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7月15日のLINE社上場会見に登壇する出澤社長
縮むLINE、成長終了か…拡大から守りへ転換、「4カ国のみ集中」宣言と今後の戦略
http://biz-journal.jp/2016/07/post_16059.html
2016.07.28 文=佐野正弘/ITライター Business Journal
かねてより上場の噂がなされていた、日本などで人気を獲得しているメッセンジャーアプリ「LINE」を提供するLINE。そのLINEが7月15日、ついに東京証券取引所と米ニューヨーク証券取引所に同時上場を果たした。だが一方で、これまで拡大戦略を続けてきたLINEが、「陣取り合戦は終わった」として4カ国にフォーカスした戦略を打ち出すなど、大幅な戦略変化を見せている。その理由はどこにあるのだろうか。
■拡大戦略を一転、陣取り合戦は終了へ
LINEは、その急成長ぶりと日本にとどまらない利用者の拡大傾向を受け、かねてより上場に関する憶測が飛び交っていたのだが、なかなか上場する気配は見せなかった。
だが今年の7月15日、LINEは緊急の記者会見を実施し、2取引所に同時上場を果たしたことを発表した。上場前には、市場競争の激化から上場タイミングが遅いのではないかという声も少なからず上がっていたが、上場当日の初値では時価総額が1兆円を超えるなど、市況が非常に悪いなかにありながらも上々な伸びを示しており、人気の高さをうかがわせている。
LINEの代表取締役社長である出澤剛氏は、その発表会上でLINEを上場させた理由は2つあると話している。ひとつは上場することで経営の透明性を高め、サービスの信頼性を向上させること。そしてもうひとつは、世界的に激しい競争環境下にありながら、成長を継続するための資金を調達するためだとしており、日米同時に上場したことも、世界中のユーザーに利用してもらうためプレゼンスを上げることが目的だと、出澤氏は話している。
だが、世界的なプレゼンスを上げるために上場したとする一方で、出澤氏はLINEの今後の戦略に関して、「メッセンジャーアプリの陣取り合戦は、ほぼ終わったと思っている。現在の状態で新しい国に進出しても、成功確率は低いだろう」とも話している。
LINEはこれまで、日本だけでなく台湾やタイなどでもトップシェアを獲得したことから、世界でのシェア拡大に向けた積極的な取り組みを続けていたが、今回の出澤氏の発言は、従来の方針を大幅に転換するものだといえる。ではなぜ、LINEは日米同時上場を実現しながらも、世界戦略を縮小する方向に向かっているのだろうか。
LINEは日本をはじめとして、すでに高いシェアを獲得している4つの国や地域にフォーカスしてポータル化を推し進める戦略を打ち出している
■4カ国にフォーカスしてポータル化を推進
その大きな理由は、出澤氏の発言そのものにあるといえよう。メッセンジャーアプリが注目されてすでに5〜6年が経過しているが、先進国だけでなく新興国でも、すでにスマートフォンの普及率は一定の水準に達しており、そこで利用されるアプリの傾向も固まってきている。最近ブームを巻き起こしている米ナイアンティックの「ポケモンGO」のような爆発的なムーブメントが発生しない限り、スマートフォン利用者が新しいアプリを積極的にダウンロードしようとはしなくなってきているのだ。
それゆえメッセージアプリの利用傾向も、国によってある程度固まってきているのは事実だ。米国であればFacebook Messenger、欧州や南米であればWhatsApp Messenger、中国はWeChatと、比較的大きな国々ではすでに利用されるメッセンジャーアプリが固定化してきており、アプリに対する関心の低まりと併せて、新しいメッセンジャーアプリをユーザーが利用しようとするモチベーションは低くなっている。
そうした状況下で、ユーザー拡大に向けた投資を進めてもあまり効率的ではないのは確かだ。また現在、メッセンジャーの優劣がはっきりしていないのは新興国や小国であるため、そこでユーザー獲得のための投資を拡大しても、投資効率があまり高いとはいえない部分もある。そうしたことからLINEは、市場拡大に攻めの姿勢から、現在高いシェアを獲得している国や地域で確実に定着を進めつつ、売り上げを高める守りの戦略に移ったといえそうだ。
一方で最近では、既存のメッセンジャーアプリのプラットフォーム化を進め、そのプラットフォーム上でいかにビジネスを拡大するかに大きな注目が集まっている。最近人工知能(AI)と併せるかたちで注目されている、メッセンジャーアプリ上で会話しながら商品の購入などができるようになる「チャットボット」などが、その代表例といえるだろう。
実際LINEも、すでにLINEがトップシェアを獲得している日本、台湾、タイ、そして現在シェア1、2位を争っているインドネシアの4カ国にターゲットを絞るとしている。その上で、LINEのアプリ上でさまざまなサービスを提供するプラットフォーム展開を一層推し進め、ポータル化を推し進めることで売り上げを高めることが、今後の戦略の大きな柱となるようだ。
すでにLINEは今年3月、これまで比較的クローズドだったLINE上のプラットフォーム利用をよりオープン化し、さまざまな事業者にLINE上でサービスを提供してもらうための取り組みを進めている。そうした展開を今後は日本だけでなく、他の3つの国・地域でも強化していくものと考えられる。
LINEはかねてよりプラットフォーム展開に力を入れており、コミュニケーションを起点としたLINEのポータル化を推し進めている
■次世代のコミュニケーション需要獲得が勝負所に
LINEはゲームを主体としたプラットフォーム展開ではすでに大きな成功を獲得しているし、スタンプによる収益化でも高い売り上げを上げているなど、プラットフォーム展開では大きな実績を持っている。また最近では、「LINE Pay」「LINEポイント」の本格展開で決済の分野にも力を入れつつあるほか、日本でMVNOによるモバイル通信事業「LINEモバイル」の展開も予定しており、アプリの内側だけでなく外側でもユーザーを囲い込む取り組みを進めようとしている。
しかしながら4カ国に閉じた展開では、Facebook MessengerやWhatsApp Messengerを抱える米フェイスブックや、莫大な人口をベースに中国でWeChatのプラットフォーム化を推し進めるテンセントなどと比べると、成長の面では見劣りしてしまうのも事実だ。国によるメッセンジャーアプリの優劣がある程度決まってしまったことを受け、LINEの成長も今後鈍化するのではないかという懸念も、最近は少なからず見られるようになってきた。
当面は4カ国でのプラットフォーム展開で売り上げを高めていく考えのLINEだが、その後の成長を実現する起爆剤は何になると見ているのだろうか。この点について、出澤氏は「スマートポータルが次の大きな波になる」と話している。まずは4カ国で、LINE上で多様なサービスが利用できる、Web上のポータルに代わるポータルサービス化を推進。その上で、世界的に通信環境が向上するであろう次のタイミングで、そのスマートポータルを世界的に拡大していく考えのようだ。
LINE、ひいては多くのメッセンジャーアプリは、フィーチャーフォンからスマートフォンへとユーザーが移行するタイミングで急速に普及した経緯がある。それゆえ、次に同様のパラダイムシフトが起きるであろうタイミングを見計らって自社のサービスを拡大していくのが、LINEの狙いとなっているようだ。
だがLINEが推し進めているポータル化は、あくまでLINEというコミュニケーションの上に成り立っているものだ。LINEのコミュニケーションが広まっていない国や地域で、LINEのポータル化が容易に推し進められるとは考えにくい。次のパラダイムシフトがどのようなかたちで訪れるかは想像できないが、LINEのスマートポータル戦略を推し進めるためには、パラダイムシフト時に新しいコミュニケーションニーズをいかに先手を打って獲得できるかが、次の大きな勝負所となることは確かなようだ。
(文=佐野正弘/ITライター)
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