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消費増税を再延期、安倍首相が会見で表明(写真:ロイター/アフロ)
消費増税延期で、低所得者に甚大な悪影響が広がっていた!年金受給額が実質減
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15801.html
2016.07.08 文=鷲尾香一/ジャーナリスト Business Journal
7月10日、参議院議員通常選挙の投開票が行われる。安倍晋三首相は6月1日、17年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを2年半後の19年10月まで再延期することを表明した。それは、今回の参院選で自民党が勝利を収めるための切り札でもあった。
与野党を問わず、また国民も消費税率の引き上げ延期には概ね賛成であるため、安倍首相の公約違反こそ批判されたものの、延期したこと自体への批判はほとんど聞かれない。しかし、延期によってさまざまな影響や問題が発生することを、参院選前に確認しておきたい。
そもそも、12年に当時の政権与党だった民主党(現民進党)と自民党、公明党の3党合意により決められた「社会保障・税一体改革」では、消費税率引き上げによる増収分は全額を社会保障に使うと目的税化された。この時に消費税率を14年4月に5%から8%へ、15年10月に8%から10%に引き上げるというスケジュールが示され、同時に社会保障に対するさまざまな改革と施策が打ち出された。従って、当然のことながら消費税率の引き上げが先送りされれば、それが財源不足となり予定していた施策等に悪影響が出る。
14年11月18日、安倍首相は15年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを1年半延期して17年4月とすると表明した。実はこの延期により、本来は消費税率が10%に引き上げられているはずだった15年10月以降から現在に至るまで、すでに社会保障ではさまざまな悪影響や問題が発生しているのだ。
例えば、政府は12年8月に「年金機能強化法」を成立させた。同法では、それまでの年金受給資格期間(年金を掛けた期間)を現行の25年から10年に短縮することを決めた。これは、将来の無年金者の発生を防止・抑制するための措置で、試算では約17万人が年金を受給できるようになると見込まれた。また、低年金者には年金生活者支援給付金という措置を設け、現金の支給を行う予定だった。
しかし、これらの措置は消費税率が10%に引き上げられることが実施条件となっていたため、引き上げ延期とともに実施が見送られることになった。それだけが要因のすべてではないだろうが、結果として低年金者や無年金者の生活が苦境に立たされ、貧困に喘ぐこととなった。現在の生活保護の対象は、「母子家庭」を抜き「老人家庭」がトップとなっている。
■子育て支援や介護業界にも影響
前回の延期で影響を受け、問題が発生したのは年金受給者だけではない。さまざまな措置が停止・縮小されたことで、問題が発生している。そして、今回の延期でも、新たな問題が発生する可能性が高い。
例えば、15年4月からスタートした新たな子ども・子育て支援制度では、毎年1兆円を超える財源が必要となり、そのうち7000億円については消費税の増収分で賄うという皮算用だった。しかし、前回の引き上げ延期により、財源は不確実なものとなった。15年度はなんとか帳尻を合わせ乗り切ったが、16年度分については、いまだに4000億円程度の財源が確保できていない状況だ。
あるいは、安倍首相が華々しく宣言した「一億総活躍社会」の実現策で、6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、保育士および介護人材の処遇改善が打ち出されている。今後、必要と見込まれる保育士50万人の確保に約1000億円、保育士および介護人材の処遇改善に約2000億円が必要と試算されている。しかし、これらの財源は明確にはなっていない。当然、消費税率の引き上げを延期すれば税収の増加は見込めなくなるため、新たな財源探しが必要になるだろう。
このように、消費税率の引き上げ延期は、さまざまな政策に悪影響をもたらすことは明確であり、実際に前回の延期でも悪影響が出ているにもかかわらず、それを選挙の切り札のように使い、延期により発生する可能性のある問題を説明もしないという安倍政権の姿勢は非常に問題である。きちんと説明責任を果たした上で、選挙の争点のひとつとして国民の判断を仰ぐべきであろう。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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