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上履きを買うために売春した少女。貧困や性的虐待、中高生を追い込んだ現実
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2016/08/19 17:01 籏智 広太 BuzzFeed News Reporter, Japan
展覧会の入り口に掲げられている質問に、ドキッとする。
売春、レイプ、虐待、暴力……。少女たちが自らの「今まで」をしたためた手記や、その体験を再現した写真が並ぶ「私たちは、『買われた』展」。
そうせざるを得ない状況に追い込まれてしまった彼女たちの、心の底からの叫び声が聞こえる。
展示されている写真は、個人が特定されないように顔を隠している。その上で、彼女たちは自分の体験や思いを記している。
「受け取った5千円で、上履きや文房具を買った」(15歳・中学生)
「中2から高2まで、叔父から性的虐待を受け、妊娠した」(18歳)
「小6で売春した。初回は5万円。母親に、『安いね』と言われた」(18歳)
「助けてくれる人は、買春者しかいないと思っていた」(21歳)
この写真は20歳の女性。家族から性的虐待を受け、16歳で売春を始めた。手首にはリストカットの傷が無数に残る。
それでもこの団体と出会い、成人するまで「生きてきた証」として、振袖姿の写真を撮影したという。
この少女は15歳。母親の彼氏からの暴力から逃げようと家を飛び出し、街を放浪した。一段と冷え込む冬の夜、暖を求め、自動販売機に触れているところを再現した。
少女は、自らの経験をこう記している。
見知らぬ男に『どうしたの?』と声をかけられた。男はコンビニで、おにぎりを買ってくれた。コンビニを出ると手をつないできて、自宅に連れて行かれた。抵抗したら殴られると思って、体が固まった。家に帰られないとき、頼れるのは声をかけてくる男の人たちだけだった
「大人に言われて嫌だった言葉」という展示のインパクトは、大きい。
「産まなきゃよかった」「俺の子じゃない」「黙れ」「迷惑だ」「殺すぞ」「死ね」「めんどくさい」「帰って来るな」「出てけ」
見ているこちらが息苦しくなるような言葉が、彼女たち自身の手によって、書き込まれている。
展示に参加したのは、北海道から九州まで14〜26歳の24人。
彼女たちとともに展覧会を主催したのは、一般社団法人「Colabo」。中高生世代を中心にした女性の支援活動をしており、この24人も支援を受けている。
代表の仁藤夢乃さん(26)は言う。
「社会はこれまで、こういう状況にいる子に対して、目を向けてこなかった」
企画のきっかけは昨年10月。インドネシア人慰安婦に関する写真展を、支援している女子たちと見に行ったときのことだった。
「伝えるのはすごいこと。自分たちの経験を、伝えたい」
ポートレイトから伝わるおばあさんたちの眼差し、そしてその体験を語る姿に感動した数人が、自らも同じように発信したいと、動き始めたのだという。
少女たちはミーティングを重ねた。「売ったっていうよりも、買われたって感覚だよね」。そんな一言から、展覧会のタイトルも決まった。製作中、記憶がフラッシュバックして、具合が悪くなってしまう子もいた。
仁藤さんはこんな経験をしたことがある。昨年9月、とある地方の大学で講演したときの出来事だ。
「売春している中高生をどう思うか」と問うと、こんな答えが返ってきた。
「快楽のため」「遊ぶ金がほしいから」「信じられない」「自分が弱いから」
学生たちには横に、当事者だった20代の女性がいることを知らせていなかった。
彼女は小学生時代に性的虐待を受け、家出した。買われた経験もある。自分から積極的に売春をしていたかのような言葉を受け、仁藤さんにこう言ったという。
「そんなもんだよ。世の中の理解なんて。もう、傷つけられなくなった」
今回の展覧会を通じ、そういったイメージを変えられればと願う。
「彼女たちは、貧困だったり、虐待を受けていたり、売春せざるを得ない状況で生きてきた。抵抗できなかった子もいる。言いなりになることで、命を守ろうとした子もいます。その一方には、気軽に少女を買うの男性の存在がある」
「援助交際という言葉で、児童売春が大人からの『援助』であると語られている。でも、援助でも交際でもない。それは、支配と暴力の関係です。お金を払うことで、暴力を正当化する人もいます。外傷は1ヶ月で治るかもしれないけれど、心の傷は一生ものなんです」
「買われた」女性たちの手記も展示されている。
小学5年生の時、アル中の母が子ども達を置いて出ていった。父に暴力を振るわれ、ネットで知り合った人と出会うようになった。小学6年の時に初めて売春した。3千円ほどだった。焼肉屋とラーメン屋、キャバクラでアルバイトをし、月に20万円、家に金を入れた。仕事で忙しく、高校の課題が終わらないと、ラブホテルで課題をやってもらい、お礼は体で払った(19歳・高校生)
私には知的障碍がある。両親は私を妹に近づかせないように守り、食事も別に食べるようになった。洗濯物も放置され、食費は自分で稼いだ。街で声をかけられた知らない男に泣きながら話をした。ご飯をおごってくれて、ホテルに連れていかれた。抱きしめられると、涙が出た。それから、体を差し出して、食事をもらうことがやめられなくなった。助けてくれるのは、買春者しかいなかった(21歳・フリーター)
17歳のとき、22歳の彼氏からDVを受けた。彼は私を売ることでお金を稼ぐようになった。胸やお腹に「汚い女です」などと切り刻まれた。チップとして、小銭を投げつけられることもあった。自分が言いなりになることで、性犯罪を予防しているのだと信じ込むようになった。助けてくれる人なんていないと思ったし、助かりたいと考えることもなかった(22歳)
母親の彼氏から暴力を振るわれるから、家に帰りたくなくて新宿に行った。話しかけられた男にレンタルルームに連れ込まれた。怖くて体が固まった。受け取った5千円で、上履きや文房具を買った。この企画をSNSで知り、自分のような体験をした人がいると知ってほしいと Colaboに連絡した。子どものせいにしないでほしい。全部わかってもらうことはできないだろうけど、知ることで、近くにそういう子がいたときに想像できる人になってほしい(15歳・中学生)
売春相手にもらったものを写真に残していた子もいた。コンビニで数百円で買える食べものだ。
展覧会では、アンケートを手渡される。質問項目を考えたのも、女子たちだ。
「売春する中高生について、どんなイメージを持っていましたか?」「印象の変化はありましたか?」
企画に参加した彼女たちは毎日、アンケートに目を通す。「あなたたちは悪くないよ」。そんなことを書き込む来場者には、当事者や、過去にそういう経験をしていたという40〜50代の女性もいるという。
アンケートには、こんな項目もある。
「売春せざるを得なかったという中高生を減らすために、自分にどんなことができると思いますか」
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