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中国のなんでも可能にしてしまう「のりしろ」
中国のこの一年を振り返ると、夏にはチャイナショックがあり、中国株も4割下がりました。中国経済がスローダウンしたことが、世界の資源価格の暴落につながったのではないかと言われています。こうしたことを受けて中国では、例えば自動車について、昨年秋に中小型車の減税をしたので急激に自動車が売れ始めました。また、長く続いていた一人っ子政策も、今年年初から転換をしています。共産党支配ということで、まさになんでも可能にする「のりしろ」があるというわけです。
一方で厳しい話も多く、リーマンショックの後には世界経済を引っ張るという非常に強い意識のもと、かなり大きな内需拡大策をやりました。13.7億人の人口に対し、住宅は35億戸ほどもあると言われていて、有り余った状態をどうするのか、地方財政負担など不良債権問題をどうするのか、恐ろしい状況も併せ持っているのが実態です。
株価は昨年夏に4割下落した後、底割れはしていないものの、足元再び緩んできています。やはり通貨の元が下がっていることに対する不安感が現れていると思います。中国元は対ドルで見ても、これまでずっと元高が進んできましたが、2014年から徐々に元が下がり始め、これまでに1割ほど切り下がっています。そうした動きは対円ではもっと如実で、2割も元安になってきています。言われてみればドルに対しても円高が進んでいるので、掛け算で見ると対円で見た元の下げが大きくなるのです。それがさらに進むと大方の人たちに思われているので、より不安が広がる展開となっているのです。
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ただ一方で原油価格の推移を見ると、これまでの下落にはいろいろな理由があったと言われていますが、根本には中国の経済が急激に落ち込んだことが反映されていると思われます。しかし、原油価格自体は年初からの数ヶ月でぐっと値が戻ってきています。このことについては、中国が急激にスピード調整をした段階からやや踊り場に来た、変化率では大きなマイナスから横ばいに近づいたと見る向きも多いようです。
実際に、IMFの経済成長率見通しで統計を確認してみると、中国はリーマンショック後には二桁に近い成長率を4年間も続けています。アメリカや日本がマイナス成長となり、世界全体が厳しい状態に陥った時期に、中国は本当に強さを示していたわけです。それが徐々に7%台、6%台へと下がってきているのです。ただ、他の国々も決して強くなってはいません。アメリカも、日本やヨーロッパと比べて頑張ってはいますが、力強い成長とは言えません。
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グラフで見ても世界経済全体を示すラインを上回り、全体を支えているのは誰かといえば中国ということになるのです。落ちてきているとは言え、全体を上回っているのは中国なのです。確かに、0に近い一番下でさみしい成長を示している日本より、アメリカは頑張っていると言えるでしょう。しかし、世界経済が3%台を保っているのは中国の成長のおかげだということなのです。日米欧、この中ではアメリカは強いものの、やはり中国が頑張っているおかげで世界の強さがあるのだと言えます。イエレンFRB議長も、ことあるごとに中国のことを気にした発言をしていますが、それも当然だと言えるでしょう。
急上昇する中国新築住宅販売価格
世界全体に占める各国名目GDPの割合を見ると、やはり中国とアメリカだけで4割にもなっています。もちろんそれ以下の日本やヨーロッパの大国などを合計しても少なくない数字になりますが、やはりこの二国が大きいということを改めて認識しておく必要があると思います。
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中国国内の経済統計を見ると、PMIで示される景況感は50が判断の分かれ目ですが、この何ヶ月かで戻ってきていることがわかります。昨年後半から年初まで厳しかったものが少しずつ戻ってきている状況です。住宅価格は、中国全土70の都市の数字なのでモデレートに見えますが、綺麗に階段を上るかのような回復が見て取れます。全国の数字でこの状況であり、上海や深セン、北京はもっと価格上昇が起きています。また、自動車登録台数については、去年後半から減税をした効果で大きく増えています。もちろんこれだけ増えているので振れ幅も大きいですが、強い動きになってきています。このように、全体的に底打ち感、プラス、強さもあるというのが現在の中国経済の印象です。
主要経済指標の伸びを見ても、実質GDPの統計は出遅れていますが、これまで心配されていたのが輸入の数字です。中国で物を作ったり物を買ったりすれば輸入が増えるわけですが、前年比二桁の大きな落ち込みが続いてきました。しかし足元は-0.4%と、ほぼゼロまで下げ止まったような数字が出てきました。これがもし、今後数ヶ月にわたって前年比0程度におさまってくれば、大きく落ち込んだものが横ばいになってきたということが見えてきます。
実際、小売売上高なども10%を超えた強い数字が続いている他、生産の伸びも悪くない状態が示されています。消費者物価も2%、生産者物価はまだマイナスですが、その幅は小さくなってきています。今後を占う上ではやはり輸入が落ち着いてきて、前年比プラスとなれば、世界の資源価格などにもプラスの影響が出てくると期待されます。この辺りの数字をじっくり見ていくことが重要になります。
さらに、新築住宅販売価格を詳しく見ると、70都市を合わせた動きではモデレートでマイナスから徐々にプラスになった動きが見られましたが、大都市の数字は極端に伸びています。北京、上海はもちろん、深センに至ってはロケットの打ち上げのような急上昇を見せています。アーバナイゼーション、都市化の進む代表例ですが、凄まじい値上がりです。局所的にものすごい現象が起こっているのです。
上海の地元のホテル協会やゼネコン、商工会議所などの方たちに話を聞きましたが、日本の大使館関係者や経済界の人たちが会見で話す内容について、かなりバイアスがかかっているとの指摘が多く聞かれました。そうした報道では、中国は良いところもあるが、リスクがたくさんあるという、リスクを語る方向にバイアスがかかっていると言うのです。確かにリスクはありますが、世界経済の15%程度を占めている国で、もし発展途上国から内需国、いわゆる大国への歩みで、ギアがチェンジして成長の速度が変わるなら、それはそれで、今までのような二桁の成長は見られなくても、どちらかというと地に足のついた力強い成長が始まっているという可能性も少なからずあると言えるのです。
中国のデータは信じがたいという見方も多くありますが、規模の大きな国なので、輸入や生産者物価の数字などをフォローしながら、その動きを真剣に見ていく必要があると思います。今、6%経済までややスローダウンしていますが、5%に落ちていくのか、この辺りで踏みとどまって、むしろ6%から6.5%に向かうのかについては、これから半年、一年が正念場になるでしょう。この中国の動向はきっちりと見ていくべきだと思います。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
金融経済アナリスト
前クレディ・スイス証券副会長
田口 美一
6月20日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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BREXIT後の世界 グレートブリテンの崩壊!?(大前研一)
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5月の米貿易赤字:10%増の411億ドル−輸入が拡大、輸出は減少
Shobhana Chandra
2016年7月6日 23:33 JST
5月の米貿易赤字は前月比でほぼ1年ぶりの大幅な拡大となった。輸入が消費財や工業用資材を中心に増加した一方、輸出は減少した。
米商務省が6日発表した5月の貿易収支統計によると、財とサービスを合わせた貿易赤字(国際収支ベース、季節調整済み)は前月比10.1%拡大して411億ドル。拡大幅は2015年8月以来の最大。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は400億ドルの赤字だった。
5月の輸出額は0.2%減の1824億ドル。航空機やコンピューター、工業用資材、自動車部品の需要が鈍化した。
輸入額は1.6%増の2235億ドル。財の輸入は3カ月ぶりの高水準となったほか、サービスの輸入は過去最高水準を記録した。
国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレの影響を除いた実質財収支の赤字は611億ドルと、前月の575億ドルから拡大し、3カ月ぶりの高水準となった。
全体の貿易赤字が拡大する一方で、石油収支は29億ドルの赤字と、前月から赤字幅が5.8%縮小。同赤字は1999年2月以来の最小となった。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Trade Deficit in U.S. Widened in May by Most Since August 2015(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-06/O9WAPY6KLVR801
イタリアの悲劇を避けられるかユーロ圏危機の再来を防ぐために、ベイルイン規則の見直しを
2016.7.7(木) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙2016年7月5日付)
サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(SPIEF)で講演する、イタリアのマッテオ・レンツィ首相(2016年6月17日撮影)。 Photo by kremlin.ru, via Wikimedia Commons.
ブリュッセルのある高官は先週、徐々に高まるイタリア銀行システムの危機――および400億ユーロ規模の銀行救済に関し、国家支援の規則の免除を訴える要請――を、イタリア喜歌劇の出し物として一蹴した。
このような態度が続くようなら、欧州連合(EU)は2011年のユーロ圏危機の悲劇的な再現の引き金を引く恐れがある。
イタリアの銀行をめぐる対立は、英国が国民投票でEU離脱を決めてからわずか数日で勃発した。英国の投票結果は部分的に、移民に対する庶民の怒りに直面しても、現実主義を見せようとしない好戦的なEUによって引き起こされたものだ。
国内銀行システムの危機が高まっているイタリアが、次の試練となる。イタリア最大級の金融機関の株式は、過去2カ月間だけで最大で半値に落ち込んだ。イタリア市場で第3位の規模を誇るモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(MPS)は今、純資産の価値のわずか10%程度の水準で売買されている。
合理的な説明は難しい。銀行各行の不良債権の数字はひどいが、それを言えば2カ月前もひどかった。
冷徹な分析は、プラス材料を強調するだろう。イタリア最大の金融機関であるウニクレディトは今、ジャンピエール・ムスティエ氏という確かな経営者をトップに据えている。長年の懸案だった問題を抱えた相互銀行同士の合併を促進する新たな法律も可決された。資金に対するアクセスは潤沢だ。
だが、投資家の不安感がすべてを台無しにした。ブレグジット(英国のEU離脱)はイタリアの株式市場に大きな打撃を与えた。英国株が反発する一方で、イタリア株はまだ10%下げている。EUが苦境に陥る、あるいは完全に崩壊するという不安を反映した動きだ。
これに拍車をかけたのが、欧州中央銀行(ECB)がイタリアの金融機関への圧力を強めているというニュースだ。ストレステスト(銀行の健全性を審査する資産査定)が間近に迫っている。また、4日にリークされたMPS宛ての厳しい書簡で、同行がECBから2年間で不良債権を3分の1削減するよう命じられたことが明らかになった。
ECBの要求に伴う大きな問題は、MPSが不良債権を簿価1ユーロ当たり約40セントで評価していることだ。これは市場が払う気があるように見える水準の2倍だ。MPSは恐らく、不良債権の評価減をカバーするために50億ユーロの新規資本を必要としている。MPSはイタリア銀行業界全般が直面している課題の縮図だ。同国の銀行システムは450億ユーロの自己資本不足に陥っていると、ベレンベルクのアナリストらは話している。
超低金利は銀行の利益率を圧迫した。同時に、イタリアの銀行は適応するのが遅かった。スペインの銀行システムは改革を断行し、弱い金融機関を取り除き、コストを削減し、不良債権を処理した。イタリアの銀行システムは改革を行わず、銀行は速やかに自己資本を増強できなかった。
スペイン最大手の銀行とイタリア最大手の銀行を比べてみるといい。スペインのサンタンデール銀行は、すべての新規要件が実施された段階でのECBの定義に従い、中核的な自己資本比率が12.4%だと報告している(最低要件は10.5%)。これに対し、10.5%というウニクレディトの自己資本比率はまだ、予想される資本要件の10.75%に届かない。折しも、不良債権を吸収するために追加の自己資本が必要なときに、だ。
先に進む方法は5つある。いずれも問題のある道のりだ。
1)理論上は、銀行破綻に関する新たな規則に沿って、MPSのような金融機関は銀行の債務を保有する投資家を「ベイルイン*1」することによって清算されるべきだ。だが、イタリアはリスクについて説明せずに、個人の預金者に銀行債を販売したように見える。昨年のエトルリア銀行の顧客の自殺は、当局者が再びベイルイン規則を使うのを思いとどまらせてきた。
2)イタリアのマッテオ・レンツィ首相は、7000億ユーロ規模の「欧州安定メカニズム(ESM)」――ほかのユーロ圏の救済に使われてきた基金――を利用する考えを示唆したが、救済を受ける汚名を警戒している。
3)もう1つの可能性は、大手銀行に弱い銀行の救済を強いることだ。だが、イタリアの金融機関で最も健全なインテーザ・サンパオロは長らく、その役目を果たすことに抵抗してきた。ウニクレディトはエスタブリッシュメント(支配階級)にとらわれてしまうリスクを避けるために、意図的にイタリア人ではないムスティエ氏を最高経営責任者(CEO)に任命した。
4)大手銀行によって共同設立された救済基金アトランテは、理論上は手助けできる。だが、42億5000万ユーロの基金は、すぐに使える手元資金が17億5000万ユーロしかない。「不良」の定義にもよるが、イタリアの銀行は最大で3000億ユーロの不良債権を抱えている。MPSだけで、最も極端な不良債権を280億ユーロ相当抱えている。
5)問題の大きさを考えると、レンツィ首相が抜本的な政府救済に傾いているように見えるのも不思議はない。専門家の中には、首相は2つの法的拘束力のある制約――1つは国家支援に関するEUの規則、もう1つはイタリアの債務制限――をかわせると考える人もいる。
いずれにせよ、今はEUが非妥協的な態度を取るべきときではない。銀行債を不適切に販売しなかった国々でさえ、システミックな危機が起きたら、ベイルイン規則に欠点があることが分かるはずだ。圧力が高まっているとき、債券保有者に損失を負わせること――そして資本市場を通してパニックを広めること――はリスクが高すぎるように思える。政策立案者はそれを認識し、考え直すべきだ。
*1=銀行破綻時に、株主だけでなく、銀行債の保有者や預金者にも損失を負わせる仕組み
By Patrick Jenkins
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47288
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