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山梨実験線で試験走行を行うリニア新幹線(出所:Wikmedia Commons)
リニア新幹線は「第2の国鉄」になる 安倍首相の「ヘリコプターマネー」は昭和型
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47498
2016.7.29 池田 信夫 JBpress
政府は来週、「事業規模で28兆円」という大型の補正予算をまとめる予定だ。参院選で「アベノミクスのエンジンを最大限にふかし、デフレからの脱出速度をさらに上げる」と繰り返した安倍首相が出してきたのは、昔ながらの自民党のバラマキ財政だ。
だが中身を見ると「真水」といわれる財政支出は3兆円で、大部分は来年度の当初予算まで含む「水増し」だ。中には貧困層に1万5000円ずつ金券をばらまく計画もあり、無差別に現金をばらまく「ヘリコプターマネー」の効果を狙っているようだ。
■ヘリコプターマネーはすでに始まっている
これは先日来日して安倍首相と会談したバーナンキ前FRB(米連邦準備制度理事会)議長の影響ではないかといわれているが、それは錯覚だ。日本では、事実上のヘリマネは財政ファイナンスという形ですでに始まっている。日銀の国債購入額は新発国債の額を上回り、金利もゼロなので直接引き受けとほとんど変わらない。
国債と違って金券は償還しなくてもいいというのは誤解だ。金券も日銀券も、日銀の民間に対する負債で、その原資は民間銀行の預けている日銀準備預金だ。今はゼロ金利だから金利負担がかからないが、金利が上がったら準備預金に金利が発生するので、国債と同じだ。
「日銀保有の国債を無利子の永久債にすれば、政府と日銀を合算した統合政府部門では借金ゼロになる」というのも錯覚だ。今でも日銀の得た国債金利は日銀納付金として国庫に納めるので、日銀は無利子である。永久債といっても、売買も繰り上げ償還もできるので同じことだ。
今マイナス金利の「国債バブル」で何も起こらないのは、ゼロ金利による一時的な現象だ。そのうち財政がさらに悪化し、国債の需給が逼迫して金利が上がったら国債価格が暴落し、地方金融機関の破綻や激しいインフレが起こるおそれがある。
国債の需給状況から考えても、今のような異常な状況がいつまでも続くことはありえないが、財政危機が顕在化するのはまだ先だろう。今のうちに出口戦略の準備をしておかないと、金利が上がり始めてからでは遅い。
日銀の黒田総裁の任期は2018年3月までだから、今のうちにテーパリング(資産買い入れの縮小)を始めないと間に合わない。ところが安倍首相は、大型補正で追加緩和を催促しているようにみえる。
政治家はバラマキが大好きだから、お金をいくらでも印刷できるようにしたらインフレの歯止めがなくなってしまう、とかつてアベノミクスの支持者だった 浜田宏一氏も警告しているが、こういう事態を招いた原因は彼にある。他人事のようにいうのは無責任だ。
■リニア新幹線の採算性は疑問だらけ
今回の補正で注目されたのが、JR東海のリニア新幹線の全線開業を8年早めるために財政投融資から3兆円の低利融資を行うという話だ。リニア新幹線は東京―大阪間を最高時速500キロメートルで結び、67分に短縮しようという壮大な計画だ。
本格的な工事はこれからだが、人口の減少する日本で9兆円もの設備投資を行い、完成は2045年という計画の採算性を危ぶむ専門家は多い。安倍首相と親しい葛西敬之氏(JR東海代表取締役名誉会長)が救済を求めたともいわれる。
2045年には人口は1億人を下回り、特に新幹線を利用する労働人口はほぼ半減するが、JR東海は完成時の品川―大阪間の総輸送量を年間529億人キロメートルと予測しており、これは2011年の東京−大阪間の新幹線の輸送実績443億人キロメートルの1.2倍以上だ。
鉄道の輸送量はGDP(国内総生産)にほぼ比例しており、新幹線の場合は品川駅の開業や列車の増便で混雑は緩和されている。今後の人口減少でおおむねゼロ成長が続くとすると、リニア新幹線は過剰設備になるおそれが強い。
リニア新幹線の計画ルート(JR東海ホームページより)
しかもリニア新幹線は図のように山岳部を突っ切って走るため、品川―名古屋間の86%がトンネルだ。長大な地下鉄に乗るようなもので、快適とはいいがたい。また地下40メートルの大深度地下を走るので地上から駅まで20分近くかかり、品川─大阪間だと地上まで出るのに100分以上かかる。
今でも品川―新大阪間は新幹線で2時間20分、飛行機なら羽田―伊丹間は1時間だ。アクセスの便利な現在の新幹線と比べても、搭乗時間20分の国内便と比べても、リニア新幹線はほとんど優位性がない。料金は新幹線より700円ぐらい高くするというが、そんな料金では採算は取れないだろう。
日本のリニアモーターカー技術は世界最高レベルだが、これは平地で長距離を走るのに適しており、東京―大阪のように短距離でほとんどがトンネルという路線には向いていない。アメリカやロシアなどにプラント輸出したほうがいい。
■バラマキ財政でJRは「再国有化」される
最大の問題は、向こう30年もの長期資金をいかにして調達するかだ。今はJR東海は0.4%という低金利で20年債を発行しているので、金利負担は2400億円だが、向こう30年も低金利が続くとは考えられない。たとえば長期金利が2%に上がると、金利負担は1兆2000億円になり、工費は1割以上も上がる。
そこで政府の今度の計画では0.3%の固定金利で融資し、工期を前倒ししようというのだ。その財源とする財政投融資は、昭和時代に赤字ローカル線をつくるのに利用された「第2の予算」だ。これは政府保証で財投債を発行し、それを長期間かけて償還するもので、金利リスクを政府が負担するということだ。
もし金利が上がって1兆円以上になったら、どうするのだろうか。財投の原則では財投債を発行する機関が負担することになっているが、これを政府が肩代わりすると固定金利の財投債に評価損が発生する。おそらくそれは税金で穴埋めすることになるだろう。
これは昔の国鉄と同じだ。採算の合わないローカル線をつくるために、田中角栄は鉄建公団(鉄道建設公団)という特殊法人をつくり、そこが財投の資金を借りて鉄道を建設し、その借金の穴埋めを一般会計でやるという方式で、全国に赤字ローカル線をたくさん建設した。
政治家がカネを出すときは、必ず口も出す。政府が資金援助すると実質的にJRは再国有化され、「第2の国鉄」になるだろう。リニア新幹線を強く推進してきたのが、国鉄民営化の最大の功労者だった葛西氏だというのも皮肉だ。自民党は昔の自民党に戻り、JRは昔の国鉄に戻る――その先に待っているのは重税と経済の衰退である。
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