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スバルのショールーム(「Wikipedia」より/Gungun01)
スバル、成長の限界か…スズキ、情け容赦ない「見限り」で関係解消&巨額利益
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16349.html
2016.08.18 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
スズキと富士重工業(ブランド名:スバル)が、16年間にわたる株式の持ち合いを解消した。提携事業がなくなった後も相互に株式の保有を続けてきた両社がここにきて関係解消に動いたことについて、「スズキが富士重の成長に見切りをつけたため」との見方が広がっている。
先に関係解消へ動いたのはスズキだ。スズキは8月8日、保有する富士重の全株式1369万株を売却すると発表した。スズキから株式売却の申し入れを受けていた富士重は同日の取締役会で、スズキが売却する全株式を自己株式として取得するため、自己株式の取得総額の上限を100億円引き上げて580億円とするとともに、東京証券取引所の時間外取引で自社株買いを実施し、買い入れた自己株式を消却した。スズキは、富士重の株式売却によって、今期業績見通しの当期純利益930億円の半分にもなる468億円もの巨額売却益を手にした。
両社が株式を持ち合ったのは2000年にまで遡る。当時、スズキが資本提携していた米ゼネラルモーターズ(GM)が富士重と資本提携したことから、同じGM傘下の日系自動車メーカーとして共同事業を展開するため、株式を持ち合った。スズキ会長の鈴木修氏は当時、株式持ち合いについて「名刺交換代わりに」と述べていた。スズキは富士重の発行済み株式数の1.75%、富士重もスズキの発行済み株式数の1.18%を保有。お互いの株式取得価格は約100億円だった。
この後、富士重は欧州市場向け小型車をスズキからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けたほか、両社間でトランスミッションを相互供給するなど、提携事業を進めてきた。だが、両社を結び付けていたGMが業績悪化で保有していた株式を放出、スズキ、富士重とも相次いで資本提携を解消した。
その後、富士重は05年にトヨタ自動車と資本提携を締結した。スズキは09年に独・フォルクスワーゲン(VW)と資本提携するも、VWが子会社扱いしたことにスズキが反発、資本提携解消に向けて裁判沙汰にまで発展して紛争が泥沼化し、15年に正式に提携が解消となった。
07年にスズキから富士重への小型車OEMが終了、富士重が軽自動車の生産から撤退した12年に、スズキからトランスミッション供給が打ち切りになってから、両社は提携事業もなくなっていた。
■「ここが売り時」と判断か
スズキは今回の富士重株式売却について、15年6月に東京証券取引所が上場企業に適用した保有株式に合理的な説明が求められる「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治指針)に基づいて、株式の保有政策を明確にするためだとしている。ただ、コーポレートガバナンス・コードが適用されてから半年以上経過してからの売却決定に、「株式売却益を確定しておこうとの考えが透けて見える」(業界筋)との見方もある。
富士重は、北米での新車販売が毎年のように過去最高を記録しているのに加え、ここ数年続いた円安効果で業績も毎年、過去最高益を更新。これに伴って株価もうなぎ上りで「怖いぐらいの水準」(富士重・役員)にまで上昇した。しかし、年初からの急激な円高が業績を直撃、株価も急激に値を下げている。年初来高値は1月4日の5015円、それが8月8日には3852円にまで下落している。
スズキは今後も円高基調が続くと見ており、米国新車市場も成長鈍化が見込まれていることから、富士重の株式は「ここが売り時」と判断したと見られる。
一方、スズキが富士重株式を売却した8月9日、富士重は保有するスズキ株式578万株を市場で売却した。売却益は約90億円と、スズキの5分の1だ。16年前に投資した金額はともに100億円ながら、売却益では大きな差がつく結果となった。
独特のカンで変化の激しい自動車業界の荒波を乗り越えてきたスズキの鈴木会長が、「富士重の成長は限界」と判断したと見られる行動に出ただけに、富士重株式でキャピタルゲインを稼いできた投資家は神経を尖らせることになりそうだ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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