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英EU離脱、市場に第2波 英不動産ファンド解約増[日経新聞]
2016/7/7 2:02
英国による欧州連合(EU)離脱決定の余波が金融市場を揺らし始めた。イタリアの銀行の経営不安が再燃したのに続き英不動産ファンドの相次ぐ解約停止で混乱が広がり、6日の金融市場で日本円や日米欧の国債へのマネー逃避が鮮明になった。不動産価格下落や信用不安の連鎖が続けば欧州の実体経済にも影響が及びかねない。
「不確実性と重大な経済調整の局面だ」。英中央銀行イングランド銀行のカーニー総裁は5日、英離脱決定の衝撃波が欧州の金融システムに飛び火するリスクに警鐘を鳴らした。
日米欧の長期金利は過去最低の水準に低下し、日本では6日、20年債利回りが初めてマイナスに沈んだ。円相場が6月24日以来の1ドル=100円台前半まで上昇したほか、日経平均株価は一時、前日終値に比べ500円以上値下がりした。
6日の欧州市場でもロンドンのFTSE100指数をはじめドイツ、イタリアの株価も軒並み下落するなど波乱含みだ。
離脱ショックの「第2波」は英不動産市場が震源だ。6日はヘンダーソン・グローバル・インベスターズが英第2位の公募不動産ファンドの解約を停止。停止は5件目で、英不動産ファンド市場の5割強が凍結された計算だ。
金融機関などが英国外に拠点を移せばロンドンの不動産価値が低下しかねず、一部投資家らが解約を求めファンドに殺到しているようだ。
ファンド側はすぐに資産を現金化するのが困難で、解約の一時停止に動いている。異例の取引制限を巡り市場では「2007年8月のBNPパリバによるファンド解約凍結を連想させる」(外資系銀行)との声もある。
くすぶっていたイタリアの不良債権問題もクローズアップされた。欧州中央銀行(ECB)が不良債権の大幅削減を求め、イタリア政府による公的資金注入が不可避だとの見方が浮上している。
英離脱で欧州経済の先行き不透明感が強まり、不良債権処理が遅れる欧州銀行への視線は一段と厳しくなっている。英離脱決定後、イタリアのウニクレディトや英バークレイズ、ドイツ銀行などの銀行株は2割以上値下がりした。
英ファンドの支払い停止などを発端に市場の疑心暗鬼が広がれば、英国だけでなく、欧州市場全体でみて問題の大きい銀行が信用不安に見舞われる可能性が高まる。
英離脱ショックは金融システムの中枢が直撃されたリーマン危機とはやや性質が異なる。米調査会社クレジットサイツのアナリスト、ハースト氏は「不動産業の債務依存度や銀行の与信残高は低く不動産市場から金融システムへ危機が伝染する可能性は低い」とみる。
銀行同士が資金をやり取りするロンドン銀行間取引金利(LIBOR)3カ月物金利は1%を大きく下回っており、4%まで上がった08年9月のリーマン・ショック時のような切迫感はない。
とはいえ、住宅など広範な資産価格下落などに見舞われれば信用の目詰まりは避けられず、金融セクター全体の安定性が揺らぐ恐れもある。
欧州金融当局が沈静化に有効な手を打てなければ「リーマン型の金融システム危機の性格を帯びてくる」(中央銀行関係者)との警戒感もある。
(石川潤、ロンドン=黄田和宏)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF06H1H_W6A700C1MM8000/?dg=1&nf=1
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