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GPIFの運用体制全体が巨大欠陥であるー(植草一秀氏)
http://www.twitlonger.com/show/n_1sp2n4f
2nd Sep 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
世界最大の年金運用資金。
それが、
GPIF=年金積立金管理運用独立行政法人
である。
2015年6月末は残高が141兆1209億円だった。
これが、本年6月末には129兆7012億円になった。
1年間で11兆4197億円減少した。
8.1%の減少である。
国民の老後の生活を支える年金資金。
それが、1年間で11兆円も減ったのだ。
笑って済ませられる問題でない。
その理由は単純明快だ。
安倍政権は年金運用改革の看板を掲げて、2014年10月末に年金資金運用の基本を大転換した。
これまでは、年金資金は国民の大切な老後資金だから、できるだけ安全に運用することを基本に置いてきた。
安全に運用するとは、リスクの大きい資産にはあまり資金を投入しないということだ。
金融の世界でリスクの大きい資産とは、
株
と
外貨資産
だ。
だから、株と外貨資産への資金配分を抑制していた。
ところが、2014年10月31日に、安倍政権は年金資金運用の基本を大転換した。
株と外貨資産への資金配分比率を一気に引き上げたのだ。
ところが、金融市場の潮流は2015年6月を境に大転換した。
それまでの
円安=株高
の基本構図が
円高=株安
の基本構図に転換した。
ドルが上がるときには外貨資産を多く持てば大きな利益を得られる。
株が上がるときには株式を多く持てば大きな利益を得られる。
しかし、逆に
ドルが下がるときにドル資産を大量に保有していれば大きな損失が生まれ、
株が下がるときに株式を大量に保有していれば大きな損失が生まれる。
当たり前のことだ。
したがって、年金資金の運用で大事なことは、
金融変動の大局を正確に読んで、その金融変動に合わせて基本運用スタンスを変更することだ。
しかし、金融変動を正確に読み抜くことは容易でない。
私は中期の金融変動を予測することを仕事としている。
他のプロフェッショナルに比べれば、予測精度は格段に高いと自負している。
3ヵ月から1年の単位での経済金融変動を読み抜くことが私の実業としての仕事の中核だが、
この分野での予測精度では他に類を見ない高いパフォーマンスを示してきたと言ってよいだろう。
それでも、打率10割というわけにはいかない。
完璧に予測し抜くことは不可能である。
予測を正確にできないなら、運用は保守的にならざるを得ない。
バブル崩壊の時代、株式を持ち続けた人は、平均すれば巨大な損失を蒙った。
他方、一切運用をせず、現金のまま保管し続けた人は、損失ゼロである。
GPIFが金融変動を読み抜く力を持たないなら、リスクを取る運用をやめるべきだ。
運用は資金提供者のために行うもので、見通しを誤り、高いリスクを取って、
巨大な損失を計上することは、資金委託者に対する背信行為である。
民間の資金運用事業者が巨額損失を計上すれば、相応の責任を問われるし、
場合によっては刑事責任さえ追及される。
GPIFは金融変動にそぐわない間違った運用を行い、巨大な損失を計上している。
その一方で、許されないことは、
GPIFが運用を委託している外資系を中心とする資金運用法人に法外な手数料を支払い続けていることだ。
2015年度だけで、GPIFが支払った管理運用手数料は383億円である。
こんな巨額の手数料が支払われながら、1年間で11兆円の損失を計上しているのだ。
要するに、政府と金融機関の癒着なのだ。
収益が出るか、損失が出るかは、相場次第だ。
運用機関が高い運用技術を持っているわけではない。
GPIFが一括して独自に運用すればいいのだ。
結果は変わらない。
要するに、政府と金融機関が癒着して巨大な手数料収入が「利権資金」として支払われているだけなのだ。
安倍政権は失敗の責任を明らかにし、癒着金融機関への法外な手数料支払いを直ちに中止するべきだ。
GPIFの従来の資金配分は次のものだった(単位:%)。
国内株式 12
国内債券 60
外国株式 12
外国債券 11
短期資産 5
これを安倍政権は2014年10月末に次のように変えた。
国内株式 25
国内債券 35
外国株式 25
外国債券 15
外国資産を23%から40%に増やし
国内株式を12%から25%に増やした一方で、
国内債券を60%から35%に激減させた。
ところが、2015年6月以降、
国内株式の価格が大幅に下落し、
ドルも大幅に下落した。
だから、2015年6月以降に巨額損失が生まれたのだ。
安倍政権が基本運用方針を転換した2014年10月以降から本年6月末までの通算運用は
1兆962億円の損失。
つまり、運用改革を実行して以降の通算成績がマイナスに陥っているのだ。
完全なる失敗だ。
それでも、株価下落と外貨下落による損失ほどには、トータルの損失が膨らんでいないのは、
内外で長期金利が低下し、債券価格が大幅に上昇したからである。
つまり、2014年10月の運用改革で、
国内債券の運用比率を100%に高めておけば、最良の投資パフォーマンスを得られたことになる。
金融機関に年間380億円もの手数料を支払いながら、年間11兆円もの損失が生み出された。
383億円の手数料支払いは不当極まりないものだ。
金融変動を正確に予測してもらい、
その予測に基づいて資金運用をする。
この方がはるかに良いパフォーマンスを得られている。
その予測と基本運用方針の策定を10億円で受注し、大きな利益を生み出すのなら、
この予測者に10億円を支払った方がはるかに年金資金委託者の利益に適う。
2012年11月に8600円だった株価が2015年6月に2万800円になった。
この期間に国内株式の運用比率を高めていれば大きな利益を得られている。
しかし、2015年6月以降は、円高進行に連動して日本株価が下落したから、
2015年6月には国内株式の比率を一気にゼロにするべきだった。
また、ドルは2012年半ばの1ドル=78円が2015年6月には1ドル=125円になったから、
この期間は外貨資産の比率を大幅に高めてもよかった。
しかし、ドルがピークを付けた2015年6月には外貨の比率を一気にゼロに引き下げても良かった。
他方、国内債券は2016年7月までは長期大幅価格上昇期にあったから、
この期間においては、一貫して国内債権比率は高めに維持しておいてよかった。
ただし、2016年7月に日本の長期金利が最低値を記録した可能性があり、
現局面は国内債権比率を一気に引き下げるべき局面であると思われる。
このようなことを書くと、
「結果論」
だと思われる方もいるかも知れない。
しかし、そうではない。
私は金利為替株価を分析するレポート
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
において、金利、為替、株価の見通しを提示し続けてきたが、
2012年10月には、円安・株高図式到来を
2015年6月には、円高・株安図式への転換を
的確に予測してきている。
日本政府は1.25兆ドルの外貨準備を保有している。
ドルが120円に到達したときから、このドル資産を売却するべきことを訴えてきた。
ところが、安倍政権はドル資産を1ドルも売却しない。
そうこうしている間に、ドルは125円/ドルから100円/ドルに下落してしまった。
これだけで、為替の評価損は25兆円だ。
過去1年間は、金利低下=債券価格上昇で、株安とドル安による評価損の一部が、
かなりの程度穴埋めされたが、世界的に長期金利が大底を付けつつあるとすれば、
これからは債券が評価損失を生み出す元凶になる。
安倍政権は日本国民に損失を与えることしかしない。
すべては、外資への利益供与なのだ。
外貨準備資産を一切売らないのも、米国への利益供与。
TPPに参加しようとするのも外資への利益供与。
このような売国政権は一刻も早く退場させないと、日本国民は丸裸にされてしまう。
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