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車の自動運転、夢物語の化けの皮剥がれる…死亡等の事故多発、ブレーキすら正常作動せず
http://biz-journal.jp/2016/07/post_16061.html
2016.07.28 文=大西宏/ビジネスラボ代表取締役 Business Journal
成長著しかったスマートフォン(スマホ)市場が成熟し始めました。それにともなって、人々の関心は「その次に時代を牽引するのは何か」に移ってきているように感じます。
新しい技術が注目されると、次世代を切り開く「夢の技術」としてさまざまなメディアが持ち上げ、またそこに専門家も加わって時代を変える期待感も膨らんできます。IoT(モノとインターネットの融合)、自動運転、仮想現実、拡張現実、ビッグデータ、オムニチャネル――、数え切れないほどのバズワードが広がってきています。
確かに、新しい技術が牽引車となって、イノベーションが起こることもあります。しかし、技術だけで社会が変わることはあまりなく、ビジネスのシステムや社会システムの変革をともなって初めて、新しい価値が創造されてくるという視点を持つことが重要です。
人、社会、そして技術がどうつながり、社会や人びとの生活の何が変わるのか、それらが変わることでどのような新しい価値が実現されてくるのかを考えて初めて、イノベーションやリ・イノベーションを正しく評価することもできるのではないでしょうか。
■繰り返されてきた「一過性のブーム」
2007年の春から夏にかけて盛り上がった「セカンドライフ」ブームをご記憶でしょうか。仮想空間で、住宅、家具、洋服などが自分でデザインできたり、世界中の人とチャットしたり、仮想通貨のリンデンドルで取引ができるなど、仮想空間が切り開く新しい世界の始まりだとメディアが持ち上げ、広告代理店が仕掛けて、さまざまな企業をも巻き込んだお祭りを引き起こしました。
こういったブームに警鐘を鳴らすことは勇気がいります。セカンドライフが知られ始めたかなり早い時点で筆者は批判をブログに書きましたが、随分厳しいご意見を頂戴しました。夢を破ることは許せないということでしょうか。ゲームならまだしも、中途半端にリアルな世界を模倣したにすぎない仮想空間はハリボテの世界にすぎず、あっという間に人びとの関心から遠ざかってしまいました。
しかし、多くのメディアは何か新しい時代が始まるかのような空気をつくりだしていたのです。
米グーグルのグーグルグラスは、実際に見えている世界に情報をつけ加える拡張現実を実現するメガネです。拡張現実とは、道路を歩行中に見えているお店のインターネット上での評価を自動的に確かめられるとか、福井県立恐竜博物館でソフトバンクが実証実験を行ったりしていますが、館内にある恐竜の骨格標本に対してガイドを行うというもので便利そうです。
このグーグルグラスに、胸をときめかした人も少なくないと思います。しかし、グーグルグラスは早くも人々の話題から消えました。というのも、昨年初めにグーグルグラスは販売中止に追い込まれたからです。
見る対象がお城や恐竜ならいいのですが、それが人の場合だと、見られている側は個人を特定されプライバシーが侵害されているのではないかという不安感を抱きます。グーグルグラスの内蔵カメラで、いつどのようなかたちで撮影されているかもわかりません。また、そもそもファッションとしても違和感がありました。結局は技術の理想が、人々の心理や感性を乗り越えられずに消えていったのです。
■技術競争の果てに0円の価値でしかなくなった3Dテレビ機能
業界そのものが暴走してしまうこともあります。典型は3D液晶テレビです。映画館では普及しても、家庭でわざわざメガネをかけて見なければならない3Dは、最初から一過性のブームで終わることが予想されました。しかし、テレビ業界がこぞって参戦し、予想通りにあっという間にブームが終わり、今では3D機能がついていても付加価値にならない、つまり、まったくお金が取れない技術になってしまいました。3Dテレビに立ちはだかったのも人びとの感性であり、テレビはリビングではくつろいで見るものという生活文化でした。
■3Dプリンタはなんでもできる?
3Dプリンタは、高性能な工業用のものは以前からありました。しかし、低価格プリンタが登場したことで身近な存在となり、関心を呼びました。ユーザがちょっとした部品やアクセサリ、また試作品をつくることができるので、モノづくりにユーザが参加する機会を生み出します。つまり「イノベーションの民主化」を促すものとしても注目されていましたが、いつの間にかメディアを通してあたかも3Dプリンタでなんでもつくれるような誤解が広がっていきます。
中国人経営者の宋文洲氏がツイッターで、「この頃の3次元プリント技術は凄いな。驚いた。いずれ鋳物、旋盤などの金属加工業は要らなくなる」とつぶやいていておられましたが、ありえない話です。
夢を膨らませるのはいいのですが、それは「やがてスマホで空を飛べる」と言っているようなもので、宋氏にはなんの他意もありませんが、脊髄反射で「それはない」と思わずそうリツイートしました。
■「自動運転」が抱える落とし穴
期待が膨らみ誤解を生んでいるという点では、自動車の自動運転もそうかもしれません。自動運転は一過性のブームではなく、自動運転の実現にむけて自動車メーカーや部品メーカー、またグーグルやアップルなどのIT企業、人工知能のベンチャー企業が開発競争を行っている分野です。
グーグルが米カリフォルニア州で走行実験を行っていることは広く知られていますし、メルセデスを使って100kmを自動運転で走行した動画を見れば、もうすぐ手に届きそうな技術ではないかと感じさせてくれます。
WHO(世界保険機関)によれば、世界で毎年125万人が交通事故で亡くなっています。日本では飲酒運転の罰則や取締強化で、交通事故による死亡者数は長期的には減少してきていますが、問題は高齢者の割合が増加してきていることです。平成27年では、死亡事故のうち65歳以上が54.6%と半数を超えています。アクセルとブレーキを踏み間違う、ハンドル操作を誤って歩行者の列に突っ込む、高速道路での逆走など、高齢が原因と思われる悲惨な事故も起こっています。
危険運転を防ぎ安全性を高めるためのシステムや技術に社会的なニーズがあることは、いうまでもないことです。
■運転支援か、自動運転か
人が車を運転することを前提とし、走行の安全性を高める運転支援なのか、車の運転をすべて任せてしまう自動運転なのかでは、単に技術進化のレベルと割り切れない違いがあります。
なぜなら、自動運転には思わぬ2つの落とし穴が潜んでいるからです。
ひとつは万が一事故になった際に誰が責任を負うのかという法的な問題です。自動運転で走行していた車が事故を起こした時に、誰がその責任を持つのか。所有者なのか、製造したメーカーなのか、もし運転に問題がないと主張したいなら、それを証明しなければなりません。また、社会的なコンセンサスや法的な整備が求められますが、そう簡単な話ではありません。
そしてもうひとつは、自動運転の司令塔を担う人工知能やシステムがほんとうに信頼できるのかです。それを考えさせられる事故が今年相次いで起こりました。
■人工知能の判断ミスによる事故
まずはグーグル・カーです。交差点で道にあった砂袋をよけようと車線変更したところで、後ろから時速24kmで直進してきたバスにぶつかったのです。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)から「AI(人工知能)も運転手」だというお墨付きをもらった直後のことでした。グーグルの人工知能はなんとおバカさんなのかと思わず笑ってしまいそうな事故でした。
グーグル・カーの場合はまだ笑って済ませるような事故でしたが、その2カ月後にフロリダ州で、テスラ・モデルSがオートパイロット機能で走行中に悲惨な死亡事故を起こしてしまったのです。
この事故は高速道路に入ってきた18輪トレーラーにモデルSが激突し、ドライバーが死亡してしまいました。
原因は、トレーラーの車体が白、背景の空も輝く日光のためほぼ白色で、光学式カメラによる車両認識システムがトレーラーを認識できなかったことです。さらに光学式カメラだけでなく、ミリ波レーダーでも検知する仕組みでしたが、ミリ波レーダーの情報から、トレーラーの車体を「高速道路上の道路標識」と勘違いしてしまったというのです(7月14日付「IT pro」記事「AIは勘違いする―テスラとトヨタにみる自動運転カー戦略の違い」より)。
また、この事故に続くように、7月にもオートパイロット機能で走行していた車が2件事故を起こしています。テスラのこれらの事故は、過剰な期待に冷水を浴びせかけるような事態となりました。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは、テスラはNHTSAに事故を通報したものの、米証券取引委員会(SEC)に対しては、事故についての情報を開示する書類の提出をしなかったために、証券法違反の疑いでテスラを調査していると報じています。テスラが生産拡大とソーラーシティ買収に充てる資金調達で公募増資を行う直前で、投資家にこの事故についての情報を開示しなかったのです。
ただテスラが謳っている自動運転は、日本の国交省が分類し定義している「自動化」の4つのレベルでいえば、「ドライバーは安全運行の責任を持つが、操舵・制動・加速全ての運転支援を行う」というレベル2にすぎません。平たくいえば、あくまで運転はドライバーが責任を持って行い、それを補助する機能を持った車でしかありません。日本なら「自動運転」を謳うこと自体が問題視されるのではないでしょうか。
ちなみにレベル3は、高速道路など特定のところでの自動運転が可能なレベルで、レベル4になって初めて完全自動運転が可能な段階だとしています。
ところがスタンドプレイが得意なテスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)にかかると、レベル2にすぎない機能も、マスコミが描く「夢の自動運転」がまさに実現したかのような錯覚をさせ、それを売り物にしたのです。
テスラのHP上での自動運転についての記述は現在は修正されていますが、7月11日付「ITmedia ビジネスオンライン」記事「自制なきオンデマンドとテスラの事故」が掲載した、7月9日時点におけるテスラHP上の記述は、確かにドライバーに誤解を与えかねない内容です。
またシステムが正常に作動しても、ハンドル操作やブレーキが正しく作動するとは限りません。動画共有サイト「YouTube」には、自動ブレーキですら実際に実験してみるとスバルのアイサイトしか止まらなかったなど、実験中にトラックに追突してしまったといった動画がいくつか転がっていますのでぜひご覧ください。
■日本はどの戦略?
安全な運転、より快適な運転を支える運転支援を積み重ねながら技術の進化をはかるのか、少しは社会実験になっても自動走行を促進させ、実際の走行を通してデータを集め、自動走行の実現を促すのか、自動運転の実現に向かう道筋が分かれます。
それぞれのメーカーがどう判断するかですが、トヨタは前者で、テスラやグーグルは後者です。しかし、法的な問題が絡む事柄であり、国土交通省の戦略、また規制のさじ加減によっても進化速度は変わってきます。
新型の大型バスやトラックは、衝突しそうになると自動でブレーキがかかる装置の設置義務付けが行われていますが、自動運転については、国交省がより積極的にリスクを取り後押しするのか、それとも安全に徹するのかが注目されるところです。
(文=大西宏/ビジネスラボ代表取締役)
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