両者とも「コスト」と「ベネフィット」のバランスを考えて政策を行う必要があることを指摘している。

また、黒田総裁、中曽副総裁ともに、イールドカーブがフラット化し過ぎたことのネガティブな側面を率直に認めている。さらに、桜井真審議委員も、2日のロイターとのインタビューで、「イールドカーブの形状をどう変えていくかも、可能性としては政策の選択肢に入る」と発言している。

つまり、黒田日銀の現在の考えは、以下の3点に集約できそうだ。

1)できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現することを目指す方針は変えない。

2)マイナス金利の深掘りはそのコストを勘案しても実施すべきと考えられるような状況に陥ったときに行う。

3)長期金利が下がり過ぎたことのマイナス面は率直に認め、ややスティープなイールドカーブ実現を目指す。

<日銀の外債購入は非現実的>

上記の2番目と3番目だけを考えると、20―21日の金融政策決定会合では新たな動きを何もしない(金融政策据え置き)というシナリオもあり得ることになる。

市場はマイナス金利拡大をさほど織り込んでおらず、長期金利はすでに比較的大きく上昇していることに鑑みると、今回新たな動きがなくとも、市場はそれほど大きく変動しないかもしれない。むしろ、マイナス金利深掘りや長期金利を押し下げるような政策が行われないことによって、銀行に対してポジティブな要因となり、銀行株主導で日本の株価全体にとってもポジティブな影響が出てくるかもしれない。

一方、1番目の実現に向けては、新たな動きを示す必要はありそうだ。もっとも、何か新たな動きを示したところで、これまでの延長線上では、市場が2%のインフレ率達成を本当に信じ始めるのは困難かもしれない。

黒田総裁・中曽副総裁が講演の中で強調しているのは、日本における予想物価上昇率は、「フォワード・ルッキングな予想形成」ではなく、過去からの実績に基づく「適合的な予想形成」の影響が大きいという点だ。同じような政策を続けていたら、相変わらず予想物価上昇率は「適合的な予想形成」の影響を強く受けるだろう。

ちなみに、浜田宏一内閣官房参与(米イエール大学名誉教授)は8月30日のロイターとのインタビューで、日銀による外債購入も選択肢との見解を示した。これに対して布野幸利審議委員は8月31日の講演後の記者会見で、「私は外債は日銀が金融会合で決定すれば購入できると思う」と発言し、市場でも日銀の外債購入に対する期待が多少高まったと考えられる。

しかし実際には、日銀の外債購入は選択肢として示すことすら、ほとんど考えられないだろう。仮に日銀が、金融政策の一環としての量的緩和政策の補完的な位置付けだと強弁したところで、その結果、円相場が円安方向に動いたら、財務省が行う為替介入と何ら変わらない。現在の日米関係、日米両国が置かれている環境を考えると、日本が為替を操作し円安方向に誘導することが認められるような状況にはないと思われる。

米大統領選挙、環太平洋連携協定(TPP)といった広範な問題に加え、相次ぐ北朝鮮による弾道ミサイル発射(日本の排他的経済水域内に落下)と核実験、ぎくしゃくする日中関係を考えると、円相場を一時的に円安方向に誘導して、日米関係を不安定にする余裕はないだろう。

もちろん、金融当局者が政策に関する発言を控えるブラックアウト期間は15日以降なので、今週は14日までは日銀から新たなメッセージが発せられる可能性に注意が必要だ。だが、まずは先週の黒田総裁・中曽副総裁のメッセージを素直に受け止めたいと筆者は考える。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN11I0WM?sp=true


 


債券売りが株にも波及、中銀政策めぐる懸念の高まりで−円上昇
James Regan、Lukanyo Mnyanda
2016年9月12日 20:35 JST

長期債から始まった債券売りが株を含め金融市場全体に波及しつつある。12日の欧州株とアジア株は英国の欧州連合(EU)離脱選択後以来の大幅安。米株先物も下げている。世界の中央銀行が景気刺激策を引き揚げる準備をしているとの懸念が背景にある。
  この日の米国債は4営業日続落。ドイツ10年債利回りも英EU離脱選択が判明して以来の高水準に達した。原油は1バレル=45ドルに向かって下落し、円は上昇した。
  先週はボストン連銀のローゼングレン総裁が、景気が過熱する可能性に言及。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は追加緩和の観測に水を差し、イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁はリセッション(景気後退)のリスクが後退したと述べた。日本銀行の20、21日の会合を控えトレーダーらは中銀政策に神経質になっている。
  ニューヨーク時間午前6時54分現在、MSCIオールカントリー・ワールド指数は0.8%安。ストックス欧州600指数は1.7%安。MSCI新興市場指数は2.6%安と6月24日以来の大幅安。
  ドイツ10年債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し0.04%。一時は6月24日以来の高水準となった。米10年債利回りは2bp上昇の1.69%。日本は10年未満の国債が上昇し長期債は下落。ロイター通信は9日、日銀がイールドカーブスティープ化の選択肢を検討していると報じた。
  円は対ドルで0.6%高。
原題:Global Selloff Threatens to Spiral as Central Banks Angst Builds(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-12/ODE13N6JIJV201

アジア版発刊40周年:膨張するジャパンマネー、日米間に緊張
横浜港から欧州に向けて積み出される日産の自動車(1983年1月)

By URBAN C. LEHNER AND ALAN MURRAY
2016 年 9 月 12 日 08:25 JST
*原文記事は1990年6月にWSJアジア版に掲載されました。

【ノースプラット(米ネブラスカ州)】米ネブラスカ州中心部に位置する粘土と砂の丘に囲まれた人口2万5000人のこの町はある意味、米国の心臓だ。東と西の両海岸からやってくる巨大な貨物列車が出会う、世界最大の操車場がここにあるからだ。

 だが、米国のほぼ真ん中にあるこの町でさえ、日本による「ミニ侵略」は進行中だ。日本の投資家が昨年、近くの村、ブレイディーにある牛の牧場を買い上げたのだ。その騒ぎはいまだに収まっていない。

 ガソリンスタンドを経営するウィリアム・タネルさんは「東洋人の考えは分かっている」と語る。「土地を失ったら、彼らから買い戻すことはできない。それは代々、彼らのものになる。決して取り戻せない」

 レストランのロジャーズでは、客にコーヒーを注ぎながらヘレン・ヒギンボザムさんが「私たちもすぐに乗っ取られることになる」と話す。「心配なのはそのことだ」

 ジャパンマネーはまるで、成長の速い「葛(クズ)」のつるのように全米に広がっており、大量の米国債のほか、下水処理場や高層ビル、スキーリゾート、穀物倉庫、そしてゴルフコースを買い漁っている(訳注:米国でクズは侵略的外来種として駆除の対象になっている)。1985年以降、日本からの米不動産投資は7倍に増えた。同じ期間に製造業への投資は30億ドルから120億ドルへ急増した。


 コロンビア・ピクチャーズやロックフェラーセンターなど、日本人が買ったものの中には「トロフィー」資産として注目を集めたものもある。こうした日本勢の購入意欲はとどまる気配が見えない。1970年代に短命に終わったアラブのオイルマネーによる投資ブームと異なり、日本からの投資はより根本的な理由が背景にある。日本の高い貯蓄率が新たに富裕層となった日本人に膨大な資金力をもたらし、それが世界に流れている。一方、米国民の貯蓄率は低く、巨大な財政赤字も一因となり、米国が日本の資金力に頼る構図になっている。

 さらに言えば、ここ5年間のドル急落により、日本人にとっては米国の資産が特売品のようになっている。土地や食品、賃金ですら割安であるため、日本に比べて米国はほとんど第3世界の国のような様相を呈している。ニューヨーク在住の日系新聞社の幹部は市内で最も高級な日本食レストランで接待する際、値段が書かれていないメニューを用意してもらうのだと話す。接待相手が料理の値段を見れば、こちらが出し惜しみをしていると思われるからだという。

 こうしたジャパンマネーの氾濫は米国を悩ませている経済的不安を物語っている。過去数十年にわたり、米国は海外に多額の投資をしてきた。米国からの投資に懸念を抱く相手国には、投資によって彼ら自身も恩恵を受けると説いてきた。それがここに来て、逆の立場になったわけだ。米国人はそれをまったく気に入っていない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースが全米規模で共同実施した最新の世論調査によると、登録済み有権者の69%が日本はすでに米国に「あまりにも多く」投資していると回答した。ノースカロライナ州で活動する団体「Help Save America for Our Kids’ Future」は、「ジャパニズム」が共産主義に取って代わり、米国への重大な脅威になっていると警告を発した。

 ジャパンマネーは米国の顔を変えてしまうのだろうか。その結果、米国は自らの運命をコントロールする力を失い、世界に対する影響力も失ってしまうのだろうか。これは米国の貿易赤字以上に、向こう10年の日米関係の中心に据えられる問題となるだろう。

 米国が自国の資本に頼ることができれば、この国の未来はより安泰になるという点に疑問の余地はない。だが、米国民の貯蓄率が低いままである限り、この選択肢はない。ハーバード大学のエコノミスト、ローレンス・サマーズ氏は「日本の資本より米国の資本のほうが良いが、まったく資本がないよりは、日本の資本があったほうがいい」と語る。

 より分かりにくい問題は、日本からの投資を他の国からの資本より懸念すべきかどうかだ。エコノミストらは、実業家や投資家というのは世界中どこであれ、最終的な利益という同じ尺度によって動機づけられていると考える傾向にある。だが日本の事情に詳しいウオッチャーの中には、日本人は他とは異なる、より警戒すべき種類の資本主義を発展させてきたと指摘する向きもある。それは、個人の利益と同じくらい国家としての目標が動機となる資本主義だ。

 学習院大学のイバン・ホール教授は「日本人は米国人に比べ、『私たち』と『彼ら』を区別する感覚を強く持っている」と指摘。そのうえで、日本人は「自分たちの島国意識を米国に持ち込んでいる」と話す。例えば、日本企業で働いている米国人は昇進の機会が少ないと不満をもらす。米企業によると、日本企業は米国のサプライヤーより日本の会社を好む。知識集約的で給与の高い職務は日本国内にとどめておき、低い技能しか必要のない仕事を米国に出していると懸念する声もある。世界的に景気が下降局面にある場合、日本企業は失業という負担を米国に押しつけかねないと心配する向きもある。

 エコノミストの多くは日本の投資を恩恵ととらえている。金利上昇の抑制と雇用創出につながっているためだ。また、新たなグローバル市場では所有権はもはや問題ではないとの意見もある。ハーバード大のロバート・ライシュ教授は米国内で製造されたソニーのテレビを持っているほうが、メキシコで製造されたゼニスのテレビを持つよりも、はるかに健全だと語る。

 だが、WSJとNBCニュースによる世論調査が示すように、最も一般的な米国民の大半がそうした楽観論には与していない。カリフォルニア大学サンディエゴ校の日本研究の専門家、チャルマース・ジョンソン氏は「所有権が重要ではないと思うなら、もはや資本主義というゲームに参加していないことになる」と指摘する。

 ネブラスカ州ノースプラットやその他の地域には、日本人は異なるルールでゲームをしているとの感覚がある。鉄道員のロバート・ヒルさんは「(日本人の)土地の利用法は、牛を育て、その肉を日本に送ることが全てだ」と話す。「彼らはこちらの社会にもっと参加する必要がある」 

 果たして日本人のルールは異なっているのだろうか。ミシガン州立大学のエコノミスト、モルデカイ・クレイニン氏は多国籍企業62社(欧米資本42社、日本資本20社)がオーストラリアで展開する子会社の運営状況を調査した。その結果は目を見張るものだった。米企業傘下の工場と、米企業ほどではないにしても欧州資本の企業が所有する工場では、米国製や日本製、そして欧州各国で製造された機器・設備類が採用されており、国による目立ったパターンというものがなかった。ところが日本資本の工場では「圧倒的な優位さ」で日本製の機器・設備類が使用されていた。クレイニン氏は英誌ザ・ワールド・エコノミーにそう記している。

 インタビューの中でクレイニン氏は「日本人は違う」と言明。「欧米企業が工場で使う機械を購入する際には競争入札を実施する。しかし、日本企業は直接、日本(のサプライヤーに)行く」。クレイニン氏は「系列」と呼ばれる商慣行にもその一因があると指摘する。

 クレイニン氏の調査ではさらに、日本企業は海外現地法人の幹部に駐在員を起用するケースがはるかに多いことが分かった。欧米企業の大半の現法は幹部が全員オーストラリア人だった。一方、幹部が全員オーストラリア人という現地の日本企業は20社中1社しかなかった。幹部にオーストラリア人を起用していたとしても、後ろには実権を握る日本人の「アドバイザー」がついていることが多かった。

 日本政府の統計にも同じような状況が表れている。日本企業が海外に持つ現法の幹部の45%、最高経営責任者(CEO)の85%は日本人だ。一方、日本に進出している外国企業の現法のうち、母国から経営陣が送られてきている割合はわずか20%だ。

 日本企業は外国人を昇進させる上で一つの問題があると説明する。それは日本語を流ちょうに話す人材を見つけるということだ。たとえ日本語に堪能だとしても、外国人が日本の堅苦しい企業文化を理解するのは難しいというのが彼らの主張だ。例えば、第一生命が新入社員に配布する冊子には、年長者とエレベーターで一緒になった場合の立ち位置や、ゴルフをする際の振る舞い方、単刀直入になり過ぎずに自分の意思を相手に伝える方法など、細かい指示が記載されている。

 米国で事業展開している日本企業の一部は確かに、現地の怒りをなだめようと試みている。日本企業が米国でチャリティー(慈善活動)にあまり貢献しないとの不満を耳にした日本政府は、海外での慈善活動費を対象にした税優遇措置の検討を始めた。日本企業がマイノリティーをあまり雇用せず、黒人問題にも無関心だとの声を聞けば、経団連は公民権運動に関する米ドキュメンタリー番組の日本語版を制作した。

 日本の政府関係者や専門家などは、日本企業は単に海外での経験がもっと必要なだけだと話す。日本経済新聞の永野健二編集委員は、今は国際投資の第一段階にすぎないとし、日本の多国籍企業が生き残っていくためには、より国際的にならねばならないと話す。

 だがクレイニン氏は、悪いのは経験不足だけだという見解に賛同しない。「オーストラリアでは、まるきりの新参者というわけではない(日本)企業が数社ある。それでも事業拡大を見据えた際はいつでも、(幹部とサプライヤーを確保するために)彼らはまっすぐ日本に戻る」

(原文:JAPANESE SPENDING SPREE SPARKS TENSION WITH U.S.)

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