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止まらない「円高」にアベノミクスはどう立ち向かうのか 今こそ労働市場の構造改革を!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49506
2016年08月22日(月) 真壁 昭夫「通貨とファイナンスで読む世界経済」 現代ビジネス
■米国の景気はピークを迎えつつある
ここへ来て、為替市場で一段と円高傾向が鮮明化している。7月29日には、ドル/円の為替レートが99円台半ばまで円高に振れた。これは、英国のEU離脱決定の影響によって、投資家のリスク回避が進んだ6月24日(1ドル=99.02円)以来の水準だ。
背景にあるのは、米国経済の先行き不透明感だ。足許の経済指標やこれまでの景気循環から、米国の景気がピークを迎えつつある可能性が高まっている。米国企業の海外収益の割合が高まっていることを考えると、ドル高は米国経済にとって無視できないマイナス要因だ。米国政府は、これ以上、ドル高を容認することは難しいだろう。経済専門家の間でも、「米国政府の為替政策はドル安に転嫁している」との見方が有力になっている。
ヘッジファンドなど大手投資家が、米国政府の政策展開を見逃すとは考え難い。彼らの投資姿勢は、既にドル安・円高を想定した持ち高に変わりつつある。また、欧州の大手銀行が抱えるシステミックリスクなど、無視できないリスクが高まっている。それだけに投資家のリスク回避の動きが出やすく、円高は進みやすいと見るべきだ。
■本来ならドル高が進んでもおかしくない
足許のドル安・円高は、米国の実質金利の上昇圧力の弱さに起因する部分が多い。短期的には、為替相場を動かす最も大きな要因は日米二国間の“実質金利”の差だ。
一般的に、投資資金は、低金利の通貨から高金利の通貨に向かいやすい。多くの投資家は高金利通貨を選考することが多い。その結果、高金利の通貨は低金利の通貨に対して強含み、金利の低い通貨は弱含みとなりやすい。
現在、主要国の表面金利を見ると米国が最も高くなっている。本来であれば、ドル高が進んでもおかしくはない。しかし、通貨の価値の変動=インフレ率を加味した実質ベースの金利を見ると状況は違ってくる。通貨の価値が減少するインフレ懸念が高まる米国よりも、デフレから脱却できない日本の方が高くなっている。そのため、円が買われやすく、ドルが売られやすくなる。
また、2016年上半期、日本の経常収支(海外とのモノやサービスの取引状況を示す)の黒字幅は、10.6兆円と上半期として9年ぶりの水準に達した。経常収支が黒字であるということは、需給面からドル売り・円買いに繋がり易い。日本の企業が、海外からの売上などで得たドルなどの外貨を売り、円を買う可能性が高いからだ。
■米国政府の為替政策は転換している
昨年以降、米国政府のドルの為替レートに対する考え方=為替政策も変化している。過去を振り返ると、米国の経済が堅調な場合、米国政府はドル高に寛大なのだが、ひとたび米国経済に下落圧力がかかると、手のひらを反してドル安政策に転換する。
最近、G7やG20等の場で、ジャック・ルー米財務長官は一貫して「為替相場は秩序立っている」と発言している。米国政府が、ドル高を懸念する最大の理由は企業業績の悪化だ。近年の米国経済を見ると、ドル高が企業業績を圧迫してきた。大手企業の業績は2016年4-6月期まで4四半期連続の減益に陥っている。
また、米国では3四半期続けて労働生産性も低下している。そうした中での新規の採用は労働コストの増加につながり、追加的に利益を圧迫する可能性がある。そうなると、雇用の削減=リストラを進める企業も出てくるだろう。
米国政府にとって大きな課題は、いかに企業収益を支え、景気の下支えを図るかだ。その方策の一つとして、企業経営者からも指摘されているドル高の影響を軽減することは欠かせない。輸出の促進のためにも「緩やかなドル安がいい」というのが米国の本音だろう。
そうした状況を考えると、明らかに米国政府の為替政策は転換している。日本をはじめ、自国通貨安で輸出促進などの景気支援を図りたいとの考えに対するけん制だ。
■為替動向が与える世界経済への影響
これまで米国の景気回復が世界全体をけん引してきた。今後、米国景気の先行きに不透明感が高まると、世界全体の景況感悪化は避けられないだろう。
中国は、過剰な生産能力の問題を抱え経済成長率が低下している。欧州では英国のEU離脱の影響、イタリアの政治不安など不確定要因が多い。米国でも、生産性の伸びがマイナスに落ち込むなど気掛かりな点は多い。仮に、中国経済の更なる減速、欧州の政治混乱等に米国経済のピークアウトが重なると、世界経済は未知の低迷リスクに直面する恐れがある。米国に代わる世界経済のけん引役が見当たらないからだ。
今後、さらに為替動向が不安定になると、世界経済にもマイナスの影響が及ぶのは避けられない。世界的な需要の低迷から資源価格が一段と下落し、投資家のリスクオフによって金融市場の動向も不安定化する可能性が高い。
日本経済の問題は、円高による国内企業の収益悪化懸念だ。企業の海外進出の影響もあり、日本は海外経済の動向、それに起因する為替レートの変化に影響されやすい。そうした問題を克服するためには、政府が労働市場などの構造改革を進め、企業の積極性を引き出す必要がある。そしてそれこそ、アベノミクスが掲げた成長戦略の本義であるはずだ。
円高は、再び、わが国経済に大きな試練を与えようとしている。
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