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ホンダと岩谷産業が共同開発した、太陽光発電を使った水素ステーション
日産の新型バイオ車、業界全体に波紋…国の基本計画と逆行、燃料電池車普及を阻害か
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15783.html
2016.07.07 文=桃田健史/ジャーナリスト Business Journal
■突然起こった驚きの発表
「まさか、この時期に、こんな決断を下すとは」――。
燃料電池車の開発に長年携わってきた人のなかから、日産自動車が発表した新しい燃料電池車に対する驚きの声が上がっている。
日産は6月14日、車体のなかに貯蔵したバイオエタノールを燃料とする燃料電池車「e-Bio Fuel-Cell」を発表した。バイオエタノールを車内で改質することで発生する水素によって、燃料電池で発電する。その燃料電池には、すでに量産されているトヨタ自動車「MIRAI」やホンダ「クラリティ Fuel Cell」が使うPEFC(固体高分子形燃料電池)と比べて、より高温で高い発電効率を得ることができるSOFC(固体酸化物形燃料電池)を搭載する。また、燃料となるバイオエタノールは純度100%、またはエタノールと水をそれぞれ50%混合させた溶液で対応する。
このシステムを搭載した車両を、日産は2017年までに量産。それに伴い、これまで開発してきた水素を燃料とするPEFCの開発を凍結するという。
だが、e-Bioについて、技術系のメディアや自動車専門メディアの多くが「SOFCを車載用で量産するのは世界初」として絶賛する一方、業界の一部からは日産の決断に対して疑問の声が聞こえてくる。なぜなら、日産の新しい方式では、水素ステーションが不要だからだ。
日産が発表した新しい燃料電池車のシステム。車体の中に、水素タンクはない
■フェーズ1で失速しかねない
政府は14年4月、新しい「エネルギー基本計画」を閣議決定した。そのなかで「水素社会の実現に向けた取り組みの加速」を明記し、これに伴い同年6月、経済産業省・資源エネルギー庁は「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表。そのなかで、普及に向けたキックオフとなる期間をフェーズ1とし、運輸部門の柱として燃料電池車の積極的な普及を強調した。
そのロードマップは、16年3月に改訂されたばかり。具体的な目標として、燃料電池車を20年までに4万台程度、25年までに20万台程度、そして30年までに80万台程度という販売台数を掲げた。
こうした燃料電池車の普及拡大には、燃料電池車の車体内部に搭載する水素タンクに水素を送り込む、水素ステーションの設置が必要だ。そのため、16年度内に四大都市を中心に100カ所程度、20年度までに15年度と比較して約2倍となる160カ所、そして25年度にはさらにその2倍となる320カ所の設置を目指すとした。さらに、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーに由来する水素ステーションを、20年度までに100カ所程度とする目標を掲げている。
現在、日本国内で燃料電池車の量産を表明しているのは、トヨタ、ホンダ、そして日産の日系ビック3のみ。その他の乗用車メーカーでは、マツダ、三菱自動車、富士重工は、ビック3と比べて自社の開発部署の規模が小さいことなどを理由に、16年上半期の時点では、燃料電池車の量産は未定だ。また、スズキは英国で自動二輪車向けの燃料電池車両の開発を続けてきたが、四輪車向けの量産計画は公表していない。
つまり、国が掲げる「水素社会」における燃料電池車は、水素ステーションというインフラとパッケージで考えるべき乗り物であり、燃料電池車の主要な製造者である日系ビック3が足並みを揃えることは必須であるはずだ。
それにもかかわらず、日産は自社独自の技術開発を優先し、「燃料電池車には、水素ステーションは不要」という結論を公表したことになる。このままでは、「水素社会の普及に向けたフェーズ1」が腰折れしてしまう危険性が高い。なぜなら、水素ステーションに対する投資が今後、冷え込む可能性があるからだ。
■4億円は無理だが、2億円弱ならば「買い」か
筆者は、2000年代の前半に日米欧で起こった、第1次・燃料電池車バブルの現場を取材した。そして、今回の第2次・燃料電池車ブームについても、その前兆が見え始めた頃から日米での取材を続けてきた。そうしたなか、日本のガソリンスタンドオーナーたちと意見交換する場で、「どのタイミングで、水素ステーションに投資するべきか?」という質問を受けることが多い。
現在、日本で水素ステーションを設置するためには、4億円前後の費用が掛かる。これは欧米と比べて2倍以上と高額だ。その理由は、高圧ガス保安法などの規制において、水素タンクなどに対する設計上の安全率が欧米と比べて高いため、それに準じた装置の費用がかさむためだ。
そうした規制に対して、政府は新しい「エネルギー基本計画」のなかで、関係省庁が連携した規制緩和を進めるとしており、その効果が徐々に現れて始めている。水素関連の研究者や、水素関連の事業者からは「規制緩和の進行はまだまだ遅い」という声はあるものの、産学官が連携して、「我が国の将来のために、少しでも前進しよう」という姿勢があることは確かだ。ガソリンスタンドオーナーたちからも、水素ステーションの価格が「欧米並みになったら、先行投資として考えたい」という声が上がってきた。
その矢先に、日産が水素ステーションを必要とする燃料電池車の開発を凍結したのだ。これで、ガソリンスタンドオーナーたちの投資意欲が弱まってしまい、水素ステーションの量産効果が下がり、設置台数が増えず、結果的に燃料電池車の普及台数は伸びない。
今回の日産の判断が、日本の水素社会の将来に及ぼす影響は極めて大きい。国は日産に判断を思い留まるよう、強い指導をしなかったのだろうか。その経緯について今後、取材を続けていきたい。
(文=桃田健史/ジャーナリスト)
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