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マルサよりも怖い!? 国税徴収官の仕事とは
http://diamond.jp/articles/-/95358
2016年7月15日 一般社団法人租税調査研究会 ダイヤモンド・オンライン
今年2月、国税庁が実施するネット公売に、英国製高級車のロールスロイス・ファントムが出品された。東京国税局が税金滞納者から差し押さえたものだ。滞納者の財産を差し押さえたり、公売に掛けるのは、課税当局の徴収部門の仕事。時に「マルサより恐ろしい」といわれつつも、その存在はあまり世間一般には知られない国税徴収官の仕事はぜひ把握しておきたい。長きにわたり徴収部門で実績を挙げてきた中島洋二税理士に、その実態を聞いた。
■マルサにない捜査権限で
財産を差し押さえ公売に
――お金があるにもかかわらず、意図的に税金を納めない人もいます。こうした滞納者から税金を徴収するのが国税徴収官ですが、その存在はほとんど知られていません。
中島洋二(なかじま・ようじ)
税理士。租税調査研究会主任研究員。東京国税局徴収部S-1特別徴収官、鎌倉税務署長、同局徴収部機動課長、同部管理運営課長、同局徴収部次長、横浜中税務署長を歴任し、退職。2013年8月、税理士登録。
Photo by TAKASHI MIYAUCHI
中島 国税徴収官の仕事は、本来納めるべき税金が滞納されている場合、滞納者の資産や職業、家族構成などを調べた上で法律に基づいて納税を催促することです。
また、国税の徴収に関する事務の指導・監督、法令の解釈・適用および不服申し立て、訴訟に関する事務を行う他、滞納の整理促進を図るための施策を企画・立案も行います。
こうした仕事が主なので、一般納税者には、あまり知られていないのでしょう。
――とはいえ、国税徴収官には、国税査察官(マルサ)にない強い権限がありますね。
中島 国税徴収法142条の「徴収職員は、滞納処分のため必要がある時は、滞納者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる」に基づき、「徴収職員証票」を示せば、滞納者の自宅などの捜索・差し押さえを行う権限が与えられています。
一般税務職員が行う税務調査は、任意調査ですので納税者の同意が必要です。一方、マルサは納税者の同意なしに強制捜査ができますが、その際は裁判所の令状が必要になります。警察官も同様です。つまり、令状なしで強制捜査できるのは、国税徴収官だけなのです。
全国12の国税局には徴収課があり、管轄下にある税務署の徴収部門を管理・管轄しています。また、特別整理部門では、大口の滞納整理や処理困難事案を扱っています。
※参考:国税徴収官の仕事の詳細について(KaikeiZineの記事https://kaikeizine.jp/article/2249/)
徴収部門の実務責任者は、特別国税徴収官あるいは統括国税徴収官という役職者で、主に免脱事件や大企業、著名人を担当します。
■税金滞納の累計は
合わせて1兆円ナリ
――国税徴収官も脱税者の刑事告発を行うのですか。
中島 お金はあるのにそれを隠して納税しない悪質なケースについて、隠したお金を探し出し、税金を納めさせることが徴収部門の責務であり、応じない場合は財産の差し押さえを行います。
ただし、あくまでも財産調査であり、マルサの捜索が最終的には容疑者を脱税で刑事告発することが目的であるのとは異なります。
これについて、私には苦い思い出があります。調査の過程で、顧問税理士が滞納者に財産をどこかに動かすよう指示したFAXを見つけたのですが、このFAXには財産としての価値がないため、差し押さえることができなかったのです。
財産を隠している証拠としては十分なのですが、徴収官の権限は「財産の差し押さえ」ですから、当人の了解を得てコピーを取るか、現物を借り受けるしかありません。もちろん、自分が財産を隠している証拠を「はい、どうぞ」と差し出す人はいませんからね。
――滞納の件数はそんなに多いのですか。
中島 年間で、徴収決定済み額のおよそ2%弱が滞納という実態があります。累積案件を合わせると1兆円超※にもなります。金額の多寡こそあれ、滞納件数は相当数に上るので、処理には相応の人員数が必要です。
※参考:「平成26年度租税滞納状況について」(国税庁)
東京国税局管内では、現在、約6000億円が滞納のままで、これは全国の滞納額の60%に相当します。つまり、東京国税局が実績を上げないと、全国レベルでの滞納金額は減らないのです。
――国税局の徴収部門の手に掛かれば滞納分はほぼ回収されるそうですが、その理由は。
中島 国税局の徴収案件は、会計検査院が後で中身をチェックします。なので、事案に取り掛かったら徹底して行います。
最終的に徴収できないとなると、「滞納処分の執行停止」という選択肢もあるのですが、執行停止の判断に至るまでが大変で、あらゆる手を尽くした経緯を説明する必要があります。滞納者本人がお金を持っていなくても、第二次納税義務(注1)についても十分に検討します。
納めてもらうはずの税金ですから、それを徴収するのは当然なのですが、滞納整理は慎重、かつ根気強くやっていきます。長いものだと十数年を要することもあります。
――捜索は何人で行うのですか。
中島 税務署が捜索を行う時は、通常、単独、あるいは2人程度です。国税局の場合は、取引銀行なども全て調べますので、少なくとも20〜30人。多い時だと70〜80人になります。
私が徴収部次長の時は、40人規模の事案を年間5〜6件担当していました。一気に捜索しないと、債権などはどこかに移されてしまいます。昔は動産を差し押さえたりしていましたが、最近はほとんどが債権がらみです。
注1:第二次納税義務 納税義務者が、滞納および滞納額を全額納めることができない時、その納税義務者と一定の関係にある第三者に、二次的にその納税義務を負わせるもの
■株をシュレッダーで切り刻む
よりも怖い海外への持ち出し
――これまで手掛けた案件で印象深いものはありますか。
中島 2007年に新聞でも報道されましたが、神奈川県川崎市のストック・オプションに関する滞納事件ですね。
かなりの滞納額でしたが、おそらく本人は、相当財産を持っていたと思います。しかし、それが一向に見つからない。自宅をはじめ、さまざまなところを捜索しました。やっと見つけたのが株券です。
しかしこの資産家、なんと、「このまま国に取られるくらいなら」と、株券をシュレッダーにかけてしまったのです。それにはさすがにびっくりしました。
とはいえ、別にシュレッダーにかけても、証券会社の株主名簿に名前が記載されていますので、徴収の場合、財産がどこにあるのか分かれば差し押さえは可能ですから、株券自体がなくても支障はありません。
ただ、最も恐れていたのは海外へ逃げられることでした。海外に財産を持ち出されると日本の国税徴収法では差し押さえができません。
今は多くの国と租税条約が結ばれており、外国にある財産でも条約締結国の課税当局に差し押さえてもらって現金化し、日本に戻すことは可能なのですが、実際に実行するとなると、手続きがかなり大変なのです。
――ところで、国税庁の公売で売れ残ったものは、どうなるのですか。
中島 順次値段を下げて、何とか売り切るのが通例です。ですが、売れなかったら市場価値なしと判断し、差し押さえ財産を解除します。
顕著な例は、バブルの頃に原野商法(注2)で騙された人たちの土地で、当時、国税局もそれら土地を差し押さえましたが、売るに売れず、ほとんどの差し押さえを解除しました。
差し押さえが解除されると財産は滞納者に戻ります。滞納者も売れないことは承知しているのですが、意外にも差し押さえの解除を喜ぶのです。というのも、彼らの目的は、その土地を担保に銀行から借り入れをすることだからです。
――2015年の相続税増税の影響で、相続税申告件数は増えているようですが、国税徴収部門も相続関係の事案は増えていますか。
中島 増えてはいないと思いますよ。相続税が課税強化されたからといって、そのことで滞納が増えるわけではありませんから。
滞納が多いのは、統計では1位が消費税、2位が源泉所得税です。昔は源泉所得税が1位でしたが、消費税が導入されてから1位の座を空け渡しました。
統計だけで考えると、消費税が10%になると滞納額が増えるように感じられますが、おそらくは、さほど滞納件数は増えないと思います。
注2:原野商法 1960年代から80年代に社会問題となった、原野などの価値の無い土地を詐欺目的で売りつける悪徳商法
(構成・「KaikeiZine」編集長・宮口貴志)
■一般社団法人租税調査研究会
国税調査官、税務署長など国税出身の税理士により、適正な税務判断と適正納税のための総合的な税務審理アドバイス、調査対応支援を目的に設立。企業の財務・会計担当者や会計人向けセミナー、個別相談対応の他、執筆活動なども行っている。 http://zeimusoudan.biz/
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