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太陽光発電、早くもブーム去り倒産ラッシュ…瀕死状態で「不況業種」入りの兆候
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15772.html
2016.07.06 文=寺尾淳/ジャーナリスト Business Journal
今から5年前といえば、東日本大震災の発生から3カ月以上が経過し、首都圏では「計画停電」まで起きていた電力事情の逼迫がようやく収束した頃。そんなに遠い昔の話ではないが、あの頃、太陽光発電はキラキラ輝く存在だった。
震災後に東京電力福島第一原発が爆発事故を起こし、原子炉がメルトダウン(炉心溶融)。大量の放射性物質を環境中に放出した。国民の間では「原発=悪、再生可能エネルギー=善」「とりあえず火力発電で停電を回避し、将来は再生可能エネルギー」という意識が広まり、すでに商業利用が大きく進んでいた太陽光発電と風力発電は、電源構成の主役を原発から再生可能エネルギーにシフトさせてくれる「期待の星」とみなされた。
2011年の太陽光発電関連のニュースを紐解けば、大きな話題になっていたのが「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT制度)で、翌12年7月に始まっている。制度発足を前にしてさまざまな企業が大型太陽光発電所(メガソーラー)による売電事業への参入を表明したが、特に熱意を見せていたのがソフトバンク(現・ソフトバンクグループ)だった。
6月に再生可能エネルギー専門の投資会社の筆頭株主になり、7月に35道府県と「自然エネルギー協議会」を、17の政令指定都市と「指定都市自然エネルギー協議会」を設立。9月には「自然エネルギー財団」を設立し、ソフトバンクの孫正義社長が「アジアスーパーグリッド構想」を打ち上げた。そして10月、太陽光発電を行う子会社SBエナジーを設立している。
京セラ、シャープなどソーラーパネルメーカーは製品の売上を伸ばし、設置工事会社のサニックス、ウエストホールディングスや高島、エナリスなど「太陽光発電関連銘柄」が兜町でもてはやされ、その株価が高騰した。
太陽光発電協会(JPEA)調べの太陽電池総出荷量は、FIT制度が始まった12年度は437万kWだったが、13年度は862万kWで1年間で約2倍になり、14年度はさらに伸びて987万kWに達した。単純に出力で比較すると「世界最大の原発」東京電力柏崎刈羽原発の総出力821.2万kWをしのぐ。「グリーン&クリーン」「地球にやさしい」など再生可能エネルギーの好イメージに支えられ、太陽光発電には「バラ色の未来」が約束されている、かのように見えた。
■「グリーン新電力」という一縷の望みも断たれて
しかし、太陽光発電がキラキラ輝いていた時代は、アッと言う間に過ぎ去ってしまった。
太陽光発電は、燃料のようなランニングコストは安くてもパネルや設置工事など初期投資(イニシャルコスト)の負担が重く、当初は出力あたりの発電コストがどうしても高くなる。それを補う意味もあり、FIT制度では太陽光パネルで発電した電力を電力会社が買い取る買取価格を、初年度の12年度は1kW/時あたりメガソーラーなど企業向が40円、家庭向(10kW未満)が42円と、高めに設定していた。
これは新規参入企業をさらに呼び込んだが、発電コストがアップする電力会社は不満だった。14年には九州電力が太陽光発電の電気の新規買入を拒否するという出来事が起きている。九州電力は15年に川内原発を再稼働させたが、原子力発電の発電コストを1kW/時あたり8.9円と試算した政府の「コスト等検証委員会報告書」(11年)の数値を、ホームページに載せている。
経済産業省が決めるFITの買取価格は初年度こそ高かったが、あとは年々引き下げられていき、5年目の16年度は企業向けは24円で初年度よりも40%減、家庭向け(出力制御対応機器設置義務あり/ダブル発電を除く)は33円で初年度よりも21.4%減と、大きく減らされてしまった。この買取価格低下が太陽光発電に関わる企業の採算を悪化させている。太陽電池総出荷量も15年度は795万kWで前年比19.4%減。太陽光発電の右肩上がりの成長も終わりを告げた。
それでも太陽光発電の業界サイドでは、今年4月の「電力小売自由化」への期待が少なからずあった。電気の調達先を太陽光、風力、バイオマス、小規模水力など再生可能エネルギーの発電方式に限定し、「グリーンな電気」をアピールする「グリーン新電力」が名乗りをあげて、電気料金は多少高くても「原発は絶対イヤ。化石燃料を燃やして二酸化炭素(CO2)を排出し地球温暖化の原因になる火力発電もイヤ」というエコ意識が高い消費者の間で一定の支持を得るのではないかと思われていた。そんな新電力が順調に滑り出せば将来、FIT制度に頼らなくても、グリーン新電力主体の「太陽光発電の復権」が見えてくるのではないか、という読みがあった。
ところが実際は、新電力のなかで善戦したのは、自前の火力発電所を稼働して電気料金の安さ、セット割引をアピールするガス会社や石油会社ぐらい。グリーン新電力はどこも苦戦している。その一因としては、グリーン電力も専用の電線を介して契約者に供給するわけではなく、既存の電力会社の電線のネットワークを介して「託送」してもらうため、発電の時点ではたとえグリーン新電力100%であっても、送電の途中で稼働中の原発からの電気、火力発電所からの電気と混ぜられてしまい「無意味」だという現実がある。また、グリーン新電力はもともと発電能力に限界があり、しかも昼夜の差、季節や天候によってそれが変動するため、契約をあまり取りすぎても供給に支障をきたす恐れがあった。
というわけで、「最後の一縷の望み」だった4月の電力小売自由化も不発に終わり、太陽光発電はいよいよせっぱ詰まった。
■倒産数は過去最高更新の勢い
日本製のソーラーパネルは、国内市場の成長頭打ちに加え中国製との価格競争も激しく、利益が出せなくなっている。京セラはメガソーラー向けソーラー事業が主力のファインセラミック応用品関連事業のセグメント利益が15年3月期、前期比90.6%減の31億円まで落ち込んだ。16年3月期では163億円まで回復したが、セグメント売上高は10.8%減の2ケタ減収だった。
シャープは、ソーラー事業が属するエネルギーソリューションの16年3月期のセグメント売上高は42.1%減。セグメント利益は15年3月期が626億円の赤字、16年3月期は184億円の赤字だった。経営危機でソーラー事業の売却が取り沙汰されたが、再建スポンサーの鴻海(ホンハイ)精密工業は5月に「事業継続」の方針を表明した。
数年前に兜町をにぎわせた太陽光発電関連銘柄は、業績も株価も見る影もなく低迷している。ソーラー設置工事のウエストホールディングスは今期、2期連続の減収減益を見込む。株価は13年10月のピークの約3分の1。エナリスは14年12月期、15年12月期と2期連続の赤字決算。有価証券報告書虚偽記載というスキャンダルを起こし株価は14年1月のピークの7分の1以下。住宅用ソーラーの高島の16年3月期決算は減収減益で今期も減益が続く見通し。株価は12年6月のピークの半分以下になった。
シロアリ防除が本業だったがソーラーパネルの設置工事で伸びたサニックスは、16年3月期まで2期連続の赤字決算で今期も最終赤字、無配が続く見通し。株価はピークの13年7月の10分の1以下になった。同社は6月20日、前期以来3度目の希望退職募集に391人が応募したと発表した。人員リストラと自ら見切りをつけた自己都合退職で、14年度末には3291人だった連結ベースの従業員数が2000人未満と、ほぼ半減してしまった。退職者のなかには、FIT買取価格を4年連続で引き下げ、バラ色だった業界環境を真っ黒に塗りつぶした経済産業省を呪っている人も、いるかもしれない。
■増加する倒産件数
「バブル」とさえいわれたソーラーブームで潤った中堅・中小企業も、信用不安の噂が絶えず、危機が訪れている。
帝国データバンクは6月8日、太陽光発電システムの販売、設置工事、コンサルティングなどの事業を主力事業、副次的な事業として手がける「太陽光関連企業」の倒産(法的整理のみ、負債1000万円以上)に関するデータを公表した。
それによると、13年は17件だった倒産件数は、14年は21件、15年は36件と年を追って増加し、16年は1月から5月までに17件起きている。前年1〜5月の13件を上回り、年率換算すれば40件で過去最高を更新しそうな勢い。負債総額も14年の44億8200万円から15年の91億2700万円へ、ほぼ倍増した。今年は4月に新電力(特定規模電気事業者/PPS)の一つで、自治体の太陽光発電から多く調達していた東京の日本ロジテック協同組合が負債総額162億8244万円で倒産しており、過去最高を大幅に更新するのは確実である。
06年1月〜16年5月までの倒産151件を分析したデータでは、地域別では関東が59件と全体の39.1%を占めるが、それに次ぐのが九州の30件(19.9%)だった。都道府県別でもトップの東京都の次が福岡県である。14年の九州電力の買入拒否が影を落としているのかもしれない。
■世界的、長期的に見れば、最重要電源になれるはずだが
イメージは良くても、利益を出しにくくなった太陽光発電にはこのように今、逆風が吹いている。買取価格の引き下げで採算が厳しい上に、風力発電、バイオマスなど他の再生可能エネルギーもライバルだ。福島第一原発事故から5年が経過し、関西電力高浜原発の再稼働は大津地裁が差し止めたが、原発に対する国民感情も以前よりは変化している。
そんな業界で次にくるものといえば大規模な業界再編で、見切りをつけた企業が撤退し全体がシュリンクしていく。それは繊維や造船やアルミ精錬など、過去に構造不況業種と呼ばれた業界がたどってきた道でもある。
だが、太陽光発電は世界的に見れば「夢がある未来のエネルギー」に変わりない。6月13日にエネルギー分野の有力な調査機関であるブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスが、24年後の40年に全世界の風力と太陽光による発電量が石炭火力発電を抜いて最大の電源シェアを占めるという将来予測を発表した(『New Energy Outlook(NEO)2016』)。
それによると、16年から40年までに風力発電と太陽光発電を合わせた年間発電量は約7倍に増え、LNG(天然ガス)火力発電の約2倍、原子力発電の約3倍の電力を供給するという。太陽光の発電コストは40年までに60%低下し、現在よりも採算がとりやすいエネルギーになっている見通しだ。そうでなければ火力や原子力に対抗することなどできない。
再生可能エネルギーは、決して色あせてはいない。日本で太陽光発電を、一時のバブルの報いを受けた採算の合わない構造不況業種としてエネルギー業界の片隅に押し込め、復活の機会を与えないまま「飼い殺し」にするというのは、あまりにも惜しすぎる。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)
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