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コラム:円高余地拡大へ、介入ポイントはどこか=佐々木融氏
JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 9日] - 8日発表された米6月非農業部門雇用者数は前月比28.7万人増加となり、市場の予想(18.0万人)を大幅に上回った。もっとも、かなりの低水準だった5月の数字は3.8万人から1.1万人に下方修正された。
米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ従業員によるストライキの影響があるとはいえ、そもそも非常に変動が大きい同指標は単月ではなく、平均で見るべきだろう。4―6月の平均増加幅は14.7万人と、1―3月の19.6万人よりやや鈍化しており、昨年1年間の平均22.9万人よりも減速している。
失業率は4.9%と市場の予想(4.8%)より若干悪い結果に見えるが、5月の数字が前月の5.0%から4.7%に急低下していたことを考えれば、今年の平均的なレベルと言えよう。
平均賃金の伸びは前年比プラス2.6%と予想(同2.7%)をやや下回ったが、これは予想が強すぎたと言った方が良いかもしれない。平均賃金の伸びは昨年以降、上昇トレンドにあり、前年比プラス2.6%という数字は、昨年の平均伸び率(同2.3%)や今年の平均伸び率(同2.4%)を上回っている。
こうして見ると、米6月雇用統計の結果は、「雇用者数の伸びは緩やかに鈍化しつつも、タイトな労働市場を背景に、賃金の伸びは比較的高水準」という従来からのトレンドが続いていることを再確認したような内容だったと言えそうだ。
<ドル円のトレンドに与える影響は>
マーケットの反応を見ても、発表直後の上下動はあったにせよ、おおむね冷静な受け止め方となっている。
ドル円相場は雇用統計発表直後に100.40円近辺から101.30円近辺まで急騰した後、一時2週間ぶりに99円台(といっても100円ちょうど近辺)まで急落したが、結局8日のニューヨーク(NY)市場は100.50円近辺と、雇用統計発表直前とさほど変わらない水準で取引を終えている。
米雇用統計発表後の主要通貨の騰落率を見ると、オーストラリアドル、ニュージーランドドルの強さが目立ち、ノルウェークローネの弱さが際立った以外、円、米ドル、ユーロ、英ポンドはほとんど差がついていない。つまり、円は米ドル、ユーロ、英ポンドに対して雇用統計発表直後と同じような水準でNYの取引を終えている。
米長期金利は雇用統計発表後の上下動はあったものの、結局は低下してNYの取引を終えた。米10年国債利回りは、このところ過去最低水準を更新しながら低下基調にあるが、8日も一時過去最低の1.34%台まで低下し、終値ベースでも過去最低の1.35%となった。
フェデラルファンド(FF)金利先物から見る米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ期待は若干利上げの織り込み度合いが増えたものの、相変わらず1回分の利上げをフルに織り込んでいるのは2018年末だ。
米長期金利の低下は、雇用統計の結果とは切り離して見るべきだろう。長期金利の低下基調は6月初旬以降続いている。筆者は、こうした動きの背景には日本とユーロ圏の投資家による為替ヘッジ付の米債投資があると見ている。つまり、日本とユーロ圏の投資家がマイナス金利と量的緩和政策を米国に輸出しているのだ。日本の投資家は日銀がマイナス金利政策を導入してから6月末までの間に約13兆円も外債投資を行っている。
米株価は労働市場が5月の数字で示されたほど悪くなかったとの安堵感や、長期金利の低下を好感してか、力強く上昇し、S&P500指数は昨年5月につけた過去最高水準まであと0.2%というところまで迫っている。
総じて言えば、米6月雇用統計は、今後のドル円相場のトレンドに大きな影響を与えることはなさそうだ。7月に入ってからの主要通貨の騰落率を見ると、円は最強通貨となっている一方、ドルは上から4番目に強い通貨となり、ほぼ中位の状態となっている(最弱は英ポンド)。米雇用統計を受けても、今後も円高傾向が続く可能性が高い。
<99円割れなら97円台まで円高加速も>
前述の通り、ドル円相場は100.50円近辺で8日のNY市場の取引を終えているが、これは終値ベースでは2013年11月以来の低水準だ。7月11日の週は米連邦準備理事会(FRB)高官の発言が多く予定されていることに加えて、15日には米6月小売売上高、消費者物価指数、鉱工業生産の発表も控えている。内容によっては、ドル円相場が再び100円を割り込み、英国民投票直後の6月24日につけた99円ちょうどを下抜け、円高・ドル安の動きが加速する可能性はある。
筆者は、英国民投票後の動きを見て、ドル円相場はしばらく100円から105円のレンジ内で推移するのではないかと考えていたが、7月に入って以降の動きを見ていると、上値がじわじわと切り下がってきており、予想以上に円買い圧力が強いとの印象を受けている。したがって、近日中に再び100円を割り込む可能性は高いと今は考えている。
99円を割り込むと97円台まで下落するのにそれほど時間はかからないだろう。しかし、そこまで急落すると、いよいよ円売り介入の可能性が高まってくるのではないか。
筆者は、これまで米当局の日本の為替操作に対する強硬な反対姿勢から、円売り介入が行われる可能性は極めて低いと見てきたが、97円台までの下落となれば、年初からの下落率は20%に迫ることとなり、さすがに多少の円売り介入は許容されると考える。前回介入が行われたのは2011年11月4日だったので、仮にこの予想通り介入が行われれば5年弱ぶりの介入ということになる。
もちろん、これまでと同様、介入で円高方向のトレンドを止めることはできない。米国との関係に鑑みても、105円台からさらに円安方向に押し上げるような介入は難しいだろう。また、足元のドルの上値の重さを考えると、来年に向けてドル円相場が90円台前半まで下落する可能性は小さくないと思う。
しかし、仮に97円台で円売り介入が行われたとしたら、いったんは103―104円台程度まで戻る可能性は十分にあるだろう。そして、その後はしばらく101―102円台を中心としたレンジ内での取引となる展開が考えられる。いずれにしても、週明け以降、短期的にはドル円相場の急変動に注意が必要だ。
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN0ZP04C?sp=true
コラム:日米欧で大幅低下する長期金利の意味
田巻 一彦
[東京 8日 ロイター] - 日米欧で顕著な長期金利の大幅な低下は、いったい何を意味するのか。多くの要素が絡み合った結果に違いないが、先進国で生産性が伸びなくなっていることが大きく影響していると考える。
その背景にはビジネスの収益性が低下している事実に目をつむり、ROE(株主資本利益率)8%達成を最優先に自社株買いなどに資金を回し、研究・開発がおざなりになり、その結果が期待収益率の低下に結びついていると指摘したい。
<下がり続ける長期金利>
日本では、長期金利(10年最長期国債利回り)JP10YTN=JBTCが8日、過去最低のマイナス0.300%を記録。ドイツでも6日に長期金利DE10YT=TWEBが過去最低のマイナス0.20%台となり、 米国でも6日に長期金利US10YT=RRが1.346%と過去最低の水準を更新した。
英国の欧州連合(EU)離脱決定後に欧州金融システムへの不安が広がり、6日に第2波とも言えるリスクオフ心理の台頭があり、安全資産への資金シフトが顕在化した。
短期的には、リスクオフの高まりによる「需給のひっ迫」と言えるだろうが、どうももっと本質的な変化が、世界経済の地下深くで起きているのではないだろうか。
典型的なのは、欧州や日本に比べ、企業の革新性が高いと言われている米国における生産性の伸び鈍化だ。米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は6月16日の会見で、生産性の伸びは、長期間低水準にとどまる可能性があるとの見解を示した。
この要因をめぐって、米国の当局者や学識経験者の間では様々な議論が展開されているが、結論は出ていない。
<低成長でもROE8%の目標維持>
そこで1つの仮説を提示すると、米国でも潜在成長率が低下している中で、ROE8%を1つのモノサシとして、これを維持しようと自社株買いのウエートを増加させ、本来の投資に資金を回していない企業が増えているのではないか、という見方だ。
潜在成長率が落ちているのに、従来と同じようにROEを維持しようと企業が行動した結果、新たなゆがみとして技術革新に直結する投資が減っているのではないかという疑問が、この見方の根本にある。
また、革新的な技術を生み出しても、他社のキャッチアップ力が強化され、追いつかれるまでの期間が大幅に短縮され、「短時間」に先端技術が陳腐化するケースが、幅広い業種でみられている。
その結果、大規模な設備投資をしても回収される利益が減少し、「儲かるビジネス」が減少。そのことが全体としての長期金利の低下圧力になるという面もある。
<金融政策から財政政策へのシフト、本当に有効か>
世界の資本主義を全体として俯瞰(ふかん)した場合、期待収益率が大幅に低下し、そのことが長期金利の全般的な低下として反映されている可能性が高いのではないか。
リーマン・ショック後に日米欧とも、大規模な金融緩和を実行し、短期的には景気を持ち上げる効果があったものの、足元で物価はいずれの国・地域でも目標の2%を下回り、国内総生産(GDP)も目指す水準に達していない。
金融政策の限界論が先進各国で言われ出しているのは、こうした背景があるからだが、その先に財政出動にかじを切って、本格的な成長軌道に乗せることができるのか──。
日本を含めた先進各国で、その点が今後のマクロ政策上の大きな論点になることは間違いないだろう。
http://jp.reuters.com/article/interest-rate-productivity-idJPKCN0ZO1C9?sp=true
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