門間前日銀理事:バズーカ第3弾の余地なし、国債買い入れ減額へ 日高正裕 2016年7月12日 06:00 JST どこかの時点で年80兆円ペースの減額が「常識的な将来見通し」 効果出ていないのにマイナス金利深掘りは「慎重に考えた方がいい」 日本銀行前理事の門間一夫氏は、日銀の追加緩和の手段について、マイナス金利拡大も量の拡大も慎重な判断が必要で、もはやバズーカ砲第3弾の「余地はない」との見方を示した。量は次第に限界に近づいており、そう遠くない時期に長期国債の買い入れペースを落としていくことが「常識的な将来の見通し」だと語った。 門間氏は日銀のチーフエコノミスト的存在である調査統計局長をはじめ、金融政策担当理事、国際担当理事を歴任。5月末に退任し、みずほ総合研究所のエグゼグティブエコノミストに就任した。 11日のインタビューで門間氏は、「どの経済学の教科書を見ても、実質金利が高いより低い方が必ず経済にプラスになると書いてあるが、現実はもう少し複雑かもしれないので、本当に教科書通りに効果が出てくるかどうか見極めていく必要がある」と指摘。明確な効果が出ていないのにどんどんマイナス金利を深掘りしていくことは「慎重に考えた方がよい」と語った。 保有残高が年80兆円増えるペースで行っている長期国債の買い入れは「永遠には続けられないのは当たり前だ」と指摘。日銀も最近は国債市場の機能や流動性にもう少し注意を払う必要があると情報発信しており、限界に「だんだん近づいているという認識は日銀も持っている」と語った。その中で100兆円、120兆円とペースを上げるのは「不可能ではないが、非常に難しい」と指摘し、「バズーカ砲第3弾は基本的にできないだろう」と述べた。 むしろ、どこかの時点でペースを少し落としていく方向で考えるのが「常識的な将来の見通し」と言明。ペースを多少落としてもバランスシートは拡大し続けるので、引き続き緩和方向に行くという大きなフレームワーク自体は変わらないことを「しっかり説明していけば、引き締めになるとか為替相場の円高に作用するとか、そういう誤解を招く可能性は排除できる」と語った。 追加緩和は日銀の判断次第 日銀は28、29の両日、金融政策決定会合を開く。生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)は足元で3カ月連続のマイナスになっており、2017年度中としている2%達成見通しには黄信号がともっている。英国の欧州連合(EU)離脱や円高の進行など海外発のリスクも高まる中、市場では追加緩和観測が強まっているが、門間氏はより持続可能な枠組みへの移行が不可避との見方を示した。 門間氏は7月会合について、経済情勢はもはやデフレではないこと、金融緩和がすでに強力であることを重視すれば追加緩和は不要との判断になり、足元の経済が多少元気がないことや、英のEU離脱など世界経済のリスクを重視するなら、追加緩和をするという判断はあり得るとみている。 17年度中の2%達成は困難だが 5月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比0.4%低下と3カ月連続で低下。日銀が物価の基調を測る上で重視しているエネルギーと生鮮食品を除いたいわゆる日銀版コアCPIも0.8%上昇と、2カ月連続で鈍化した。 門間氏によると、みずほ総研の直近の見通しではコアCPI前年比は16年度が0.1%上昇、17年度は1.0%上昇。2%に徐々には向かっていくだろうが、「向こう12カ月、18カ月という単位で2%を達成するのは非常に難しい」と述べた。 もっとも、物価情勢は指標だけでなく「取り巻く環境が長い目で見て非常に大事だ」と言う。日本経済はほぼ完全雇用の状態で、有効求人倍率も改善を続けている。成長率も潜在成長率を上回る緩やかな回復軌道にあるなど、「物価を取り巻く環境は引き続き良好だ」と強調する。 「2%の方が良いよね」というくらいの話 海外を含めて追い風が吹きつつあった13年4月の時点で「多少野心的な目標であっても、気合で一気呵成(かせい)に2%に持っていこうという戦略は正しかった」が、14年以降は「原油価格は暴落し、世界経済の不透明感が強まり、為替も円高に戻り、逆風だらけだ」と指摘。追い風があっても2%に引き上げることは難しいのに、「これほど逆風が吹く中で2%を早期に達成するのは極めて難しい」と語る。 インフレ率は0%よりは2%の方が良いが、「0%は地獄であって、2%になるとすべてがバラ色で天国になるかというと、そこまでの違いはない」と言う。「2%の方が良いよね」というくらいの話なので、「それをやるのに無理やり、さまざまなリスクのある政策を駆使しながらやる必要はないのではないか」と述べた。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-11/OA51FB6TTDS401
1年後に物価「上がる」が72.4%に低下=6月日銀アンケート [東京 12日 ロイター] - 日銀が12日発表した6月の「生活意識に関するアンケート調査」(第66回)によると、1年後の物価について「上がる」との回答が72.4%となり、前回3月調査の75.7%から低下した。「1年後の物価は現在と比べて何%程度変化すると思うか」との質問に対する回答では、平均値が3.8%上昇、中央値が2.0%上昇となった。 5年後については、「上がる」との回答が83.6%となり、前回調査の80.0%から上昇。毎年の変化率は平均値で3.7%上昇、中央値で2.0%上昇となった。 日銀は、2%の物価安定目標の実現には家計や企業などの期待の転換が重要と位置づけており、同アンケートなどによる家計の物価見通しの変化が注目されている。 http://jp.reuters.com/article/boj-junepublicviews-behaviour-idJPKCN0ZS0CJ
2016年7-9月期金融政策:FRBは現状維持−景気改善の確証待ち By JON HILSENRATH 2016 年 7 月 12 日 14:50 JST 数月前には、米連邦準備制度理事会(FRB)は7月の利上げに向かっているように見えた。ところが、二つの出来事がFRBをつまずかせた。 一つ目は、米労働省が6月3日に発表した5月の雇用統計で非農業部門就労者数の伸びが予想を大幅に下回ったこと。二つ目は、英国が同月23日の国民投票で欧州連合(EU)離脱を決め、金融市場が再び大混乱に陥ったことだ。 目下のところFRBは、米経済の基盤がしっかりしており、ブレグジット(英国のEU離脱)決定が世界の経済成長見通しに深刻な悪影響を及ぼさなかったことを示す明確な証拠が得られるまで利上げを見送る公算が大きい。 つまり、7月に利上げはしないということだ。9月については、特に6月の農業部門就業者数の伸びが5月から大きく持ち直したことを踏まえると利上げの可能性はあるが、FRB関係者らは追加利上げを決める前に景気の足取りの強さを確認できる証拠をもっと集めたいだろう。 6月14・15日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録は「大規模な経済・金融ショックがない中で、新たに入手される情報が経済成長の加速と、雇用が委員会の最大雇用目標の達成に向けた進展を維持する十分なペースで伸びていること、そしてインフレ率が中期的に2%へ上昇する可能性が高いことを確認すれば、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き上げることが妥当になると大半の参加者が判断した」と記した。 一方、FRB関係者らは、追加利上げを検討する前にさらなるデータを「待つことが賢明」で、選択肢を残しつつ正当化されれば利上げできる柔軟性を維持すべきとの見方で一致した。 FRBは2015年12月、政策金利であるFF金利の誘導目標をゼロ?0.25%から0.25%?0.50%に引き上げた。CMEグループのデータによると、11日時点でFF金利市場ではFRBが7月に金利を据え置く確率を100%、9月の会合でも再び現状維持とする確率を88%としている。 どんなことが起きればこうした状況は変わり得るのだろうか。FRB関係者らが見たいのは数カ月にわたる堅調な雇用統計で、具体的には、就労者数の伸びが安定的に毎月10万人を超え、失業率が5%未満で推移し、賃上げ加速の兆しが見られるといった状況だ。 6月の非農業部門就業者数(季節調整済み)は前月比28万7000人増となり、5月の1万1000人増(改定値)から大幅に持ち直した。5月と6月を合わせると1カ月当たり平均の伸びは14万9000人で、失業率を5%未満に抑えるのに必要とFRBが考えている増加ペースにほぼ一致する。FRBは利上げに動く前に雇用がこのペースでの拡大軌道に乗っていることを示す新たな証拠を確認したいだろう。 FRBは消費者物価指数(CPI)の伸び率が引き続き上昇するというさらなる証拠も見たいと考えている。食品とエネルギーを除くコアの個人消費支出(PCE)価格指数は直近5月で前年同月比1.6%上昇と、約1.3%の伸びで推移していた昨年から上向いている。だが、FRB内ではこうしたインフレ加速が持続可能なのか疑問視する声もある。 FRBのタルーロ理事は6日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「インフレ率はわれわれの公式目標に届いておらず、その近辺にもない。かなり長い間こういう状況にある」とした上で、「これは過熱している経済ではない」と語った。 大半のFRB関係者は依然、年内に少なくとも1回の利上げを見込んでいる。とはいえ、現在の景気情勢やブレグジットの影響を巡る新たな不確実性を考えると、FRBは次の動きに出る前に今後も慎重に事を進めるだろう。 原文(英語):Global Central Banking in 2016 2016年7-9月期金融政策 大半の中銀が緩和姿勢維持か 日銀、デフレ脱却策を加速か ECB、ブレグジット受け追加刺激策も 中国人民銀、緩和姿勢強める公算 2016年7-9月期の金融政策特集 https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjdj62F3O3NAhVOz2MKHeUeA3gQqQIIHzAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10368883563906114164704582184194221423460&usg=AFQjCNEcM1eiu-5eMENj-SX7fL9Sr4wImQ 「安定政権」の期待と不安、アベノミクスの拡大効果に疑問も [東京 11日 ロイター] - 第24回参院選で自民党が大勝したが、市場では期待と不安が交錯している。大規模な経済対策を実施しやすくなったものの、円安基調が反転し景気や物価が足踏みするなか、今のアベノミクス政策の拡大版が、持続的な経済成長に資するとの見方は少ない。政治的資本が経済政策から憲法改正に流れるとの懸念も高まっており、「全員参加型」の相場にはなりにくいとみられている。 <変調する日本経済> 日銀が公表している指標に「刈込平均値CPI」がある。価格変動の大きい上下10%の品目を除いて(刈り込んで)算出する消費者物価指数だ。原油価格の乱高下などに惑わされない基調的な物価変動に近いデータとして、エコノミストだけでなく、内外の中銀幹部もその有用性を認めている。 その「刈込CPI」は2013年6月まで約1年半マイナスが続いた後、3年以上、プラス圏を維持している。しかし、今年に入りプラス幅は徐々に低下。5月は13年8月以来となる0.2%まで縮小し、再びデフレが視野に入ってきている。 変調しているのは物価だけではない。景気の好循環メカニズムの起点とされる企業収益は、今年度減益の可能性が高まってきている。賃金鈍化への警戒感が強まるなかで、個人消費が低迷。インバウンド需要もやや陰りをみせている。雇用は依然として高水準だが「企業業績が悪化すれば影響は免れない」(日本総研・調査部長の山田久氏)という。 こうした経済変調の起点となっているのが円高だ。アベノミクス政策の象徴ともいえる日銀のマネタリーベースが400兆円を突破するなど、政策規模はさらに拡大しているにもかかわらず、ドル/円JPY=EBSは125円から100円に下落。米国の利上げ観測後退という事情もあるが、マイナス金利を導入しても、円高基調はむしろ加速している。 <民主党時代の「反動」> 安倍首相は選挙テーマとして「アベノミクスの信任」を掲げたが、政策効果は疑わしくなっている。参院選で自民党は大勝したものの、市場では「(野党の)対案がないことで消去法的に選ばれてしまった印象が強く、アベノミクスが信任されたわけではない」(UBS証券・シニアエコノミストの青木大樹氏)との声も少なくない。 では、何故、自民党が大勝したのか。りそな銀行チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は、民主党(現民進党)への政権交代の反動が続いていると指摘する。「世界的にポピュリズム的な政策を掲げた政党や政治家が躍進しているが、日本では民主党への政権交代が、その時だった。今はその反動期であり、積極的にアベノミクスや自民党を支持しているわけではない」と話す。 今回、改憲勢力は衆院に続き、参院でも総議席数の3分の2を突破した。政権の安定はマーケットにとってプラスだが、それが政策軸のシフトにつながれば話は別だ。「市場では、政権が改憲重視に転換し、経済が二の次になるのではないか、との思惑がくすぶり続ける」(ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏)という。 11日午前の市場で、日経平均.N225は経済対策への期待感から500円を超える上昇となったが、ドル/円は6月米雇用統計が強かったにもかかわらず、100円台と上値が重いまま。「欧米政治が大きく揺れ動くなか、『安定政権』をベースにした円買いが発生する」(外資系証券アナリスト)との見方もある。円高が止まらなければ、株高の勢いは強まりにくい。 <「ゼロサム相場」入りか> 自民党・与党は安定政権を手に入れ、大規模な経済政策を打ち出しやすくなった。しかし、日本経済が変調し、アベノミクス政策への信頼感が低下するなかでは、今の政策の拡大バージョンを打ち出しても期待感は高まらない。 日銀が供給する資金量と物価や景気は、必ずしも連動しないことがこの3年間で証明されてしまった。マネタリーベースを400兆円からさらに増やしても、そのこと自体での期待は膨らみにくい。マイナス金利政策は、いまだ評価が分かれている。 財政政策は「ヘリコプターマネー」に衣を変えたとしても、お金を使う政策である以上、潜在成長力を押し上げるような有望な使い道がないという今の財政が抱える問題を克服できない。極端な例でいえば、日銀が自動車を500万台買えば景気は良くなるが、それは本当の景気回復ではないし、悪いインフレも起きかねない。 昨年までは、株式も債券も同時に上がる流動性相場だった。しかし、最近は、債券価格が上昇する一方で、株価は下落している。逆相関という本来の姿に戻ったともいえるが、その背景には政策効果への期待感の低下がある。日銀が大量に買う国債は、マイナスにまで金利が低下しても、景気や物価の持続的上昇期待にはつながっていないのが現状だ。 「これまで無理を続けてきた結果、政策は、何かを犠牲にしないと何かを得られないトレードオフの段階に入っている。市場も同じで、何でも上がった流動性相場は終わり、何かが上がれば、何かが下がるゼロサム相場になりそうだ」とJPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、重見吉徳氏は予想している。 http://jp.reuters.com/article/abe-election-market-idJPKCN0ZR081?sp=true infinity>国内>前向き経済 [前向きに読み解く経済の裏側] 因果関係で読み解く 株価と景気のウソホント 2016年07月11日(月)塚崎公義 (久留米大学商学部教授) 「警察官が多い街ほど犯罪が多いという統計があるのだから、警察官を減らして財政を再建しよう」と言われたら、納得できませんよね。では、どう反論しますか? 株価は景気の先行指標だと言われていますが、なぜでしょうか? 今回は、因果関係の話をしましょう。 iStock 因果関係は似た動きを説明する手段
A氏とB氏が似ているとき、主に考えられるのは「A氏がB氏の親である」「B氏がA氏の親である」「A氏とB氏は兄弟である」「遺伝的な関係は無いが、たまたま似ている」の4通りでしょう。 統計の世界も同様です。AとBの統計が比較的似た動きをしている場合、AがBの原因であるか、BがAの原因であるか、別の原因があってAとBが同じ原因に影響されているか、偶然の一致か、どれかでしょう。A氏とB氏の場合は、年齢等々で検討がつく場合も多いのですが、統計はそうではないので、慎重な取扱が必要です。 最初は簡単な例からはじめましょう。「人々の所得額と消費額を調べたら、消費額が多いほど所得額も多いことがわかりました」。という調査結果をみて、「消費をするほど豊かになれるので、豊かになるために消費をしよう」という人はいませんよね。所得額が多いから消費額も多い、という因果関係が明らかだからです。 犯罪が多いから警察官を雇っているのだが…… では、冒頭の警察官の事例はどうでしょうか? たしかに警察官の数と犯罪の数は、似たような動きをしています。しかしそれは、警察官が多いから犯罪が多いのではなく、犯罪が多いから警察官が多いのです。「犯罪が少ない街は、税金が入ると公園を作るが、犯罪が多い街は税金が入ると警官を雇う」というわけです。消費と所得の関係と同じですね。 しかし実は、それより遥かに重要な要因があります。人口の多い街は警察官も犯罪も多いのです。人口が親で、警察官数と犯罪数は子供だ、というわけです。したがって、人口千人当たりの警察官数と人口千人当たりの犯罪数を比べる必要があるのです。人口千人当たりで比べれば、こうした問題は解消されますので、「犯罪が多いから警官を雇っている」という真実に近づく事ができるでしょう。 株価が下がるから景気が悪化するのか? 株価は景気の先行指標だと言われています。実際、内閣府の作っている景気先行指数の計算式に株価が組み込まれているのです。では、なぜ株価は景気の先行指標なのでしょうか? 株価が下がると景気が悪化するのでしょうか? 株価が下がると、景気に悪影響があるのは確かでしょう。株式を保有している富裕層が倹約するようになるからです。株式を持っていない庶民も、何となく景気が悪そうな気がして贅沢を控えてしまう、という事もあるかもしれませんね。しかし、そうした効果は限定的で、景気を動かしている数多くの要因の一つに過ぎないでしょう。 景気と株価の本当の因果関係とは…… それよりも遥かに重要な要因として、投資家たちが景気を予測して、「景気が悪化して企業の利益が減りそうだから、株を売っておこう」といった行為が株価と景気を連動させているのです。気をつけなければならないのは、株価が先に動いて景気が後から動くのに、景気が親で株価が子だ、ということです。 リーマン・ショックのように、株価と景気が兄弟の関係になる場合も少なくありません。米国でリーマン・ショックが発生した時、日本の株価は直ちに値下がりしました。「米国の株価が下がると日本の株価も下がる」というのが株式投資の世界では自然なことだからです(理由は後日記します)。 一方、米国の景気が悪化し、日本の輸出が減少したため、日本の景気も悪化しましたが、それにはタイムラグがあったので、株価下落より景気悪化の方が後になりました。 日銀の金融政策も、親となり得ます。日銀が金融を引き締める(世の中に出回っている資金の量を減らす)と、株価はただちに下がります。理由は様々ですが、一番わかりやすいのは、世の中に出回る資金が減ると株式投資に回る資金も減るから、ということでしょう。 一方で、日銀が金融を引き締めると、金利が上がるので、借金をして投資をする会社が減り、投資のための機械などが売れなくなって景気が悪化します。しかし、これもタイムラグがあるので、株価下落に遅れて景気が悪化するのです。 財政再建は景気を良くする? 最後に、筆者が財務省の新人講習で使っている講義ノートの内容を御紹介しましょう。少し難しいですが。 世界各国の統計を調べてみると、財政赤字が減っている国ほど景気が良くなっています。これを見て、私たちは「景気が良くなると企業が儲かって法人税を払うようになるから、財政赤字が減るのだろう」と考えます。それは間違いではありません。 しかし中には、「財政赤字が減ると、政府が借金をしなくなる。そうなると、金利が下がる。世の中の金利は、借りたい人と貸したい人のバランスで決まっているからだ」「金利が下がると企業が借金をして工場を建てるようになり、景気が良くなる」と考える人もいます。これも正しいのです。 理屈の上ではどちらも正しいのです。AがBの原因であり、同時にBもAの原因なのです。では、どちらが大切でしょうか? それを統計から知るのは簡単な事ではありません。私は長年の経験と勘から圧倒的に前者が重要だと思っていますが、皆さんは財務省の職員になったわけですから、後者の考え方をするようになっていくのでしょうね。 そうなると皆さんは、「日本でも増税をして財政赤字を減らせば景気は良くなる」と思うかもしれません。でも、それは違います。なぜ違うのか、考えてみましょう。 答えは、「日本の長期金利は既に非常に低いので、財政を再建しても長期金利はこれ以上下がらないから」です。最後は引っ掛け問題となってしまい、因果関係とは別の所に回答があったわけですが、ここで気をつけて欲しいのは、諸外国の統計を見て日本の事を考える際には日本の特殊性を考えましょう、ということです。 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7014
|