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お金持ちが幸せとは限らない理由
http://www.dhbr.net/articles/-/4447
2016年09月05日 ラジ・ラグナタン テキサス大学オースティン校マコームズ・スクール・オブ・ビジネス教授 ダイヤモンド・オンライン
富と幸福の関係を、さまざまな研究成果から考察する。多くの研究に共通しているのは、富裕者は「他者と心理的・物理的に距離を置きたがる」という現象だ。
「貧乏も経験したし、金持ちも経験したけれど……やっぱり金持ちのほうがいいわね」
コメディアンのソフィー・タッカーはかつて、冗談めかしてこう言った。
タッカーの意見には一理ある。他の条件がすべて等しければ、お金は多いほうがいい。その理由は、エリザベス・ダンとマイケル・ノートン両教授が、非常に有益な共著『「幸せをお金で買う」5つの授業』で指摘している通りである。お金があれば、幸福度を高めてくれる諸々の製品、体験、サービスにアクセスできるからだ。
とはいえ、裕福な人ほど幸福というわけではない事実を示す研究結果も、次々と示されている。その一因として、人は裕福になると、金銭と振る舞いの両面で寛大さを失うようである。
カリフォルニア大学バークレー校のポール・ピフらによる、一連の研究結果を見てみよう。ある実験では、参加者たちをペアにしてモノポリーのゲームをしてもらった。ゲームはあらかじめ、参加者の一方が、短時間で対戦相手よりもはるかに裕福になるよう仕組まれている。そして研究チームはマジックミラー越しに、参加者の振る舞いを観察した。
その結果、富を増やしていく参加者ほど、次第に意地が悪くなることが判明した。たとえば、より尊大な姿勢や仕草を見せ始め、貧しい対戦相手に見下した態度で話し始める。また、平等に分け合うよう1つのボウルに盛られたプレッツェルを、裕福な参加者のほうが多くつまんだ(これらの様子はピフのTED動画を参照)。
別の実験でも、同様の影響が明らかになっている。参加者に10ドルを与えて、その一部または全部を他の参加者に寄付できると告げた。すると金持ちの参加者が寄付した額は、平均44%少なかった。
研究室の外の世界でも同様だ。『クロニクル・オブ・フィランソロピー』誌の報告によれば、富裕者ほど所得に占める慈善寄付の割合が低い傾向にある(英語記事)。
このことは、個人の幸福にも重要な意味合いを持つ。20万人以上から回答を得た大規模な研究の結果によれば、対象国の実に93%(136ヵ国のうち120ヵ国)で、「寛大になること」が個人の幸福にプラスの効果を及ぼしているからだ(英語論文)。
また、ノートルダム大学の研究チームは、寛大さを示す複数の指標(寄付、ボランティア活動、精神的に友だちを支えることなど)と幸福度の関係について調査した。その結果、寛大な人ほど、自分はより幸福であると報告した(英語記事)。
研究者らは次のように理論を導き出している。すなわち、裕福になると寛大さが失われる理由は、富が孤立を促すからである。そして、孤立は幸福度を低下させる、と。
裕福であることは、心理的にも物理的にも人を孤立させる。ある研究によれば、富――より一般的には、高いステータスを示す財産――を獲得した人は、他者と(心理的・物理的に)距離を置きたくなる(英語論文)。心理面の一因としては、富やステータスを獲得する際に生じる競争心や利己主義がある(英語論文)。
また別の理由として、かつては生き抜くために他者からの助けが必要だったが、貧しさから脱した後は不要になったからなのかもしれない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のパトリシア・グリーンフィールドと、同大学バークレー校のダーカー・ケルトナーは、各自別々の研究から同じ結論に至っている。人は裕福になるほど、独立性をより重視するようになり、社会的なつながりを軽視するという傾向があるというのだ(英語記事)。
物理面についてはきわめてわかりやすい。富裕者になるほど、他者との間に境界を設けようとする。より大きな家に住み、周りを塀で囲んだりするのもその例だ。
私自身も、富による物理的距離の影響を体験したことがある。博士課程の貧乏学生だった自分が、多少は余裕を持てる教授になった時のことだ。学生時代は、他の3人の同居人とアパートで暮らし、リビングルーム、キッチン、バスルームを共有していた。そして教授になると、寝室2つのアパートに引っ越して1人暮らしを始めた。
住居が広くなって、より幸せになったと思われるかもしれない。確かにそうだった――わずか数週間の間は。諸研究の結果を体現するかのように、私は周りの空間にはすぐに馴染んだが、1人きりでいることには慣れなかったのだ。そして無性に仲間が欲しいあまりに、友人たちの家に押し掛けることになった。
複数の研究で繰り返し示されていることを踏まえれば、これは驚くに値しない。私たちは極めて、というより耐え難いほどに、社会的な生き物なのだ。つまり、人は有意義で親密な関係を少なくとも1つは持っていなければ、本当に幸福にはなれないということだ(英語論文)。社会関係がより豊かな生活を送るほど、より幸せを感じやすい。
ちなみに、前掲のダンとノートンの共著では、(モノではなく)体験や時間を得るためにお金を使うと、幸福感が高まるという研究を取り上げている(例:ハウスクリーナーを雇って、その分の時間を他の何かに充てるなど)。私たちが「体験」と「自由な時間」を、愛する誰かと共有しようとする傾向は偶然ではないわけだ。
これまで述べてきたことの結論は、金持ちは幸せになれないということだろうか?
そうではない。ただし、富とステータスの獲得に伴って生じやすい諸々の傾向を、防ぐよう注意しておくのが賢明と言える。
そして幸福にもう1歩近づきたければ、寛大さを持って、得たものの一部を他者に与えればいい。
HBR.ORG原文:Why Rich People Aren’t as Happy as They Could Be June 08, 2016
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ラジ・ラグナタン(Raj Raghunathan)
テキサス大学オースティン校マコームズ・スクール・オブ・ビジネス教授。著書にIf You're So Smart, Why Aren't You Happy?がある。『ジャーナル・オブ・コンシューマー・リサーチ』『ジャーナル・オブ・マーケティング』、および『ジャーナル・オブ・コンシューマー・サイコロジー』の編集委員も務める。
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