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トクホに「効果」なんて期待しちゃダメ!「健康食品」は、健康な人のための食品です
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49033
2016年06月29日(水) 橋久仁子 現代ビジネス
文/橋久仁子(群馬大学名誉教授)
■3種類の「保健機能食品」
健康に関連する食の情報や、「健康食品」の宣伝広告がちまたにあふれています。
「健康食品」とは、「からだに良さそう」と期待して、飲んだり食べたりする商品のことです。飲食物の形をしているものだけでなく、「サプリメント」とよばれることの多い錠剤やカプセル、粉末などの商品もすべて含めて「健康食品」です。
かつて、食品には「効能・効果」的な文言すなわち「機能性」を書き記すことはできませんでした。ところが、今から25年前の1991年に「特定保健用食品」(トクホ)が誕生し、厚生省(当時。現在は消費者庁)の審査に合格すれば「血糖値が気になる方に適しています」「血圧が高めの方に適した食品です」といった表示ができるようになりました。
10年後の2001年には、ビタミンやミネラルを基準値の範囲内で含む商品はその栄養成分の機能を表示してよいとする「栄養機能食品」が設けられ、さらに2015年の4月からは「機能性表示食品」が発足して、「機能性」を表示できる食品類、すなわち「保健機能食品」が3種類となりました。
これら以外にも「効能・効果」をほのめかし、暗示する商品がたくさん存在しますが、それらは「機能性を表示してよい」とは認められていないので、いわゆる「健康食品」とよばれます。保健機能食品を含めた「健康食品」類をめぐる状況は、きわめて複雑になっています。
■「効果」=「機能性」はごくわずか
「健康食品」は医薬品ではないため、「効能・効果」的な文言、すなわち「高血圧を改善します」とか「中性脂肪値を下げます」のように書くことはできません。その代わりに「血圧にはコレ!」とか「中性脂肪対策に!」のように、明確ではないけれどなんとなく「体に良さそう」と思わせるあいまいな表現を用いて広告されています。
その広告文言は、どれもとても魅力的です。運動や食事制限などの“面倒くさい”ことをしなくても、「血圧が下がるらしい」「中性脂肪値が改善する?」と期待して利用したくなるかもしれません。でも、食生活や身体活動の改善なしに、血圧や中性脂肪値を良好にしてくれる「健康食品」など存在しません。
機能性を表示できる保健機能食品はどうなのでしょうか?
実は、トクホも機能性表示食品も、病気をもっている人は利用対象者に含まれていません。いくら「血糖値(または血圧)が気になる方に適しています」と書いてあっても、すでに糖尿病や高血圧を患っている人ではなく、あくまでも「血糖値や血圧が“高め”ではあるけれど、病気ではない人」が利用する商品なのです。
また、トクホは消費者庁の審査に合格した製品であり、許可された範囲内で保健効果を記載できますが、その「効果」はほんの少しでしかありません。それにもかかわらず、大きな効果があるかのように誤解させる広告が数多く用いられています。
「厳重な審査を経て許可」されたはずのトクホでさえ、「効果」=「機能性」はごくわずかに限られます。「食品」とはそもそもそういうものなのですから、食品成分に対する「機能性幻想」など、もたないほうがいいのです。
ところが昨年、内閣総理大臣の掛け声のもと、「トクホより簡単に機能性を表示できるようにする」制度が新たにつくられてしまいました。
■フードファディズムにご用心
ブルーバックスからこのたび刊行された『「健康食品」ウソ・ホント』は、保健機能食品を含めた「健康食品」がはらむ問題点を総点検したものです。
一見科学的に思える効能・効果について、根拠論文にまで遡って検証しました。「健康食品」を利用すればあたかも「健康が買える」かのような幻想は、主に宣伝広告からもたらされると考えられます。巧妙に活用されている“だましのテクニック”も紹介しています。
食べものや栄養が健康や病気へ与える影響を過大に信奉・評価することを「フードファディズム(Food Faddism)」といいます。保健機能食品を含め、「健康食品」には総じてフードファディズム的側面が強くあることがおわかりいただけると思います。
大学の教育学部で食生活教育を26年間にわたって担当してきた私は、誰もが身軽に煮炊きできる人になることを願っています。自炊しなければいけない、というのではありません。「どのような食品を、どれくらいの量、どのようにして食べればよいか」、という基本が身についていれば、外食の機会が多くても大きな間違いはおかさずにすみます。新奇な食情報が出てきても、いちいち振り回されることもないでしょう。
本書の終章には、そのためのヒントも紹介しました。セルフメディケーションの一助になれば幸いです。
コラーゲンが潤すのは「お肌ではなく喉」だった!驚愕の実態が次々と明らかになる。
読書人の雑誌「本」2016年7月号より
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