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「犯罪の温床」「経済的負担」「すべての弊害」……音制連などが出した全面広告はそんな激しい言葉で音楽ファンらに呼びかけ、法改正の必要性を訴えている(撮影/写真部・小原雄輝)
ライブチケットの高額ネット転売 音楽業界の言い分と現実〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160905-00000097-sasahi-ind
AERA 2016年9月12日号
生の迫力や会場の一体感……音楽ライブには、多くの人に大枚を投じさせる魅力がある。とはいっても、ものには限度というものがあるのではないか。
8月23日付の全国紙朝刊に、こんな全面広告が載った。
「私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します」
広告を出したのは、一般社団法人「日本音楽制作者連盟」(音制連)ほか業界3団体、116組のアーティストと24の音楽フェスだ。「高額転売」とは「ダフ屋行為」だが、彼らがノーを突きつける相手がいるのはライブ当日の会場周辺ではなく、ウェブサイト。音制連の野村達矢理事は語気を強めてこう言う。
「この1年で状況が急変した」
●フリマ方式で急成長
業界団体は、デジタル化とITの進展で、CDなどを売る「複製ビジネス」の縮小を余儀なくされてきた。ライブもそうなってしまうのでは──という危機感を持っている。
ウェブでのチケット転売をめぐる環境は大きく変わっている。従来はオークション型。入札から落札まで数日かかったり、落札できなかったりしたが、現在は多くの転売サイトが「フリーマーケット型」を採用する。出品者が「指し値」で価格を決め、買い手が合意すれば売買成立。スピーディーなユーザー体験で、転売市場の主役になった。
最大手は「チケットキャンプ」(チケキャン)で、200万人以上が登録する。月間流通総額は36億円(昨年12月)と急伸している。
人気が集中するライブでは、転売価格が高騰の一途だ。ジャニーズ系の人気グループならチケット1枚20万円台も珍しくない。4月1日に東京ドームであった人気アニメ「ラブライブ!」の公演では、1枚50万円もの値がついた。昨年秋に開催された、往年の人気バンドの再結成公演。2千人収容会場の3日分のうちの2千枚、つまり全体の3分の1に当たるチケットがチケキャンに出品されたという。
「正規ユーザーの購入行動を圧迫するし、高騰した分でユーザーが継続的にライブに参加することも難しくなる。物販に回すお金にも響く」
そして野村氏はこう続けた。
「チケキャンはサイトで、転売目的でのチケット購入・販売はお断りとうたっているのに、転売目的の売買であふれている。整合性の点でもおかしい」
●運営側にも問題意識
チケキャン運営会社「フンザ」の寺谷祐樹取締役は、取材に対し「(業界団体と)対立する気はない。議論を深めていく気はある」と話す。ただ、業界側が問題視する、一般と転売ユーザーの区分けについては、「明らかな大量出品をのぞいては判断は難しい」と答えるにとどまった。
しかし、転売サイトが生むメリットもある。それは、
「市場の流動性を高め、空席を埋める。活性化にも寄与できている自負はある」(寺谷氏)
チケキャンでは確かに、定価やそれ以下でチケットを出品するユーザーも多数いて、このことが気軽にライブに行ける機会を作り出しているのも事実だ。
チケキャン側も、「高額転売はよしとは考えていない」と話し、議論によっては制限を設ける考えを示唆した。
転売チケットの価格にキャップ(上限)をはめるのは一案だ。出品、購入者から各5%の手数料収入が減る可能性もあるが、「場の健全性はそれ以上に重要視している」(寺谷氏)。
業界団体でも、定価取引のみのチケットシェアサービスの育成を図るなど、市場の健全化を視野に入れる。
ライブのチケットは多くの場合、買った後の払い戻しはできず、急用などで行けなくなった人を救済するという側面も、転売市場にはある。
問題を業界内の論理だけで語るのではなく、音楽文化をどう発展させるのかを第一に、解決策を探るべきだ。(編集部・岡本俊浩)
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