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(回答先: 「高福祉・低負担」の幻想から、いかに脱するか 投稿者 軽毛 日時 2016 年 6 月 27 日 07:59:36)
質を下げずに医療費を削減した広島県呉市
社会保障非常事態宣言 増税延期の罪
権利の主張ばかりでは医療は破たんする
2016年6月27日(月)
河野 紀子
「○○さん、この間、同じ薬をいくつかの病院から出してもらったようですが、事情を聞かせていただけますか。出された薬を一緒に飲んでしまうと体への負担もあります」
医療費の適正化に聖域なし
●広島県呉市が取り組む医療費削減策の例
呉市国民健康保険では、レセプトデータを基に、「医療費がかかりすぎるケース」を抽出。本人への連絡など気付きを与えて医療費の削減に取り組んでいる
このように保健師が患者の家に訪問することで、結果的に医療費の削減につなげている自治体がある。広島県呉市だ。市区町村ごとに運営されている国民健康保険では、地方自治体が保険者として保険料を徴収して、被保険者(地域の住民など)に保険料を給付する。
呉市は保険者としての意識が極めて高いことで有名だ。診療報酬明細書であるレセプトデータを基に、膨張する医療費を抑える施策に取り組んできたフロントランナーである。
呉市がまず力を入れたのが、ジェネリック医薬品の積極的な普及だ。がんや精神疾患など重篤な疾患以外について、ジェネリック薬に変えたら本人が支払う金額が200円以上少なくなる場合に、差額を通知するようにした。今でこそ、薬局などでこうした差額を教えてくれるのは珍しくなくなっているが、呉市では2008年度から始めていた。これまでに85%以上の患者が差額通知後にジェネリック薬を使うようになり、10億5000万円以上の削減効果が出ているという。
次に、冒頭で紹介したように、同じ薬を同じ月内に複数の医療機関で処方してもらっているケースや同じ医療機関に月15回以上通っているケース、同じ病気で3つ以上の医療機関にかかっているケースもリストアップした。患者宅への訪問などを通じて、医療費の適正使用に向けた“気付き”を促している。
単に薬剤費を減らそうとしているのではない。糖尿病や高血圧などの生活習慣病で治療を続けていたのに、3カ月以上受診していない人には、受診を勧める。また、重症の糖尿病患者には、主治医と本人の了解を得た上で、委託先の看護師が面談や電話による生活指導を行っている。
地道な努力を積み重ねてきた結果、呉市の医療費の伸びは、2008年度からの5年間で9%と、全国平均の14%を下回った。
年間で70を超える自治体が視察
今、国は全ての保険者に対して、「データヘルス計画」を進めている。レセプトデータなどを基に、健康の維持・増進を促す施策を保険者が考え、結果として医療費の削減につなげていくことを狙っている。呉市は、この計画の中で先進事例として紹介されたことから、年間70を超える自治体からの視察を受けている。
呉市が取り組みを始めたのは、財政面での切実な悩みに直面していたからだ。約23万人の人口のうち、65歳以上の高齢者の割合は約34%と、同規模の都市で最も高い。高齢化に加えて、市内には400人以上が入院できる大病院が3つもあるため、住民一人当たりの医療費が高い。2014年度は43万7000円と、全国平均の1.32倍にもなる。
特に国民健康保険は、企業を退職して医療費がかかるようになってから加入する人が多い。また、被保険者の多くは65歳以上の高齢者のため、自己負担は1〜2割の人が多い。結果として、市の負担が重くなる。
日本の医療のメリットは、フリーアクセスと皆保険制度だ。保険証があれば、基本的にどこの医療機関でも、一定の料金で医療サービスを受けることができる。ただし、患者自身が「必要だ」と思えば、医療機関を何度も受診することができてしまう。それが医療費を増大させているという指摘もある。
その逆も問題だ。自己判断で治療を止めてしまい重症化してしまうと、医療費がかえってかかることになる。例えば糖尿病は悪化すると人工透析が必要になり、年間の医療費は1人当たり600万円にもなる。こうしたケースでも、保険で賄われているのが現状だ。
医療費削減に向けた取り組みを進めてきた呉市の小村和年市長は「保険は皆の負担の上に成り立っている。サービスを受けることを委縮する必要はないが、医療を受ける権利ばかり主張していては、制度自体を崩壊させてしまいかねない」と話す。
医療費の適正化に力を入れてきた広島県呉市の小村和年・市長
消費増税の再延期で社会保障の財源は厳しく
広島県呉市は、診療報酬明細書のデータを基に、国民健康保険加入者の医療費を抑える取り組みを続けている。薬をジェネリックに変えることで安くなる人に差額を通知した結果、10億円以上の削減効果も。全国の自治体から注目を集めている。
ただし、呉市の事業が着実に進んできたのは、市だけが努力したからではない。それを支える協力体制があったからだ。
レセプトの分析は、医療データサービスを手掛けるデータホライゾンが手掛ける。2016年3月時点で、国民健康保険の保険者は285、そのほか企業などの43の健康保険組合が、同社のレセプトのデータなどを使った医療費削減につながるサービスを導入している。また、糖尿病患者への生活指導などは、看護師による病気の管理などのサービスを展開するDPPヘルスパートナーズ(広島市)が担っている。
地元の医療機関や医師の協力も、重要な要素だ。呉市の担当者も「地元医師会と対話を繰り返し、理解を示してもらいながら進めてきたので、ここまでやってこられた」という。医療機関にとっては、目の前の患者に必要な医療を提供しているだけでも、全体でみれば必要以上の医療費がかかっているケースが存在している。保険者の“介入”によって医療機関に入るはずだった報酬は減ることになるかもしれない。だが、医療費の増大に直面する中では、こうした適正化は避けて通れない。
消費増税が再延期されたことで、社会保障にかける財源は厳しくなり、医療費の適正化の流れは、ますます強くなるだろう。医療サービスを受ける患者も、健康に対する意識を高めて、保険の恩恵を授かる意味を改めて自覚する時期に来ている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/062400049/062400001/img_01.jpg
このコラムについて
社会保障非常事態宣言 増税延期の罪
参院選を前に、再延期が事実上決まった消費税率の10%への引き上げ。景気悪化リスクを理由に、社会保障の拡充の財源が失われた。年金、医療、介護、保育、生活保護──。いまだに社会保障に多くのムダや矛盾が残る。メスを入れれば、国民にも既得権益者にも痛みが生じるのは事実。だが、改革の痛みから目を背けてポピュリズムに染まり、子供や孫の世代にツケを回し続ける国に未来はない。まさに今、「社会保障非常事態宣言」を発する時だ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/062400049/062400001/
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