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初乗り410円タクシー、実は割高?なぜ運転手と乗客のトラブル増加が確実?
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16535.html
2016.09.02 文=小川隆行/ライター兼タクシードライバー Business Journal
8月5日より、東京都内4カ所の乗り場で実証実験が行われている「初乗り410円タクシー」。現行の「2キロ730円」から「1.059キロ410円」となる初乗り運賃引き下げは、「普段タクシーを使わない人たち」の需要を増やし、実車率を高める目的で行われている。
例えば、雨が降った場合、コンビニエンスストアで500円の傘を買うよりもタクシーに乗ったほうが安くなるわけで、乗客にとっては、もちろんありがたい。同じく、タクシー会社も「売り上げが上がる」と期待しているはずだ。ただし、「諸手を挙げて賛成」とはいかないのが、ほかならぬタクシードライバーたちだ。
タクシーの営業形態は、大きく分けると「流し」と「付け待ち」に分けられる。流しとは、文字通り街を流して乗客を拾う営業手段で、この手法を主とするドライバーにとっては、410円だろうと手が挙がるのはウェルカム。空車時間が縮まり、売り上げが上がるのは明白だからだ。
逆に、付け待ち専門のドライバーにとっては「痛しかゆし」だ。付け待ちとは、ホテルや駅の前などに「付けている」タクシーである。
「暇な日など、駅で1時間待つのはザラだけど、そんな日に410円のお客を乗せたら、その1時間の時給はいくらだと思う? 205円だよ。コンビニのバイト以下になっちゃうよ。近い将来、初乗り410円が主流になるのはかまわないけど、駅に専用乗り場を設けてくれないと困るよ」(都内の付け待ち専門ドライバー)
「専用乗り場でなければ、乗れないようにしてほしい」というわけだ。確かに、この声も一理あるが、都内各駅のターミナルすべてに専用乗り場を設けることなどできるだろうか。
また現在、銀座5丁目から8丁目の区域は平日夜10時〜1時は専用乗り場以外で乗客を拾うことができない「乗車禁止地区」である。「長距離客の多い夜の銀座で、別の店に行く際の足代わりにされそうだね。730円だってカチンとくるのに、410円なんか乗せたくないよ」というドライバーもいた。
別のドライバーは「普段乗らない若い人が乗るのはかまわないけど、中には“運ちゃん”呼ばわりするのもいるんだよね。乗客にもマナーが必要だけど、運賃引き下げによってマナー知らずの乗客が増えるのは嫌だね」と語る。
つまり、運賃引き下げによって新たな需要を見込んでも、タクシードライバーと乗客とのトラブルは確実に増えると思われるのだ。そのしわ寄せは、もちろん現場のドライバーに行く。タクシー会社は、「トラブルが起きたら、できる限り自分たちで解決しろ」というスタンスだからだ。
■実際は乗れば乗るほど割高になる仕組み
そんな中、少数派だが、こんなドライバーの声もあった。
「僕らの仕事は“運やツキ”とは切っても切り離せません。例えば、2人のお客様がいて、前の車に1万円のお客様が乗り、私の車は410円ということもあるでしょう。それはそれで仕方ないです。ただ、『730円のお客様が降りた場所に長距離客がいる』ということもあり、目先で考えてはダメなんです」
さらに、こう続ける。
「仲間内に、ワンメーターのお客様を“ゴミ”というドライバーがいます。確かに、730円のお客様よりは1万円のお客様を拾いたいですが、730円のお客様にも丁寧に接客しているとチップがもらえますし、『運転手さん、とても感じがいいですね』と長距離の予約客になってくれたこともあります。私は『ほかの運転手が嫌がるお客さんを専門に乗せよう』と考えています」
今回、実際に410円タクシーに乗ってみたところ、現在の初乗り730円を超えると、料金が割高になる感じがしたが、現行の「280メートルごとに90円」という加算額は「237メートルごとに80円」に改正されるようだ。
つまり、ちょい乗り客を増やす一方で「乗れば乗るほど割高」になる仕組みであり、日常的にタクシーを利用する人にとっては、タクシー代がやや高くなる。そして、このことはあまり知られていない。
となれば、会社はもちろん、運転手の売り上げも高まることは確実である。それが、たとえ付け待ち専門だろうと、だ。
イメージとは、やや異なる運賃改正。やはり、タクシー会社の経営者は“頭のいい人たち”なのだ。
(文=小川隆行/ライター兼タクシードライバー)
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