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This long-exposure photograph taken before dawn on August 9, 2016 shows lighting from heavy rain clouds over Yangon. (c)AFP/YE AUNG THU
こんな人間を出世させると、組織に悲劇が訪れる 第68回 古代より繰り返される人事の誤り
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47762
2016.9.2 藤田 耕司 JBpress
「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」
西郷隆盛の言葉として引用されるこの言葉であるが、その原典は中国最古の歴史書、「書経」にあると言われている。
この言葉を現代にあてはめれば、「功績のある者にはより高い給与を与えよ。人徳のある者にはより高い地位を与えよ」となるだろう。
この言葉は「功績のある者でも人徳のない者には高い地位を与えてはならない」ということを意味する。
■仕事ができる人に潜む危険性
私は経営コンサルタントとして様々な企業の相談を受ける中で、仕事ができるという理由で安易に部下を昇進させたことに対して、強く後悔している経営者をたくさん見てきた。
もちろん仕事ができることは良いことである。ただ、仕事ができる人間はともすれば諸刃の剣ともなり得る性質を持っている。その背景に人間性が伴っていなければ、その人間はむしろ会社を崩壊に導く危険性をはらんでいる。
仕事ができる人間には多くの仕事が集まり、重要性の高い仕事も任せられるようになる。そのため、組織としてその人間に対する依存度は高まっていく。それに比例して周囲も一目置くようになり、その人間の影響力は増していく。
これが営業やマーケティングに関することであれば、売り上げの多くの割合をその人間に依存するようになるため、そういった状況になると社長ですらもその人間に対して強く言うことは難しくなる。
このようにして、仕事ができる人間ほど善くも悪しくも社内で強い影響力を持つようになる。こういった状況でこの人間を昇進させることは、この影響力に対して会社がお墨つきを与えることを意味する。
その影響力を公に行使することが可能となった時、その人間の本性が見え始める。
あるメーカーでITに専門的な知識と経験を持った人間を採用した。彼は社内で特殊なITのスキルを絡めた新たなビジネスモデルを提案し、次々と顧客を開拓していった。気がつけば、そのビジネスの売上は会社全体の4割ほどを占めるようになり、それに比例して彼の発言力は増していった。
社長は彼の実績を評価し、マネージャーに昇格させ、チームを持たせる。
ところが、彼の人間性は決して優れたものではなかった。部下に対して高圧的な態度で臨み、罵倒したり、感情に任せて怒りをぶつけたりすることが多々あった。
社長のもとには彼の部下から何度となく彼に対するクレームが寄せられ、社長自身も彼の目に余る行為は問題だと感じていたが、売り上げの4割を一手に担っている彼との関係が悪くなることを恐れ、その状況を黙認するだけだった。
■次々と退職するメンバー
その結果、彼のチームのメンバーは次々に会社を辞めていった。そして、新たに人を雇って彼の下につけるが、短期間のうちに辞めていく。
こういったことが続き、彼の下には人が定着せず、多額の採用コストだけがたれ流しとなり、この事業部の業績は悪化していった。彼はその原因を会社の体制の悪さにあると言い、あちこちで会社や社長に対する愚痴をこぼし、周囲のメンバーを巻き込んでいった。
そして、会社全体の雰囲気までもが険悪になっていき、他のチームからも会社を辞める人間が出始めた。
社長は意を決し、彼と話し合いの場を設け、彼の態度や行動を改めるよう強く注意した。彼は感情的になって反発し、その1週間後、社長に辞表を叩きつけた。
その辞表を受け取った時、社長の心に浮かんだのは「売り上げの4割をどうするか」という焦りよりも、「何とか会社の危機を免れた」という安心感だったという。
「1人の人間を採用したことで、会社がここまで危機的状況に陥るとは思わなかった。その原因は目の前の売り上げに気を取られ過ぎて、会社全体のことを考えることを疎かにした自分の甘さにあった」と社長は話す。
こういった話は特殊な話ではなく、頻繁に経営者から寄せられる相談である。スポーツの世界でも名プレイヤーが名監督になれるとは限らないように、ビジネスの世界でも名プレイヤーが必ずしも優れたリーダーになるとは限らない。
そもそもプレイヤーに求められる資質とリーダーに求められる資質とは異なる。
リーダーとしての資質があるかどうかを深く考慮することなく、プレイヤーとしての資質が優れているから出世させるという判断は、先の例のように会社に悲劇をもたらすことがある。
先の例の場合は、問題となる人間が自ら会社を辞めてくれたのでまだ良かった。問題となる人間が会社を辞めず社内に居座り続けた場合、他の従業員のモチベーションはさらに下がり、会社はボディブローのようにダメージを受け続け、結果として内部崩壊に至ることもある。
リーダーに求められる資質には多くのものがあるが、その中でも私欲と公欲のバランスはとりわけ重要であると考える。
■私欲と公欲のバランス
人間の欲には私欲と公欲とがある。私欲は自分がいい思いをするために生じる欲求であり、公欲は自分以外の人のためを想って生じる欲求である。
あの人に喜んでもらいたい、部下にもっと幸せになってもらいたい、みんなのために貢献できることをしたい・・・。
こういった見返りを求めることなく生じる欲求が公欲である。そして、公欲の強さは責任感をもたらす。
人間である以上、必ず私欲はある。「高い給料をもらいたい」「高く評価されたい」という私欲が原動力となって、人一倍仕事を頑張った結果、プレイヤーとして優れた実績を残すことも多々ある。
ただ、その私欲と公欲のバランスがリーダーには求められる。
公欲に比べて私欲が強過ぎる人は、損得で物事を考え、自分にメリットがないことは組織のためになると分かっていてもやろうとしない。部下に対する当たりが厳しく、自分にメリットがないのであれば自ら進んで部下を育てようとはしない。
議論になると組織のために建設的な答えを出すことよりも、自分の意見を通すことに執着し、感情的になりやすい。問題が起きた時は組織としてどう対応するかということよりも、自分に非がないということを先に話し始める.
これまでに問題となったリーダーを見ていると、こんな傾向が見受けられる。
リーダーの仕事は皆がモチベーション高く働けるための場を作り、決断し、責任を取ることである。にもかかわらず私欲が強過ぎる者がリーダーとしての権限を持つと、保身に走り、リーダーとしての機能を果たそうとはしない。
その結果、その組織の士気は下がり、一体感を失い、業績も低迷する傾向にある。そのため、私欲と公欲のバランスの良さがリーダーには求められる。
ある人間を出世させるということは、他のメンバーに対して、「うちの会社はこういう人間を評価するんだよ」というメッセージを発信することでもある。
そのメッセージに共感できなければ、従業員の会社に対する信頼は低下していく。また、出世したいと願う従業員は出世している人間の動きを参考にしようとする。
■リーダーの資質を見抜く目
リーダーとしての資質の有無は考慮せず、プレイヤーとして仕事ができる人間を出世させているのであれば、他の従業員にも「プレイヤーとして仕事ができさえすればいいんだな」という意識が蔓延していくだろう。
実際、リーダーとしての資質を考慮せず、プレイヤーとしての実績を見て部下を出世させた結果、苦い経験をした経営者は、リーダーとしての資質を備えていない人間を出世させてはいけないことの大切さを身に沁みて分かっている。
「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」
古代中国の時代よりこの言葉が存在したことを考えると、いつの時代もリーダーとしての資質を備えていない者がリーダーになったことによる悲劇は繰り返されているのだろう。
どの組織においてもリーダーとしての資質を備えた人材を渇望している。それは国という単位でも同じことが言える。時代は混迷を極めれば極めるほどに、優れたリーダーを求める。
そういった時代に現れた優れたリーダーは、後の世に「英雄」と呼ばれることがある。年々進む少子高齢化、迫り来る人工知能の脅威、悪化する国際情勢。まさに日本は混迷を極めようとしている今、企業においても国においても、リーダーとしての資質を持った人材の活躍が求められる。
どういった人材をリーダーに抜擢すべきか。今一度、真剣に考えなければいけない時が来たように思う。
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