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2016-07-08 22:05:19
テーマ:ドキュメンタリー
【NNNドキュメント’16】
「老いるバス 走り続ける 安全は確保されるのか?」
(日本テレビ系列・2016/7/4放送)
※公式サイト:http://www.ntv.co.jp/document/
<感想>
北海道で多発している観光バスの火災、そして大きな事故では今年1月に軽井沢で15名が亡くなるスキーツアーのバス事故がありました。私たちが何かと乗る機会の多い交通機関として大きな不安を抱きました。きちんとした原因究明と安全対策が強く求められます。
どちらも共通しているのは、製造から相当年数経ち車両自体が老朽化したバスだということです。軽井沢の事故についてはNHKスペシャルで詳しく取り上げていましたが(→【NHKスペシャル】そしてバスは暴走した)、地球何十周分の走行距離を走っていたり、製造から15年以上経っているとか、乗る前に知ったら恐ろしくなるような話が今回の番組でも数多く出ていました。
これから東京オリンピックに向けて外国人観光客の増加など需要増が見込まれる中、供給する側のバスが不足しているということも明らかになっています。それに加えて規制緩和によって老朽化したバスが走らされている実態、そのツケとして私たちの安全が脅かされているといっても過言ではありません。
バスターミナルの整備や観光立国づくりの掛け声はいいですから、私たちが安心してバスに乗車できるような適正な安全確保を国が主導して進めてほしい。もちろん安全軽視に繋がるようなダンピングを助長するようなことは論外です。
<視聴メモ・番組内容(いわゆるネタバレ)が含まれています>
※見出しは当方で付けました。
・北海道で観光バスの火災が年明けから5件も相次いでいる。その殆どが製造から15年が経った古いバスだった。北海道にある観光バスは3000台余り。取材したバスも製造から15年、既に地球23周分を走っていたり(90万km)、中には111万4776km(地球28周分)もある。
・老朽化と火災に因果関係はあるのか。15人が死亡した今年1月の軽井沢スキーバス事故。このバスも地球27周分を走っていた。
・一連のバス火災の報告書には、偶然とは思えないある特定の原因が書かれていた。経営者には古くなっても走らせざるを得ない苦悩が。
・そんなバスに私たちは安心して命を預けることはできるのだろうか。老いるバス、走り続ける。
<新幹線開業で観光客が増えている北海道>
・今年3月に開業した北海道新幹線、北の大地の新たな玄関口に大勢の観光客が押し寄せている。
函館の夜景を見に行く(観光客の女性)
観光バスはガイドが案内してくれるのでいい(観光客の男性)
・広い北海道でバスはなくてはならない移動手段。雄大な自然とグルメを堪能する旅の始まり。
<観光バス火災の原因は>
・ところが北海道では今年、観光バスの火災が相次いでいる。占冠村そして小樽市では外国人観光客を乗せたバスが、三笠市ではスキー授業の帰りだった地元中学生が命の危険に晒された。
煙がもわもわしていた。びっくりした。みんな口に手をあてていた(スキー授業帰りの中学生)
・取材で独自に入手した一連のバス火災の事故報告書。火災の原因として繰り返し同じ記載が見られた。「スプリングブレーキ」。補助ブレーキの一つで、製造年数が古いバスに多い構造。車輪の裏側にあり、圧縮された空気がスプリングを押さえ込んでいるが、空気を抜くとスプリングが伸びて回転する車輪にブレーキをかける仕組みだ。しかし何らかの理由で空気が抜けてブレーキがかかり、そのまま走り続けると過熱、出火につながる。
・今年1月、札幌市清田区で起きた火災は深刻だった。原因は、やはりスプリングブレーキの過熱だった。ブレーキの作動を知らせる警告ランプは「異常なし」と報告されている。
・ところが運転手によると、スプリングブレーキの作動を知らせるはずの警告ランプが実際には点灯していなかった。老朽化が原因とみられている。運転手はブレーキがかかっていることに気づかぬまま走行、突然炎が上がった。乗っていたのはスイミングスクールの生徒たち、一歩間違えれば大惨事となっていた。
・バスの老朽化が出火の危険性を高めていると公共交通学の専門家は指摘する。
複雑な運転機構が残されていたり、エンジンなどの駆動系は摩耗しているので、古い車両を残しておくこと自体が火災のリスクにつながる。古いバスを放っておくと、いつ燃え出すか分からない(東京都市大学公共交通学の西山敏樹准教授)
・全国で使用されているバスを製造からの世代別にみると、いずれも比較的同じ割合になっている。ところが火災が発生したバスの割合は、製造から15年以上のものが60%を超えている。つまり古いバスほど火災のリスクが一段と高くなるのが分かる。
<北海道にある小さなバス会社>
・北海道の北にある名寄市。地域に根ざした経営をしている小さなバス会社(川原観光)がある。レインボーカラーが施されたバスが9台、その殆どが製造から15年以上が経った中古だ。所々に錆も見える。塗装が少々割れていたり剥がれていたり。
・不具合を見つけると、すぐに整備士たちが修理に取り掛かる。この日の作業には、会社を経営している和田英則さん(42)も加わった。
・ベテラン運転士たちが多く、出発前の点呼の際には健康も気遣う。
ドライバーは1年1年、歳を重ねて、バスも1年1年、歳を重ねれば壊れていく。バスを多く走らせると事故や故障などいろいろな問題が出てくる。不安な要素を一つでもなくしていきたい(和田さん)
・自らが点呼を受けてハンドルを握ることもある和田さん。このバスも製造から26年、走行距離は55万km。古いバスを使っているのは、和田さんの会社に限ったことではない。
<地球45周分の走行距離のバスも>
・雪まつりの時期になると、おびただしい数のバスが札幌に押し寄せる。道内の観光バスは、260事業者の3000台余り。その多くが酷使されていた。取材したバスもメーターが既に一回りして177万km(地球45周分)にもなる。
これより走っているバスもあると思う、他の会社だったら(運転手)
・中国語そしてタイ語の表示も。外国客が増え、古いバスも走らせなくてはならないのだ。
・以前はバス事業に参入するために製造から5年以内のバスを一定数用意する必要があった。2000年に規制が緩和され、どんなに古くても最低3台で参入できるようになった。
<往復1000kmを超える中学生の修学旅行>
・レインボーカラーのバスが高速道路に。運転していたのは前出の和田さん、3泊4日で地元中学校の修学旅行。向かっているのは、名寄から500km離れた函館市。
・函館は初夏の訪れとともに修学旅行シーズンの本番を迎える。名所の一つ、函館山には多くの人が夜景を見に訪れる。
・翌日は函館を折り返し、雄大な国立公園を縫ってのバスの旅(羊蹄山、洞爺湖)。
・和田さんは中学生たちがバスを離れている間も、清掃と点検だけは欠かさない。
ベルト類やエンジンオイルなど目視を重点的にしている(和田さん)
・修学旅行最終日は札幌へ。中学生たちは裁判所を見学してジンギスカンを食べた。
・そして名寄へ。往復1160kmの旅が無事に終わった。生徒たちを学校に降ろしてバスが会社に戻った頃には、午後8時を回っていた。
修学旅行の仕事だったので、緊張感をもって仕事をしてきた(同上)
・このバスも19年選手。メーターは59万km(地球15周分)になろうとしていた。
・長い距離を走ってくれたバスをいたわる。
(和田さんにとってバスの存在は?)
体の一部だね。体の一部でもあり、仲間でもあり、分身みたいなものだからね(同上)
・思わずこんな本音がこぼれた。
できれば新車も欲しい。本音は新車が欲しい(同上)
・新車に買い替えたいけど買い替えられない。そこには根の深い理由があった。
<バス新車生産の現状はどうなっているのか>
・新車の生産はどうなっているのか、富山市にある国内大手のバス製造工場を訪ねた。新車に買い替えられない理由とは。
大量生産の工場だと1日に何千個、何万個という商品を作るが、この工場は作っているものが大きいこともあり、1日に7台の生産が限界(三菱ふそうバス製造バス工作部の西岡衛組立課長)
・バスごとに座席の数も窓の付け方も違うオーダーメイドのため、溶接や組み立てに手間と時間がかかるからだ。新車の価格は1台平均4000万円。かといって、設備投資をして増産体制をとることに二の足を踏んでいる。
東京オリンピックが区切りだと考えている。それ以降の状況は、はっきりしないので。バス会社の要望を見極めながら、できるだけ対応していきたい(同上)
<中古バスが出回っている現状>
・新車は値段も高く出回りにくいとなると、頼みは中古バス。インターネットによる中古バス販売会社を訪ねた。今期の販売実績は、予想を超える右肩上がりだった。
一昨年ほど前はこんな状況ではなかった。毎月1台くらい売れればいい方だった。去年くらいから上がってきている(西日本特殊車輌の山口晃市社長)
・値段は新車の半分以下。ただ北海道には古いバスが集まりやすいという特徴があった。この会社の販売記録をみると、首都圏では年式が新しく1000万円以上のバスが多く購入される一方で、寒冷地では年式が古く安いものばかりが。
以前は新車の登録から10年以内のバスが中古として使用されていた。今は製造から20年経過したバスも使わざるを得ない。北海道ではバスがサビつくことが多いので、バス底の写真を撮り、道内の事業者に案内する(同上)
・北海道では車体の下回りを中心にサビが目立つバスが少なくない。原因の一つが凍結防止剤として撒かれる塩。錆びて傷みやすく次々と買い替える必要に迫られるので、北海道に古くて安いバスがおのずと集まる。
<中古バスを購入したバス会社の本音は>
・5月、1台のバスが運輸局に。そこには和田さんの姿があった。中古バスを購入した。製造から20年、でも走行距離は37万kmと少なめ。割のいい買い物だった。
あとはしっかり客のためにバスに走ってもらうだけ。これが出発点みたいなもの(和田さん)
・この後、レインボーカラーの塗装をして大切に使っていく。
むやみに設備投資をして従業員の生活を奪ってはならないし、いろいろなところにしわ寄せがくる。バスを買うということは(同上)
・ただ、このバスも20年もの。不安は尽きない。
車齢(製造からの年数)の寿命は切実な問題になってきている。業界の会議では出てこないが、個々の会社では思っていると思う(同上)
・老いたバスを長く使いながら、火災や事故を起こさずにやっていくことはできないのだろうか。
<仕事が増えている現状と不安も>
客で言う人がいる。「大丈夫?車は燃えないか」「運転手、酷使していないか」と(同上)
・相次ぐバス火災から受けた乗客からの厳しい言葉、その言葉が頭を離れない和田さん。仕事も増えてバスはフル稼働。運行予定表の作成に日々、追われるようになった。
もう、びっちり。掛け持ちして走っていたり。これは夜中に帰ってきてドライバーが替わって乗って行く(同上)
・事故を未然に防ぐために運転手への注意を細かく書き添える。
業界全体が信頼を取り戻さないと厳しい。事故が多い、車両の管理が悪いのか、いろいろな問題が出てくることに心苦しいのと、今後どうしようという不安と、いろんな思いが入り交じっている(同上)
<現状を国はどう考えているのか>
・バス会社の苦悩は深まるばかり。地元の国土交通省北海道運輸局はどう考えているのだろうか。
北海道だけでは解決できない問題で、バスが不足しているという声も聞いている。国土交通省と連絡を密に取り、本省で対策を取る必要があれば取る(国土交通省北海道運輸局の櫛引和憲保安・環境調整官)
・規制を緩めると安全が脅かされ、強めるとバスが足りなくなる。混迷を深める国の議論、検討会の元座長でさえも…。
どんな社会状態でも普遍的なものがあるとするならば、すでに実施されている。いま最適だと行われた政策や規制は、ほんの数か月1年も経つと、社会状況が変化し最適ではなくなる。行政も悩み、我々も悩んでいる(バス事業のあり方検討会の竹内健蔵元座長・東京女子大教授)
・東京ではこの4月、国主導で立派なバスターミナルが誕生(バスタ新宿)。安心してバスに命を預けられるのか、その答えは未だに見いだせていない。
訪日外国人旅行者数について2020年に4000万人、2030年に6000万人を目標とします(安倍首相・明日の日本を支える観光ビジョン構想会議での発言)
・観光立国を掲げる日本。観光バスの利用者は年間4億人ともいわれ、今後さらに増える見込みだ。
・そして今日も日本全国津々浦々で老いるバス、走り続ける。
(2016/7/8視聴・2016/7/8記)
http://ameblo.jp/skyblue-junior/entry-12178652397.html
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