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企業の「寿命」はコレで決まる 〜潰れない会社の意外な条件 欧米流を真似るより、老舗企業に学べ!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49576
2016年08月31日(水) 井上 久男「ニュースの深層」 現代ビジネス
■なぜ日本企業で不祥事が増えたのか
三菱自動車の燃費データー不正問題や東芝の粉飾決算など日本の名門大企業で不祥事が連発している。
こうした流れを受けて、コーポレートガバナンスを強化する流れがさらに強まり、社外取締役の役割の重要性なども指摘され始めている。セブン&アイ・ホールディングスでも鈴木敏文前会長の「暴走」を止めたのは、社外取締役だったとされる。
では、従来型の日本企業のガバナンスではダメなのだろうか。筆者はそう思わない。多くの不祥事の要因は、短期的に収益を出そうと考え、本来必要なコストを削ったり、無理な売り上げ増を計画したりすることに起因しているのではないか。
こうした問題意識の下、永続する企業を研究している日本経済大学大学院特任教授で、「100年経営研究機構」代表理事も務める後藤俊夫氏に、なぜ、日本企業で不祥事が増えているのか、企業が持続的に成長していくには何が必要かを聞いた。
日本経済大学大学院特任教授 後藤俊夫氏
NEC出身の後藤教授は、日本の品質管理の歴史にも詳しく、戦後のTQC(トータル・クオリティー・コントロール)活動の原点が、終戦直後にあまりにも日本製ラジオの品質が悪いことに驚いたGHQ(連合国軍最高司令部総司令部)が日本の電機メーカー幹部に経営指導した点にあることを、緻密な調査によって明かしている。
この指導を契機として日本の製造業の品質は飛躍的に向上し、逆に米国が日本の品質管理ノウハウを採り入れるようになり、統計学を駆使した「シックスシグマ」の誕生につながったとされる。
日本企業で不祥事が増えたことについて、まず後藤教授はこう指摘する。
「組織が内向きになっており、組織を守るという大義名分の下、間違ったことをしていても、それをおかしいと指摘する風土が弱くなっている。この結果、対応すべき課題が組織のトップに上がりづらくなっており、歯車が悪い方向に回転し始めている」
筆者も全く同感だ。日本企業はコンプライアンス対応を強化しながら、不祥事は絶えない。これはマニュアル対応的な形式的の面だけで、コンプライアンスの強化を図り、本質的な対応を怠っているからではないかと思う。表面的なコンプライアンス強化の事例ではこんなこともある。
ある企業でコンプライアンスが強化され、アダルトコンテンツが含まれる週刊誌やスポーツ新聞が社内に持ち込めなくなり、広報部でも自社関連の記事が載っている週刊誌やスポーツ新聞を社内に持ち込めなくて困ったそうだ。馬鹿げているとしか言いようがない。
■「身の丈経営」が長続きの秘訣
不祥事に限らず、大量リコールのように、これまで「お家芸」と言われていた品質管理力でも日本企業でしばしばトラブルが起こることについて、後藤教授は「短期的な利益重視に回ったツケが来ている。日本企業はもっと長期的な視点で事業運営することを重視すべき」と言う。
さらに、「永続する企業ほど長期的な視点を持ち、そこには創業家が関与しているファミリービジネスのケースが多い」とも説く。
後藤教授が指摘するファミリービジネスは、同族企業とは違う。「日本では法人税法で同族企業の定義が定められているが、ファミリービジネスとは創業家一族の持ち株比率が低くてもその影響下にある企業で、創業者一族は永続させることを第一の使命と考えて経営に関与することが多い」そうだ。
このファミリービジネスには創業以来200年以上続く長寿企業が多い。後藤教授は57ヵ国7000社を超える世界の長寿ファミリービジネスを調査しており、今の感覚からは意外なことに、長寿ファミリー企業は日本が最も多く、業種では酒造、旅館などが多いという。国別では日本に続いてドイツ、フランス、英国、オランダ、オーストリアの順番で多かった。
日本で典型的なファミリービジネスの会社は、200年の歴史には及ばないものの、トヨタ自動車ではないだろうか。創業家である豊田家の持ち株比率は2%にも満たないが、社長を輩出し、その影響力は大きい。現社長の豊田章男氏は最近、「持続的な成長を目指す」「身の丈経営」といった考えを強調している。
後藤教授は「『身の丈経営』を重視することがファミリービジネスの特徴のひとつ。事業が好調だからといって、急拡大すれば、不調になった時に設備や人員が余ってリストラが必要になる。急拡大もリストラもどちらも大きなコストが必要になり、効率的ではない」と説明する。
一方で、創業家出身の無能な経営者が経営を傾かせることもあるし、創業家が不要に長く居座り続けることもある。後藤教授は言う。
「経営者も人間である以上、慢心が出る。その慢心を戒めるために『コーポレートガバナンス』が必要であり、最近になって日本企業で盛んにその必要性が叫ばれているが、実は永続している会社ほど『コーポレートガバナンス』という言葉はないものの、昔からそうした概念を重視してきた」
■日本にはいま、番頭が足りない
実際に200年以上続くファミリービジネスの「横綱」として、後藤教授は「白鹿」ブランドで知られる辰馬本家酒造(本社・兵庫県西宮市)を挙げる。1662(寛文2)年の創業だ。
「同社は自己革新の連続と多角化経営を特徴としており、酒造業への必要性から生じた海運業や保険業などへ多角化し、現在はホテルやレストランも経営している。さらに同社は創業家夫人や養子が経営を引き継ぐことで入念な事業継承も行ってきた」(後藤教授)
また、後藤教授の調査によると、江戸時代にすでに商家には「押し込め隠居」制度があったという。この仕組みは、いくら創業家出身でも経営者として能力が低いと見なされると、親族が若くても強制的に隠居させる制度のことだ。
「布団寝具で有名な西川産業は創業400年以上の歴史を誇るが、江戸時代に創業家の本家が従業員に分家の資格を与える制度をつくり、本家、親戚、分家の三者で相互チェックを図り、存続と経営強化を図った」(後藤教授)という。今風に言えば、社外取締役制度の強化とでも言えようか。
さらに言えば、創業家を戒め、諌言できる「番頭的な人材」も重要になる。トップに耳の痛い話を進言できる人材のことでもある。トヨタでは創業家以外で社長を務めた奥田碩(現相談役)が「番頭的な人材」の象徴的な存在だと筆者は思う。
筆者は20年以上、日本の大企業を取材してきた皮膚感覚で、こうした人材が極端に減っているように見える。減るどころか、トップに対して、ゴマすりする人材が重用される傾向にある。ゴマすりしないにしても、実績を上げなくてもトップに滅私奉公するタイプの社内評価が高いように思えてならない。ダイキン工業など社長秘書経験者が取締役や社長になるケースが増えているように思われるが、こうした流れの象徴と言えよう。
後藤教授は言う。
「トップに耳の痛い話が上がってくる風土を作れるのは、トップしかいない。自分の判断に間違いがあった時に、それを諫めて正しい方向に導いてくれる部下がいないと、それこそトップの座があぶないという認識をもつことが重要」
最後に一言。筆者はコーポレートガバナンスを強化していくことに賛成だ。しかし、欧米流を単に真似しても、それが本当に機能するとは限らない。
規模の大小を問わず、日本には長寿ファミリー企業のように学べる会社が多く存在している。もう少し日本の老舗の経営の歴史を学ぶことに着眼してもいいのではないだろうか。
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