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コラム:
円高終焉へ、日米金融政策の視界良好に
村上尚己アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト
[東京 2日] - ドル円相場は8月26日まで100円割れ寸前の円高基調にあったが、米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議、25―27日開催)でのイエレン議長ら連邦準備理事会(FRB)執行部の発言を受けて、円安に動いた。
結論から言えば、筆者は、1年余り続いたドル安円高トレンドは転換しつつあると考えている。ジャクソンホール会議は、トレンド転換の追い風となった可能性がある。以下説明しよう。
<金融政策限界論は的外れ>
実は、FRBによる利上げの時期が近づいていることへの言及は、ジャクソンホール会議前から、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁らによって繰り返されていた。だが、同会議中の講演(26日)で、イエレン議長が緩やかなペースでの利上げが適当との考えを改めて示したことで、年内の利上げが現実味を増したと考えられる。
むろん、そもそも利上げに慎重なイエレン議長は、利上げ開始時期に関して言質を与えるような発言はしていない。ただ、経済データ次第ということならば、現在のように労働市場の改善と国内需要の伸びが続き、インフレ率が2%に接近し、そして金融市場の混乱など外的ショックが起きない場合、満を持して利上げに踏み出すということだろう。
とはいえ、市場では、イエレン議長らの発言を受けてもなお年内利上げの可能性は微妙との見方は根強い。FRBは、ジャクソンホール会議前から、均衡利子率低下あるいは政策フレームワーク見直しなどを議論している。こうしたことから、イエレン議長らハト派メンバーが依然、利上げに慎重であると解釈されているようだ。
確かに、均衡利子率が低下しているとの認識がFRB内で強まっているということは、想定されるフェデラルファンド(FF)レートの天井が低くなっていることを意味する。この点は、3回目以降の利上げペースに大きく影響するだろうし、そうしたFRBの姿勢が金融市場に及ぼす影響については様々な議論ができるだろう。
ただ、近づきつつある利上げの決断が、こうした中長期の議論によって妨げられるとは思わない。ほぼ1年ぶりとなる2回目の利上げ判断とは切り離されて議論されるはずだ。
なお、金融政策の課題を議論したジャクソンホール会議に関連して「金融政策に手詰まり感が強まっている」などの解説が、日本のメディアで散見された。日銀の緩和策が限界に直面しているとの見方が影響しているのだろう。
だが、この種の解説は的外れであり、建設的ではない。経済安定化の責任を持つ当局者たちが集えば、マイナス金利政策を含む金融政策の課題について、率直に議論するのは当然のことだろう。
<ドル安円高トレンドの真因>
それにしても、なぜドル安円高トレンドは1年も続いているのだろうか。読み解くカギは、FRBの慎重さと日銀の中途半端な対応だろう。
まずFRBは2015年央から利上げに踏み出すタイミングを慎重に探り、同年末に1回目の利上げを実施、そして2016年も極めて慎重に利上げ判断を行ってきた。労働市場やインフレ率だけではなく、海外発の下振れ要因に配慮し、金融市場の値動きにも同様に神経を注いできた。
そして、労働市場や個人消費はFRBの想定どおりに回復しているが、リスクシナリオに常に配慮しながら、株式市場など投資家の期待に上手に働きかけることに、これまで成功してきた。
筆者は3月のコラムで、FRBの利上げ再開への慎重姿勢がリスク資産全般を支えると指摘した。ある程度の株高など資産インフレが起きることが、利上げ再開の事実上の条件になると想定したわけだ。
この見方は概ね間違っていなかったが、「日本株市場を含めてリスク資産全般の追い風になり得る」との見立ては当たらなかった。FRBの利上げへの慎重姿勢が、為替市場でドル安円高をもたらし、円高が日本株の上値を抑制する状況がこれまで続いてきた。
筆者は4月のコラムで、日銀が早々に追加金融緩和を打ち出し、円高阻止に動く(そしてドル円が反転上昇する)と予想したが、残念ながらその予想は外れた。インフレ期待低下と円高進行を目の当たりにしながらも、日銀は何度か追加金融緩和に躊躇(ちゅうちょ)し、また中途半端な緩和強化策を講じた。そのため、2%インフレの早期実現に対する日銀のコミットメントが和らいでいると、投資家は疑念を抱いたのだろう。
7月末に安倍政権が打ち出した追加財政政策も、中身や規模を踏まえれば「疑似ヘリコプターマネー」に過ぎず、アベノミクスを再起動させる大胆な政策転換とは言い難い。また、日銀が9月に発表する金融政策についての総括的な検証に関連して、政策の枠組みが変わるとの思惑が浮上したことも、8月に円安の動きを止めてしまった一因となった。
一方のFRBは、上述したとおり、利上げ判断についてリスクを重視し、そして将来の利上げペースを抑制する姿勢を示しながら、確実に2%のインフレ安定を実現することに注力した。つまり、利上げ局面に入りながらも、インフレ引き上げに対する強いこだわりを持ち続けたのである。
こうした日米金融政策運営の違いが過去1年のドル安円高の真因だと筆者は考えている。今年の円高の理由は他にも複数挙げられているが、いずれも理論的とは言い難く、後付けに過ぎないだろう。
<9月追加緩和の可能性は>
さて、100円割れの円高シナリオが依然として多くの為替アナリストによって語られているが、ドル円の方向を左右するのは、インフレ安定のための金融政策の方向性そして政策効果に対する市場参加者の認識である。冒頭で述べたとおり、ジャクソンホール会議でFRBは慎重姿勢を保ちながら利上げに踏み出すことで、緩和姿勢を和らげていることが明らかになった。
つい最近までFRBによる量的緩和第四弾(QE4)シナリオが頻繁に語られていたが、そうした声も小さくなった。ドル安期待は鎮静化しつつあるため、100円割れの円高の可能性は低くなっている。
翻って日銀は、年初から2割進んだ円高が景気縮小とインフレ抑制の大きな要因になっていると強く認識しているはずだ。総括的な検証を行う9月の決定会合では、「国債買い入れ減額があるのではないか」など様々な憶測が飛び交っているが、実際には金融緩和をさらに強める姿勢が改めて示されるのではないか。
経済最優先という安倍政権の政策姿勢は揺らいでおらず、2%インフレの早期実現が金融政策の責任によって実現されるとの官邸の認識も全く変わっていないとみられる。
9月会合での追加緩和の可能性はほぼ5分5分だろう。ただ、2%インフレ早期実現にコミットを強めるために、7月の上場投資信託(ETF)購入拡大に続き、国債などの資産買い入れの積み増し、外債を含めた購入対象資産の拡大、さらにはマイナス金利の深堀りなどによって金融緩和が強化される可能性は十分にある。以上を踏まえ、ドル安円高トレンドの終焉は近いと考える。
*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-naoki-murakami-idJPKCN11748P?sp=true
日銀総裁、量・質・金利拡大は十分可能:識者はこうみる
[東京 5日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は5日都内で講演し、9月20━21日の金融政策決定会合で予定している政策検証の概要について話した。大規模な金融緩和にも関わらず物価が目標の2%に達していない現状を分析するとともに、日本の企業・家計の物価観が足元の物価に引きずられやすい現状を直視する姿勢を見せた。
マイナス金利についても効果と金融機関の収益への影響など双方を検証する。市場関係者のコメントは以下の通り。
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニアマーケットエコノミスト 六車治美氏>
黒田東彦総裁は、マイナス金利政策が金融仲介機能に与える影響について、市場の見方に一歩歩み寄った感じだ。マイナス金利政策の導入でイールドカーブが低下。それが貸出金利や社債・CPレートの低下につながっている一方で、金融機関の収益に与える影響や、保険・年金の運用利回りの低下が人々のマインドに悪影響を与える可能性を指摘した。総裁が副作用やコストに踏み込んだ発言をした。
しかし、包括的な検証を経て、市場に観測が出ているマイナス金利の深掘りや、国債買い入れの減額といった今後の政策運営について、具体的な言及が見られなかった。講演内容は少なくとも、円金利のスティープ化に歯止めがかかり、反転するような内容ではないとみている。
<大和証券・日本株上席ストラテジスト 高橋卓也氏>
日本株に関して言えば、大きく相場が動いているというわけでもない。為替がややポジション調整的な観点から円高方向に振れ、それに連れて日経平均もやや上げ幅を縮小している。今回の総裁の講演で何かしら変わったことが話題として出るのかという予想もなく、実際に新たな機軸が打ち出されたかというと、そうでもない。
講演で黒田総裁は、3次元での緩和拡大は十分可能と指摘しており、その姿勢は従来と変わっていない。ただ、そこにはマイナス金利の深掘りも当然ながら選択肢に入っている。後場に入ってからの銀行株の上げ幅縮小は、この点を気にしていた動きと捉えることも可能だが、足元の日本株全般に極端な影響を及ぼしている感じでもない。米国の利上げ観測に加え、日銀の緩和継続・拡大という姿勢がなければ、直近の円安の持続も怪しくなり、株高につながりにくい。
<野村証券 経済調査部 シニアエコノミスト 桑原真樹氏>
日銀は9月の金融政策決定会合でマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)政策の「総括的な検証」を行うが、黒田東彦総裁は、大規模緩和が日本経済の好転に大きな役割を果たしているなどと述べ、前向きに評価する姿勢を示した。
ドル/円が講演中に円高方向に振れたのは、日銀が9月に追加緩和に動く可能性が後退したと、市場が受け止めたからだろう。
ただ、黒田総裁は、マイナス金利の深掘りも国債買入額の拡大も、まだ十分可能という認識を崩していない。9月に貸出支援オペ適用金利引き下げや、フォワードガイダンスの強化が行われる可能性があるとみている。
http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-interview-idJPKCN11B0CW
緩和推進には利回り曲線への影響考慮、3次元以外も議論=日銀総裁
[東京 5日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は5日都内で講演し、マイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)の推進にあたっては、イールドカーブ(利回り曲線)と金融仲介機能への影響を踏まえて判断していく必要がある、と語った。
また、量・質・金利の3つの次元の緩和手段の拡大は「まだ十分可能」とし、それ以外のアイデアも議論の対象になる、との見解を示した。
総裁は、9月20━21日の金融政策決定会合で議論する「金融緩和政策の総括的な検証」をテーマに講演した。
検証のポイントには、2%の物価安定目標を早期に実現する観点から、1)2013年4月のQQE導入以降、金融政策がどのように機能し、何が2%の実現を阻害したのか、2)マイナス金利付きQQEの効果と影響━━を挙げた。
このうちマイナス金利付きQQEの効果と影響では、マイナス金利と大規模な国債買い入れの組み合わせで「イールドカーブ全体の低下に大きな効果をもたらした」とし、「この枠組みは極めて強力であることがはっきりした」と断言。貸出や社債などの金利が低下し、「マイナス金利政策は企業や家計の資金調達コストの低下にしっかりとつながっている」と評価した。
現段階で貸出金利の低下による金融機関の収益圧迫で「金融仲介機能が悪化する事態にはなっていない」としながらも、長く金融機関間の競争が続いてきたことなどから、日本の場合は「マイナス金利が金融機関の収益に与える影響が相対的に大きい」と指摘。
保険や年金の運用利回り低下や、退職給付債務の増加などによるマインド面も通じた経済への悪影響も指摘し、マイナス金利付きQQEの推進にあたっては「強力なイールドカーブへの影響力と、広い意味での金融仲介機能への影響を踏まえながら、判断していく必要」があると語った。
市場では日銀の緩和策の限界も指摘されているが、総裁は「金融政策で意識すべきは限界ではない」と強調。量・質・金利の3つの次元の緩和手段の拡大は「まだ十分可能。それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)から外すべきではない」とし、経済・物価に加えて「金融」の状況も踏まえ、「最も適切な政策対応を検討していく」と述べた。
追加緩和は「日本経済全体にとって必要であれば、ちゅうちょすべきでない」と述べ、「日本経済にとって2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することのベネフィット(利益)は大変大きい」と締めくくった。
*内容を追加します。
(伊藤純夫、竹本能文)
http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-speech-idJPKCN11B088
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