http://www.asyura2.com/16/hasan111/msg/540.html
Tweet |
「ジャパン・バッシャー」と恐れられた元・辣腕対日交渉担当官が、日本復興の書を著した理由とは?(写真:尾形 文繁)
衝撃予測!日本は「2050年の世界最強国」か プレストウィッツが説く「日本復活」の裏側
http://toyokeizai.net/articles/-/129912
2016年08月03日 山田 俊浩 :東洋経済オンライン編集長
2050年の日本はGDP成長率が4.5%に達し、技術力を取り戻した日本製品が世界を席巻するという大胆な予測を展開し、米国で話題の書となった『Japan Restored』の邦訳書が、このたび『2050 近未来シミュレーション日本復活』として刊行された。
著者のクライド・プレストウィッツ氏は、レーガン政権時に商務長官特別顧問を務め、いわゆる「ジャパン・バッシャー(日本叩き)」として、日米貿易摩擦時には辣腕対日交渉担当官として鳴らした人物だ。
同氏が、なぜ日本復興の書を著すに至ったのか。日本は本当に復活できるのだろうか。
――プレストウィッツさんと言えば、1980年代の日米貿易摩擦の時代に「ジャパン・バッシャー」として名を馳せたイメージが強いのですが、今回お書きになった本では、ずいぶん日本に対する眼差しがやさしくなった印象を持ちました。
■日本には悲しい光景が広がっている
『2050 近未来シミュレーション日本復活』
1980年代、アメリカは安全保障においてはソ連を敵国と捉えていましたが、経済においては日本やドイツが強力な競争相手でした。日本はアメリカのGDPの6割にまで経済規模を拡大させ、当時はダイナミズムにあふれていました。そのような日本に対して、アメリカは本当に脅威を感じていたのです。
ところが、90年代に入ると、アメリカ人の多くが日本を脅威とは感じなくなり、2000年代以降は、日本の存在を気にかけることすらなくなりました。日本は「失われた20年」と言われる長い停滞に陥り、若者は将来に対する希望を失っているように見えました。とても悲しい光景で、それが私にこの本を書かせる契機となりました。
――アメリカにとっても「弱体化する日本」より「強い日本」のほうが望ましいということでしょうか。
日本はアメリカにとって最大の同盟国です。アメリカの戦略上、アジアは最重要地域と言ってよい。したがって、日本はイギリスやドイツ以上に重要な存在です。日本は米国のアジア戦略における要石とも言うべき存在なのです。
ところが、その日本がまったく活力を失っている。財政は悪化する一方で、人口減少にも歯止めがかからない。アメリカの知日派と言われる人のほとんどが、アメリカにとっての最重要国がこのままで良いのかという思いは強く持っています。
――本の中で描かれている2050年の日本は、成長率が4.5%、総人口1億4000万人となり、かなりの活力を取り戻しています。日本の技術も世界を席巻していて、日本製のロボットや医療機器が世の中にあふれ、航空機などは三菱製のジェット機が世界の空を飛びまわる光景が描かれていますね。
ええ、しかしそれは予測ではありません。私が本の中で提案した数々の提言を実行に移すことができれば、そのような幸福な未来も実現し得るということを示したものです。したがって、このまま日本が何も手を打たなければ、そのような輝かしい未来とは正反対の未来が待っているでしょう。
しかし、過去の歴史を見ると、日本人は危機を再生の好機にしています。たとえば、明治維新です。危機を契機として日本は早急に近代国家に移行しました。これはきわめて短期間に成し遂げられた革命的変革でした。戦後の復興も同様です。冷戦という外的な幸運に恵まれたとは言え、一気に世界第2位の経済大国へ登りつめました。日本は危機の都度、政治的にも経済的にもより強くなっていったのです。
■危機はいつやってきても不思議ではない
――英国のEU離脱や頻発するテロなど、海外に目を向けると、危機は遠くない将来に起こり得そうですが。
おっしゃる通りです。経済的に不安定な社会は、政治的、社会的な秩序不安をもたらします。欧州や中東はもちろん、ロシア、ブラジル、中国といった新興国でいつ危機が生じても不思議ではありません。
また、日本国内もけっして楽観できる状況にはありません。7月の参院選で安倍政権は勝利し、日本社会は安定しているように見えます。しかし、本当に日本は安定しているでしょうか。日銀は異次元の金融緩和を実施し、膨大な量の資金を供給していますが、いっこうに状況は改善されません。一方で債務の累積は膨大な金額へと膨れ上がっています。これは重大な危機の要因となり得ます。
アメリカやイギリスが利上げをすれば、円安になり輸入物価が上昇する。国民生活が苦しくなるので、どこかで日本も利上げし、円安を是正せざるを得なくなるでしょう。そうなれば、債務の利払いが一気に増え、税収のかなりの部分を債務の利払いに当てざるを得なくなります。
――安全保障の面でも危機が懸念されますね。本の中でも「2017年、尖閣占領危機」というシナリオに触れていますが、中国の台頭という現実は無視することはできません。そのような中で日本の安全保障はどうあるべきか、どうあるのがアメリカはベストだと考えているのでしょうか。
その問題に対して、アメリカには大きく言って2つの考え方が存在しています。
ひとつは従来型の伝統的な考え方で、現時点ではこちらのほうが支配的ですが、日本、韓国、フィリピンとの同盟を維持しながら、西太平洋はアメリカのコントロール下に置くというものです。当然、そのためにアメリカの軍事力も強化していきます。中国に対しては南シナ海に防衛ラインを置くべきだと考えていて、南シナ海を中国が支配しようとすれば、断固これを叩くべきというものです。
■西太平洋は同盟国が自ら防衛するべき?
クライド・プレストウィッツ(Clyde Prestowitz)/1941年米国デラウェア州生まれ。1970年代に外資系企業役員として日本に滞在。国務省勤務、民間企業勤務などを経て、1981年商務省に入り、86年までの間、レーガン政権で商務長官特別補佐官などを務める。現在、経済戦略研究所(Economic Strategy Institute)所長。上院議員時代のヒラリー・クリントン氏の貿易・通商アドバイザーを務めた実績がある。日米貿易摩擦時に辣腕対日交渉担当官として鳴らし、テレビ・新聞・雑誌などで日本に多数の提言を行っている。著書にベストセラー『日米逆転』(ダイヤモンド社)などがある(写真:尾形 文繁)
もうひとつの考え方は、従来型の防衛政策とは異なるもので、西太平洋、とくに中国近海においてアメリカ軍の優位性を維持するのが困難になってきており、この先はもっと困難になっていくという見方をベースにしています。中国は猛烈な勢いで海軍力を増強し、対艦ミサイルなどの配備を強化しています。そのような中で、アメリカ軍がそれらを上回る軍事力、防衛力を維持しようとするならば、膨大なコストを負担しなければならなくなります。
加えて、彼らは、アメリカ本土から遠く離れた中国近海でアメリカ軍のプレゼンスを維持することが本当に必要なのか、と考えています。中国がアメリカ本土に攻撃を仕掛けてくると思うアメリカ人はほとんどいません。なのに、なぜアメリカ軍はそれほどまでして、西太平洋でプレゼンスを維持する必要があるのか、中国を挑発せずにもっとビジネスパートナーとしてうまくつき合っていけば良いではないかと考えるのです。
さらに極端なグループは、海兵隊の基地は沖縄ではなくグアムに、第7艦隊の基地は横須賀ではなくハワイにすればよいではないか。その場合のアメリカは西太平洋においては、もう主役ではなく「従」の存在で、仮に中国と周辺国との間で紛争が起こった際にも、まずは日本や韓国、フィリピン、ベトナムなどの当事国が中国に対峙せよ、と主張します。
そのうえで、あまりに大きくバランスが変わりそうな場合、アメリカの覇権に深刻な影響を与えるような出来事が起こりそうな場合にだけ、アメリカ軍が介入すればよいというのです。
――アメリカ軍が沖縄や横須賀を離れるというのはショッキングですね。しかし、従来型の伝統的な防衛政策は、この先、維持することが困難になりそうです。
先にも触れましたが、アメリカ人の多くが、なぜアメリカから遠く離れた西太平洋に軍を展開する必要があるのかと疑問を感じています。日本にいるとわからないでしょうが、日本人が感じているほどアメリカ人は中国を脅威には感じていません。もちろん、距離的に遠くてよく理解していないという面は大きいでしょうが、やはり中国がアメリカに攻めてくるなど、誰も思っていないのです。
したがって、尖閣諸島や南沙諸島といった小さな島のために、アメリカの若者が血を流すことにはほとんどの人が反対するでしょう。中国と戦争になったらどうするのか。そんな小さな島の紛争に介入するのはまったくナンセンスだと思っているのです。
■日本の安全保障戦略も変わらざるを得ない
――ただ、中国は「一帯一路」構想の下で、自国の影響力を拡大することに積極的です。小さな島といえども、ひとつ譲ってしまうとドミノ式に勢力の伸張を許してしまう懸念があるのではないでしょうか。
その通りだと思いますが、多くのアメリカ人はそのような認識には至っていません。トランプに支持が集まるように、なぜアメリカはGDPの5%も防衛費に費やさなくてはならないのか、もっと国内の生活を豊かにすることに税金を使うべきだと思っています。GDPに占める防衛費の比率は日本が1%、韓国が2%、ドイツは1%未満。こうした現実を見ると、アメリカばかりが多額の負担をする必要はないのではないか、と感じているのです。
中国がドミノ式に勢力拡張するという懸念は正しいとは思います。しかし、中国の軍事力が増強される中で、それに対抗しようとすればどれだけのコストがかかるかわからない。また、これ以上の軍事支出を増やすことは国民の理解を得ることができない。となると、アメリカは、どこかの時点で、これまでの安全保障の哲学を変えざるを得ず、軍事戦略も大きく見直さざるを得ないという日がやって来ると思います。
それはもちろん、日本の防衛のあり方も変わらざるを得ないということを意味します。
――安倍政権は実際に防衛のあり方を変えつつある。「緊急事態法」を制定し、内閣の判断で自衛隊を動かすことができるようになりました。東京裁判を否定する、というところまで進めようとしているようにも見えますが、これをどう評価しますか。
非常に難しい問題ですね。ただ、安倍政権が安全保障の問題に対して、ポジティブに向き合っているという意味では評価したいと思います。ただ、その手法については注視していく必要はあるでしょう。戦前のように、国防のために「自由」が大きく制限されるような社会になってはなりません。メディアも含めて社会全体が、その点について厳しくチェックしていく必要はあると思います。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民111掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。